「それでぇ〜?なんで君は私たちのメールを無視したのかなぁ??」
「言い訳なら今のうちだよぉ?」
ビィラックを古匠にする為に始まった『ビィラック育成計画』もいよいよ大詰め。魔力運用ユニットがあると思われる神代の『工房』への入口を見つけた俺達は、と言うかサンラクは突然現れた外道2人に正座させられていた。
悪徳企業の圧迫面接も可愛く見えるレベルの詰問を俺はミュウラとエムルちゃんの目を手を覆いながら眺めていた。
「いや〜無視したって言うか…寝て起きたら忘れてたって言うか〜……」
2人に見下ろされながら小さい声でそう言うサンラクはチラチラと俺を見てくるがその視線はペンシルゴンによって遮られた。
「なぁ〜にユウヒくんのこと見てるのかなぁ?今話をしてるのは君でしょぉ?」
俺に助けを求めている事がお気に召さないのか、俺がサンラクを助けると2人の勝ち筋がほとんど無くなるからなのか、恐らくは後者だろうが俺に「サンラクを助けさせない」と言う固い意思が感じられる動きだっだ。
「既読ついたって事は読んでたよねサンラク?」
「はい…」
「なんでシカトしてんだよ?」
「見るには見たんだけど…眠くて寝ちゃって…」
「で?」
「起きたら完全に忘れてました」
凍死するくらい冷たい視線に流石のサンラクもはっきりとそう答える。
「だってよ、ペンシルゴン。どうする?」
サンラクの答えを聞いたカッツォはペンシルゴンに視線を向けてそう言い。当の本人は少し考えると
「じゃあ、サンラクくんには身体でお詫びしてもらおうかな」
とてもいい笑顔でそう言った。
「助けてくれユウ!!絶対マトモな方法じゃない!!」
ペンシルゴンのセリフにサンラクが泣き叫ぶが俺は関係ない。
「大人しく処刑されてこい」
「ノォ━━━━━━━━━━━━━━ッ!!」
地面に手を着くサンラクの悲痛な叫びが木霊するが助けられる者は存在しなかった。
「一体なんなんじゃ?こりゃ??」
コントの様な状況にビィラックが言葉を漏らすが俺は「気にするな」と応えてペンシルゴンとカッツォに改めて色々尋ねてみた。
「ペンシルゴンとカッツォ、どうやって俺達の居場所がわかったんだ?」
「君達、水晶群蠍の素材をインベントリアに大量に突っ込んだでしょ?」
「小さい山が出来てたよ。どんだけ倒したんだよ」
「どうやって倒したかは後で聞くけど水晶群蠍は水晶巣崖にしかスポーンしないんだ」
「お前達の事だからどうせ先に進んでるだろうって事で去栄の残骸遺道で待ってたって訳」
2人の応えに俺は「なるほど」と呟いた。確かにインベントリアは共有だしこの2人は俺とサンラクの様にレベルの上昇に制限を抱えていない。
ウェザエモン戦の後、カッツォは先に進むと言っていたしペンシルゴンに至っては俺達よりプレイ歴が長い。俺達を待って此処で捕まえるのは簡単だったのだろう。
「ってかペンシルゴンはどうやって俺の背後とった?全然気が付かなかったぞ」
2人の言い分に納得した俺は次に気になっていた事を尋ねた。あの時、耳元で囁かれるまで俺は何も気が付かなかった。歩けば音はなるし普通なら気づく。なのに全く気が付かなかった。
「ふふーん、それはね?このアイテムのおかげなのだよユウヒくん」
俺の問いにペンシルゴンは笑うと左腕につけたブレスレットを見せてきた。
「『隠遁者の腕輪』コレをつけると10秒間だけプレイヤーのありとあらゆる痕跡を消す事が出来るんだ」
そして、ブレスレットを撫でながら笑顔でそう言う。
「マジか」
しかし、ペンシルゴンの表情とは裏腹に俺は顔を顰めた。
(それつけるだけで強襲し放題じゃねぇか)
「巫山戯たアイテム作りやがる」
PvPでそのアイテムを持つプレイヤーがいるだけで複雑さが跳ね上がる。色々と追いかけられる身の上なのでその事にそう呟くとペンシルゴンは「大丈夫だよ」と言ってきた。
「これ攻撃にモーションとった瞬間に効果が切れる仕組みだから。戦いじゃ使えないよ」
「そうか…」
ペンシルゴンのセリフに俺は少し安心しつつ地面に手を着いたまま動かなくなっているサンラクに声をかけた。
「何時までそうしてんだよ。早く復活しろ」
「無慈悲…」
「何時まで引きずってんだ…どうしたってお前が死ぬ未来は変わらねぇよ」
俯いて小さく呟くサンラクにそう言いつつ立ち上がらせるがいつまで経っても復活しない。
なので
「復活しないと紐無しバンジーさせるぞ」
穴の前まで引き摺って連れて行ってそう告げた。
「たった今完全復活しましたぁッ!!」
俺のセリフに完全復活を果たしたサンラクは元気に飛び跳ねてそう叫んだ。
「ってかお前ら時間あるなら少し協力してくれ」
そして、穴際から飛びずさるとペンシルゴンとカッツォにそう言った。唐突な申し出に2人は首を傾げるが俺とサンラクが事情を話すと早速カッツォが穴に入る事になった(ユニークの禁断症状が出たカッツォを宥めるのに苦労した)。
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「……にしてもあのウェザエモンを倒した開拓者が揃い踏みとは…少し驚きじゃ」
今、俺達は自前の縄で降下しているカッツォの報告を待ちながら待機していた。その差中、ビィラックがそう言うが俺達は各々多少の反応を見せるだけに留まった。
「私達はやりたい事をやっただけだよ」
「そうだな。ペンシルゴンの誘いが面白そうだったからやっただけた」
「後、強い敵と戦えるからな」
色々と理由はあるが一番の理由は言った通りだ。それに、一番思い入れのあるペンシルゴンはこんな感じなので俺とサンラクがどうこう言う事はない。
「……にしても何があるかわからんのによく行けるのぉ」
俺達の雰囲気にビィラックも「多くを聞く必要無し」と判断したのか再び穴を覗くと迷わず降下を続けるカッツォにそう言った。
「何かあれば飛び上がってくるでしょ」
「無理そうだったら引っ張ってやればいいしな」
「芋のようにな」
「………ワリャ達の関係性はどうなっとるんじゃ」
俺達のセリフにビィラックは引いた様子になるが下からカッツォの「OK!とりあえず敵はいないみたい」と言う声が聞こえた事で話は中断になった。
「よしっ、行くか。ミュウラしっかり掴まってろ」
「はいっ」
待っていた報告に俺はミュウラにそう言うと縄を手に取って降下を始めた。降下自体はやり方を知っているので簡単に行く。
「は、早いです!ユウヒさん!」
「ゆっくり行っても怖い時間が長いだけだぞ。我慢だ!」
どんどん進んでいく俺にミュウラがそう言うがこの手のモノは一気に終わらせる派の俺はそう返してサクッと降下を終わらせた。
「相変わらず速いねユウヒ」
「慣れればこんなもんだ。ミュウラ大丈夫か?」
「は、はいぃ…」
先に降りていたカッツォのセリフに返しつつミュウラに声をかける。ミュウラはぐったりとしているが「少し肩の上でゆっくりさせてください」と言ってきたので復活するまで肩を貸すことにした。
「…これは」
「うん…」
ミュウラを肩で休ませる間、俺とカッツォは下にある空間を見回して観察していた。まず、一番最初に思った事は「近未来」。明らかに上とは文明レベルが違う空間。神代の鐡遺跡に近い感じだ。
「上が廃墟みたいだけどこの施設はまだ『生きてる』みたいだね」
明かりが付いている事も含めて上とは大違いの空間になっている。カッツォのセリフに頷きつつ壁に触れてみるが特に反応はなく俺達は少し歩いてみる事にした。
しかし
ビーッビーッビーッビーッビーッ!!
俺達が先に進んだ瞬間、けたたましいアラートが鳴り響いた。
「一体なんなのですか!?」
いきなりのアラートにミュウラが耳を塞いで叫ぶ。
「あ〜これは…」
「セキュリティも生きてた感じだな」
それ以外に何があるのか、といった感じだが俺達2人で何かしらのセンサーを踏み抜いてしまったらしい。
(壁触っても何も無いから油断したな…)
「おいおいっ、どうなってんだ?」
「なんかアラート鳴ってない?」
油断していた事に苦笑いを浮かべているとちょうどサンラク達が降りてきた。
「悪い、なんかセンサー踏んだっぽい」
「ごめん、セキュリティ反応させちゃった」
とりあえず言い訳ができる状況でもないので全員に謝りつつ周りを見てみる。
すると
ボドッ
俺達の視線の先で天井からナニカが落とされた。
それは音を立てて形を変えていく。
「ゴーレムか」
「ただのゴーレムではないっぽいぞ」
「なんか雰囲気ウェザエモンみたいじゃない?」
「なんじゃと!?」
4本の腕を展開し足を広げ立ち上がった姿に俺やサンラク達はそう言い武器を構える。
「大丈夫なのですか?」
明らかに上にいたゴーレム達とは雰囲気の違うゴーレムにミュウラが不安そうな声を上げるが俺は頭を撫でて「問題ねぇ」と答えた。
「ウェザエモンに似てるつっても雰囲気だけだろ。それに、ここにはそのウェザエモンを倒した連中が揃ってる。…………負ける道理はねぇな!!」
「あぁ!!」
「そうだね!!」
「いっちょかましてやろうか!!」
そしてその言葉と共に俺、サンラク、カッツォが飛び出す。ゴーレムも展開した4本の腕を俺たちに向けて俺達に応えた。
地下のゴーレムとの戦いが始まった。