「レベル88か…上がったなぁ〜」
「アレだけ水晶群蠍を倒せば当たり前ですよ」
「まぁ、倒したって実感は何もないけどな」
水晶巣崖で水晶群蠍の群れを投身自殺させた俺は上がったレベルやスキル等を確認したり溜まったSTポイントを割り振ったりしながら奥古来魂の渓谷を歩いていた。
「正確に何体いるかは確認してなかったけど相当の数だったからな…致命兎の緑陽輪を付けててもここまで上がるのは必然か…」
STポイントの割り振りを終えてウィンドウを閉じた俺は歩くスピードを早める。
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レベル88
体力 30 魔力 230
スタミナ 200
筋力 85 敏捷 200
器用 85 技量 85
耐久力 26(装備により+18) 幸運 55
STポイント0
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「急いでサンラクのいるエイドルトに行きたいが…この奥古来魂の渓谷のエリアボスってどんなモンスターなんだ?」
蔓延する瘴気をリュカオーンの呪いで清浄しながら歩きつつミュウラにそう尋ねる。サンラクからは奥古来魂の渓谷のエリアの特徴しか聴いていない。
「奥古来魂の渓谷のエリアボスは
「は?」
俺は、ミュウラのセリフに間の抜けた声を出してしまった。
「物理攻撃が効かない?」
「はい」
「魔法攻撃は?」
「あまり効きませんね。アンデッドなので聖属性の攻撃か聖属性が付与されたモノでないと倒せません」
「マジかよ……ッ!!」
ミュウラのセリフに俺は天を仰いだ。今の気分に相応しい曇天に更に気分が落ちていく。
"しくじった"
それが今の気持ちだ。サンラクからエリアについての情報は聞いていたがボスについては楽しみを取っておく為にあまり聞いていなかった(情報収集もあまりしなかった)。
アンデッド系と言うのでてっきりゾンビの類だと思い込んでいた。
(ってか瘴気の発生源ってなんだよ。ワイバーンゾンビばっかいるからボスもゾンビだと思ってたのに……馬鹿か俺は!!)
情報収集を怠った自分のミスなのでどれだけ嘆いても意味は無い。俺は今の気分を吐き出す様に息を吐いた。
「………………………………………………………………………………仕方ない。歌う瘴骨魔は後にしよう。サンラクを待たせてるからな。回避する」
「回避って…どうするおつもりですか?」
身を切る様な思い出発したセリフにミュウラが首を傾げる。通常エリアボスの撃破無しで先に進む事は出来ない。だが、この奥古来魂の渓谷に関してはそれが出来ると考えている。
(まぁ、やる奴はあまり居ないだろうけどな)
俺は肩に乗るミュウラに視線を合わせて指をうえに向けると
「水晶巣崖を抜ける」
渓谷の上にある水晶の地を想起してそう言った。
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「オラオラっ!もっと来いよ!」
渓谷の上、水晶巣崖で俺は再び水晶群蠍と追いかけっこを楽しんでいた。
「サンラクに合流する前にお土産にしてやるよ!」
「叫ばないで下さい!また、来ます!!」
肩に捕まりながら走る度に身体を上下させているミュウラを無視して俺は走り続ける。
「スタミナ、敏捷、魔力共に200オーバーの力見せてやるぜ!蠍共!!」
致命兎の緑陽輪のお陰で大量に手に入ったSTポイント。スタミナ、敏捷、魔力はついに200の大台に乗り纏雷も相まって俺は水晶群蠍相手にかなり有利に立ち回っていた。
「だが、流石にそろそろヤバいか!数減らしておくか!」
障害物を利用した追いかけっこ。かなりの得意分野だが、水晶を破壊しながら進んでくる連中には障害物もクソもない。
俺は身体を反転させて水晶群蠍共と向き合うと残った魔力を全て消費して棘尽雷を放った。
パリっ、と言う音と共に身体に纏っていた雷は消えそれと同時に自分から真っ直ぐ稲妻が疾走る。
水晶群蠍の身体を貫通し拡散し雷撃は水晶群蠍を破壊していく。
「よっしゃ!水晶群蠍の素材GETだ!!」
雷撃によって倒され素材となった水晶群蠍に声を上げて俺は素材を回収していく。ついでに魔力とスタミナをポーションで回復して次に備える。
「追いかけっこのお陰で随分と進んだ。後、もう少しだな。気張れよミュウラ」
「は、はいぃぃ…」
レベル111のモンスターに追いかけ回される。俺は楽しんでいるがミュウラはそうでも無いらしい。表情からも声からも疲労が色濃く見て取れる。
俺はミュウラの頭を撫でながら足から伝わる振動に口角を歪めたのだった。
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「よっ、お待たせ」
水晶巣崖を経由して奥古来魂の渓谷を抜けた俺はサンラクがいる宿屋に来ていた(場所は事前に連絡してもらった)。
「遅かったな」
「水晶巣崖で蠍達を乱獲してました」
ベッドに腰掛けてそう言うサンラクにそう応えつつ俺はここに来るまでに買った人参をミュウラに渡す。
「はぁ……美味しいです……癒されます……」
渡された人参をそれはもう美味しそうに食べるミュウラにエムルちゃんが唾を飲み込みサンラクの肩をバシバシと叩いている。
「買わないぞ」
"私も人参食べたいですわ"と言う主張にサンラクはそう言って首を横に振る。無慈悲なサンラクのセリフにガーンと言う音が聞こえて来そうな表情をするエムルちゃん。そのやり取りに俺は笑うがサンラクの言葉で表情を切り替えた。
「どうだったあの蠍共は?」
「最高」
サンラクの問いに俺は短く答えた。エイドルトに行くための最後の鬼ごっこで水晶群蠍を倒しまくった結果俺のレベルはついに80を超えた。
80の大台に乗ったからなのかそこからは中々上がらなくなったがそれでも恩恵は大きい。それに何よりもだ。
「インベントリアに入れ。お前が狩った蠍共の倍は狩ったからな素材で溢れ返ってるぞ」
レベル111のモンスターのドロップアイテムが大量に手に入ったのだ。しかも、ミュウラの不義遊戯のお陰で同士討ちの状況を作りやすくなった結果、レアドロップであろう針を割と簡単に手に入れることが出来た。
「そんなに言うならいっちょ見てきますか」
サンラクはそう言い残すとインベントリアへ入って行き数十秒後に「なんだありゃ!?」と叫んで出てきた。
「どんだけ蠍狩りをしたんだお前!?どうやってこの馬鹿の量を倒したんだ!?俺の採った素材が霞むレベルじゃねぇか!!」
「いや〜、実に楽しい鬼ごっこだったぞ」
「私は怖かったです…」
叫び散らかすサンラクに俺は笑って、ミュウラは人参を大事そうに抱えてそう言った。
「ミュウラちゃんの反応が全てを物語ってるな。絶対まともな方法じゃねぇな」
「うるせぇ、どうせお前も似たような事するぞ。絶対にな」
呆れ顔で俺とミュウラを見比べてそう言うサンラクに相槌を打ち俺は続けて気になっていた事を話す。
「そういや、エイドルトまで来いって言われたから来たが去栄の残骸遺道にはすぐに行くのか?出来ればポーションとか買いたいんだが…」
ビィラック育成計画の為にここまで来たのだ。ここから先の予定をちゃんと確かめなければならない。
「あぁ、お前と合流出来たからな早速向かうぞ、と言いたいがビィラックがいる鍛冶場に行こう。紹介したい奴がいる」
俺のセリフのそう応えたサンラクはベッドから立ち上がるとエムルちゃんを連れてドアを開けて「行くぞ」と言って出ていった。
「「?」」
残された俺とミュウラは首を傾げてサンラクの後を追ってビィラックがいる鍛冶場に向かった。