僕のヒーローアカデミア 僕の師匠は異世界最強の魔導士!? 作:ポップ推しの視聴者
No.1 緑谷出久:ニューオリジン
「…なんだ、ここは?」
ある人物は周りをキョロキョロと見渡しながら見慣れない光景に困惑する。
「見たこともない建造物だ…」
そう呟きながら裏路地に立っていた一人の青年は少しずつ歩み始める。
とにかく情報を得ようと色々なものに視線を送るもその目に映るものは全て自身の知り得るものではなかった。
やがて裏路地を抜けて、光のまばゆい世界へと導かれる。
その眩しさに思わず腕で顔に影を作る。
そしてうっすらと目を開くとそこには…
見たこともない世界が広がっていたのだった。
【僕のヒーローアカデミア IF STORY 僕の師匠は異世界最強の魔導士!?】
暗いトンネルを歩いていた。
希望がまるで感じられず、孤独な願いを、霞んだ夢を胸に抱いたまま光のないトンネルを俯きながら歩いていた。
(…僕は…ヒーローに…)
そんな事を考えながら、重い足取りで帰路を辿る。
【ヒーロー】
まさしくこの世界を表すのにこれほどまでにうってつけな言葉はないだろう。
この世界にはヒーローと呼ばれる存在がある。
この世界はそんな眩い光を放つ存在のおかげもあり明るく輝いていた。
だがしかし、光があれば必ずそこに影は生まれる。
ヒーローになれない、憧れてしまったが故に届かない苦痛に苛まれる存在が…。
「…。」
死んだ目で、歩を進める。
思い出したくもない記憶が蘇る。
(来世は"個性"が宿ると信じて…屋上からのワンチャンダイブ!)
クラスメイトが放った言葉。
恵まれた"
だがそこから放たれた言葉はあまりにも残酷で辛辣なものだった。
彼もそんなことを言われて黙っているわけがなかった。
しかし、
逆らえるわけもなかった。
なぜなら彼は"
(…ワンチャンダイブ…したら…僕も"個性"が…発現するのかな…)
そんな思いを馳せながら手に抱えるノートを強く握りしめる。
彼の心にも一切の光などは見えなかった。
フラフラとトンネルの中を歩いていると、マンホールの中から【何か】が湧き出てきていた。
だが少年は気づかない。
次の瞬間マンホールの中から出てきた【何か】は少年の体に襲いかかる。
「!!?」
「Sサイズの隠れ蓑みっけたーーー!!!」
そう叫び声を上げながら、少年の体にまとわりつく。
少年はノートを落とし、すぐさまその【何か】を引き剥がそうと必死に自身の身体を弄るが、何故か少年の指が【何か】を捉えることはなかった。
「残念だったな。オレは流動体でな!触れることなんてできやしないんだよ!!」
(そ、そんな!?ぐっ…い、息が…!?)
「お前の体、多少小さいがまぁいい。貰うからな!」
(なにが…!わけが、わからない…!!)
この状況に全く理解が追いつかない。
理解が追いつかないうちに意識はどんどん薄れていく。
(あぁ…まさか…こんな終わりか…)
抵抗も虚しく消えていく意識の中でこれまでの人生が映画のように流れていく。
悔しかった。
"個性"を与えられず、後悔ばかりのその記憶が巡りゆく。
(…ちく、しょう…っ…。)
呪った。
自分の運命を。
「バギ!」
短い時間振動が少年の鼓膜を揺るがす。
初めて聞く音だった。
次の瞬間、少年の口から大量の空気が流れ込んでくる。
「ぶはぁあーー!!」
少年は必死で呼吸をする。
これまでできなかった分を取り返すかのように。
何が起きたのは分からなかった。
だが、一つだけ感じたことがあった。
そして、重心を落としてこらえる姿勢を作る。
(な、何だこの風!?)
早い呼吸をしながらも、吹き飛ばされないように力を込める。
その強風に堪らえようとするも、強すぎる風にやがて堪えきれなくなる。
「う、うわぁ!?」
体がふわりと浮き上がり、体のコントロールが利かなくなる。
吹き飛ぶ。
そう感じた次の瞬間、何かが少年の腕を掴む。
少年は体を強張らせる。
今自分の腕を掴んでいるのが"
やがて風がやみ、浮いていた体が地面に落ちる。
うまく着地ができずに倒れ込んでしまう。
少年の腕から手が離れ、自由になる。
少年は顔を上げて自分の腕をつかんでいた人物を見上げる。
少年の手をつかんでいた青年はしゃがみ少年の高さに寄り添うように近づいた。
「大丈夫だったかい?」
そう問いかけながら、少年に向かって手を伸ばす。
【この出会いが、少年にとって運命を変える大きな出会いであることは本人たちも含めて誰にも分からなかった。】
「あ、ありがとうございます。」
少年はお礼を述べると、差し出された手を掴み立ち上がる。
青年は「ケガはないか?」と心配の声をかける。
少年は「大丈夫です。」と返事をしながら体の動作を確認する。
体に痛みを感じることはなく、ヘドロのような匂いが少し気になる程度のものだった。
少年は自分を助けてくれたであろう青年の姿をまじまじと観察をする。
黄色いリボンの巻かれた自分の頭よりもはるかに大きな緑色の帽子をかぶり、服は緑色一色になっていた。
そしてとても私服とは思えない黄色いマントを羽織っていた。
(あれはきっとヒーローコスチューム。ってことはこの人はきっとヒーロー。だけど…)
少年は再び青年の姿を観察する。
だが、どれだけ観察しても少年の記憶の中にいるヒーローの姿と青年の姿が合致することはなかった。
(僕が全く知らないヒーローなのか?)
そう感じながら地面に落ちたノートを拾い上げる。
そして大切そうに抱えながら青年に話しかける。
「あの、名前を伺ってもいいですか?」
「?そういうのを聞くならまず自分から名乗るべきではないかな?」
「(なんで僕から名乗らなきゃいけないんだ…。)えっと、僕は【緑谷 出久】です。」
「そっか、いい名前だな。出久という名前は。俺は…。」
そう言いかけて青年の言葉が止まる。
緑谷は変な様子になった青年に不安感を募らせる。
しかし、命の恩人でもあること人を放置するのはやるせない。
だが次の台詞に緑谷は驚きを隠すことができなかった。
「俺は、誰なんだ?」
「…え?」
緑谷は助けてくれた恩人の記憶をたどる手伝いをしていた。
そして情報を確認していくと、自分の名前と今のこの場所…いや、この国のことすらわからないことがわかってしまった。
(自分の名前も国も"個性"もわからないなんて…でも日本語は通じるし、自分の家族や住んでいた国の名前も言えてた…。)
大きなため息をつきながら、天を仰ぐ。
「だめだ!何にもわからない!」
「ごめんな、君にこんな大変な思いをさせるつもりじゃなかったんだが…。」
「いや、謝らないでください!あなたは命の恩人ですし、できることなら何かしたかったですけど…やっぱり、僕なんかじゃ何もできないみたいで…。」
「…。」
悔しさに拳を握る手に力がこもる。
また自身の無力さを突きつけられる。
何もできないと見せつけられた。
それを見かねてか青年が話し始めた。
「医者でもない人がどうこうしようなんて無理だ。助けてくれようとしただけで救われたよ。ありがとう。」
「!…すみません、ありがとうございます。」
感謝を伝えられ、緑谷は反射的に謝ってしまう。
そんな様子に苦笑いをする。
青年と少年は病院を目指し歩きながら話をしていた。
その内容は"個性"についてだった。
"個性"この世界では特殊能力のようなものを持った人間が数多く存在する。
炎を出す個性、氷を出す個性、爆発させる個性、加速する個性、硬化する個性、風を出す個性など様々な"個性"が存在する。
そんな超常的な力を持つ者たちが地球上の8割を占める。
それが今の世界情勢であった。
そしてその"個性"によって起こる犯罪を止めるのがヒーローなのだ。
「それで、俺のやっている行動がヒーローと同じだったから勘違いをしたと?」
「はい…。でも、あなたのさっきの【風】は"個性"ではないんですね?」
緑谷は首を傾げながら追いかける。
青年はそれに頷きながら話し始めた。
「あぁ、俺の記憶が正しければ俺のさっきの【バギ】は風の【魔法】だ。俺は魔法使いと呼ばれていたからな。」
"魔法"
青年が言うには彼が使う力は"個性"とは違う力で"魔法"と呼ばれる力のようであり、"MP"と呼ばれるエネルギーを使って発動するらしい。
そんな話をしているならで緑谷は一つ忠告をする。
「もう魔法を使うな?なぜだ?」
魔法を使わないことだった。
"個性"は自由には使えない。
個性を公に使うには免許が必要になる。
それがない状況で使うことは犯罪に該当してしまうらしい。
青年の魔法が"個性"に該当することはないだろうが傍から見たら"個性"にしか見えないだろう。
それが見つかったら捕まりかねない。
「…分かった。気をつけるよ、ありがとう。」
青年は再び謝辞を述べる。
すると緑谷は俯いて、ボソボソと話し始める。
「あの…僕…ヒーローに憧れてて。」
青年はその言葉を聞き逃さないように歩く足を止める。
緑谷もそれに合わせて立ち止まり、震える声で続ける。
「僕…"無個性"で、今まで何もできないって…だけど、"無個性"でも…ヒーローになれますよね?」
そう問いかけた緑谷の瞳には涙が滲んでいた。
その様子を見ればこの言葉にどれだけの思いが込められているのかは想像に難くはなかった。
青年は一度考えるが、真っ直ぐに緑谷の方へと向くと淡々と語り始めた。
「俺は、こう見えても命がけの戦いをしてきた。」
緑谷も落としていた視線を青年へと向ける。
「何度も仲間の死を見てきたよ。何度も…兵士の死を、村人の死を…友人の、死もね。」
辛そうな瞳をしていた。
それでも尚緑谷の目を見て話を続ける。
「はっきり言う。力のないやつが戦場にいても待っているのは死だけだ。」
「そ…そんな…!」
突きつけられた現実に、緑谷は絶句する。
もしかしたら…そう思って問いかけた言葉に返ってきた答えはあまりにも残酷だった。
わずかに見えた光さえも見放され、彼の心は再び光のない闇に沈む。
「そう…ですか…。ありがとうございます…。」
そう言いながらも、ゆっくりと歩き始める。
病院へ向けて歩き始めた緑谷に青年が声をかけることはなかった。
やがて十分程あるいた頃だろうか、何やら騒がしい物音が聞こえてきたことに二人は気づく。
気になった2人は互いに意思を確認することもなく、自然とそちらへ足を向ける。
少し進むとそこには人だかりがあり、野次馬が集まっていた。
その野次馬を避けてその中心を確認するとそこには悲惨な光景が広がっていた。
そこには、火の手が上がりその中に大きな影が暴れているのが見えた。
「あ…あれは!?」
そこにいたのはかつて自分に襲いかかってきたヘドロの
「あいつ、また人を襲って…!!」
青年は再びあのヘドロの怪物を倒そうと身を乗り出すがそれを緑谷は引き止めた。
「だ!だめですよ!免許もなく"個性"?を使ったら捕まっちゃいます!」
「だけどこのままにしてたらあの子が!!」
「そ、それは…あの流動体に対して有効打を持つヒーローが現れるまでは…!」
そう言いながら悔しそうな顔をして俯く。
そんな様子を見た青年は大きなため息をつく。
「お前、自分は助かったからってあいつが助からないかもしれない今を見捨てるのか?」
「違いますよ!あなたに捕まってほしくないから…!!」
そう言いながら、捕まっている爆豪に視線を向ける。
すると目が合った。
(あっ…。)
その何かを訴える瞳を見てしまった瞬間に、緑谷は動き出していた。
「え!?」
「な、何だあのバカは!?」
周りの野次馬やヒーローたちは飛び出していった一人の無謀な少年に驚き、目を見開く。
緑谷は飛び出してしまったことに自分自身がパニックになりながらも必死に頭を働かせる。
(ど、どうしよう!えっと…!くっそ!!)
やぶれかぶれ気味に背負っていたカバンを相手の顔にめがけて投げつける。
狙い通り敵の顔に当たり一瞬怯みが生まれる。
その間に緑谷は爆豪に駆け寄り、必死に助けようと液体を引き剥がそうとする。
「デク…てめえ、なんで…!」
「なんでか、わからないけど…!君が!助けを求める顔をしてた!!」
泣きながらそう答える。
怪物が邪魔をされたことに腹を立て、緑谷に襲いかかる。
ヒーローたちはいきなり現れた無謀な少年を助けようと駆け出すが明らかに間に合う距離ではなかった。
殺される。
そんな直前の出来事だった。
「ヒャド!」
鋭い声とともに、敵の体が凍りつく。
「だから力もないのに飛び出すな!死ぬかもしれなかったんだぞ!」
そう告げた青年はすぐさま少年二人の前に飛んでくる。
「だけど、まぁ。そのおかげで俺も戦う理由ができた。よくやった、緑谷。」
そう言うと爆豪と凍った怪物に向けて右手をかざす。
「少年。ちょっと痛いかもしれないが我慢してくれよ。」
そう言うと青年の右腕に光の魔法陣が浮かび上がる。
「
先ほどよりもさらに強力な風が吹き荒れ凍った敵を粉々にして吹き飛ばす。
そして少年の腕をつかみすぐさま魔法の効果範囲外である自分の直ぐ側に引き寄せた。
やがて風が止むと辺り一帯は静まり返る。
青年は少年の腕を離し、体に大きな怪我がないかを確認しながら語りかける。
「痛むところや大きな怪我はないかい?」
「…ねえよ。」
「そうか。」
そう短く答えると、緑谷の体を今度は視認する。
パッと見で大きな怪我がないことを見て確認すると、右手で緑谷の頭の上に置く。
緑谷は突然の行動に目を丸くして固まってしまう。
自分の名前すら忘れてしまった青年は少年の頭を優しく撫でる。
言葉に遭わられることはなかったが、それでも少年には青年の思いが、伝えたいことが理解できた。
少年の目からは涙があふれでそうになってくる。
青年が口を開こうとした瞬間、騒がしいまでの歓声がその耳に響いてきた。
青年と少年が周りを見渡すと、野次馬たちやヒーローがこちらに駆け寄ってこようとしていた。
青年は苦い顔を見せながら、緑谷のことを抱きかかえる。
「
そのまま魔法を唱えて大きく飛び上がると、そのまま逃げるようにその場から飛び去った。
「と、飛んだ!?」
「あ、あのヒーローは…いや、それともヴィジランテか?」
現場では倒した本人が消えたことで騒然となるものの、すぐさまヒーローたちは被害者の少年に駆け寄り、事態は収拾へと向かった。
現場からかなり離れた場所で着地し、再び2人だけの空間になった。
「はぁ、全く。本当に危ないな。」
青年はそうつぶやく。
緑谷はバツが悪そうな顔をして、俯いてしまう。
「力があってもなくても同じか…。」
青年は誰にも聞こえない声で呟く。
そして再び緑谷へと目を向けると真剣な声色で語りかける。
「さっき俺の助けがなければ君は死んでただろう。」
その言葉に返す言葉もなく俯いたまま言葉を紡ぐことはない。
それでも青年は続ける。
「それでも君は、ヒーローに…また助けようとするのかい?」
その言葉に反応を示す。
青年はその先に言葉を続けることはなかった。
緑谷の言葉を待つ。
緑谷の頭の中ではこれまで言われてきた言葉がフラッシュバックする。
【ごめんね、出久…ごめんね…!】
【お前に何ができるんだ?"無個性"のお前に!!】
【力のないやつが戦場にいても待っているのは死だけだ。】
数々の言葉が浮かんでは消える。
暗い暗いトンネルの中のようだった。
希望はなく、光もなく、"個性"を与えられなかった自分は全ての希望がない世界も同然だと思っていた。
だが、今は違った。
何か劇的に変わったわけではない。
ただ、自分が諦めたくない
それだけで十分だった。
顔を上げた緑谷の表情に怯えを感じられても迷いを感じることはなかった。
「僕は、やっぱりヒーローになりたい。それは…きっと諦められないと思います!」
まっすぐな瞳だった。
それを見た魔法使いは大きなため息をつく。
そして、緑谷に対して衝撃的な話を始めた。
「はぁ、力がなくても戦場にいくんじゃ命がいくつあっても足りないな。」
「緑谷、君からはわずかに
言葉の意味をすべて理解することはできなかった。
だが、その言葉を聞いて希望を抱く。
「戦場に行くのに丸腰で行くバカも…行かせるバカもいないだろう。」
緑谷の目をまっすぐに見つめて、魔法使いは告げる。
「俺が君に魔法を、戦う術を教える。」
「君はヒーローになれる。」
その言葉を聞いた瞬間に、緑谷の目からは様々な感情が混ざり合い、大粒の涙となって溢れ出てくる。
誰からも言われたことのなかった言葉。
少年が最も欲してやまなかった言葉。
それを魔法使いの青年が答えてくれた。
(活動限界だから物陰から見ていたが…)
やせ細った金髪の男性が、解決したヘドロ事件の現場を見ながら思考を巡らせる。
(あんなヒーローは見たことがない。何者なんだ?しかも見たところ"氷"と"風"の2つの"個性"を使っているように見える。)
本来"個性"は、一人一つまでしか持つことができないものになっている。
複合型の"個性"であればそれも可能であるが、それでも"個性"は一つだ。
(飛翔したのは風の"個性"だと言われれば、納得がいく。だが、氷はどうなんだ?風の"個性"の応用で何とかなるものなのか?仮に複合型だとしても、全く特徴の違う2つの個性が複合型として子供に遺伝することがあるのか?)
どんどん思考を巡らせて深く深くのめり込んでいく。
(もし複合型でなかったとすれば2つ以上の"個性"を持っていることになる。そうなれば【やつ】が絡んでいることは間違いない…!)
思考が一段落し一度大きく息を吐く。
そしてその男性は現場から離れ、帰路につくのだった。
オリジナルとは違い、ドラクエ世界の魔法使いと出会った世界線の緑谷。
彼との出会いは緑谷の物語を大きく変えていくこととなる。
次回もよろしくお願いします。