アビス「…さて、どうしたもんかな〜これ」
そう呟きながら薄暗い路地裏を歩く。姫さんに転移させてもらったはいいものの、なんと転移先が路地裏のゴミ山の中だった。姫さん座標ミスってないですかこれ?ゴミ袋を蹴飛ばしてゴミ山から抜け出し、周囲を確認するが、今は深夜だろうか真っ暗である。何か持っていないかと持ち物を確認するが何も無い。亜空間収納にも何も無く、体ひとつで一体どうしろというのだ。
アビス「とりあえずここにいてても意味がないし、人通りのある所へ─」
そう思った瞬間体に力が入らなくなる。おかしいと思った俺は近くのダンボールに座り込む。原因を探そうと、先程自分が埋まっていたゴミ山を見る。
アビス「……ありゃあ、薬物か、ついてねぇな。というかこの体、物理耐性はクソ高いのに薬物耐性はそこまでないのか?深海の力で耐性を創るか…」
よく見るとゴミ山の中には、沢山の注射器や薬物が入っていたであろう小袋があった。中身が入っている物もある。おそらくアレだろう。原因が分かった所で何か出来る訳もなく、回復の為しばらく座り込み唸っていると、視界の端に小さな動く物体が見えた。
アビス「はぁ…とうとう幻覚も見えるようになったか?そんなにヤワな体じゃないはずなんだがな?……ん?あれは、もしや…」
そう呟いた俺。少し動くようになった体でその動く物体に近づくと、ソレは小刻みに震え始めた。
アビス「もしかして、お前らが妖精さんってやつか?」
野良妖精1「ひっ!われわれがみえるのですか!」
野良妖精2「このひとからしんかいのけはいがするよ〜!なんで~!?」
野良妖精3「きゃー!たべないでくださいです〜!」
キャー!と随分楽しそうな声で叫ぶ妖精達。こいつら俺の深海の気配を察知した割には結構余裕あるな。ていうか結構いるな…大体30匹位だろうか俺の体中に妖精が張り付いている。「食べねぇから落ち着けって!」と言い、妖精達を引き剥がす。
野良妖精1「え!?われわれのこえがきこえるのですか!?」
アビス「おう、見えるし聞こえるぞ。初めまして、俺はアビスっていう。それで今ちょっと困っててな、少し話を聞いてはくれねぇか?」
野良妖精2「うーん…まぁいいよ〜」
野良妖精3「おなやみそうだんですか?どんとこいです!」
野良妖精1「それでいったいなににこまっているんですか?」
アビス「あぁ、それはな─」
こうして俺は妖精達に簡単にここに来る経緯と現状を説明した。別世界で死んだ事、深海ノ神姫に会い願いを託された事、深海棲艦の力を得てここへ転生した事、現在路頭に迷っている事を。妖精達はうんうんと俺の話に頷き、何匹かは同情したのか号泣していた。しばらくして全員が落ち着いた後妖精が
野良妖精1「アビスさんのじょうきょうはよくわかりました。われわれはアビスさんについていっておてつだいします!」
アビス「いいのか?自分で言うのもアレだが得体の知れない存在なんだぞ?」
野良妖精2「アビスさんはわれわれのてきですか?」
アビス「いや…敵ではない…と思う」
野良妖精1「それでじゅうぶんです。それではあらためてじこしょうかいです。わたしは建造妖精です」
野良妖精2「ぼくは開発妖精だよ~」
野良妖精3「主砲妖精なのです!」
野良妖精1→建造妖精
野良妖精2→開発妖精
野良妖精3→主砲妖精
アビス「おう、よろしくな。さて、ここからどうしようか…」
???「―おい、そこの嬢ちゃん!妖精と話せるのか!?」
これからどうしようかと妖精達と考えていると、後ろから大柄な男が話しかけてきた。俺が妖精と話している事に驚いているようだ。よく見るとその男は白い軍服を着ていた。
アビス「俺は一応男だ。…あんたは誰だ?見たところ軍人に見えるが?」
???「男だったのか、すまんな。儂は鳴海 剛という。お前さんの想像通り海軍の人間で提督である。それでお前さん名前はなんだ?ここで何をしていた?」
男はそう名乗ると俺の目の前まで歩いてくると、その場で俺の目線に合わせる様にしゃがみ込んだ。
???→鳴海 剛
アビス「俺は深海 亜琵洲、アビスでいい。路頭に迷っていたからそこの妖精達と相談していた。(流石に別世界から転生しました~なんて言えないよなぁ…)」
俺は転生の事を隠しつつ、今置かれている状況を説明した。妖精と話せる事を言うと「妖精と話せるのはごく一部の人間だけだ」と言われた。この世界では妖精が見える人間はとても少なく、ましてや意思疎通が可能なのは極稀にしか現れないらしい。
鳴海「…アビスよ、お前さん将来提督になる気はないか?行く当てが無いなら儂の養子にして向かい入れるぞ?」
アビス「やけに親切だな(これが運命力の力か?)。そんなに妖精と話せる事が貴重なのか?…まぁ提督になる気はあったから、願ってもない事なんだが。あんた本当に一体何者なんだ?」
鳴海「儂は横須賀鎮守府所属、大本営にて元帥をさせてもらっておる。子供のお前さんでもこの意味は…分かるな?」
アビス「…マジか、おっさん海軍の最高権力者だったのかよ。それならさっきの提案ができるのも頷ける」
鳴海「よし!そうと決まれば儂の鎮守府に行くぞ!丁度帰る所だったのでな、その様子じゃまともに動けんだろう?…よいしょ!そら行くぞ!」
アビス「え?…うわぁぁぁぁ!」
鳴海元帥は動けない俺を担いで横須賀鎮守府へ走って行った。
【鎮守府の執務室内】
大和「…で?何か言い訳はあるのですか、提督?」
鳴海「いや成り行きだったとはいえ、連絡しなかったのはすまんかった」
大和「…まぁいいです。どうせ提督の事ですし、この子を帰す気はないんですよね?(この子凄い数の妖精さんに好かれてるわ…)」
鳴海「あぁ。ここに連れて来た以上最後まで面倒はみるつもりだ」
鎮守府連れていかれた後、鳴海元帥は出迎えに来た秘書艦の大和にこっぴどく られていた。そりゃあ連絡もなしにこんな子供を連れて帰って来たら誰だって驚くだろうよ。
鳴海「さて、本題に入ろうか。アビスは提督になりたいのだったな?提督訓練校に入るには大前提として妖精が見える事だが…これは大丈夫だな。あとは年齢だが、アビス今いくつだ?」
アビス「えっと…10歳だったはずだ」
鳴海「む?そうか…訓練校に入れるのは15歳からなんだが、とりあえず後5年は待たないといけないな。まぁそれまでここで暮らすといい。大和、空き部屋はあるか?」
大和「…提督の部屋の隣が空いています。掃除はされているのですぐ使えます」
鳴海「よし、そこをアビスの臨時の部屋にしよう。明日朝礼で全員に知らせる。勉強等は儂艦娘に手伝ってもらうとしよう。右腕の義手も明石に作ってもらうよう頼む。アビスよ、これからよろしくな」
アビス「分かった。鳴海提督に大和さん、しばらく世話になる」
大和「えぇ。よろしくお願いしますね、アビス君。(…今この子から深海棲艦の気配がした気が?…気のせいかしら…?)」
大和の疑念をよそに、アビスは提督になる為の生活基盤を手に入れたのだった。
ここからめちゃくちゃ時間が飛びます(予定)