魔神セイバー(偽)、職業/死神   作:サルミアッキ

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Paper Cuts

 

或る魔神のためのキリエ

 

黒い襖紙を 血が滲む爪で掻き毟る

僕の想いは あなたに届いているのだろうか

何故 逃げだせなかったのか

 

姉上

あなたは連れ出され

僕の行く末が示された

 

篝火が焚かれ 家族は紙切れのように引き裂かれる

 

最後になって 僕は

姉上を馬鹿にした笑い者たちと

同じだったと受け入れた

僕は あなたの あなたの為の慰み者

 

あの頃のように 遊びましょう

 

そして あなたの 思うが儘に

 

 

BLEACH

4

ALTER

Paper

 

Cuts

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、主が死神業務に打ち込んでいる時も、俺は藍染の手の者に警戒し続けた。白一護よろしくぶっつけ本番でコントローラーを奪うことも考えていたが、……今のところその必要もなかった。

 というのも、俺の主、スペック高過ぎか?

 いや、斬魄刀目線からの子煩悩も入っているかもだが。それにしたって鍛錬のための剣術道場に遊びに来るのは更木&卯ノ花の両剣八だし、主に四楓院家の血縁を総隊長が勘繰って戦いを見に来たついでに、雀部副隊長とも手合わせしたし。確かにTS版四楓院千日に見えるよね、主。そんな連中と戦ってれば強くなって然るべきだよなぁ。

 主ってば連戦続きで霊圧も戦闘センスも格段に跳ね上がり続けている。鬼道は……、お察しなところだけれど、その分のステが斬・拳・走に割り振られてるから、近接戦闘がエライことになってんだよな。

 鬼道を教えに来て下さった現鬼道衆大鬼道長さん、すいません……。後日にでも俺が具象化出来たら、蛤でも持っていきます……。

 

 そんな未だ成長途中な主だが、見ての通り隊長格並みではあるので、藍染一派が尸魂界に放った虚メタスタシアを瞬殺。被害を最小限に抑え、死者はゼロ。都三席も海燕殿も死ぬことも無く、というか駆り出されることも無く、ルッキャちゃんは恩人を手にかけたトラウマってやつが一切無い状態で十三番隊にて過ごしている。良かった良かった。

 それも当然か。型月の魔神さん(アルターエゴ)は一回限りの戦闘用に調整された抑止力の使者。これをBLEACHの設定に落とし込んで置き換えると、対はんぺん隊長かYHVHのため世界意思によって作られた死神ってことになるんだろうし。

 

『……この世界には無いと思っていたが。イヤ、寧ろこれから新たな概念として三界に生まれ出るのか?』

 

 その一端であるが故に理解する。主ってば、世界に後押しされる抑止的なナニカを直感か何かで受けて行動してるらしい。すでに三界のヒトの祈りを束ね始めているのやもしれん。死にそうなヒトがいれば偶然かつ即座に現場に急行して助けてるからなぁ。

 あー、もう。まるきり抑止の守護者だよ。ろくでもないことになりそう。……刀の身でしかないのはもどかしいな本当。

 でも、俺が具象化しても何ができるんだろうか。知恵を貸そうにも、なぁ。ぶっちゃけ、ファンでも設定を完璧に理解できてるやついるのかね。

 いや、BLEACHも所々フィーリングで駆け抜けた感あるし。FateもFateでき○このことを真に受けるのは二流、〇験値のことを真に受けるのは三流とか言われてるし。……何でこんなところまで親和性高いんだ。

 このまま原作開始まで十三番隊で虚退治しつつ、主が藍染の暗躍で死なないようにお祈りするしかねーよな、俺。できれば主が卍解を取得したい、力が欲しいと願ってもらえればすぐに具象化するんだけどな。今の現状、始解(の真似した形状)で何とかなっちゃってんのがなぁ……。

 

 

 

 

 

 ……そう思ってたら、現世に逃げることになりました。

 追放?追放なんで?どうしてそうなったんだ主ぃ⁉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な!沖田がそんなことをするわけがないだろう!何かの間違いではないのか、朽木隊長!」

「怒鳴るな。兄の命を縮めるぞ」

 

 瀞霊廷内の一室。そこでは、頭を突き合わせて三人の隊長たちが言葉を交わしている。

 

「しかし本当かい?彼女が、あの()()()()に伝わる斬魄刀、『九天鏡谷』を奪ったというのは」

「ああ、中央四十六室からはそう伝えられた。それ故、五大貴族に所以がある者が部隊を率いて、尸魂界内を逃亡中の彼女を捕らえることとなった。朽木家からはルキアが選ばれた。志波家は十番隊隊長志波一心が、四楓院家は四楓院夕四郎が派遣されるらしい」

 

 淡々と語るのは、黒い髪に牽星箝を付けた長身の男、六番隊隊長の朽木白哉。だが、了承しかねるのか、十三番隊隊長を務める白髪の優男、浮竹十四郎の顔は酷く険しい。

 

「やれやれ。貴族の面子ってヤツはどうにも面倒だよねぇ。どうも……。このままじゃ山爺も卯ノ花隊長や更木隊長を宥めるのには苦労しそうだよ」

「ああ、海燕や都になんて言えばいいんだ……。それに、陣頭指揮があの綱彌代時灘だとはな」

 

 溜息をつく京楽春水と共に、浮竹は悔し気に臍を嚙む。この行いに反発するであろう部下たちや、悲しむ者たちに、自分たちが何をできるのか、二人は頭を悩ませることになるのだった。

 

 

 

 

 

 初めて、かみをきる鋏に手が震えたことがある。何が恐ろしかったのか、今となっては分からない。だが、刀を手に持った時とは、まるで違ったように思う。

 

「————、沖田殿……私は、私は……ッ!」

 

 背に圧し掛かる重圧に、朽木ルキアは一人静かに膝を抱えて座り込む。

 

 朽木家に拾われたことは、自分にとって幸運であったことは間違いない。生きていける術を数多く得られたのは間違いなく義兄や、家族のおかげだった。

 だが、貴族の養子に入った時から、世界から一線を引かれてしまったような、居心地の悪さを感じていた。

 そんなことを思うなど、不義理だと思い考えないようにした。下民でしかない自分を何故妹として見初めたのか、それは幸運以外の何物でもないと受け入れて。

 

 そんな、鋏を入れられた切り紙のような世界で、ルキアは出会った。

 彼女は不思議な人だった。初めは天然でぽやんとした顔の女だと、そう思っただけだった。だが、良くも悪くも、その印象は間違いでなかったのに気が付いた。

 その在り方に、目を覆いたかった。

 

 身を削って、自分の痛みにも気が付かず、ただ一心不乱に剣を振るっていた。

 

 霊力のある人間からは悪霊(ホロウ)と同様の死神と恐れられ、手のひらを返され、傷つけられ。

 

 それでも、ああよかったと微笑んでいる。助けられてよかったと。

 

 そんな人に、私は刀を向けなければならない。朽木ルキアの心は晴れなかった。

 

 

 

 

 

 そして、沖田オルタが発見され、多くの死神が捕縛のために動員された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ぇるか』

 

 沖田オルタがはたと立ち止まり、周りを見回す。先程まで、自分は死神たちに追われていた。身に覚えのない罪状、そして苦渋の決断をしたであろう仲間たちの顔、降りしきる雨、それらは今、この場に無い。

 

『……わしの声が聞こえるか、沖田オルタよ』

「?」

 

 天も地も、真白な無垢の世界。そこに突然、血が滲むように赤が溢れ、彼岸花が咲き乱れる。そして黒い巨大な餓者髑髏が赤い眼窩を光らせて、花弁を撒き散らして地の底から這いずり出た。

 灼熱が沖田オルタの頬を撫でる。眼前では黒々とした獄炎が、人の形とならんとしていた。

 

「誰だ」

『わしか?わしはそうじゃな、魔人アー……いや無し。やっぱ無し』

 

 沖田オルタと向かい合うのは、黒い軍帽に木瓜紋の前立てを付けた黒髪の少女。彼女は軍服の腰に差した日本刀に手をかけた。

 

「ここはどこだ」

『此処は貴様の心の裡よ。本来ならば、わしがこの格好で出張ることでは無かったのじゃがな』

「……私はこんなことをしている場合ではない。私は……」

『どうすると言うのだ?襲い来る死神を斬り殺すか?』

 

 どうやら、先ほどまでのことを理解しているようだった。赤い瞳を細めて彼女はオルタを試すように微笑む。

 

「そんなことはしない」

『ほう?ではどうする?裏切られたとは考えておらぬのか?死神の連中に』

「……良く、分からない」

『分からぬ、と?莫迦を抜かすな。身を焦がす恩讐の焔があるのであれば、貴様は刀を振るうべきであろう。皆悉く灰燼と帰す焔を持ちながら、何故その力を振るわん』

 

 しゃりん、と涼やかな音が鳴った。黒髪の少女の腰から日本刀が抜かれ、切っ先がオルタに向いている。

 

『貴様には、わしが与えた神を毀す力がある』

「何?……つまり、お前が私の斬魄刀か」

『今、そのような些末が大事か?今貴様は、背には護りたい者も無く、命を脅かされておる。そちらが重要ではないか』

 

 魔王の霊圧に、腰に手をやるオルタ。だが、そこにいつも使っている愛刀は無い。只の浅打が、漆塗りの黒と紅の鞘に納まっているだけである。

 

『何故、己が命を護るため戦わぬ。何故、貴様は三界を護る死神として生きようとする』

 

 眼前の魔王は嗤う。黒い焔として揺らめく理の影が、じわじわと白い世界を広がっていく。

 

「……」

『で、あるか。まぁ、当然と言えばそれまでよ。このような無■の世界を心に有しているのだからな』

 

 オルタは、彼女の質問に応えない。いや、初めから持ちうる応えを有していないのか。その色彩の無い透明な在り方を、魔人は鼻で笑い飛ばした。

 

『じゃが、わしもまた復讐者の一端。本来の我より分かたれ、謂れなきわしとなり果てようと、この身、この霊力は憎悪に身を焼かれていく焔の具現』

 

 何かが弾けて散っていく。白い世界が、紙のように燃えて焦げていく。火の花弁が咲いて芽吹く。炎が世界を焼き裂いた。

 

『このまま泣き寝入りなぞ、御免被る。ああ、だが。わしは、あ奴ら死の神の末端共を憎んでおるわけではないぞ』

 

 心象風景が塗り替えられていく。天地が燃えて塵となっている。阿鼻地獄と同じ、太陽を超える熱が吹き荒れる。ここが、此処こそがかの魔王の根城。黒い餓者髑髏の群れが墓標のように聳えていく。

 

『貴様は、()()()()()()()()。故に、神を尊びこそすれ、神にその身の運命を委ねるな。己を変えられぬ者は世を変えられぬ。果てるのならば、事を起こしてから果てよ』

 

 激しく煮え滾る霊圧が、オルタの身に降りかかった。

 

『三界神仏灰燼と帰せ』

 

 それは、少女の持つ武具の始解だったのだろうか。死神の斬魄刀とはどこか異なる刀が、変容する。

 

『此処よりは無劫の彼方、ゆるりと征こうかのう、魔王剣よ』

 

 その剣は、煤けた煙をうっすらと漂わせ、地獄蝶の舞い踊る闇の中で、静かに燃える黒い薪を思わせた。

 

「……名前、そのままだな。安直」

『なん…じゃと…⁉』

 

 刹那。魔人の前には既に魔刃が迫る。刃渡りが通常の日本刀になったその剣を振るい、オルタは眼前の、斬魄刀の化身を討たんとする。

 だが、振るった腕に違和感が走る。それは戦場で培った経験か。このまま刃と刃を交え鍔迫り合いを行ってはならないと、本能が警鐘を鳴らしている。

 

『甘いわ。只の人斬り崩れの技で、この首取れると思うてか』

「!」

 

 即座に首を逸らし、刀を引く。荒ぶった自分の白髪が、軍服の少女の剣に触れた。そして明らかになる、先の直感が示した答え。

 

 ————髪の毛先が焼け斬れている。

 

(……燃えた。あの刀、()()()()と同等のエネルギーを刀身に宿しているのか)

 

『鉄砲隊、構えい』

「!」

 

 即座に、極地(独自の縮地のような歩法)を用いて、迫る光の合間を縫い走る。空間を上下、左右、前後と駆け巡り、身に殺到する赤光の雨を潜り抜けた。

 

『おお、疾いな。よう避けた』

「……鬼道系の霊力、いや滅却師の力?」

『うはははは!そのようなものではないぞ。では、もう少しばかり増やそうではないか』

 

 軍服の少女を囲うように宙に浮く火縄銃。その数、凡そ六十丁。

 

「さぁ、耐えてみせい!」

「!」

 

 渦を巻くように顕れ、少女を中心として廻る銃。そこから放たれるは、旧き神秘を毀して世を焼き拓く暴力の嵐。

 爆炎が立ち昇り、世界に崩壊の叫びが轟く。黒い土煙を引き裂いて後退るオルタは、背面から地面に叩きつけられた。身体に火傷や擦過傷を生じさせ、血の滲む瞼を片手で拭うも、その闘志は未だ衰えず。

 それを好しとする魔王は、軍帽を目深に被り直す。

 

『沖田オルタ。貴様の理想は優しく、幼い。誰も死ぬことがない、永遠の黄金郷。ああ、その在り方を望んだヒトを、わしはよぅく知っておる』

 

 ひらり、と浮遊する長筒を足場にして、空中歩行をする沖田に迫る魔人の弓兵。その整った顔からは想像もつかぬ、吊り上がった眦に燃える赤い瞳、犬歯を剝き出しにした壮絶な笑みがオルタの目の前にあった。

 

『だが、分からんか。それは只の泡沫の夢よ』

「……」

『夢幻とはいつか儚く消えるもの。何時か真実を知るまでの慰めよ。それは分かっておるであろう?』

 

 刀を振るう。黒い髪が靡き避けられる。銃が放たれる。白い髪が揺らめき弾丸が彼方へ飛ぶ。

 

「……そうだな。お前は正しい」

『では何故じゃ?何故、そんな道を歩もうとする?』

「それは————」

 

 

 

 

 

(わし)の耳は聞こえん

だから怒りなど感じん どうせ聞こえんのだから

言わせておけ

 

いや 聞こえる声もある

誰だったか そうだ 日輪の猿の声は聞こえたの

 

そうか

聞こえんのではない

 

(わし)にはヒトの声が聞こえんのだ

 

もう少しばかり気付いておればのう

のう 弟よ

 

故に 底がのうなってしまった

お主は もはやヒトではないのだろうなぁ

 

お主が難儀な道を往くのを

(わし)は どうにも……

 

ああ なんともまあ

是非も無いことよ

 

 

 

 

「……それでも、私は戦う。刀が折れても、その鞘で。鞘が壊れれば、この腕で。腕が裂かれればこの足で。足が砕ければこの牙で……私は戦う。そう、いつかの夜に願ったから」

『何のために?』

「護る、ために」

『ふふ。うははは……成る程。これは、わしの落ち度よなぁ』

 

 その身に深々と突き刺さる刀。口から赤い血が垂れる。

 世界が、元に戻っていく。苦悶満ちる炎の地獄から、無明の白の世界へと。

 

『……では、あとは任せるとしようかの。魔王を超えるやもしれぬ、この世の祈りによって生まれた魔神よ』

 

 浅打の中へと消えていく軍帽の少女。まるで答えを得たように、晴れやかな笑みを浮かべて、オルタを元の世界へと送り出す。

 

「まじん、魔人、魔刃、魔神か。まじんさん……うん、死神でなくなるのなら、悪くない」

 

 赤い鞘に納まった斬魄刀が、再び始解の姿となると、黄金の粒子となって、彼女は退去していく。後に残ったのは、名残惜し気な彼岸の花。そして、どこからか聞こえてくる辞世の句……。

 

 

 

 

 

動かねば

 

闇にへだつや

 

花と水

 

 

 

 

 

『————ふ、我もああいった童のようなことをするのだな。煉獄、主と顔を合わせなくて良かったのか?』

『ああ。俺の方は未だ対話もできない状態らしい。だが、にしたってしてやられたか。政治的な搦め手じゃ主は太刀打ちできない。いやこれは藍染一派の手合というより、あの綱彌代(カス)の思惑も混じってるのか?上手くやったなあの眼鏡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 雨が降っている。沖田オルタに、五大貴族の派閥に属する死神たちが追っ手として迫る。

 

「……神魔一対」

 

 始解したはずの斬魄刀に向かって、さらに解号を唱える沖田オルタ。右腕で掴んだ大太刀が変化し、両の手に握りなおされたのは雌雄剣。

 

「清浄光剣煉獄、無対光剣煉獄」

 

 持ち手が長く変化し赤い紐が付いた長剣は、技の具現である雌剣『清浄光剣煉獄』。幅広の短刀は、力の具現としての雄剣『無対光剣煉獄』。

 

「……往くぞ」

 

 雨垂れで濡れそぼった白い長髪がべたりと貼り付き、オルタの顔は見えなかった。

 

「……っ、あ、ぁあ……」

「————くそッ、やってられっかよ、んな事……」

 

 朽木ルキアの隣で、斬魄刀剡月を構えた死神は、そう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昭和20年。帝都西部、鳴木市。

 

 

「五年ぶりの日本、かぁ。魔法使い(ウィザード)の先生が言うには、リバース・ロンドンの上とはテクスチャーが違うとか、なんとか言ってたわね……。里帰りって言うには、タイミングが悪かったかしら」

 

 黒いセーラー服に、長い黒髪をサイドテールにした少女が列車に揺られている。

 

「世界が誕生した時、原初の海より最初に生まれ、そして不具の子として天と海の狭間に還された、名も無き()()()()……。その所在————」

 

 きりり、とした意志の強そうな眼差しが、東京の夜景を射抜いていた。彼女の手元にあるのは、大きな皮製の鞄。

 

「はぁ。『ウイング・バインド』のお偉方も身分を隠して童話竜(スノーホワイト)の調査でこっち来てるってのに……。私にはこんな眉唾物の与太話を回されるなんて」

 

 嘆息。それには、帰郷するまでにかかった気苦労が見て取れた。元々住んでいた国とは言え、英国で活動する今となっては敵国の只中。様々な手段を使って、船を乗り継ぎ遠回りをして此処に来た。

 

「ダメダメ、これはチャンスよ。折角、無理言ってコーンウォールに現存する鞘の宝具を持たせてもらったし。絶対結果を出して、霊墓アルビオンに潜る許可を貰って、……」

 

 嘗ての故郷、今の日本の様子を見遣る。

 

 太平洋の絶対国防圏は崩壊。

 

 上辺だけの大義を振りかざし、軍は無責任に徹底抗戦を叫ぶ。

 

 兵士は武器も食料も無いまま玉砕を命じられる。

 

 無関係な住民は巻き込まれて、恐怖や恨みを募らせ死んでいく。

 

 帝都の外は空襲で焼け野原にされている。夜に、悪霊が跋扈する。

 

 もう敗北は明らかなのに、誰も日本を地獄に変える大きな流れを止められずにいる。

 

「————ひとえ、賢吾、惣二郎……お姉ちゃんを許して」

 

 ひとり、荒れ果ててしまった、かつての生家を踏みしめる。空襲で焼け落ちた洋館は、その骨組みだけを残して、瓦礫と朽ちた木材に変わっていた。

 

「……ごめん、お父さん。お父さんの分まで、私が未来を守る」

 

 懐に入れていた、大切な家族写真を愛おしく撫でる。黒い闇の中、きらりと光るものがあった。

 

「誰かが止めなきゃ。もうこれ以上人が死なずに済むような……明るい未来を、奇跡を必ず手に入れる」

 

 その目が向かう先は、遥か遠く、遠く……。

 

「————私の、命を懸けて」

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 雨の降りしきる夜の街。その一角にある教会で、傘をさして歩いていた少女は立ち止まる。

 

「ちょっと、あなた大丈夫⁉」

 

 そこに蹲る人影があった。人々は見て見ぬふりをして通り過ぎていく。それに舌打ちをしながらも、少女は倒れている女人に近づくと、人々が彼女を視界に入れなかったその理由を知る。

 

(この、霊力……、人間じゃない!一体……、もしかして)

 

 傷だらけの体を覆う黒い装束と、ひときわ目立つ日本刀。そして、霊能力を持たない人間には見えない存在。その身体的特徴から、彼女は目の前の人物の正体を看破した。

 

「ねぇ、あなた、もしかして死神?尸魂界東梢局の!」

「……、ぅ、あ?……、お前は、誰だ……?」

 

 褐色肌の女死神は、疲労困憊の体を動かし瞼を開いた。

 

「私は藤宮(ふじみや)九十九(つくも)。尸魂界西梢局の、魔女(ウィッチ)よ!」




 皆さまありがとうございます。お、お気に入りが3000以上増えててびびびびってます……。ランキング2位に乗っていたのか……。


 タイトルとポエムはカッツイメージ。ただ、BLEACHの元ネタだと思しきバンド、ニルヴァーナの収録曲だけども。
 何でここで沖田VSノッブで士郎とエミヤのUBWやってんだよ……。
 次回、原作開始。ぶっちゃけ昭和20年の帝都霊王奇譚はフレーバーテキスト程度のエッセンスです。各々想像してください。

一護を死神にするのは?

  • オルタが刀をブスリ。初っ端から二刀斬月。
  • 原作通りルキア。オルタは夏梨に刀ドスッ。
  • その他。まさかの親父とか色々。
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