俺は、赤ん坊の頃キャロルの母に拾われた転生者だ。記憶を保持したまま赤ん坊スタートなのは正直いかがなものかと思うが。
小さい頃から聡い子として、扱われるようになって調子に乗っていた。肉体に引っ張られたのかは知らないが、年相応に思春期を迎えてからというもの、何気なしに気まずさを覚え、キャロルが俺を兄と呼べる歳になって俺は家を出た。その頃には俺も15歳、働ける歳だったので街からは出ずに忙しい毎日を送っていた。
そんなある日、噂を耳にした。魔女狩りだとか異端審問がどうだとかだ。きな臭いこの街に居続けたくはなかったし、離れようとも考えてはいた。けれど、俺の良心がそれを許さなかった。
知らなくて見捨てたのと、知っていて見捨てるのでは罪の重みも違う。キャロルのこともある、別に家族としての情はない。けれど客観的に見て父親が焼き殺されるところを目撃するなど常軌を期している。
そんなこともあり、俺は再び彼らに会いに行った。
父親とは既に何度か話をしたが、そうなったらそうなったで受け入れるの一点張りだった。曰く、自分が逃げれば当然一緒にいるキャロルまでもが危険にさらされるからだそうだ。対象は異端の研究をしている自分だけだと分かっているからこその発言。説得は無理だと分かりキャロルの方にも接触を試みた。
兄だと認識はしてくれたし、例の件についても聞いた。父親とも何度も話はしているんだそうだ。でも自分ではどうにもできないことを知っていて、どうにもならないんだと。
「兄さんはどうする気なんですか、私にこんなことを聞いてきたということは何かするつもりなんでしょ?」
「お前の話を聞いてより一層そうするしか方法はなさそうだと確信したよ、要は父さんを火炙りにさせず、誰かが変わりに異端審問に掛けられれば良い」
「まさか兄さん」
「そのまさかだよ、まぁ時間稼ぎくらいにはなるだろうよ。俺も死にたくはないがこの際拾ってくれた恩くらいは返しておこうかと思ってな。勝手に出ていったのはオレの方だったからお前にも嫌な思いをさせたかもしれない」
死にたくはない、これは本音だ。だがこの世界の遺物たる俺がこのまま過ごすよりも彼女にとっての父を生かしておくほうが未来にとっては最善だと言える。何れ世界を憎むキャロル・マールス・ディーンハイムを生み出さないためにも。
「違う、違うんだよ兄さん!私たちは別にそんな!」
「わかっている、お前のことも父さんたちのことも。でもだからこそだ。俺が生きてきた意味を考えてもこれが最も最善で俺の望む未来のために必要なことだ。たからどんなことがあろうとも暗い顔をするなよ」
狼狽える彼女を背にその場を去った。