???「……ここは何処だろうか?」
そう呟く自分。辺りを見渡すが延々と白い空間が続いている。歩こうとするが体が動かない。下を見ると、そこに体はなく蒼く光る玉の様なものがあった。おそらく魂だけの状態なのだろう。仕方がないので何故自分がここにいるのか思い出そうとする。
???「確か俺はコンビニに行っていたはずだが…あれ?思い出せない…?」
何故か思い出せず「うーん?」と唸っていると目の前に黒いモヤが現れ、「やっと目覚めてくれたか、我らの救世主よ」と言い、モヤが人の形をしたかと思えばいきなりモヤが晴れ、銀髪の少女が現れた。
「我は深海ノ神姫。この世界に住む姫の1人である。此度は勝手ながらお主の魂をこちらに引き込むような真似してすまなかった」
深海ノ神姫と名乗る少女はそう言うと頭を下げ謝罪してきた。
???「いやあのいまいち状況が呑み込めてないというかなんというか…とりあえず普通に喋る事って可能ですか?」
深海ノ神姫「……ン"ン、すまない久しく喋っていなかったからな。これで大丈夫だろう。というかこの状況でよくそんな落ち着いていられるな…」
???「まぁね〜(ある意味望んでた展開だったからね)」
そう、この人?は先程から口からではなく脳内に直接語りかけてきていたのだ。
深海ノ神姫「…まぁいい、まずはお主がここに来た経緯を話さなければな」
彼女はそう言うとどこからか椅子とテーブルを取り出し紅茶を淹れながら事の経緯を話してくれた。彼女が言うには、俺はコンビニから帰る途中でトラック同士の衝突事故に巻き込まれ死んだらしい。そして偶然俺の魂を見つけた深海ノ神姫が無理やりこの空間に引っ張ったそうだ。その弊害で俺の一部の記憶が曖昧だったり名前が思い出せなくなってしまったという。うーんまぁ魂が消えてないだけマシか?
深海ノ神姫「さて、ここからは我の話をしよう。結論から言うとお主には我々の救世主になってもらいたい」
???「一応聞くが拒否権とかは─」
深海ノ神姫「此処に来た時点でそんなもの消えてしまっているが?」
???「知 っ て た」
ガクッと膝から崩れ落ちる気がした。魂だけなので動けはしないんだがな〜?
???「…で結局俺は何をしたらいいんだ姫さん?」
深海ノ神姫「簡単に言うと我の住む世界にいる我の同胞の魂を救ってほしい。そのためにこちらの世界に転生してもらうのだが…まずはお主の体を創る。その間にも新しい名でも考えるといい」
新しい体を用意してくれるとはなんとありがたい。新しい名前も考えながら俺は彼女に質問をする。
???「そういや姫さんの同胞ってどんな人達なんだ?姫さんの名前的に何となく察せるが一応聞きたい」
深海ノ神姫「そうだな。そちらの世界で言う【深海棲艦】だな。現在同胞達の魂は長き戦いによって生まれた怨念によって理性を失い、力の限り暴れ回り、ただ死を待つだけの存在になってしまった」
【深海棲艦】と聞いてやっぱりかと思った。俺が行く世界は【艦これ】の世界だ。俺もプレイしているから分かってしまった。そうなるとやはり気になるのは─
???「姫さんの世界には艦娘もいるんだろ?」
深海ノ神姫「あぁもちろんいるぞ。ただお主が思っている程強くはないぞ。現に日本は活動海域を狭められ続けている。艦娘では埒が明かないから外の世界からこの世界を知る者を呼び寄せようとした。その結果がそなただ」
???「なるほど、なんとなく状況は理解した。あ、俺の新しい名前決まったぞ。俺の名前は《深海 亜琵洲(ふかみ アビス)》だ。よろしく頼む」
???→深海 亜琵洲
深海ノ神姫「ほぉ?やや安直だがいい名ではないか。そら、こちらも体が出来たぞ。一応歳は10歳程にしておいた」
そう言うと彼女は俺の新しい体を持ってきた…がなんとそこには銀髪ロングで赤い目をした美少年が存在していた。なんとなく雰囲気が姫さんに似ているような?気のせいか?
深海ノ神姫「…しかし、体自体は作れたが少々厄介な事になったな」
アビス「厄介な事?」
深海ノ神姫「あぁ、見た目は人間なんだが、お主に与える力に耐えさせる為に深海棲艦の様な存在になってしまった。一応能力で肌色や気配等は誤魔化せるが…まぁなんとかなるだろう。そして力を盛りすぎてしまったせいで右腕が吹っ飛んでしまった。これは修正が効かんな……すまん」
アビス「うわぁ…これ中身深海棲艦になってんのかよ…んで俺に与える力ってどんなモノなんだ?」
深海ノ神姫「深海棲艦と同じ力が行使出来る。まず体や脳の基本スペック向上、船としての水上航行や潜水能力、艤装の展開、さらに艤装による飛行能力、そして一番大切な「魂を解放する能力」がある。この力で魂を解放してやってくれ。他にも亜空間収納や短距離転移などもあるぞ。何が出来るかはここで試していいぞ」
アビス「色々盛りすぎじゃなんですかねこれ?まぁ意味もなく力を盛る訳ないか。んじゃまあさっそくやってみるか。[艤装展開]…っとこいつはすげぇや」
艤装を出すと大和型の様な艤装に背中辺りから左右にアームが伸びておりその先に巨大なカタパルトと盾がひとつずつ付いてある。艤装の両サイドに魚雷管の様なもの、腰に加速や飛行用らしきブースターがついてある。それらを自分の思うように動かす。主砲を上に向けたり、盾を構えて加速したりそのまま空を飛んだりする。他にも使える武器がないか考えていると、手元に軍刀が現れた。
アビス「…へぇ、こんな事も出来るんだな」
どうやらイメージがしっかりしていれば想像通りの武器や機能が使用出来るようだ。艤装の形すら変えられるようだ。面白いと思いつつ、それと並行して他の能力を試す。右腕を生やせないかと試してみると、港湾棲姫の様な大きな爪のある巨大な腕が生えた。一応艤装扱いらしい。人間の腕は生えなかった、残念。
深海ノ神姫「…普通はあんなすぐに使いこなせないんだがな。もはや魔法の域だぞ。流石は外の人間って所か…おーい戻って来い!そろそろ世界に送り出すぞ!」
アビス「おっともう行くのか。戻らねぇと」
右腕を収納し、キィィィンと音を立てながら深海ノ神姫の所へ飛んでいく。姫さんは結構驚いていたがすぐに元の穏やかな表情に戻り、「これより転移作業に移行する」と言った。
深海ノ神姫「これからアビス、お主には沢山の魂を解放してもらうが、ゆっくりで構わない。我の願いに縛られずやりたい事を見つけたらそちらを優先してもいい。出来ればアビス、お主はこの世界でそなただけの幸せを見つけてくれ。…転移準備が出来た。お主の魂はやたら運命力がある。上手くやれる事を願う」
アビス「……わかった。姫さんの願いを叶えつつ俺の幸せを探してみるさ。それじゃまたな、姫さん」
体が光に包まれて消えていく。少し姫さんが寂しそうな顔した気がしたが気のせいだろう。少しずつ意識が朦朧としていく中、俺は新たな世界に向け、
そう呟き意識を手放した。
──この日ある世界で1人の男がこの世を去った。しかし並行した別の世界で彼は人間ではないナニカになり、新しい生を受けた。近い未来、彼はこの世界で奇跡と絶望をもたらす。ただ、世界はまだそれを知らない。