それらは 皆
冷たい哀を示した
無尽の刃の姿に似て
解脱に繋がる鉄血の鎖のように
あなたを捕らえて離さない
2 ALTER RedlineBLEACH Type
卍
俺こと、斬魄刀煉獄がこの尸魂界で前世の記憶を取り戻してから、数十年が経った。随分と巻きで時間が進んだ気もするが、主は一向にこっちのことに気を回してはくれない。いや、当然なんだけどな。刀に意思が宿るなんて、真央霊術院に行かなきゃ知らないだろうし。刃禅なんて方法も主は分かんないし。
けど、何で始解だけは出来たんだよ……。おまけに常時発動型の始解なのか、あれ以降俺は大太刀の形状を維持し続けているし。
そもそも主が斬魄刀持ってたかも、色々曰く付きの例外ポジションだからみたいだしな。主ってば黒崎一護とか更木剣八とかと似てるような、似てないような……。
『は。ははははっ。随分と頭を悩ませているようではないか、のう?』
真っ白な景色が広がる世界に、黒く赤い滲みが噴き出した。
『あー……今日も来たのか、
巨大な骸骨が象られた門が出現し、隙間が開く。そこから猛毒の瘴気が立ち込めた。
うっへ、肺が焼ける。俺は耐性があるからまだ良いが、主がこっちに来た時はそーゆーのやめて欲しいなー。
『うむ。あちらは暇でな』
俺の傍に降り立った、血や炎のように赤い長髪と瞳を持つ女性。胸元に付いた赤黒い鎖と、光輪のような背の金細工、紅蓮のマントが揺れ、ふわりと灰が白の中を舞う。
透き通るように白い顔以外を露出なく覆う細身の鎧の下からは、皮膚や肉の焼ける匂いが漂っている。
顔以外の全身が朽ちた咎人の彼女は、朗らかに笑って俺に近づいて来た。
『そぅれ、土産じゃ。受け取るが良い』
そう言って俺に黄金の
『……。我が主に力を貸し与えているのは何が理由だ』
『ほう、厭か。我の神仏を毀す力に何か不満か?』
『そこじゃない。いや力もまあまあアレだけど、俺が懸念するのは別だ。お前の力って、
『はっはっは!ユーハバッハと兵主部一兵衛か!三界を見通す者たちに、一介の小娘が太刀打ちできるか気にしておるのか、全く子煩悩よなぁ煉獄よ』
『ちょ……おい!』
言ったぁ!?躊躇いなく言いやがったよコイツ!今のところプロテクトかかってるとはいえ、下手こいて喉が潰れるのごめんなんですけど?不敬罪はお前で十分だよ本当に!
『なぁに、些末なことよ。さしもの我、
底知れない笑みを浮かべて呵々大笑する、赫髪の魔王。
『そもそも、魂魄の折り重なりによって生み出される斬魄刀でも、こやつのものは特別だ。わざわざ
『イリーガルに作られた亜種の斬魄刀も零番隊に肩ポンされそうなんだが……』
『そんな小娘が、戦いに巻き込まれぬ、と?甘いわ、煉獄。否、
む。それを言われると弱い。実際、俺の煉獄という銘を名付けたの、和尚じゃなくてコイツだし。
『我が名付けた名による力ではなく、本来のお前の役割こそ、その証左ではないか』
黒が一切無い世界で、ため息を吐く。
『そうならないことを祈るよ、俺は』
『現にこの小娘には、貴様の力に加えて我が力の五分の三が注ぎ込まれておる。嗚呼、何と言ったか……そう、護廷十三隊の隊長格の死神共と同様か、それ以上よ。三等霊威となるのも時間の問題か』
『だーからぁ!敵対させたくないんだよ、俺は!』
何でこの地獄の魔王様はこうも好戦的なんだよ!メゾン・ド・チャンイチの住人見習ってくれないかなあ⁉
『それを選ぶのは我らでは無かろう。だがしかし、我らが主の小娘は全く変わらんな』
『……目覚めて以降、世界にものが増えることも無し。穴が開いたり崩れたりも無し。心に一切の変化が生じないのはちょっと心配になってくるぜ』
『まあ、地獄に本体が在る我にとっては、侘び寂があって良いのだがな』
手酌で黄金髑髏の杯に酒を注ぐ魔王。美味しそうに吞むなぁこの人……。
『……ところで煉獄。おぬしは
……あン?
『……尸魂界
いや、正確には東西の尸魂界の世界観じゃないってのは知ってるが。何で今その斬術出て来た?師匠の別作品のやつじゃねーか。
『そうか。まぁ良い。我の中の
火輪斬術を修めた斬術士達は
その名の通り
黒い殺気の焔をまとって戦う
『……それがどうした?』
『外を見てみろ。どうやら力の奥底にあったそれを使わねばマズイ相手らしい』
『お?……ぉっは⁉え、ちょ……⁉ハァッ⁉』
主よ、お前そんなことできたの?いや、Fateの魔神さんも黒い炎で斬ったり殴ったりしてたけども、それがこのオサレワールドだと火輪斬術だったって初耳なんだけど。
つか、BLEACHじゃなくてZOMBIEPOWDER.の世界の力だけども。これアレじゃない?
いやそうじゃねぇ!待て待て待て待て……、何やってんだよ主ぃ!誰と戦ってんだ、その人マジでヤバいんだからな⁉手加減状態だろうけども、何で
『は、はははは!是非も無し!酒の肴には丁度良い!』
うるせぇなにわろてんねん。主がコイツ相手に勝ったチャンイチ並みかどうかも計りかねるんだぞ。俺かお前が表に出ても未成熟な身体でどうにかできんのかわかんねーんだよ、もうちょっと焦れや!
卍
護廷十三隊十一番隊隊長、更木剣八がその噂を聞いたのは偶然だった。
————流魂街西79区に、未知の斬魄刀を持つ存在がいる。
————その女。赤い反物を首に巻き、丈の短い黒い着物から伸びるのは褐色の四肢。首元で切り揃えられた白い髪を持つ。
————曰く、言の葉を発することなく刃を振るう様は、正しく、魔神。
そして思った。まるで自分のようだ、と。気が付けば更木剣八の脚は、郛外区の西地区を疾走していた。
案の定だった。剣八の前には、大太刀を持つ、身の丈四尺ほどの女がいる。その眼は、人というにはどこか違和感があった。くすんだ硝子玉のようなその眼は光が灯らず、不気味で、呑み込まれるかのよう……。
「良い眼をしてるじゃねぇか。
「……」
……どちらが先に鯉口を切ったのか。気が付けば、二人は刃を交えていた。
「戦場に事の善悪無し……ただ
「はっ、悪くねぇ。やろうぜ……、もっとだ!」
斬魄刀を振り抜いた互いの剣圧で、周囲のあばら家が吹き飛んでいく。剣八と女、
拮抗。女と更木剣八の斬り合いは戦いとして成立していた。瞠目、そして歓喜。久方ぶりの戦いの愉悦を全身で感じる剣八。
「……閃花……、いや違ぇな。何だその歩法はよ。こうも俺に追い縋ってきやがる」
女が使うのは、瞬歩とも異なる歩法。黒い炎を纏った太刀筋と拳。その未知なる戦い方に、剣八は凄惨な狂喜の笑みを浮かべた。
一方の白髪褐色肌の女は、ぴくりとも動かない表情で口を開く。
「そうだな。わかりやすい鈴の音もある。お前に、
追いついた。そう、女の言う通り、斬り結び始めた時は剣八よりも拙かった剣戟が、数瞬の内に彼に勝るとも劣らない技量へと洗練されていく。それはつまり……。
「はっ、そうか……こいつは、手加減しなくて良さそうだ!」
「!」
————女の体が彼方へと吹き飛んだ。そして、遅れて女の体に炸裂する鈍痛。
「ほぉ。身を捻って躱したか」
「がっ……、はっ。あッ……!」
ボタボタと温く滑る赤い体液が脆い土塊に落ちていく。
「……、急に、強くなった」
瓦礫の中から立ち上がる女は、鼻や額から垂れた血を拭い、土埃を払い落とす。女は死神の力についても、斬魄刀についても何も知らない。だが、眼前の相手から何らかの力の枷が外れたことだけは理解した。実際、剣八の霊圧は先程の六から八倍まで跳ね上がっていた。その戦闘能力の差は絶望的だ。
「……だが、だとしても、私がやることは変わりない」
頬の横で刀を構えると、土煙立つ廃村の見晴らしの良い場所へと身を晒す。
「……なんだぁ?捨て鉢にでもなったか」
じり、と足が地面の砂を擦る。先の戦いぶりが嘘のように、霊圧の力も静かに小さくなっていく女を見て、剣八は眉をひそめて憤る。
「俺はそんなつまんねぇ戦いなんざ、したかねぇぞ」
「……」
体から立ち昇っていた黒い炎もない。先程までの殺気もない。女は静かな目で目の前の敵を眺めていた。
「阿呆が……。なら、死ね」
剣八が唾棄した時だった。けたたましい音を立てて空気が裂け、女が踏みしめた大地が罅割れる。
刹那の合間に、女は剣八へと肉薄する。
「!」
剣八が振るった斬魄刀が、……空を切る。あったはずの女の首が、そこにはない。
「消え————」
女の霊圧を感じない。霊圧が置き去りにされる程の速度かと錯覚する。だが、それは厳密には違う。
(疾ぇ⁉)
剣八の前に、大太刀を平晴眼の構えをとった女がいた。
(いや、これは……空間を跳び越えやがった!?)
剣が閃く。全く同時に大太刀から平突きが剣八の身の一点に放たれる————。
「……成る程。つまんねぇ戦いをしたのは、俺の方か……」
「————!」
大太刀が、更木剣八の肩を貫いている。だが、呆気にとられたのは女の方だった。彼女は間違いなく、心の臓に向けて三重の突きを放ったはずだった。避けられる存在がいるとは考えられなかった故、一瞬惚けてしまう。
だが、すぐにそのまま攻撃する部位を首の頸動脈へと移す。しかし幾ら力を籠めようと、大太刀が更木剣八の肉をそれ以上斬る事はできなかった。女の刃を絡めとった強靭な筋肉の鎧は、彼の首を刎ねることを許さない。
「……すまねぇな。またやろうぜ」
「が……ッッッ⁉」
振り下ろされた剣八の拳骨が、女の意識をあっという間に刈り取った。
卍
「っは」
「よう、起きたか」
女が目を開ければ、曇天が目と鼻の先にあった。ずきずきと痛む重い頭を持ち上げて、先ほどまで戦っていた男に視線を向ける。
「……突き刺せたが、斬れなかった」
「……ッは」
彼女がぼそりと呟いたその言葉を耳にした剣八。次第に耐えられなくなったのか、膝を叩いて破顔一笑する。
「は、ハハハハハハハハ!」
「?」
一頻り笑った更木剣八は、真面目な顔になると、女に向かって声をかける。
「————。おいお前、死神になれ」
「しに、がみ……?」
「そこからか。昔の俺みてぇだぜ……お前、名前は」
女は白い髪を所在なく弄り、意を決したように口を開いた。
「……オルタ」
女は座っている剣八の前に立つ。逆光になった影のある顔が、剣八にはどこか輝いているようにも見えた。
「我が銘は……沖田オルタ」
卍
『剣ちゃんと戦ってくれてありがとー!魔っちゃん、煉ちゃん!あたしも剣ちゃんに名前を呼んでもらうの、頑張るね!』
『フハハハハハ!また来るが良い、饅頭でも用意しておいてやろうではないか!』
『……何でここにいるんだ、野晒お前……』
『ふむ。分からんか煉獄、彼奴の力に心当たりが無いか?』
『?……!』
(あ、ああああああああ!野晒の卍解がまんま鬼なのってそういう⁉)
最初の死神エンカウントが更木剣八とか言う煉獄の主。