ようこそロクでなし魔術講師のいる教室へ   作:嫉妬憤怒強欲

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Hu○uで『俺だけ○ベルアップな件』を試しに見てみたらはまってしまいました。
特に6話のあの戦いが印象に残りました。戦闘BGM『DARK A○○A』が頭から離れません。
他の小説の戦闘描写のところを読んだら頭の中で流れてきます。


友達

「ど、どう言う事だ!?『Project:Revive Life』はシオンの固有魔術だぞ!一体どうやって!?」

「どうせ俺にはシオンみたいな事は出来ないと思ってたか?バカが!」

 

 三人のリィエルを前に驚愕しているグレン先生を見て、愉快そうにライネルが叫ぶ。

 

「今回のリィエル達は完璧だ!『アストラル・コード』から余計な人格や感情は予め徹底的に抜いたから俺の言葉に忠実に従う!記憶の改変やら調整やら七面倒な真似などしなくても俺はリィエルの凄まじい戦闘技能だけを受け継いだ人形を生み出せる!」

「い、や…………」

「もう兄だなんだ演じるのも煩瑣だったからな!余計な感情を持って右往左往されるくらいなら最初から余計な心なんて無くして俺の思い通りに動く人形を作れればそんなガラクタなんていらないんだよ!」

「あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 自分とまったく同じ姿で、文字通り人形のような三体のレプリカを前に、今までのライネルの発言で既に壊れかけていたリィエルの精神は、とうとう臨界点を迎えたようだ。

 

「どうだ、見たか!これが俺の力だ!俺はこの力で組織をのし上がる!このルミアとかいう部品があれば、俺はリィエルを幾らでも作れる!一匹作るのに結構な数の人間の魂が必要になるが、そんなの関係ない!作れば作るほど、俺は強くなる!無限に強くなれる!これを最強と言わずしてなんと言う!?なぁ教えてくれよ?あはっ、はははははははははははははは――ッ!」

 

 はぁ。

 

「―――滑稽だな」

 

 

「ははははは―――は?」

 

 オレの一言に、ライネルの笑いがピタリと止む。

 

「作れば作るほど、俺は強くなるとか、コピー人間での数の暴力に頼って、後ろで指示を出すだけの奴を最強と呼ぶわけないだろ」

 

 こいつもバークスと同じ人種だな。

 他人から搾取した力で自分が無敵の存在になったと誤認し、愉悦に浸るだけ。

 現実と言うものが見えていない。そういう奴は大抵、中身が薄っぺらい分、プライドだけは高いものだ。

 

「自分だけじゃなにもできない。他人の力に依存してるそれは強さじゃない。お前のあり方は、まるで寄生虫だ」

「寄生虫………この俺が寄生虫だとぉ!?」

「教えてくれと聞いてきたから答えたまでだ」

 

 バークスの時と同じパターンだな。

 オレがちょっと挑発したことで、ライネルの顔が怒りで歪む。

 

「随分と舐めた口聞くな……この状況をわかっていないのか!?」

「わかっている――――で、だからどうした?」

「「「え?」」」

 

 ライネルとグレン先生、ルミアから間抜けな声が出た。

 

「素朴な疑問だが、オレ達……いや、オレは今危機的な状況なのか?」

「いったい、何を言ってる?」

「質問を変える――――お前程度の雑魚が作ったガラクタで、オレを止められるとでも思っているのか?」

 

 そう言って、ありったけの殺意を込めながら睨むと、睨まれたライネルは「ひぃっ!?」と怯えながらレプリカ達に指示を出す。

 

「や、やれぇ!!俺の木偶人形ども!先ずはそいつをぶっ殺せぇッ!」

 

 ライネルの命令を受け、三体のリィエル・レプリカが小柄な体格を活かした俊敏な動きでこちらに迫ってくる。

 

 狙い通り、行動を起こせる精神状態にないリィエルから始末するという選択肢を奪った。

 

 

 リィエルは掃除屋(スイーパー)だったイルシアの複製。

 【隠す爪】で錬成した武器で、魔術師が呪文を紡ぐ間に距離を詰めて仕留めるという接近戦がメインだ。

 攻性呪文はほとんど使わないが、代わりに肉食獣並みの敏捷性と圧倒的なパワーを持っている。

 つまり複製であるこいつらも同じということ。

 魔術師は肉体修練で練り上げる技術をとにかく軽んじる。精神修練で培う魔術の下に置きたがる。その裏をかいたつもりなんだろう。

 

 だが生憎だったな―――元々オレも接近戦がメインだ。

 ただし、技ではリィエルに負けない自信がある。

 

 

 最初の一体(レプリカ1と呼称)は上段振り下ろしで斬りかかってくる。

 パワーとスピードで押し込むスタイルで、フェイントも何もなく、どこに攻撃するかが丸分かり。しかも思考能力を奪われているのか、連携をまったく取っていない。

 まともに受ければ命はないが、どんなに強いパワーでも、一直線ならば横合いからの力で軌道をずらせるし、受ける力を利用することが可能だ。

 

 オレは右足を前に踏み出しつつ、腕を上げる。

 曲刀の刃の部分を向かってくる大剣に向け、十字になるようにある程度角度をつける。

 足さばきで剣の線から身体を外しながらレプリカ1からの一撃を刀で強く貰う。

 だが無理に受け止めず、反動を利用して手首を回転させる。刀の切っ先が弧を描き、振り上がるところで自身のパワーも乗せ、眼前に差し出された首筋へと振り下ろす。

 

 レプリカ1が高い反射神経で身体を反らし、その剣筋から逃れた。

 

 だが想定済み。

 

 レプリカ1が避けた時には、さっきの会話の最中に出しておいた護符が既に起動していた。

 

 轟!

 

 左手で握る護符から炎が飛び出し、レプリカ1はその二段構えの攻撃に対処できず、吞み込まれる。

 

「壱」

 

 レプリカ1が黒焦げになって地面に転がる前に、左横から二体目(レプリカ2と呼称)が迫ってきた。

 首を刈り取る勢いの横なぎを身を屈めて躱し、低姿勢のまま下からレプリカ2の心臓へと突き立てる。

 

 ザシュッ

 

「弐」

 

 深々と突き刺さった刀は抜かず、糸の切れた人形のように動かなくなったレプリカ2ごと引き寄せ、背後から襲いかかってきた三体目(レプリカ3と呼称)へと放り投げ、攻撃の盾にする。

 

 制御室に今でも使い魔達を潜ませている。

 殆ど死角なしで、視覚共有しておけば背後にいる敵も察知できる。

 

 レプリカ3が肉の盾を斬っている隙に、レプリカ2が使っていた大剣を掴み、レプリカ3の足へと横薙ぎに振るう。

 低姿勢での一閃を、肉の壁で見えていないというのに軽く飛んで躱して見せた。そこはリィエルと同じか。

 

 オレはすぐに大剣を捨て、勢いのまま横転し、跳び下がることで、脳天に迫る白刃から逃れる。

 

 ドゴオッ!

 

 宙に浮いてから重力に従っての振り下ろしで、レプリカ3の大剣が地面を抉った。

 

 レプリカ3が体勢を整える前に、オレはすぐさま外套で隠れた腰のポーチから四本のナイフを取り出し、レプリカ3へと投擲する。

 

 飛来してきた複数の刺突武器に、レプリカ3は幅広の大剣で防ぐことを余儀なくされる。

 

 全てのナイフが大剣に弾かれたが、想定済み。

 投擲攻撃はフェイク。弾かれた瞬間に、ナイフに符呪していた本命が起動する。

 

「っ!?」

 

 暴徒鎮圧用の重力結界。

 ナイフを中心に円形結界が展開し、その内部を超重力で押さえつける。

 グレン先生の【グラビティ・コントロール】を喰らったリィエルは身動きがとれなかった。

 当然複製にも効く。

 結界内の重力場に上から押し付けられ、レプリカ3の体が地面に這いつくばる。

 

 殺傷力はないが、コイツの動きを封じるには十分だ。

 

「《燃えろ》」

 

 オレは攻性呪文を唱え、身動きの取れないレプリカ3へと火球を放った。

 

「参」

 

 

 

 

「ば、ば、馬鹿なぁああああ――ッ!?」

 

 三体のリィエル・レプリカを全て始末し終えると、部屋中になんとも情けない悲鳴が木霊した。

 ライネルだ。

 自慢のレプリカがあっさりと倒された光景を前に、頭を抱えて青ざめていた。

 

「なぜだ!?なぜ、レプリカ達がそう簡単に倒される!?同じなんだぞ!?そいつらは、リィエルとまったく同じ性能を持つ人形なんだぞ!?それなのに、どうして俺のレプリカ達がお前一人にこうもあっさり!?」

 

 恐慌に陥るライネルを一瞥した後、オレは転がるレプリカ2から刀を抜き、ライネルに向けて語る。

 

「ホワイトルームのカリキュラムに戦闘訓練があった。だが訓練とは名ばかりの殺し合いで、色々な奴と相手した。同じホワイトルーム生、異能者、行き場をない魔導士、そして―廃棄予定の『掃除屋』」

「は?」

 

 あの施設にいたオレ達は完全な実験動物。死のうが廃人なろうがどうでもいい、結果さえ出ればいいだけの存在。例えそれが運営責任者の息子であろうと例外ではない。

 

「複数の掃除屋を同時に相手したことだってあった。だから連中への対策は知っている。掃除屋だったイルシアの戦闘能力を完全にコピーしているだけの人形が束になったところで、オレに勝てるわけがない」

「そ、そんな非常識な事……!」

 

 正直、複製されていたのが二年分成長しているリィエルなら少し苦戦していただろう。

 《剣の姫》あたりなら絶対勝ち目がないが。

 リィエルに拘ったコイツの負けだ。

 

「まあそんなことよりもだ…」

 

 オレは自分の得物を携えたまま、ライネルの方へと歩を進める。

 

「これでお前を守る奴はいなくなったな」

「ひぃっ!?、た……《猛き雷――――」

「《弾けろ》」

 

 呪文を唱えようとしたライネルだが、オレが先に炎熱系の改変呪文を詠唱する。

 

 ばあンッ!

 

 オレに向けていた左手が破裂し、血肉が辺り一面に撒き散らされた。

 

「あ、あああああああああああああああ――――ッッ!?俺の手がぁああああ!!??!!」

 

 ライネルは欠損した部分を押さえながら地面に倒れ、オレを見上げる形になる。

 オレの影が差したところで、オレがすぐ近くに来たことに気付いたライネルはその表情を恐怖に歪めて後ずさる。

 そんなライネルを、オレは一歩一歩追い詰めていく。

 

「ひぃ……ま、待ってくれ!?殺さないでくれッ!?し、死にたくない……ッ!?」

「お、おいキヨト!?」

「キヨト君!そんなの駄目!いくらなんでもそこまでは…………ッ!?」

 

 グレン先生もルミアも、ライネルに何をするつもりか気付いたようで、オレを止めようと叫ぶ。

 

「――三度だ」

「へ?」

「三度も殺そうとした相手に、助けを乞うのか?」

「や、や、やめてくれ!?そ、そうだ!天の智慧研究会について知っていることを全部話す!だから俺を保護してくれ!」

「二年前、保護を拒んだのはどこのどいつだ?」

「そ、それは………!」

「しかも、お前と自分の妹を守ろうと、組織を抜けようとしていたシオンを自分勝手な理由で殺し、その上その妹まで殺したのは誰だ?」

 

 ついに壁際まで追い詰め、逃げ場を失ったライネルの喉元に刀の切っ先を突き付ける。

 

「素直に兄妹と一緒に抜けるべきだったな?」

「ゆ、許してくれ…………俺は、俺はシオンが羨ましかったんだ!」 

 

 涙を流しながらライネルが叫び出す。

 

「あいつはいつも俺の一歩先を行っていた!同じ境遇で小さい頃から同じ場所で育っていた筈なのに……あいつは本当に天才だった!だからあっさり自分の研究を手放せるなんてことが出来るんだよ!あいつは天才だからいくらでもやり直しが効く!けど、俺はあいつのような才能なんてなかった!目の前のチャンスを棒にふるなんて出来なかったんだよ!なのにあいつは俺の気も知らずに組織を抜け出せなんて!あいつに凡人の気持ちなんてわからねえんだよ!」

 

 シオンの言う『家族』にはライネルも含まれていたんだろう。だが、コイツはそう思っていなかった。あいつに見る目がなかったとしか言いようがない。

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

 ライネルの不幸自慢を、オレは無情な言葉で返した。

 

「どう理由を並べたところで、お前がオレの『友達』を殺したことには変わりない。だから―――お前の死を、シオンへの手向けにするよ」

 

 悪いなシオン。お前の頼みは果たせそうにない。

 一切の躊躇いも同情も良心の呵責をなく、オレは刀を振り上げる。

 

「駄目!キヨト君!」

「ここから先を観たくなければ目をつぶっていろルミア」

「う…………うぁ…………た、助けて…………死にたく…………な…………」

「もしあの世っていうのがあるのなら、シオンによろしくな」

「やめてくれええぇぇぇぇ!」

 

 そのまま刀をライネルへと振り下ろす。

 

 バアン!

 

 だが突然銃声が響いた刹那、一発の銃弾が刀身に直撃し、その軌道を強引に変えられた。

 

「………なんのつもりですか?グレン先生」

 

 痛みと恐怖のあまり、失禁しながら気を失ったライネルを置いて、グレン先生へと視線を向ける。

 

「もういいやめろ!これ以上殺す意味なんてねえ!」

「こいつはシオンとイルシアを殺すだけじゃ飽き足らず、三体のレプリカを作るために大勢を犠牲にした。それで十分でしょ?」

「そいつにはもう戦う気力はねえ!捕虜として捕えた方が、組織の情報も聞き出せるかもしれねえだろうが!?」

「それ、先生が決めることじゃないでしょ?」

「――ッ!?」

「そもそも、今のグレン先生はあくまで魔術講師。もう軍に所属していない一般人に、あれこれ口を出す権限なんて最初からありませんよ。それに、こいつの実力を考えても、組織では精々外陣(アウター)。『Project:Revive Life』がもう完成していることを、上の連中から何も聞かされていないようじゃ、役に立つ情報を持っているわけがないでしょ?」

 

 特務分室の仕事が外道魔術師を殺すこと。

 オレは自分にとって利用価値があるなら生かしておく。それ以外はイヴから指示されない限りは、死のうが生かそうがどうでもいい。

 

「って、ちょっと待て。『Project:Revive Life』がもう完成しているってどういうことだ?」

「アルベルトから聞いていないのですか?二年前、オレはシオンと『Project:Revive Life』の共同研究をしていたことは話したでしょ?その時にもう研究は終わっていたんですよ。勿論、ルミアに頼らず、ルーンの機能限界に引っかからない方法で……具体的な方法はもう研究所の見学で聞いたと思いますが」

「っ!?まさか……」

 

 その場で考えたとでも思ったのなら、とんでもない勘違いだ。

 

「当然天の智慧研究会にもこのことは伝わっていますよ」

「いや、でもおかしいだろ?完成しているのに、なんで連中はわざわざルミアを使ってまで儀式をやろうとしてたんだよ?しちめんどくせぇだろ」

「連中の目的は術式の完成じゃなく、ルミアの力の効力の確認だった。と考えられるのが自然では?」

「は?どういう意味だよ」

 

 魔術競技祭の時までずっと引っかかっていたことだが、モノリスに刻まれている術式を見てようやく分かった。

 

「政府も先生も、ルミアの異能が『感応増幅』だと思っているみたいですが、おかしくないですか?『感応増幅』――魔力の増幅程度でルーン語の機能限界を超えることなんて、できるわけがないでしょ?」

「あっ……」

 

 『感応増幅能力』とは、本来、触れた相手の魔力を一時的に増幅させ、結果的に相手が行使する魔術を強化するだけ――それだけの能力である。

 元から理論的に達成が不可能な方法を成功に導けるわけがない。

 なのに成功した。成功してしまった。

 

「前提条件自体が間違っていたんですよ。ルミアの異能は『感応増幅(・・・・)じゃない(・・・・)。不可能なことを可能にしてしまう『何か』があるということです。どこまでの制限があるかはわかりませんが」

「じゃあ、天の智慧研究会がルミアを執拗に狙うのは………」

「おそらく。今回はルミアの能力がどこまでのものかの確認だったんでしょう。そして、十分なデータが取れたことを確認したエレノアは、もうここに用は無いと抜け出した。そう考えればあの女の行動の説明がつきます」

 

 機密保持契約で爪弾きにされたライネルには、ホワイトルームでの経過報告が伝わっているわけがない。シオンという貴重な人的資源を殺してしまった奴なら尚更だ。

 術の完成を知らないことを良いことに、『元王女を使えば成功する。成功の暁には、組織内の位を上げてやる』とでも吹き込まれたんだろう。

 

「ようするに、こいつもバークスも、データを集めるための捨て駒に利用されたということです。捨て駒に重要な情報は伝えずに」

 

 散々リィエルをガラクタ呼ばわりして捨てた自身が、組織にごみの様に捨てられるとは実に滑稽だ。

 すべてオレの憶測ではある。確認しようにも、捨て駒から聞き出せる情報なんてたかが知れている。もしこの程度の連中が重要な情報を持っていたら、帝国と組織の抗争なんてとっくの昔に終わっていただろう。

 

「……そういうわけなので、コイツを生かす理由なんてありませんよ」

「だからやめろって!」

 

 刀を構えるオレに向けて銃口を向ける先生。

 

「撃ちますか?オレを?」

「馬鹿野郎。生徒に人を殺させる教師がいるか」

 

 生徒に銃を向けておいてよく言う。

 

「殺すな。こいつが憎いのは分かる。だがシオンの為でも、お前がその手をこれ以上血で染める必要はねえ!」

「さっき言ったはずですよ。一般人があれこれ口を出す権限はないと」

「だが俺はお前の教師だ!つーか、どう考えても今やろうとしていることはただの私怨だろうが!」

「じゃあ、一年前に先生が《正義》を殺したのは私怨じゃなかったとでも?」

「っ!」

 

 図星だったか。先生が軍を抜けるきっかけになった事件。仇を取っても大事な人は戻らず、魔術に絶望して現実から逃げた。

 

「……まあ、でも先生の言う事には一理あります。教師として見過ごせないことを」

「じゃ、じゃあ「ですが、生徒を銃で脅して言うことを聞かせるのが、教師のやることですか?」っ!」

「口だけじゃなく態度で示して欲しいものです。それっぽい御託もなしで」

「………」

 

 すると、グレン先生は銃を下ろして頭を下げる。

 

「……経緯はどうあれ、お前はオレの生徒だ。生徒が人を殺すところを見たくねえ。それにお前がそれをしちまえば、コイツらだって悲しむ。だからやめてくれ」

「私からもお願いキヨト君」

 

 湖の時同様、いつになく真摯な表情でオレに懇願するグレン先生にルミアも便乗する。

 

「………はぁ」

 

 このまま続けても議論で時間を無駄にするばかりだ。

 どっちにしろライネルという外道魔術師の『死』は決まっている。オレが直接手を出そうが出すまいが、それは変わらない。

 

「わかった」

 

 オレが刀を下ろしたのを見て、安堵するグレン先生やルミアはほっと一息。

 

 ライネルの拘束はグレン先生に任せ、オレはルミアの拘束を解いて、自分の上着をルミアに羽織らせる。

 

「ルミア。悪いがリィエルを頼む」

「………キヨト君」

「今のリィエルなら、お前の声が届くだろう」

 

 ここはルミアが適任である。

 

「うん…………」

 

 オレの言葉に頷き、ルミアは膝をついて俯いているリィエルに歩み寄る。

 

 

 ルミアとなにか話をした後、リィエルが部屋の出入り口へと駆け出すが、オレが逃走防止のために張っておいた魔力障壁に激突。

 痛みで顔を押さえているリィエルに、ルミアが覆い被さって抱きつき、これからもリィエルと一緒に居たいという思いを伝える。

 

 そんなルミアの優しさに、リィエルは大粒の涙を流して泣き始めた。

 

 

 なにも『人形』は涙を流さない。

 経緯はどうあれ、リィエルは既に『人形』から『人間』へと成長した証拠だ。

 

 だがオレは生まれた頃から、一度しか泣いたことがない。

 

 

「おい。どこに行くんだ?」

 

 部屋から出ようとしていたオレを、二人を温かい目で見守っていたグレン先生が呼び止める。

 

「アルベルトと合流するんですよ。あっちの様子も気になるので」

 

 魔術競技祭でのことを考えると今回もエレノアに逃げられているだろう。あいつ変なところで抜けているところがあるし。

 

「それに、今回の騒動の犯人を捕らえないといけませんし」

「?なに言ってんだ?ライネルはもう捕まえただろ」

「あいつもバークスも小物。真の主犯は別にいることにします。それもかなりの大物を」

「主犯?エレノアのことを言ってんのか?アルベルトの言う通り組織の情報を持ってそうだし………」

「エレノア=シャーロットのことではありません」

「?言ってる意味が全然わかんねえ。じゃあ誰のことを言ってんだ?」

 

 

「―――帝国過激派『聖キャロル修道会』」

 

 

 アルベルトと合流してから例の作戦を開始だ。

 




いかがでしたでしょうか?
原作四巻で明かされた禿爺と青髪モヤシの所業にムカついてしまい、自分の私情も混じってしまいこういう展開になりました。
禿は生きたままヒルに食われて死亡。
モヤシは左手欠損。恐怖で失神し、そのまま連行されるが………
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