放課後のホームルームで問題なく(?)出場種目が決まり、下校しようとしていた時、グレン先生から話があるとかで呼び止められたんだが………。
「金を貸してくれ、ですか?」
「た~の~む~よ~、俺とお前の仲だろ~?」
どんな仲だ。
生徒に金を無心する講師なんて聞いたことないぞ。
「……自分の教え子にたかって恥ずかしくないんですか?」
「フッ、いいことを教えてやるよキヨポン。…プライドや世間体で、飯は……食えない……!」
「必死すぎるでしょ……だいたい、なんで金が無いんですか?正式に講師になったんなら収入があるはずでしょ?」
オレからの問いに、グレン先生は憂いを湛えた表情で教室の窓際に歩み寄り、外の風景に目を向けた。
「フ…未来への投資をした結果さ…」
「?未来に投資?」
「一攫千金の夢を掴むための」
「要するにギャンブルでスッたんですか。だからボーナス狙いと」
自業自得だな。
「正確には特別賞与だけど……ってかなんでわかった?」
「先生の日頃の行いを見ればわかりますよ」
優勝したクラスの担任には特別賞与をプレゼントか。
魔術師としての位階の高さこそが講師の格、と考えている教員は研究費に当てるんだろうな。自分のクラスが勝つ確率を上げるため、成績上位者を使い回す、なんてセオリーが生まれてしまったのは、案外そういった講師の『欲』も関係しているかもしれない。
グレン先生の場合、単に生活費に使うつもりだが。
「大体、俺が悪いんじゃないぞ!?あそこでハートの3が来るのが悪いんだッ!4以上のカードだったら、俺はぁーッ!?」
「知りませんよ」
こんなのがオレの前任者とはな。
あまりの自堕落ぶりに、かける言葉が見つからない。
「―というわけで、助けて下さい。足とか舐めますんで」
「しなくていいです。気持ち悪い」
目の前で生徒に対して土下座するというありえない状況が起こっていた。プライドを一切感じさせない行為に呆れる他ない。
正直金をやりたくない。以前一緒に昼食をとった際のこの男の暴食ぶりから考えても、かなりの食費になる。それに甘やかしたらハイエナみたいにまたせびってくるタイプだが………。
「……条件を吞んでくれたら、一回だけいいですよ」
「おお……!恩に着るぜキヨポン!いやあ、俺は最高の生徒を持ったぜ!で、なんだ条件って?」
「来週の魔術競技祭の間だけでいいので、ルミアの護衛と周辺の警戒を手伝って欲しいんです」
「は?手伝い?」
協力の要請……もとい隠れ蓑だが。
「競技祭当日は外部の人間が大勢、観客として来ます。その中に天の智慧研究会の手先が紛れ込む可能性があるので」
「天の智慧…っておい、またあいつらが襲撃しに来るかもしれねえってのか!?」
グレン先生の間の抜けた表情も、あの組織の名前を出した途端に真剣なものに変わる。
「あくまでも可能性ですが……しばらく音沙汰ないとはいえ、問題が何一つ解決していない以上油断は禁物かと」
そもそもなんで連中がルミアを攫おうとしたのか、動機がわかっていない。
生け捕りにしたヒューイに確認したが、『ルミアを指定場所に転送してから自爆しろ』という指示のみで、理由までは知らされていなかった。その指定場所に突入したものの、既にもぬけの殻で収穫なしときた。
この前は誘拐を阻止できたが、一度阻止だけだ。
競技祭に女王とその護衛が来るが、それもお構いなしに仕掛けてくるかもしれない。あるいは……
このいたちごっこを終わらせたいなら、原因のもとを絶つ他ない。
「……ったくよぉ…それ聞いちまったら、断ろうにも断れねえじゃねーか」
すると、グレン先生が面倒臭そうに、頭をかいてため息を吐いた。
「わかった。そもそもあいつは俺の生徒だからな。担任の俺が守らなくて誰が守るんだって話だ」
「一応オレがいますが」
「あ、そっか。お前全然護衛っぽく見えねえから時々忘れちまうわ」
「見えたら見えたでまずいと思いますが……一応秘密なんで」
だが秘密なんていつかバレるものだ。特に知る人間が多ければ多いほど隠蔽は困難を極める。母親である女王はともかく、軍や魔導省の上層部、腹に一物抱えた連中が関わっているならなおの事。
情報の秘匿性なんて意味を成さない。帝国政府と敵対している筈の天の智慧研究会にルミアの素性を知られてたのがその証拠だ。
オレからすれば、上の連中がやっていることは、寝小便した子供が汚したシーツを親から隠すのと一緒だ。
ま、だとしてもオレにはあいつとの制約上、命令を拒否することは無い。
やれることをやるだけだ。
♢♢
翌日、学院は競技祭に向けての練習期間に入った。
今日から競技祭前日までの期間、全ての授業が午後の三限目で切り上げられ、放課後に担当講師の監督の下、学院敷地内での魔術の練習が許可される。
出場しない生徒はそのまま下校したり、自習をしたりと自由だが、全員出場になっているオレ達二組には関係のないことだ。
とはいえ……。
「暇だ」
オレは暇を持て余していた。理由は単純、練習しようにも、練習相手がいないからである。
オレが出場する『乱闘戦』は各クラスから選出された選手達が魔術で争う競技だ。練習するとなれば複数と相手するしかない。
競技に出ない生徒と練習すればいいのだが、二組は全員参加の為練習相手がいないのだ。
自分の競技の練習に集中したいだろうから、時間を割いてまで付き合ってもらう必要はない。
別にお願いできる程クラスの全員と仲が良いからではない、とかの理由ではない。
とにかく、やることが無いならどこかで時間を潰すしかない。
向かった先は学院敷地内にある附属図書館だった。
名門校なだけに、館内に相当な規模の蔵書が保存格納されているだけにスペースが広い。
興味深い書物が多いため、オレは平日暇な時間大体ここを利用している。
「……せっかくだから何か借りていくか」
二組の練習場所から長時間離れていると、後でサボっているとされてクラスで浮いてしまうことになる。
なにか面白そうなのがないかいくつものコーナーを巡っていき、神話コーナーを通ると、見覚えのある小柄な女子生徒を見かけた。
懸命に手を伸ばし、自分の背より高い本棚にある本を取ろうとしている。本の位置が絶妙で、届きそうで届かないようだ。あと僅かで届きそうだからこそステップ台を使うことに抵抗している。男でも女でも起こる、あるあるだな。
掴もうとしている本は聖画集か?
オレは横入りし、女子生徒が手を伸ばしている本を手に取った。
「あっ」
「余計なことかもしれないが」
「キヨト君。あ、ありがとう」
本を手渡した相手は同じクラスメイトのリンだった。
「えっと…どうしてキヨト君がここに?その、皆中庭で練習してるはずだけど…」
「練習しようにも練習相手がいなくてな」
「あ、そっか。私たちのクラスだけ皆出場だから……」
「皆自分の競技の練習に集中したいだろうから、時間を割いてまで付き合ってもらうのは流石に悪い。そう言うリンは?」
「その、あ、あのね、私、『変身』の競技を任せられてて………」
「ああ、そうだったな」
変身の魔術には二種類ある。
肉体の構造そのものを作り変えて変身する白魔術【セルフ・ポリモルフ】。
光を操作することで変身したように見せかける幻影系の黒魔術【セルフ・イリュージョン】。
前者の【セルフ・ポリモルフ】は術式で決まる。狼に変身するなら狼に変身する術式、竜に変身するなら竜に変身する術式と言った感じで、呪文と変身対象が一対一対応だ。
そして、失敗すると元に戻れなくなってしまう危険性はあるが、変身したものの能力を得ることが可能になる。馬に変身すれば馬の速度で走れるし、鳥に変身すれば飛ぶことができるし、竜に変身すれば火が吹ける。
だが後者の【セルフ・イリュージョン】は光を操作して、そう見せかけているだけなため、馬に変身しようが鳥に変身しようが、速く走れるようにはならないし、空も飛べない。
それでも術者のイメージを反映する術式が組み込まれていて、イメージ次第で何にでも変身できるという利点がある。
ちなみに、学院襲撃事件でオレが使ったのは、この光操作を応用した黒魔【イリュージョン・イメージ】だ。
リンの出る競技が、変身の変わり様の出来に応じて点数を競い合うだけなら、【セルフ・イリュージョン】を使うのが良い。
「それで図書館にある本を見てて……」
「どんなのに変身するかは決めてるのか?」
「え、ええと、天使様に変身しようかなって……『時の天使』ラ=ティリカ様とか?」
「?なんだそれは?」
「えっと…エリサレス聖書に出てくる大天使様で…こんな感じ」
リンは聖画集のページをパラパラとめくり、該当する画を見せてくれる。
華奢な身体に無数の金色の鎖を巻き付けた銀髪の女性の背に、時計の文字盤を模した光輪と左右三対の純白の翼がある。
見るからに天使の彼女の細腕には巨大な黄金の鍵が携えられ、自身の鎖と繋がっている。
隣のページにも似たような金髪の女性の天使が描かれているが、こっちには銀色の鍵が携えられていた。
「こっちの天使はなんだ?」
「えっと…『空の天使』レ=ファリア様。ラ=ティリカ様とは姉妹……二人共真名持ち(ネームド)の大天使で、天上三階位の中で第一位、熾天使の位階にあるの」
世界中の人間の祈りや信仰から生まれた概念存在の中でもトップクラスか。
この姉妹天使が持つ金と銀の二つの鍵………確か宗教上では権威の象徴の意味合いを持つんだったか。他にも、異なる世界を繋ぐ扉を管理する力、神が誰かに重大な責任や支配権を与えることを示すシンボルなんかあった気がするが………それはどうでもいいか。
「いいチョイスだな」
「そ、そうかな…?」
「ああ。ドラゴンみたいな実在しているモノと、存在自体が定かじゃないモノとじゃ見る人間の印象は大きく違う、とオレは思うが」
「え?どういうこと?」
「いや、気にしなくていい。リンが良いと思ったのを選んだらいい」
クラスメイトとはいえ、あんまり口出しはしない方がいいな。
「じゃあ、オレはこれで。練習、頑張れよ」
「あ、うん…キヨト君も」
イメージを固めるのに集中するにしても、オレがいたら邪魔になる。
リンから離れ、次のコーナーに移動した。
「あっ、ここにいた」
「ん?」
「サボりは感心しないよキヨト君」
振り向くと、僅かに頬を膨らませたルミアがいた。 どうやら練習場所にいないオレを見かねて探していたらしい。
「いや、これはサボってるんじゃなくて…参考書を探しにな」
「嘘だよね。ここ小説コーナーだよ。キヨト君が出るのとは関係のないでしょ?」
噓がすぐばれた。
「ほら、戻ろ」
「わかったから、手を掴む必要ないぞ」
本を借りる余裕もなく、ルミアに腕を掴まれ引っ張られていく。
図書館から中庭に出ると、空を飛んでいたり、念道系の遠隔操作魔術でキャッチボールをしていたり、攻性呪文を唱えて植樹に向かって撃つ練習をしていたりと、二組のクラスメイトが競技祭に向けて魔術の練習に励んでいた。
中庭の向こう側では、システィーナがベンチに腰かけて呪文書を広げ、難しい顔で羊皮紙に何かを書き連ねており、その周りを何人かの生徒達が、あれこれ相談しながら取り囲んでいる。競技用の魔術式の調整をしているみたいだな。
皆楽しそうだな。
昨日までは気後れして尻込みしていたようだが、なんだかんだで少しでもいいから競技祭に参加したかったのだろう。クラスメイト達は生き生きとしながら、自分が出場する魔術競技の練習をしていた。
「ほら、クラスの皆だって頑張ってるんだから、ちゃんと練習しようよ?」
「練習って言われてもなぁ……」
リンに告げたのと同じ理由を伝える、ルミアは名案を閃いたとばかりに手を打った。
「じゃあ私が練習相手になろうか?」
なんでだ。
『乱闘戦』はバトルロワイヤルで、一対一でやっても余り効果があるとは言えない。
「申し出はありがたいが――――」
やんわりと断ろうとした時、中庭の一角で激しい怒声が上がった。
「どうしたんだろ?」
「行ってみるか」
ルミアと一緒に声のした方へと向かっていくと、カッシュが他クラスの男子生徒と揉めていた。襟章からして、一組の生徒のようだ。
「さっきから勝手なことばかり…いい加減にしろよ、お前ら!」
「うるさい!お前ら二組の連中、大勢でごちゃごちゃ群れて目障りなんだよ!これから俺達が練習するんだから、どっか行けよ!」
成程、場所の取り合いか。二組の出場人数が人数なだけに、かなりの練習スペースを取っていたからな。
「はいはいストップストップ。何してんだお前ら」
互いに相手へ掴みかからんばかりの一触即発の中、同じく騒ぎを聞きつけたグレン先生が二人の仲裁に入った。
「えーと?そっちのお前、一組の生徒だな。お前らも今から練習か?」
「あ、はい。そうです。ハーレイ先生の指示で場所を……」
「あーまぁ、確かに俺ら、場所取り過ぎか……悪かったな。全体的にもちっと端に寄らせるからさ、それで手打ちにしてくんね?」
「場所を開けてくれるなら、それで……」
なんとなく丸く収まりそうな雰囲気に、様子を見守っていた他の生徒達が安堵するが………
「何をしている、クライス!さっさと場所を取っておけと言ったろう!まだ空かないのか!?」
怒鳴り声と共に二十代半ばの男がやってくる。学院の講師職の証である梟の紋章が入ったローブを羽織り、眼鏡をかけた神経質そうな男だ。
確か一組の担任だったな。名前は――――
「あ、ユーレイ先輩、ちーっす」
「ハーレイだ! ハーレイ! ユーレイでもハーレムでもないッ! ハーレイ=アストレイだッ!グレン=レーダス、貴様、何度、人の名前を間違えれば気が済むのだ!?てか、貴様、私の名前を覚える気、全ッ然! ないだろッ!?」
二人の間で、このやりとりはもうすっかりお馴染みだな。
どうもグレン先生が非常勤講師として赴任していた時期から目の敵にしてるようで、あの覚醒の噂が立ってからは更に拍車がかかったように敵視するようになった。まあ、自分の生徒の何人かもグレン先生の授業に行ったことからの嫉妬なんだろうが。
「……で? ええと、ハー……なんとか先輩のクラスも今から競技祭の練習っすか?」
「……貴様、そこまで覚えたくないか、私の名前」
ぴきぴきと拳を振るわせるが、ハーレイ先生はつき合ってられんとばかりに話を続ける。
「ふん、まあいい。競技祭の練習と言ったな? 当然だ。今年の優勝も私のクラスがいただく。私が指導する以上、優勝以外は許さん! 今年は女王陛下が直々に御尊来になり、優勝クラスに勲章を賜るのだ。その栄誉を授かるに相応しいのは私だ!」
ついでに特別賞与も、だろうに。
「あっはっはーうわー、凄い熱血すねー、頑張ってください、先輩」
グレン先生、滅茶苦茶棒読みだな。煽らないと気が済まないのか。
「ちっ……まあいい。とにかくさっさと場所を空けろ」
「あぁ、はいはい。今すぐに……とりあえず、あの木の辺りまで空ければ十分ですかね?」
「何を言ってる? 貴様ら二組のクラスは全員疾く中庭から出て行けと言ってるのだ」
とんでもない発言が出てきたな。
一方的な要求に、その場の二組の生徒達が戸惑っている。
「先輩…いくらなんでもそりゃ通らんでしょ……横暴ってやつですよ」
「聞けばグレン=レーダス。貴様は今回の競技祭、クラス全員を競技に参加させるつもりらしいな?」
「え?そうっすけど…」
「私とて貴様が本当に勝つ気でいるというなら、場所を公平に分けるのも吝かではなかっただろう。だが、貴様はそのような成績下位の……しかもあろうことか、学院に編入して日の浅い素人までも使ってる始末だからな!」
その素人はきっとオレのことだろうな。
「足手まといを使って闘う前から勝負を捨てるようなクラスが、群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ!とっとと失せろ!」
講師の癖に随分な問題発言だ。
ギイブルの昨日の言い分といい、欲に目がくらんで固定観念から脱却できないでいるな。
ま、グレン先生が来るまでまともに基礎を教えれなかった連中に、使えない奴を使えるように育てること自体無理な話か。
そうハーレイ先生を評した時、グレン先生がいきなりハーレイ先生の鼻先へ、びしりと指を突きつける。
「お言葉ですがね、うちのクラスはこれが最強の布陣なんすよ。無論、俺たち優勝を狙っていますよ?全員でね。主力とか足手まといなんて関係ない。一人は皆のために、皆は一人のために、だ。その一体感が最強の戦術なんすよ。まぁ、せいぜい油断してウチに寝首を掻かれないことっすね」
口の端を上げ、不敵に笑うグレン先生に気圧されたのか、ハーレイ先生が脂汗を浮かべながら反論する。
「くっ……そんな非合理的な精神論が通用するとでも……ッ!?」
「給料三ヶ月分だ」
は?
「な、何ィ……ッ!?」
「俺のクラスが優勝する、に俺の給料三ヶ月分だ」
なに言い出すんだコイツ。ただでさえ金欠のくせに。
「しょ、正気か、貴様……ッ!?」
「さて、どうしますかね?先輩。この賭け乗りますか?いやぁ、三ヶ月分は大きいですよねぇ?もし負けたら先輩の魔術研究が、しばらく滞っちゃいますよね……?」
グレン先生が負けた場合はその程度じゃすまないだろうに。
ムカついたからって、後先考えずに強がってどうする。おそらくギャンブルでもこんな感じだったんだろう。
「くっ……いいだろう!私も、私のクラスが優勝するに、給料三ヶ月分だ!」
自分のクラスの生徒たちの手前だったからか、ハーレイ先生は賭けに乗った。
「や、さ〜っすが先輩。そうこなくっちゃ面白くないですよね〜。いやぁ……先輩くらいの教師なら給料も俺と違って相当なんでしょうねぇ……ごっつぁんです」
「き、貴様……」
「そこまでです」
売り言葉に買い言葉が激化する前に、駆けつけてきたシスティーナがハーレイ先生の言葉を封じた。
「ハーレイ先生!貴方の主張になんの正当性も見受けられません!これ以上見苦しい真似を続けるのなら、学院上層部で問題にしますがよろしいですか?」
「ぐぅ……っ!? この、親の七光りがぁ……っ!」
システィーナの家の権威はこの教師すらも黙らせる程か。グレン先生には効いてなかったからよくはわからなかったが、やはり相当の地位にいるようだ。
「それに今ここでそんな低俗な争いをせずとも、グレン先生は逃げも隠れもしません」
「え?」
「私達は魔術競技祭で正々堂々戦い、優勝します!ですよね、先生?」
「お、おう!」
どこか嬉しそうな、期待に満ちた表情を浮かべるシスティーナに、グレン先生は声を震わせながらも肯定するしかなかった。
「いいだろう!この私に楯突いたこと、後悔させてやる!」
そんな捨て台詞を置いてハーレイ先生は自分のクラスの生徒たちを連れて中庭から去っていった。
「……なぁ、キヨポン「無理です」まだ何も言ってねえけど!」
「流石に三ヶ月も食費は無理です」
小声でオレに話しかけてきたグレン先生の頼みを一蹴する。
一時のテンションに身を任せるから身を滅ぼすんだ。
「後生だ!今にも腹が減って死にそうなんだよ!」
今にも?
「昨日やった金は?」
「それは…その……一食分だけじゃ足りねえから増やそうとして……」
「まさかそれもギャンブルでスッたのか?」
「………うん」
馬鹿だろこいつ。完全にギャンブル中毒者の発想だ。
「くっ………今すぐにでも謝罪しに行って賭けはなかったことに――」
「先生がここまで信じてくれたんだもの。絶対に負けないんだから」
「「「お――!」」」
「頑張りましょう、先生♪」
「お、おう…」
逃げ場を失ったグレン先生は力なく、士気の高い二組の生徒たちに答えたのだった。
「やっぱり、何か噛み合ってない気が…キヨト君、なにか知ってる?」
「いや……」
オレにできることと言えば、オレ達の担任が如何にアホな講師なのか、しばらく胸の内に仕舞いこんでおくくらいだ。
ネットで調べてみたところ、鍵は宗教的な意味合いがあるみたいです。
この前ヴァチカンで行われたコンクラーベで、二本の鍵が紋章に描かれていたのには驚きました。
何某王国心ゲームに出てくる○ーブレードもそこから参考にしたんでしょうかね。