末期の瞬き。最後の煌き。
血痰と慟哭、褥に溢す。
眩き覚悟に、枕を濡らす。
成る程、ぼくは病んでいる。
死よ、どうか一度限りの輝きを。
1 ALTER & AlternativeBLEACH Re:Death
卍
転生していたと気が付いたのは、何時の頃だろう。物心ついたころには、ずいぶん昔の京都にいた。■■という家に生まれ、姉に可愛がられて、虚弱な身体を引きずって剣を振った。
確か、自分に与えられた■■■■という名前は、前世の記憶によれば日本の歴史に名を刻んだ新選組隊士だったか。そのおかげが、体が思い描いた通りの太刀筋を描くように動かせるし、無駄なく人を殺す挙動ができる。吐血するデメリットを差し引いても、殺し屋としては二重丸のスペックしているのはびっくりものだ。……本当に人間か?人の皮被った死神だったりしないか?
ただ、そんな天才剣士だろうと、体を蝕む病魔は切り伏せられなかったようで。
嗚呼、まったく。血塗れの口を拭って自嘲する。幾人も人を殺しておいて何も感じなかったクセに、今頃になって死にたくないと思うのか。度し難いな、自分ってやつは。
体中から熱が引いていく感覚に、瞼が次第に重くなる。ずっと苛まれ続けて来た痛みが、静かに体から消えていく。
未練は、あるのだろう。
けれど。
情けないとは思わない。
今際に満足のいく人生だったと言える人間なんて、いるわけがない。
だから。
こう思うのは、人として当然だと思うのだ。
……ここまでが、自分が人間だった頃の話。
自分が生まれた直後、自分は生死の境を彷徨った。故に、姉は神仏に祈った。そして、契約は成った。死後に魂を世界のために使う、という契約が。
————。再び目を開けば、そこは遠方に特徴的な建築物が聳え立つ霊子の世界。聞き耳を立てれば
(……まじで?)
この世界、BLEACHの世界だったのか。ハハッ……やっっっべぇ。
BLEACH。少年漫画雑誌で連載されていたダークファンタジー。死後、人の魂が悪霊となった怪物虚を倒す為、朽木ルキアから死神の力を貰った高校生、黒崎一護が三界のために戦う物語だった。死神の話なだけあって、モブだろうがネームドキャラだろうがポンポン死ぬ難易度調整ガバった鬼畜仕様な環境だよな。多分主人公に世界に分配されるべき力が濃縮されてるよね、絶対。
そんな死後の世界で生きろと?今の時系列が何時なのかは分からんが、後々戦火に巻き込まれるこの世界で?うっそだろ、詰んでないか。
(そして、なーんで俺は
今、俺が外界を知ったのは、主の感覚を共有して見ることができているからだ。
俺の体は、以前までの病弱なものじゃない。褐色肌に白い髪を長く伸ばした男の姿だ。赤いマフラーを首に巻いて、露出の多い織物を纏っている。これは、流魂街に立っている本体とは全く違う。
(もしかして、斬魄刀なの俺?声質的にアニブリの村正なんだけど……、あらゆる意味で対照的な格好だなオイ。……ん?)
地平まで真っ白、仰ぐ天まで真っ白な世界が主の心象風景らしい。……思い返してみれば、何か、既視感あるなここ。それも、BLEACHとはまた別の作品で。頭の中に残ってる記憶(漫画、アニメ、ゲーム)に検索をかけてみる。
CV、白い長髪、褐色肌、手甲と脚絆、髪に付いた水引きみたいな赤い装飾……。あ。
(……FGOの煉獄か?)
正式には、この姿は煉獄オルタ。Fate/ Grand Orderに登場する英霊、そのなかでもぐだぐだイベントに登場するサーヴァント、沖田オルタの持つ剣が擬人化した刀剣乱舞みたいなキャラ。それが今の俺だった。
しかも俺の主とも言える子ども、女の子か……。あらためて見れば、まんま水着版魔神セイバーの煉獄ちゃん、だよな。沖田オルタ(仮)ちゃん、と呼んでおこう。幼少期沖田オルタちゃんは、荒れた場末のあばら屋でぼーっと空を見上げていた。
生気の無い死んだ魚の目で無窮の空を眺めているのは、どこか寒々しい空虚さを感じてしまう。もしかして帝都聖杯奇譚の冒頭と同じで、
(おーい、おーい聞こえてるー?主、あーるじー?……駄目か)
流魂街で幼女一人だけで生きていくのってかなり厳しくないか?更木とか草鹿みたいな治安が劣悪な所じゃないにしろ、主の目を通して見る限り、ホームレスの乞食とかうろついてるし。
この身体を巡っている力……霊圧は、かなり大きいようだが。どうにもまだ全開ではない、というか万全の状態ですらないみたい。
主は口もきけないらしく、ぺたんと座り込み、うつらうつらと舟を漕いでいる。ボロボロの着物を一枚羽織っただけの少女なんて、事案でしかないだろ。早く安全な場所に行かないと連載雑誌が変わっちまうよ、逃げてくれー!?って、寝たよ。寝やがったよ主。
(どーしよう……。この身体ー!起きてー!)
周りのホームレスのおっちゃんたちも、落ち窪んだ目が何かギラギラしだしたよ!お前らロリコンかよきっも!
卍
夜。ふと目が覚めた。
少女は歩く。その土色の肌の裸足で、夜の森の中を軽やかに。閉じていた喉が開いたようだ、口から空気が流れ、すがすがしい心持ちだった。
「……、い。じょ……」
目の前では、人とは異なる図体の化け物がいた。だが、彼女は臆することなく、とろんとした目を擦って、その化け物を見る。
咆哮する孔の空いた怪物たち。鼓膜を劈く音が黒い闇に染まった森を広がっていく。
「……わか、……った」
目が覚めた時に、持っていた刀に手をかけた。一体どこから拾ってきたのか、自分でも分からない。もしかしたら、ずっと持っていたのかもしれない。けれど、気にしない。
自分を突き動かす衝動に身を任せて、口を開いた。
「
卍
我が光芒、無穹へ通ず。
塵刹を穿つ。無辺の光を以って、天命を断つ。
始めは短め。