廃棄世界のルツボ 作:スライムナイトスライム抜き
【オートセーブからデータをロードします】
【弱者よ、死んでしまうとは情けない】
【開幕死www雑魚wwwぷーくすくすwww】
あ”?
ガバリと跳ね起きる。ロードが発動した? 何故?
「ふぉふぃふぁふぉふぁんふぁふぁふゃ?」
もごもごとミケが尋ねてくる。こら、話す際は口に物を入れない。というかお前なに勝手に人のをだな。なんか起きたら違和感あると思ったらこんなことしてたのか。
周りを見渡すと住み慣れたミケの家の中だ。ロードが発動して朝方まで巻き戻ったようだ。今日は街へと出発する日。バスク隊長のバギーに乗せてもらって街に到着した、と思った瞬間からの記憶がないから、そこで恐らく死んだのだろう。
ミケといちゃつきながら心を落ち着かせる。復活する際になぜかめちゃめちゃムカつく煽りを喰らってささくれ立った心が癒されていく。やはりケモミミ。ケモミミは良い。
これがケモナーという境地だろうか。確かにこれは良いものだ。その内ガンにも効きそうだな。
「おし、じゃあ行くぞ先生」
「ああ、そんな……救いは、救いはないのですか……?」
「長老ばいばーい!」
最後まで行かないでくれと叫ぶ長老を尻目に、バスク隊長率いる一団は荒野を出発した。俺にとっては二度目の出発だ。
来る際は積んでいた犯罪者たちはウィリアム・テルごっこの的になったので、その代わりに俺とミケがバスク隊長の車にのり、犯罪者を運搬していた貨物運送用の車両には集落からの税金(狩りの成果)が詰め込まれている。と言っても荒野にいる筋肉ムキムキのハイエナみたいな生物の皮やネズミモグラの干し肉とかしかないのだが。他の生き物はワームドラゴンに食われるからな、あそこ。
筋肉ムキムキのハイエナはめちゃめちゃ肉が筋張っていてワームドラゴンすら食わないのだが、皮は結構頑丈で使い出があるらしい。俺やミケが今着ている服もこいつの皮で作ってある。街だとそこそこの値段で取引されるから税金変わりに徴収しているそうだ。
値段。心躍る単語だ。ここ1月は衣食住のために働いていたが、ここから先は文明圏。貨幣が存在するという事だ。前回これを耳にしたときはちょっとテンション上がって変な声を上げてしまったが、二度目の今回は自重して小さくガッツポするくらいで留める。隣に座るミケからは変な目で見られた。
「街までは大体半日って所だ。退屈だろうが我慢してくれ」
「トリケラだと3日だにゃ。スゲーはえーにゃ」
「だろ? 俺も若いころはトリケラで満足してたが、今じゃ
バスク隊長はそう言って、ポンポンとウマ……と呼ばれている車を叩いた。俺の常識だとこの手の車はバギーカーと呼ぶんだが、この世界では違うらしい。もしかしたら愛称とかなんだろうか?
街は最初に堕ちた時、ワームドラゴンに食われた丘で見た山脈のふもとにあるらしい。山脈の反対側には別の貴族が支配する街があるらしく、バスク隊長が仕えているフォーリング卿は山脈のこちら側の全域を収めているのだとか。
荒野は墜ち人の丘と集落しか知らなかったが、一番端には海に繋がっているらしい。そこらへんにも獣人の集落があるそうだが、距離があるためか騎士団でも専用の部隊がぐるっと数か月かけて領地の外側を巡回しているそうだ。
そういった街や領地の事をバスク隊長に聞いたり、長時間の運転で運転手が疲れたため途中で休憩を兼ねた昼食を食べたりと比較的有意義に車旅を楽しんでいると徐々に荒野が途切れて緑が多くなってくる。遠くの方には川も見える。あれは海まで繋がっているそうだ。
「お、見えたぞ。あれがフォーリング卿の納める街、ソクオチだ」
バスク隊長が指さす先には、正直それで良いのかという名前が付けられた大きな壁で覆われた街の姿があった。周辺には広大な田畑が広がっている。耕作も行っているのか。いや、話に聞くかぎり結構な人口の街らしいしこれくらいは当たり前だろう。
田畑で働く人々に目を向けると、ヒューマン種ばかりだ。荒野の過酷な環境だと獣人しか生きていけないと言われたため疑問に思わなかったが、緑のある部分にはヒューマンしかいないのは少し闇を感じるな。
「いや、違うぞ先生。元々はこの荒野も緑生い茂る肥沃な土地だったんだ」
「獣人が増えすぎて食えるものみんにゃ食べちゃったらしいにゃ。それこそ草もにゃんもかんも。って長老が言ってたにゃ」
割と深刻そうな表情でそう言うバスク隊長に、同じ獣人の事を語っている筈のミケが深々と頷いた。やべぇな獣人。イナゴだってもう少し大人しいぞ。
いや、そうか。獣顔の獣人は多産な上に妊娠から出産までの期間も半年くらいだからな。人の十倍くらいの速度で増えると考えたらそのくらいにもなるか。しかもあいつら粗食でも問題ないくせに食べられるとなればずっと食べてられるくらい大食いだったりするからな。
と、考えがそれてしまった。街が見えたという事は前回の強制ロードが発動したタイミングが近いのだ。ステータス欄を開き、生存性を上げるようにスキルやステータスを調整。生存戦略……? 良く分からんスキルだが名前がそのままズバリだしこれを着けてみるか。
――お?
調整後、ステータス欄から現実に戻ってくると、さっそくスキル:生存戦略が効果を発揮したようだ。バスク隊長に話しかけ、一旦車を止めるようにした方が良いと頭の中で指示が飛んでくる。
「うん? どうした先生。トイレか?」
危機が迫っている事は、どうやら間違いないらしい。どうやら車が危ないらしいのだが、それをバスク隊長に伝えなければいけないと生存戦略が語り掛けてくる。そのためにバスク隊長の言葉に頷きを返し、連れションはどうかと隊長を誘う。
「あ? ま、まぁいいがどうした急に」
訝し気なバスク隊長を連れ出し、ミケにも小さく車から離れるように耳打ちをする。ミケは何も言わずに俺の指示に従い、「お花摘みにゃ」とバスク隊長の車から降りた。
そしてこの判断は正解だったらしい。
車から距離をとった瞬間、街の方角から煙を吐きながら何かが飛来し、バスク隊長の愛車を直撃。爆発音を響かせてバスク隊長の愛車は炎に包まれたのだから。