キャロルの兄として   作:前神様

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花畑で眠りにつきたい


008

「中条、最近やつれてないか?」

 

「気にするな横山、ちょっと多忙なだけだ」

 

訓練を終えた翌日、俺は普通に高校に通っている。今話しかけてきたのは前の席の横山だ。何かとつけて、芸能関連の仕事に俺を勧誘してくる変人だ。

 

「コレやるよ」

 

手渡されたのはライブのチケットとみかんジュース。なぜこのチョイスなのかはコイツが変人だからとしか思えない。

 

「これはライブのチケットか…んでなんでみかんジュースまでつけてきてんだよ」

 

「そのみかんジュース朝にうちの親父からパチンコの景品だっていって貰ったんだけどよ。飽きるほど飲んだからチケットのついでにやるよ」

 

「当て馬ということか、このチケットは何でくれるんだ?お前のことだ、どうせ俺も行くからついでに来いよ的なことなんだろう?」

 

「よくわかったな、まぁそういうことだ。因みにこのチケットはバイト先でもらったものだ、スタッフ業務をこの前やっている時に先輩社員から有り難く頂戴したのだが生憎と行く相手がいなくてな‥ハハッ」

 

乾いた笑いを浮かべながら露骨にテンションが下がる横山。明るくていい奴…なのかは知らんが俺から見たらそう見えるんだがモテないのは正直不思議なところだ。

 

「行ってやるよ、いつだ?」

 

「2日後だ、当日は現地集合で頼む」

 

チャイムが鳴ったのでそこで会話が終わったが、よく見たら風鳴翼のライブチケットだということがわかった。厄介ごとの雰囲気だな、これは。

 

放課後になり、俺は帰路についていた。

 

「兄さん、迎えに来たよ」

 

気分転換にゲームセンターでも寄っていくかと思っていた矢先キャロルに出会う。キャロルとともに裏路地へと消えると、お得意の錬金術で拠点へと一瞬で戻ってくることができた。

 

「このライブに行くことになった」

 

横山から貰ったチケットをキャロルに渡す。

 

「聞いてたよ、十中八九仕掛けてくるだろうね」

 

リビングにあるクソデカホワイトボードには既に色々と書かれていた。情報共有のために俺のカバンには盗聴器をつけてもらっている。今回もその甲斐合ってか既に対策を講じてくれているらしい。

 

「当日の会場のマップね、どこから仕掛けてきても対応できるように装者側も工夫はしているみたいだけど想定外は起こり得るからあまり意味はなさないかな」

 

しれっと情報源を言わないあたりが怖いが、エルフナインあたりがハッキングでもしたのだろう。

 

「仕掛けるのはどの勢力だと思う?」

 

「揺さぶりをかけるという意味では、結社の動きが活発だと思う。ただ今回仕掛けようにも未知の存在である兄さんがいる現状どう動いていいか分からず様子見でいる可能性が高い」

 

「奇襲するにしても想定外をなくしたいわけか」

 

俺を監視している輩が政府の機関であることは間違いないだろう。現状俺に接触してこないところを見るに、協力関係は結べそうにはないと見える。

 

「装者になりえるものであり、未知の力を保有している可能性が高い人間。それが今の兄さんの評価じゃないかな。恐らく結社側の人間が意図的に兄さんのクラスメイトの上司に働きかけて、ライブチケットを渡すように仕向けたのが今回の発端だと思うよ。当人が何も知らなくても巻き込まれるケースなんていくらでもあるからね」

 

「だとすれば、今回の目的はイレギュラー対象である俺の力の把握か?」

 

「可能性は高いと思う、結社としても計画にイレギュラーを起こす要因をそのままにしておくことはまずできないと思うし何より兄さんがどの組織に身を置いているのか見極めるつもりなんだろうけど」

 

「武力偵察か…」

 

そうこう話しているうちにエルフナインがリビングにやってきた。

 

「キャロル言われていたものです」

 

エルフナインの目元には薄っすらと隈ができているのが見える。手渡したものの先には装者と同じリンカーがあった。

 

「それは‥」

 

「リンカーです、限定的なもので右腕のみ装備が使える仕様です。適合者である兄さんなら扱えるはずです」

 

「聖遺物自体が、不完全で扱いづらいけど無いよりはマシなはずだよ、身体に多少の負荷は掛かるだろうけど長時間扱わなければ、消耗は防げるはず。完全ではないから詠唱いらずで纏いたいと思えば纏えるし、使い勝手は悪くないと思う」

 

試しに纏ってみるものの、纏った瞬間から身体に怠さを感じる。黒い装甲のガントレット。黒いモヤのようなものが、鎧からあふれ出ている。

 

「適合率に応じて今感じているだるさも軽減されると思う。紛い物でも今の兄さんの場合、限界でざっと1時間くらい。それ以上は身体が持たないと思う」

 

「そうか…それでこれは、鎖か?」

 

ジャラと音を立てて変身した手のひらに握られていたのは鎖だった。

 

「拘束性の強い鎖で制圧し、伸縮自在の鎖を使って攻撃も可能。その鎧の本来の力とは程遠いでしょうが、それでも十分実戦用に値すると思います」

 

「ありがとう、いざという時には介入してもらうかもしれんが今回は貴重な実戦の機会だ。オレの力でどこまで通用するのか試してみたいとは思っていたんだ。キャロルには悪いがやはりオレも戦闘経験は積んでおきたい」

 

「分かった、でもあと2日みっちり戦闘訓練するよ」

 

「⋯お手やわらかに」

 

鬼の形相のキャロルをよそ目にエルフナインは、疲れからか夢の世界へゴーしていた。

 

 

 




ストック無くなりました。フィーネ戦も考えましたが諸々考えて省きます。介入できそうな場面があまりにもなく、構想は練っていましたが、アニメ見返したら益々手を付けるべきではないと言う結論に至りました。実は1年経っていたことに驚きが隠せません。長らく読んでくださっている皆様へお礼を申し上げます。また待たせてしまうかもしれませんが、たまに覗きに来て頂けると嬉しいです。
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