廃棄世界のルツボ   作:スライムナイトスライム抜き

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到着

「俺のウマがあぁああああぁぁぁ!!!?」

 

 

 悲鳴のような声を上げるバスク隊長の頭を地面に押さえつける。5も力のステータスに振っているのになんとか押さえつけるので精いっぱいの力だ。よっぽど大事にしてたんだろうな、あのバギー。

 

 バスク隊長の悲鳴を耳にしたからか、副隊長格だろう騎士の一人が「散開!」と叫ぶと、追従していた他の騎士たちもパッと弾けるようにその場を離れる。数秒後、彼らが居た場所にまた尾を引きながら火の玉のような何かが撃ち込まれ、炸裂する。

 

 ミサイルかロケット弾かと思ったんだが、火の玉? 知識にない代物に首をかしげていると、2度目の炸裂音で正気を取り戻したのかバスク隊長が口を開いた。

 

 

「魔法だ、火の玉の魔法……ちくしょう! なんで魔術師が騎士団に攻撃してくるんだよ!! 俺のウマが、5年もローン残ってるのに……!」

 

 

――あ、ローンあるんだ。思ったよりも発展してるなこの世界の経済学。

 

 

「みぎゃああ! にゃんにゃにゃんにゃ!?」

 

 

 バスク隊長と共に火の玉が飛んできた方角を探っていると、四つ足を使ってミケが駆け寄ってくる。心なしか普段の二つ足での走りより早く感じるのは、ミケに流れる獣人の血のおかげだろうか。

 

 ミケの声に応える前に、視界の先から再び火の玉がこちらに向かって飛んでくる。が、大分見当違いな方角へ撃ち込まれているようで近くの田畑に火の玉が落ちていくのが見えた。

 

 

「……最悪中の幸運だ。向こうは俺らを見失ってる」

 

 

 俺ら、というよりはバスク隊長を、だろうな。普通、この状況だとウマを失ったバスク隊長ではなく機動力のある他の騎士の方が向こうさんにとって脅威度は高い。それなのにそちらを狙わずにこっちを狙い撃っているという事は、最初からバスク隊長狙いだということだ。急遽同行することになった俺とミケの事を向こうさんが知ってるわけないしな。

 

 

――いやぁ、隊長なんて名前で呼ばれてるだけあってしっかり恨みも買ってるんですね、バスク隊長。ちょっと距離開けてもらえます?

 

 

 ついとげとげしい口調になりそうなのをぐっとこらえて内心で独り言ちる。こっちは一回それで事故死喰らってるんだから言っても良い気はするがね。

 

 そしてそんなこんなしている内にまた一発火の玉が飛んできて明後日の方角に落ち、直後に火の玉が飛んできた方角から甲高い悲鳴の声が響き渡る。時間を考えると、散開した騎士団の誰かが魔術師の元に到着したかな?

 

 静寂。そして、ピタリと止んだ火の玉攻撃に確信を深めながら、念のためにもう少し地面に伏せていると、エンジン音を響かせてバイクーー彼らはこれをニリンと呼んでいる。それならバギーもヨンリンって呼べよ――が数台戻ってきた。

 

 

「敵性魔術師の無力化に成功しました。隊長、お怪我は?」

 

「おう、助かった。俺のウマちゃん以外は無事だよ。先生もな……魔法隊の人間か?」

 

「いいえ。知らない顔でしたね。捕えようとしたのですが……」

 

 

 副隊長さんらしき人は残念そうな顔を浮かべながら親指で自分の首を掻っ切るようなしぐさを見せた。捕まえようとした割に殺意マシマシに感じるのは俺だけだろうか。

 

 ちょっとした疑問に首をかしげていると、散開した騎士団が再び集まってくる。その内一台のバイクにはローブがくくられており、ロープの先には首に縄をかけられたローブ姿の男の死体がある。こいつが騎士団長のウマを大破炎上させた犯人のようだ。騎士団に手を出した犯罪者は晒す決まりがあるらしく、このまま街まで引きずっていくらしい。

 

 移動手段を失ったため、バスク隊長と俺とミケは荷物輸送用の車に乗り換えだ。バスク隊長のバギーカーは……丸焦げだからなぁ。流石に動かせないようだ。

 

 俺たちが車に乗り込んだら、騎士団は街に向かって出発する。今度は何事もなく到着できれば良いんだが。一応警戒だけはしておこう。

 

 

 

 

 特に何事もなく街のふもとまでやってこれた。良かった。どうやら今日を乗り切れそうだ。

 

 

「久しぶりの街だにゃ! にゃーは帰ってきたにゃ!」

 

「ああ、お前さんは街出身だっつってたな。どこ通り?」

 

「娼婦街5番通りにゃ。334番地にゃ。母ちゃんが死ぬまで、にゃーは、にゃーの家はそこだったにゃ」

 

「ああ。爺さんか婆さんがヒューマンだったんだな」

 

 

 目前に見える木製の大きな門に、ミケが嬉しそうに声を上げる。バスク隊長にどういう事なのかを聞いてみると、なんでもヒューマンと獣人が結婚した場合その獣人と子供までは街の中に居住する権利が与えられるらしい。

 

 ミケは爺さんが墜ち人のヒューマンで、婆さんがヒトガオの獣人。その娘のお母さんもヒトガオの獣人で、お母さんが生きている間は街の中で生活する事が出来たがミケが子供の頃に亡くなったため、ミケは獣人の集落で生活する羽目になったそうだ。

 

 

「娼婦街には割とそういう奴多いからな。大体は集落の生活に耐えられずに娼婦になるかハンターになって街に戻ってくるんだが」

 

「にゃーは子供すぎたにゃ。大きくにゃるまで集落から離れられにゃかったにゃ」

 

 

 バスク隊長の言葉にミケがしみじみとした表情でそう応える。世知辛い、世知辛いすぎる。

 

 まぁそうやってちゃんと街に住める人間を選別しないと街の中が獣人でいっぱいになるんだろうな。




体調不良で長時間座れないため暫く休止します
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