「キャロルの力…思い出を焼却して力に変換するだったか?」
「そうだよ、錬金術で編み出した私独自の秘奥でもあるけれどね」
「使ってみてくれないか?今の俺がいればたとえ力を行使したとしても代償をなかったことにできる。キャロルにとっても悪い話ではないはずだ」
「イヤだよ、どうせ兄さんお得意のとんでもスキルとか言う超常的な力の実験のためでもあるんでしょ?多用は厳禁だってこの前散々話し合った(詰めた)よね?」
恐ろしく綺麗な笑顔にたじろいでしまう。
「そ、それはそうだが…この前も言っただろ。戦力強化は急務だって。装者たちだけで解決できるうちはいい。けど技術的に遅れてる今のあいつらじゃ、いつまで戦っていけるかわからないんだぞ。なぁ?エルフナイン」
訓練をすると言った日から数日後、キャロルからエルフナインを紹介された時には驚きを隠せなかった。キャロルの口からは妹だと聞かされたが、実際は女性体らしい。ホムンクルス体は普通無性だと思うのだが、何か改変でも起きたか?
「僕もそう思います。この前の戦闘データを解析しましたが、彼女たちの力はまだまだ発展途上。成長を見越すにしてもこのままいけば行き詰まるのは必至です」
「わかっている、だからこそ緊急手段として、休眠状態だったガリィたちを起こしただろう?戦力不足は承知の上だ。近頃では結社の動きも活発化してきている。今の装者どもでは、今後戦い抜くことはできんことは目に見えている」
「幸い今は時間がある、だから…やれる事はやっておきたいんだ。装者の成長に関してはエルフナインにも頼んで対策を考えてもらっているところだ。問題はオレ自身」
「…わかったよ、但し短時間ね」
渋々と言った様子で折れてくれたキャロルに力を行使してもらう。エルフナインにはデータを取ってもらいながら、短時間と言いつつ何だかんだ研究者の血が騒いだのか、かれこれ数時間。俺は思わず、息切れを起こしながらその場に座り込んでしまう。
「兄さん顔色悪いよ」
「ハァハァ…思ったよりもキツイ、特に強烈な一撃の場合の記憶の焼却は、使う記憶量が多い分精神的な負荷が大きすぎる。耐えられなくはないが多用すれば分からん…フォニックゲインについても俺の匙加減で出力を変えられることがわかったのはデカい…だろうな」
実験を繰り返していくうちに二つのスキルについては、かなりわかってきた。発動時に限定条件はなくかなり融通の利く能力だということが。フォニックゲインの出力云々に関してだけはかなり難しい。
段階的に上昇させるものらしいのだが、根性論でどうにかなる代物ではないことだけは確かだ。当人が知らずに抑えている本来の100%の力を引き出した上で俺のフォニックゲインと同調させる。そうすることで初めて限界を超えた力を一時的に使えるようにする代物らしい。
「兄さん鼻血…」
ふと鼻の下を人差し指で拭うとキャロルの言う通り鼻血が出ていることに気づく。立ち上がろうとするも昏倒レベルの立ち眩みが襲う。
「…っ」
エルフナインが近くに来て体を支えてくれたおかげで倒れずに済んだが、精神的ダメージを受け止めきれていない影響で体にも影響が出てきている。
「悪い」
「いえ、ですがやはり一度にやりすぎましたね。いくら時間がないとはいえ‥」
「体の方がついていかないか、元より代償がないとは思っていなかったけど。元々適合者ではない兄さんが、出鱈目な力を無理矢理その身に宿してしまっているってこと自体おかしな話。いくら力が強力でも扱いきれずにやがては」
「かもしれないな、だがやるしかない。未来を人の手に委ねるためにも」