死後、何もない部屋にいた。死ぬ前までの記憶も残っている。全身を包む炎、キャロルの絶望しきった顔。父親の覚悟のこもった目。あの一瞬で何もかも悟った。あぁ結末は変わらないんだと。
「どうしたものかな」
すると突如ファンファーレのような音が鳴り響いた、頭上を見上げると文字が浮かび上がっていた。
「えーっと何々‥結末を見届けたことでスキルを与えて転生させましょう、以下の選択肢から選んで触れてくださいか。なんだこれ」
うさん臭い文字の羅列に頭を抱えたが、シンフォギアの世界ではこういうことも起こり得るのだろうか?
選択肢
1,フォニックゲインを扱うことができ、尚且つシンフォギアを纏うことも可能
2,無条件に他人のフォニックゲインを高める力
3,触れた人の体の状態を一日前に戻す力(記憶も含む)
この中なら3が一番無難だとは思うが、どうだろうな。1なら当然本編のように戦い続けなければいけないことになるだろうけど、俺が闘いに身を投じることで根本的に物語を変えかねない。
2ならまだ後方支援できるからありと言えばありだが、やはり3しかないだろうな。キャロルが今どんな状態なのかは知らないが、兄として生きた俺からすれば気がかりだ。
とはいえ、転生すること自体が何かしらの策略なら俺が転生しないことが一番いいのかもしれない。選ばない事で敢えて何も起こさせない。せめてもの抵抗くらいはできるだろう。
「ん?」
しばらく待っても何も起きずぼーっと文字を眺めていると右端に小さく何かが書いてあることに気づく。
「小さくてよく見えないが、目を細めたら読めるな。一定時間経過後、選択肢を選ばず転生しなかった場合何れかのスキルをランダムで与え強制的に転生させます…だと?」
するとおもむろに文字が光りだして警告音が鳴り響いた。転生まで残り1秒とか書かれている。
「ちょ‥まっ」
能力を選ぼうにも間に合わず、俺の意識はそこで途切れた。
☆
転生したらしい。というのも都合よく5歳になれば思い出すように強制的にしくまれていたのだろう。
結局俺にどのスキルを与えられたかはわからないまま、転生してしまったわけだがどうやら俺の家庭環境は最悪らしい。母親も父親も大概家におらず家政婦の人が来るくらいだ。家政婦の人も俺に同情するような顔で可哀想にと言っていたしな。
まぁ、それ自体はどうでもいい。問題なのは今がいつで原作のどの時点なのかということだ。幸いにもパソコンは置いてあるようだし調べれば何かしら出てくるだろう。
そう思い調べてはみたが、何も出てこない。検索ワードにもノイズなどの単語を入力してもヒットしない。こうなってはいつそういう事が起きるのかという、予測もできない。
「困ったな‥」
ぽそりと呟くと家政婦が反応して近づいてきた。
「どうしました?昨日までパソコンなんて触りもしてなかったのに‥それに何か雰囲気が…」
「別に何も変わってはいないでしょ?俺は元々こういう性格ですから。それに年頃的にもパソコンくらい触りますよ」
張り付いたような笑顔を向ける。
「本当はもう少ししてからと思っていたのですが。ここまで流暢に話をすると言うことはやはり適合者だからなのでしょうね。昨日までのあなたとは比べものにならない様な知性的な行動が見られる」
家政婦は意味深に発言をすると俺に近づいてくる。
「何の話をしているんですか?あなたは」
「今の聡いあなたにならお答えいたしましょう。あなたは覚えていないでしょうけど、2歳の時たったの一音口に出して歌おうとした時がありました。テレビに流れていたよくある様な、当時流行っていた攻撃的な音楽で、ただたった一音、たった一音発しただけで周りに影響を及ぼしたのです」
「あなたは一体…何者なんですか。それに影響って具体的には」
「聞く必要のないことです。ただあなたは私の監視対象であるということだけ今はお伝えいたしましょう。お答えできることも今はそれが全てです」
家政婦はそう言うといつも通りに家事をこなしていた。これ以上の事は現状知ることはできない‥ね、彼女の所属は秘密機関的なところだとは思うが。果たしてといったところだろうな。
「問題山積みだな…困ったと言えばこの声もだが」
完全にキャロルの声音なのだ。声帯に疑問を抱いているのは俺だけなのだろうか?
「外出はしていいのでしょうか?」
「構いませんが、監視はさせていただきますよ」
許可をもらったので海に行きたいとリクエストすると、存外にも許可してくれた。クルマでの送り迎え付きらしい。
「どうして海に‥と聞いてもいいでしょうか?」
「ちょっと、確かめたくて」
砂浜に歩き出し、人がいないことを確認すると意を決して歌ってみる。
「思い出の残骸を焼却するスファルツァンド」
この声で歌えるとはなんとも感慨深いとか思っていると、ふと辺りに気づく。俺の立っていた場所を中心として砂が避けられていることに。
「その歌、二度と歌わないでください」
ふと声を発した家政婦さんを見ると頭に砂が乗っている。これはあれだ、やってしまったやつだな。
「申し訳ない」
平謝りして俺は帰路についた。
「異常なフォニックゲインを感知してきてみれば、ヤツは何者だ?装者でもない、しかも男だと?」