「ユウヒさん!これで良かったのですかっ?」
「あぁ、これで良いんだよ!お前もあの目見ただろ!?完全にキマってたあの目を!!」
「確かに!あれはヤバかったですわ、ミュウラ!!」
俺は今、エイドルトの街を纏雷も使って全力で走っていた。屋根から屋根へ跳びながら走り回りつつミュウラにそう応えた。
そして、俺のセリフに合わせるようにそう言うのはサンラクの相棒であるエムルちゃん。今はサンラクのそばを離れて俺と一緒にいる。
「居たぞ!!あそこだ!!」
「早すぎる!!」
「追え追え!!」
そして、俺達を追いかける連中が下にいる。奴等はクラン「
「クソがっ…………全員殺すか?」
下から俺を追いかける連中にイラつきついそう言葉が漏れてしまう。
「絶対ダメです、ダメですからね!?」
「ユウヒさん怖いですわ…」
俺のセリフにミュウラは髪を引っ張りながら慌てた様子を見せ、エムルちゃんは顔を青くしている。
だが、それも仕方が無いだろう。人数が多すぎてゲート付近を完璧に抑えられている。そんな状況でずっと走っている。しかも、門の前を固めているプレイヤーの数が追ってきている連中の3倍はいた。
何故こんなことになったのか?
それは、数十分前に遡る。
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「俺達に会いたい連中がいる?」
去栄の残骸遺道にある神代のラボからの帰り道、縄に繋がれたサンラクはペンシルゴンとカッツォのセリフにそう返した。
話している内容は俺達(主にサンラクだと思っている)を捕まえた理由。ラボで捕まってから何故こうなったのか理由が分からなかったが、どうやらこの2人が俺達と繋がっている事が知られてしまったが故らしい。
「そうだよ、ウェザエモン討伐後のマスターアナウンスで俺達が君達と繋がりがあるって知られてから大変なんだよ」
サンラクのセリフに応えつつカッツォは辟易した様子を見せる。
「街を歩くだけで血走った目をしたケモミミ連中に囲まれて『サンラク氏とユウヒ氏に会わせろ』だの『ウサギの情報よこせ』だの嘆願させるんだよ?この恐怖わかる??」
「私なんて『黒狼』のリーダー、サイガ-100がアタックホルダーちゃん同伴で直々に交渉しに来たんだからね?」
「「知るかよ、そんなの」」
カッツォと同様にペンシルゴンも辟易した様子を見せるが俺達には関係ない。
「俺達だって街に出る度に追いかけっこしてるぞ」
「ってか、個人のゲームライフの邪魔にならない様に配慮するのは常識だろうが……ライブラリのキョージュを見習えよ」
俺とサンラクはそれぞれそう返し歩き続ける。
「……ん?じゃあお前のところに『ライブラリ』の連中は、まだ来てないのか」
しかし、サンラクは何かを思い出したようにそう言うとペンシルゴンの足が止まった。
「ライブラリって…まさかサンラクくんあのおじいちゃんに私を売ったの!?」
そして、目の色を変えてそう言うとサンラクに詰め寄った。
「根掘り葉掘り聞いてくるから苦手なんだよ!」
怒りと困惑混じりのセリフと声色でそう言うがサンラクは「快適なゲームライフを送りたいんだよ」と呟いてバツが悪そうに目を逸らしてしまった。
「あぁ、そう言えばキョージュにメールの返信してなかったな…」
そして、俺も自分の用事に気を取られてウェザエモン討伐後キョージュに対して何もしていなかった事を思い出してバツが悪くなる。
「どうするかな…?」
流石に向こうの意思に甘えすぎていた感じだ。人としてあまり良いとは言えない。
(後で連絡だけしとくか…)
黙って考えた結果、自分の話せる内容は戦闘時よウェザエモンの様子等しかないと判断して俺は顔を上げた。
「「よし」」
すると、俺と同じく何かを考えていたらしいペンシルゴンと声と動きが重なり目が合った。
「「………」」
俺とペンシルゴンの間に沈黙が流れるが気まずさはない。ペンシルゴンが何故か髪を弄ったりしているが理由は無いだろう。
「……と言うか、ユウヒくんも何か隠してない??」
すると、流れていた沈黙を破ってペンシルゴンが俺にそう尋ねてきた。
「俺が抱えてるユニークの情報以外でって事なら特にはねぇな。強いて言えばビィラックとアラミースの存在だけどもうバレてるしな…」
「ふぅーん、じゃあ、そう言う事にしておこうかな…」
ペンシルゴンは自身のセリフにそう応えた俺を見つめると身体を反転させてそう言った。気になる反応ではあるが隠している事が事だけに話す事は出来ない。
そして、そのまま歩き出したペンシルゴンの後に続くように俺達は歩きエイドルトへと戻ったのだった。
「じゃあマーリョークウンヨーンユーニットはワチが持っていくからのう」
そして、エイドルトに到着した俺達は裏路地に入るとビィラック、アラミースと別行動となった。
「おう、しっかりな。『古匠』ビィラック楽しみにしてるぜ!」
「俺もだ、『古匠』になってすげぇ武器やら防具やら沢山作ってくれ。あと、頼んだ防具よろしくな」
ゲートでラビッツへと帰るビィラックに俺達はそう言う。
「アラミースも世話になったな」
「助かったぜ、ありがとな。良い剣技だったぜ」
そして、ゴーレム達との戦いで助けてくれたアラミースにもそう言って別れた。最後の最後まで、ビィラックのアラミースに対する扱いは凄かったが最初から最後まで笑える黒猫だった。
「行ったか…てか俺はエムルにもラビッツに戻って欲しかったんだけどな…ユウヒもそうだろ?」
1匹と1羽を見送り少し静かになった裏路地でサンラクはエムルちゃんを見ながらそう言う。エムルちゃんは「また置いていく気ですわ?」と言ってついて行く気満々の様子だ。サンラクはミュウラにも戻って貰いたかったらしく俺に視線を向けるが俺はそうでもない。
「別に、何が起きてもどうにかすりゃあ良いんだよ」
肩を竦めてサンラクにそう返しつつペンシルゴンとカッツォに視線を向ける。それはサンラクも同様で俺達はニコニコと笑顔を浮かべている2人に「何かあるな」と確信した。
そして、俺はさり気なくサンラクの横に移動する。いや、正確には"エムルちゃん"の横に。
すると
「み………」
裏路地へと続く通路の先から声が聞こえた。
「いや〜良かったよ」
声に反応して振り向くとそこには目を血走らせたケモミミ連中が立っていた。そして、その姿を確認すると同時にペンシルゴンのセリフが聞こえた。
「みぃ………みぃ………みぃ……みぃ……」
「サンラクくんとユウヒくんがウサギちゃん達を返さなくて良かったよ」
そして、俺達はケモミミ連中の言葉にならない声を聞きながらペンシルゴンのセリフに耳を傾ける。
「エムルちゃんとミュウラちゃんには"役目"があるからね」
「見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁエムルちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁんッ兎ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああん!!」
そして、ペンシルゴンのセリフと同時にケモミミ連中はゾンビの如く俺達に向かって走り出した。
しかし
「びゃッ!?」
連中が走り出したと同時に俺はエムルちゃんを掴みサンラクの肩から引き離すと壁へと跳んだ。
「させるかッ!!」
その瞬間にカッツォが縄を放ち伸ばしてくる。跳んだ瞬間に伸ばされた縄は空中にいる俺を捕らえる為に真っ直ぐ伸びてくる。
「捕った!!」
確信を持ったカッツォのセリフが俺の耳に届く。
だが
「ピャッ!?」
「はぁっ!?」
俺はエムルちゃんを上に高く投げつつ身体を曲げ空中でギリギリ縄を躱すと壁を蹴ってエムルちゃんを回収し屋根へと登った。
「惜しかったなカッツォ、見きるのが早すぎるっていつも言ってんだろ」
「うるせぇよ曲芸モンスターが!!」
そして、カッツォに一言そう言うとカッツォの文句を背後にその場から走り出した。
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それが数十分前の出来事、そしてそれ以降俺はエイドルトの街を走り回っている。
「殺してしまうのはダメですよ!ユウヒさん!」
「じゃあ、HP1まで追い込むか」
「そんな事出来るのですわ??」
「わからん」
「「絶対ダメです(わ)!!」」
耳元で左右両方から叫ばれた俺は「わかったよ」と応えて次の屋根へと跳ぶ。
「見つけたぞ!」
すると、軽装備のプレイヤーが屋根へと上がり俺の前に立ち塞がった。俺は転身して左へ進む、瀕死に追い込むことが可能かどうか解らない以上、戦う訳には行かない。それに、万が一戦い殺してしまえばPKマークが着くことになる。
以前、ペンシルゴンが話していたPKのデメリット。"NPCからの好感度が最低値になる"これは俺には致命的なデメリットだ。さっきはイラつきで殺そうとしたが最初からその選択肢はない。
だが、人数差が大き過ぎて逃げの一手は長く続かないだろう。
「逃がすか!!」
「待て!」
「話を聞いてくれ!!」
「ウサギちゃんを返せ!!」
「待てェェェェェェェェっ」
「ちっ」
思考している間に更に屋根上に上がってきた追っ手が増え俺は舌打ちを零した。
そして、意を決するとミュウラとエムルちゃんに肩にしっかり捕まってる様に言いつけて走るスピードを少し落とした。
そして、追っ手を引き付けると屋根から跳びその先にある服がかけられた紐を右手で掴んだ。
「ひゃ!?」
「うわっ!?」
そして、そのまま一回転すると紐を足場に逆方向へと跳んだ。
「えっ」
「うわっ?」
「はぁ!?」
「なにっ!?」
「おいっ?」
予想以上に頑丈だった紐はしっかりと足場の役目を果たし俺は追っ手連中のど真ん中を抜けてある場所へと向かった。
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「リーダー!!」
「捕まえられたか?」
「いえ、それが…ユウヒ氏の足が速すぎて…」
私達はエンドルトの裏路地で何人目かも分からない「黒狼」のメンバーのリーダーへの報告を
聞いていた。
「そうか…」
そして、何度目かも分からないモモちゃんの悔しそうな表情を見た。
「まだ、捕まらないんだ。流石だね、ユウヒくん」
「言ってる場合?ユウヒ相手じゃそこらのプレイヤーじゃ相手にもならないよ?」
未だに底を見せないユウヒくんの実力に笑っているとカッツォくんが呆れた様子でそう言ってくる。
「まぁ、言いたい事はわかるけど流石にユウヒくんもあの人数に追いかけられたら最終的には捕まるでしょ」
「マジでそう思ってる?」
「全く」
「甘いなお前ら」
カッツォくんと暇つぶしの会話を楽しみつつこの状態がいつまで続くのか考えていると不意にサンラクくんがそう言ってきた。
「甘いって」
「何が?」
言葉の意味がわからず私とカッツォがそう聞き返すとサンラクくんは普段見せることの無い緊張した表情を私たちに向けた。
「お前ら甘すぎる。チョコラテよりも甘い。お前らはまだ、ユウの事をわかってない」
そして、私達に硬い声色でそう言う。
「そりゃあお前と比べたら誰だってそうでしょ」
カッツォくんはあまりにも当たり前の事にそう言い私も頷いた。しかし、サンラクは「そうじゃねぇ」と呟く
「人としての事じゃねぇ
「何が起こるって言うの?」
そして、私はサンラクくんのセリフに嫌な予感がしてそう尋ねた。チラッと横を見ればカッツォくんも表情を強ばらせている。
「このままどれだけ時間が経ってもユウが捕まることは
私のセリフに応える様に話し出したサンラクくんは表情を固くする。
「可能性は2つだ。一つは追っ手全員が瀕死まで追い込まれる。俺とユウにはエムルとミュウラちゃんがいるしNPCからの好感度は失えない。だから、PKの選択肢はないはずだ。出来るかどうかは分からないが全員が瀕死になって彼奴だけが戻ってくる」
私達はサンラクの話に息を飲んだ。「確かに」と思ってしまったからだ。そして、エイドルトの街に瀕死になって転がるプレイヤーの大群を想像して肝を冷やした。
「トドメを刺されず放置とか…」
「こわ…」
そして、私達はそう呟き私は残りの可能性について聞くことにした。
「もう1つは?」
「それは……」
そして、私の問にサンラクくんが答えようとした。
その瞬間だった。
影が舞った。
影の主を目で追う。主はユウヒくんだ。
ユウヒくんは屋根からモモちゃんのそばに降り立つと殺気全開で身体を動かした。
「ッ!!」
あまりの気迫にモモちゃんが瞬間的に腰の剣へと手を伸ばす。
しかし
「なっ!?」
ユウヒくんはモモちゃんよりも早く柄尻を押さえ込んで抜刀を防ぐと剣を取ろうとした右手を掴み一瞬で背中の方へと捻り上げた。
全身を使った腕の捻り上げ。モモちゃんの体勢が崩れてその場に倒れる。
そして
ユウヒくんは体勢を崩したモモちゃんの頭に右拳を振り下ろした。
一瞬の出来事、轟音が裏路地に鳴り響き地面が割れて土煙が上がる。しばらくして土煙が晴れるとユウヒくんは立ち上がり。
「今日、追いかけ回した事はチャラだ。落ち着いて話をしようぜ」
何事も無かった様に倒れるモモちゃんにそう告げた。
「………もう1つは、
そして、ソレを見たサンラクは呆れた様に溜息を吐いて私たちにそう言った。
でもそれは、何もかもが理解させられた後だった。