僕のヒーローアカデミア 僕の師匠は異世界最強の魔導士!? 作:ポップ推しの視聴者
突然USJに現れたヴィランたち。
緑谷出久は蛙吹、峰田とともに水難ゾーンへと飛ばされ、ヴィランとの直接戦闘を余儀なくされる。
緑谷出久はヴィランとの戦闘を蛙吹、峰田と協力した作戦で撃退し、広間へと足を進めた。
3人は、広間に進むがそこには再起不能の相澤先生と手を複数つけた謎の男、そして黒い皮膚を持つ巨大な怪物がいた。
掌の男が蛙吹に近づいたことに危機を察知した、緑谷出久はその男に向かって拳を突き立てるのであった。
(俺ですらこの"ギガブレイク"は完璧には使いこなせない。)
魔法使いの師匠は、炭と化し砕け散る木の枝と、粉々になった大岩を見つめながらそう呟いた。
どうやら木の枝でこれだけの破壊力を出したこと技が完成品ではないらしい。
なんと恐ろしい話だろうか。
(この技を使うと俺も電撃のダメージを受けるし、バイキルトの2重がけ、そしてピオリムを唱えた状態じゃないと満足な威力すら出ない。)
この技、技術は難しい。
剣に魔力をコーティングする技術、魔法を剣にまとわせる技術、そしてそれを維持した状態で剣術を扱う技術。
その全てが難しい技術だと話していた。
緑谷自身も何度か傘を使って、実験したことがあったがことごとく失敗し、何本も傘を壊して母親に怒られていた。
そんな彼が感じた別の可能性が、【魔法を纏った拳撃】であった。
剣にではなく、己の拳に魔力をコーティングしたうえで魔法を発動させて相手を殴りつける。
これまで何度か練習をしていたが、成功したことはなかった。
だが、今回は違ったのだ。
(やった!魔法拳!成功したぞ!)
そんな事を考えながら浮かれていると、攻撃によって巻き上がった粉塵が晴れていく。
そして攻撃をした対象を確認すると、それは掌の男ではなく、黒い皮膚を持った巨大な怪物であった。
緑谷は目を丸くする。
なぜ掌の男ではなく怪物が目の前にいるのか、どうやって目の前に来たのか、なぜダメージを受けていないかのように立っているのか、数々の疑問が浮かんでは自らで答えを導くことはできなかった。
動揺を隠しきれずにいると、掌の男が恐怖をかきたてるような笑みを浮かべながら話し始めた。
「Smashって、オールマイトのフォロワーかい?まぁ、こいつはオールマイトの100%すら耐える様にできてる。ガキの拳なんざ効きやしない。」
そう呟きながら、再び蛙吹と峰田に手を伸ばしはじめ、巨大な怪物はゆっくりとその巨体に見合った掌を広げながら緑谷の体を覆い隠すように掴みかかる。
緑谷はすぐさま後方に飛び上がり、怪物との距離を取る。
だがそれは同時に、蛙吹と峰田のピンチに対して自ら距離を離すことも意味しています。
緑谷は眼前の敵に対する警戒と恐怖心に囚われており、咄嗟に【助ける】という判断を見逃してしまう。
それに気づいたのは蛙吹と峰田の頭に男の手が触れる寸前であった。
【間に合わない】
誰もがそう感じざるを得なかった。
しかし、掌の男が2人の頭に触れど、いくら待てども、彼女たちの体に変化が起こることはなかった。
掌の男が小さなため息をつきながら振り返る。
「本当にかっこいいぜ、イレイザーヘッド。」
その言葉を聞いた生徒たちもすぐさま掌の男と同じ場所に視線を向ける。
するとそこには、まるで親の仇でも観るかのような形相で掌の男を睨みつけている相澤先生の姿があった。
血だらけであり、両腕も折られ、ほとんど行動できないにも関わらず、掌の男が個性を発動できないように自身の抹消を全力で発動させていた。
「
少年の身体は光を纏いながら、蛙吹と峰田の背後の水面に衝突する。
その速度と衝撃は凄まじく、水面には水の柱が形成される。
掌の男は目まぐるしく変化する目の前の戦況に、何度目かのため息をつきながらも、これ以上戦場を撹乱されては困ると再び蛙吹と峰田に向かって手を伸ばす。
が、その手が2人に触れることはなかった。
突如として2人の体は水中の中に消えていく。
(なんでこうもうまくいかない…。)
掌の男は作戦がことごとくうまくいかない今の状況にストレスがたまったのか、首元を掻き毟り始める。
その手の力はなかなかに強く、首筋には血がにじみ始める。
(ガキのくせに…足掻かないで俺に殺されろ。)
一方、突然水中に引きずり込まれた峰田はパニックになって、水中でのバタバタと体を動かすが肩に手を置かれて体を揺らされたことで、後ろに振り返る。
するとそこには口に指を当て、【静かに】とジェスチャーを送る緑谷の姿があった。
知人を見た安堵感で、峰田は緑谷に抱きつく。
緑谷は峰田の背中をポンポン、と軽くたたきながら蛙吹の手首をつかむ。
緑谷は目をつむると、必死にある場所を思い浮かべる。
(相澤先生の場所を思い出せ!もう何度も見ているし、ここからさほど離れてない!大丈夫だ、いけるだろ!!)
「
水中でほとんど発音ができないとはいえ、詠唱そのものができないわけではない。
ルーラを発動させて、蛙吹、峰田を連れた緑谷は光の尾を携えながら相澤先生の元へと瞬時に移動する。
そして、すぐさま蛙吹と峰田の2人に肩に触れているように指示を出す。
そんな様子を見た掌の男は目を丸くする。
(速いな、一瞬でイレイザーヘッドの場所まで移動したのか?)
「脳無。」
驚きを見せながらも、すぐさま巨大な怪物に指示を出し、子どもたちをまとめて仕留めようと動き出す。
イレイザーヘッドの近くにいた黒いモヤのヴィランも緑谷達に襲いかかろうとする。
だが、緑谷は冷静だった。
黒モヤとの距離は遠くはないが、ルーラを唱えるくらいの時間はある、そしてそれ以外のヴィランはそもそも遠すぎる。
相澤先生を抱えると、呪文の詠唱に入る。
「
まさに刹那だった。
いや、文字通り【あっという間】という方が正確だろうか?
緑谷が詠唱を始めた直後には、その巨大な怪物が自身の目の前にいることに気がついた。
眼前に巨体に見合った大きな手のひらが迫りくる。
あれほど巨大な腕だ、4人であっても皆同時に握りつぶすくらいわけないだろう。
恐ろしく速いはずであろう攻撃が、ゆっくりと自分たちに迫ってくるように感じる。
「…
怪物の指が自分たちに触れるより先に緑谷の詠唱が完了する。
すると、緑谷たちの身体は白い光に包まれ、
「…あの少年、脳無から逃げるとは…すごいスピードですね、死柄木弔。」
黒モヤのヴィランは、戻ってきた掌の男に対して話しかける。
すると掌の男…いや、死柄木弔と呼ばれた人物は入口を睨みつけながら言葉を返す。
「俺にも見えなかった。瞬間的なスピードじゃあオールマイトに及ばなくとも匹敵しかねないかもな。」
入り口付近にいた生徒たちは突然飛んできた光の玉に、驚きを隠せないでいた。
警戒をしながら、光が落下してきた場所へと近づいていく。
するとそこには…
「いっててて〜。」
倒れ込んでいる3人の生徒と血まみれになった1人の先生の姿があった。
その姿を見た生徒たちは、13号に寄り添っている麗日と芦戸を除いた全員がその4人に駆け寄った。
砂藤と障子は相澤先生を抱えて、少しでも戦場から遠い場所へと運ぶ。
それ以外の生徒たちで、現状の情報共有を行った。
瀬呂たちは、入り口付近で13号とともに黒いモヤと戦い、13号がやられてしまったこと、だが委員長を逃がすことに成功し今助けを呼んでいることを話す。
対する緑谷たちは自分たちが水難ゾーンに飛ばされていたこと、他のみんなも別の場所に飛ばされているであろうこと、水難ゾーンのヴィランは撃退し、戦闘不能状態であることを。
そして、相澤先生は今広場にいる黒い怪物にやられたことを話した。
先生2人の戦闘不能。
それはつまり、現時点でヴィランと戦える戦力は
その場にいる全員の顔が絶望に染まってゆく。
まだ相澤先生を圧倒した敵の黒い怪物は未だに健在である。
先生がやられた相手に生徒が太刀打ちできるはずもない。
誰しもがそんな絶望を抱えた中、地獄のような静寂がその場を支配する。
だが、立ち止まっているわけには行かない。
なぜなら彼らは子どもでありながらヒーローを目指す者たちなのだから。
「オールマイト先生たちが来るまで、時間を稼がなくちゃ。」
そう言いながら、緑谷出久はゆっくりと立ち上がり、広場を見つめる。
その言葉の意味が理解できなかったのか、その場にいる生徒全員が緑谷の方を唖然とした顔つきで見つめる。
だが、彼の視線が黒い怪物や掌の男に向いていることを察した者たちが、大慌てで緑谷に制止をかける。
だが、それでも緑谷は視線を…いや、警戒を広間のヴィラン達に向けたまま話し始める。
「あの黒い怪物なら、ここまでものの数秒で来れる。そして僕らはまとめて全滅だ。」
黒い怪物に襲われた緑谷だからこそ、あの怪物の力の片鱗を味わった彼だからこそ、どれだけ恐ろしい存在かを理解できた。
攻め入られたら、1-Aは簡単に殲滅される。
生きるためには、生き残るためには、時間稼ぎをしてオールマイトが来るまで耐えるしかないのだと。
「僕が、時間を稼ぐ。」
その言葉の重さを感じ取ってしまった生徒たちは言葉を失う。
その覚悟の重さが彼らにも伝わったのだ。
生徒たちが見た緑谷の姿はかっこいいヒーローではなかった。
視線の先にいる人物は、広間にいるヴィランを警戒こそしているが、身体が震えているのが見て取れる。
そしてその顔には明らかな恐怖が浮かんでいるのも分かった。
恐怖を感じてなお、生き残るために戦う選択肢を取ろうとしていたのだ。
「もし、戦える人がいるなら、遠距離から僕をサポートしてほしい。ヴィランの妨害や僕の援護をしてくれると助かるよ。」
そう伝えると返事を待たずに、大きく深呼吸をする。
そして
ヴィランの方は既にこちらを睨みつけているのが分かり、今にもこの入り口へと攻め入るのではないかと感じ取る。
それを確認した緑谷は迷わずに飛び出していった。
「
死柄木弔と黒いモヤ、そして巨大な怪物は入り口を見ながら次の行動を考えていた。
1人の生徒がこの施設から逃げ出してしまったため、プロヒーローたちが続々とやってくるのは明白であり、時間の問題であった。
生徒を数人殺してから帰ろうとしたものの、殺そうとした生徒には逃げられてしまい、まだまともな成果を上げられていないような状態だった。
イレイザーヘッドに広間のヴィランはほとんど制圧されてしまっており、数による作戦は不可能になっていた。
そんな状況に死柄木弔のストレスはかなり溜まっているようだった。
「なんだよこれは、まともな戦果一つ上げてないじゃないか、あぁ~生徒どもを皆殺しにしてオールマイトに突きつけてやるでもしないと腹の虫がおさまらないっての。」
ストレスを吐き出すかのように、首元をかきこわす。
黒いモヤも落ち着いてくださいと、彼に伝えるもののその作戦そのものに否定的な意見はないようだ。
黒い怪物はそんな会話に参加する様子は一切なく、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
そんな様子を見るに黒い怪物はただの生き物なのではなく、生物兵器と呼ばれる類のものなのであろう。
主人の命令のものに任務を遂行していく。
そしてその巨大な生物兵器に、死柄木弔も黒モヤも信頼を置いていることがわかる。
そして、その生物兵器に向けて死柄木弔が生徒の虐殺命令を伝え、行動を起こそうとした瞬間、彼らの数m先に何かが降ってきた。
なにかの現れた場所へと視線を送ると、そこには先ほど生徒たちを連れて逃げ出した体操着の少年が立っていた。
緑谷は着地をしてすぐさまヴィランを警戒して、全身に緊張を走らせる。
だが、構えを取ろうとはしなかった。
その場に立ち尽くし、平静を装う。
しかし、魔力は手に集めいつでも魔法を放てる準備はしておく。
そして、3人のヴィラン達と対面する。
ヴィランたちはその姿をとらえると会話をやめて、凝視する。
そんな状況に緑谷は冷や汗を額に浮かべながらも、必死に平静を装う。
そしてあることを投げかけた。
「なんで、オールマイトを殺そうとするんだ。」
一文字一文字をゆっくりと正確に発音し、ヴィランに問いを投げる。
そう、別に彼らと戦闘をする必要はないのだ。
緑谷の目的は、オールマイトが、先生たちがするまでの時間稼ぎ。
それを達成できるのであれば対話であろうが牽制であろうが何でもよかった。
緑谷はゆっくりとだが確実に相手に伝わるような話し方を続ける。
すると死柄木弔と呼ばれた人物が、緑谷にこう返した。
「俺は、この世界が嫌いなんだよ。この平和が。だから、その象徴には死んでもらわなきゃ。」
少なくともこの言葉で平和的な解決が望めないことが分かる。
だがそれでもと緑谷は対話を続けるもそれは長くは持たなかった。
「やれ、脳無。」
その言葉を言い終えると同時に、脳無も呼ばれた怪物が目にも留まらぬ速さで緑谷へと襲いかかってくる。
あまりの速さに目を丸くしながらも、すぐさま横へと飛び込むことによって緊急回避を行う。
なんとか攻撃を回避するもそのスピードはとても戦える領域のものではなかった。
回避に全力をかけたため、着地ができずにうつ伏せで倒れ込む。
そんな緑谷に向かって脳無が足を大きく持ち上げる。
そして、緑谷めがけて踏み抜くも、緑谷はコロコロと転がりながらその攻撃の範囲外へと逃げる。
転がりながら逃げるもそのすぐ後ろからは、恐怖を感じるほどけたたましい轟音が、大地が割れる様子を伝えてくる。
このままでは埒が明かないと、緑谷は真空呪文を脳無に向けて放ち、その反動を利用して起き上がる。
そして脳無を睨みつけるも、視界にいた脳無は目と鼻の先であった。
「ひっ…!」
小さな悲鳴がこぼれ出る。
緑谷を握りつぶさんとする左腕が、彼の身体に迫りくるもその手のひらは空を裂く。
運がいいのか悪いのか、緑谷はバランスを崩して尻もちをついていた。
攻撃自体は躱せた。
だがしかし、尻もちをついているということはいまこの瞬間、緑谷は全くの無防備であるということの証明であった。
悪魔の右腕が、緑谷に迫りくる。
もうだめだ!と感じて目を強く瞑り、顔を背けるも、彼の身体に衝撃が伝わることはなかった。
恐る恐る目を開けると、怪物の左腕に白い捕縛布のようなものがくっついていた。
だが、相澤先生はすでに戦闘を行えるような状況ではない。
つまりこの白いものは
「せ、瀬呂くん!!」
テープの個性を持つ瀬呂範太であった。
遠くの木々の間からテープを伸ばして、怪物の攻撃を止めていたのだ。
だがそれもほんの僅かな時間稼ぎにしかならない。
怪物は力ずくでテープを引きちぎると、再び緑谷に襲いかかる。
緑谷はすぐさま起き上がり、攻撃を躱すも、2.3発も躱せばもう怪物の攻撃速度に追いつけなくなる。
怪物の小指が緑谷の胴を捉えると、その凄まじい破壊力に緑谷の身体は簡単に吹き飛ばされる。
(こ、小指をかすめただけでこの威力なのか!?)
痛むお腹を押さえながら、怪物を睨みつける。
だがそんな威嚇は欠片ほども意味を持たない。
怪物はすぐに緑谷との距離を詰める。
瀬呂もテープで怪物の動きを妨害しようとするが、全てのテープは怪物の動きをほとんど止めることはできなかった。
緑谷は立ち上がり、魔法を放つ。
「
メラスマッシュが通用しなかったことから火炎呪文は通用しない。
真空呪文は先ほどはなち、爆裂呪文もすでに効果が低いことを理解していた。
となると、緑谷に残されている攻撃呪文は氷結呪文と電撃呪文のみであった。
氷結呪文が怪物の体に当たると、その部分は凍りつく。
通用していた。
もう一発の氷結呪文を放とうとするも、それより早く怪物が緑谷との距離を詰める。
緑谷の呪文が発動するか、怪物の攻撃が緑谷に直撃するかのその刹那、二人の間になにかが鋭く割り込んできた。
緑谷はそれに驚いてすぐに後ろに飛び退く。
目の前に現れたのは、巨大な氷壁であった。
それを見た瞬間、これが誰の手によって起きた現象がすぐに理解することができた。
氷の流れのもとをたどるとそこには体半分が凍りついている少年の姿があった。
轟焦凍だった。
轟は警戒心を最大にしながら、緑谷の隣まで歩いてきて、怪物と対峙する。
「てえめらがオールマイト殺しを実行できるだけの役と聞いた。」
その様子に掌の男が怪物の方へと振り向くと、今度は背後か爆発音が響き渡る。
掌の男はすぐに音の出どころを確認すると、黒いモヤが爆豪によって吹き飛ばされている光景が目に入る。
そしてさらに切島が現れて掌の男に向かって手刀を繰り出す。
掌の男歯攻撃を躱すも、それによって黒いモヤから分断される。
爆豪は黒いモヤを地面に押し付け、行動できないように爆発で脅しをかける。
どうやら怪しい動きをした…と爆豪が判断した瞬間にドカン!だそうだ。
なんとも怖い笑みを浮かべている、果たしてどちらがヴィランなのだろうか。
とはいえこれで
怪物も氷漬けにされて行動不能。
残るは掌の男だけであった。
この状況には流石の掌の男も呆気にとられるほかなかった。
「怖いなぁ、最近の子どもは。」
首元をポリポリとかきながらそうつぶやく。
だが次の一言で盤面は大きく変わる。
「まずは出口の確保だ、やれ。脳無。」
その言葉を紡いだ瞬間、氷の氷壁は崩れ去り、なにかの衝撃があたりに響き渡る。
3人の生徒は目を丸くしてある一点を見つめる。
それは、拳を振り抜いたであろう、脳無の姿と、空へと舞い上がる切島の姿だった。
切島の身体が岩山へと叩きつけられる。
何が起きたのか全く見えなかった。
だが原因を瞬時に理解する。
脳無が切島を殴り飛ばしたのだ。
「「切島(くん)ーーー!!!」」
「…っこの野郎!!」
爆豪はすぐさま脳無に向かって連続の爆破を繰り出すも、脳無は怯む様子すら見せない。
緑谷と轟もすぐさま脳無の方へと駆け出し、氷結系の技を繰り出す。
脳無は再び下半身を凍りつかせ停止する。
先ほどとほとんど同じ状況だ、油断などは一切できない。
「かっちゃん!!そいつ連れて逃げて!!」
「うるせぇ!クソナード!!俺に指図するんじねえ!!」
口では反論するものの、それが最善策であることを理解しているからか、すぐさまその場から離れるように移動を始める。
緑谷と轟の2人は掌の男を警戒しながら、爆豪と脳無の間に割り込んで対峙する。
脳無は轟と緑谷を視認すると、凍った体を無理やり動かし始める。
凍った身体を無理やり動かそうとすれば当然、嫌な音を立てながら凍った部分が体ごと砕ける。
当然のことながらそんな無謀なことをし始めた怪物に困惑する2人。
しかし、警戒を向けていた掌の男が不気味な笑みを浮かべながら脳無を見つめていることに気が付き、警戒を高める。
すると、脳無の腰から下の組織がぐじゅぐじゅと音を立てながら即座に生えてきたのだ。
それには思わず2人も後ずさる。
そして無事再生した足を使って大地を強く踏みしめて、2人に向かって突撃してくる。
轟は即座に自身の正面に氷壁を生成して、防御を固めるもその氷壁の向こう側から巨大な拳が瞬時に迫ってきた。
回避しきれずにその攻撃を受けた轟の身体は先ほどの緑谷のように吹き飛ばされる。
「
緑谷もすぐに脳無に向かって攻撃呪文を放つも、大したダメージは見られず、一瞬脳無の体が反応を見せるだけだった。
右手を振り払った衝撃で緑谷もふっ飛ばされて、爆豪への道を阻むものは誰一人としていなくなる。
瀬呂が脳無の姿をみて、攻撃を仕掛けようとするも身体は恐怖に震えて動くことができなかった。
爆豪の元へとやってきた、脳無はその剛腕を振り下ろす。
爆豪は恐ろしい速度で迫ってきた脳無に瞬時に反応するも、完璧な回避は間に合わずにその風圧が襲いかかる。
黒モヤも自由に動けるようになり、再び爆豪に狙いを定めた脳無。
しかし。次の瞬間爆豪の視界からの脳無は消え去っていた。
何が起きたのは全く分からずに、彼は呆然とするほかなかった。
脳無がなぜ爆豪の前から消えたのか、それは緑谷が電撃呪文を掌の男、死柄木弔に向かって放ったためである。
脳無はそれをガードしに瞬時に戻ってきたのだ。
そのガードを見た緑谷は、この戦いの唯一の希望を見いだした。
(もう、これしかない!)
緑谷の目には脳無の速度は追いきれない。
ならば、もう見る必要はない。
脳無がこちらを攻撃するときは、高確率で死柄木弔の声かけがかかる。
その声を認識した瞬間に呪文を発動させれば良いのだ。
「やれ、脳無。」
それとほぼ同時に緑谷は右手を天に掲げる。
狙いは自身の目の前、見えなくとも攻撃パターンから、どこに攻めてくるか推測が立つ。
「
右手を全力で振り下ろす。
すると
そしてそれは、見事に脳無へと直撃する。
「!?」
雷の直撃を受けた脳無の身体は一瞬硬直をする。
これが緑谷の狙いだった。
「
再び呪文を唱えて、脳無に追い打ちをかける。
そして続け様に3発目を叩き込む。
3発目の雷を受けた脳無の身体は、痙攣を起こしているかのように震え、攻撃を再開することはできなかった。
そんな状況に残るヴィラン二人は目を丸くする。
「いくら"再生"しようが、どんな"超パワー"を持っていようが、生物であることには変わらない。」
フラフラと立ち上がりながら緑谷は、2人のヴィランに対して強気の言葉を投げつける。
「生物である以上、体を動かすのは電気信号だ。それより強い電撃を何度も食らえば、体を動かせなくなるのは当然だろ。」
長くは持たないかもしれない。
だが、それでも彼の
それを聞いたヴィランたちは、緑谷の希望とは違う表情を浮かべる。
「それで?何秒保つかな?」
脳無の身体は痙攣を起こしているものの、その震え段々と小さくなっていた。
そう長くは保たないと分かっていた。
だがしかし、スカラもピオリムも効力が切れ、魔力も大半を使ってしまった緑谷に、これ以上の戦果を挙げることはほとんど不可能だった。
どうやら、後ろの2人は緑谷に攻撃を仕掛けるつもりはないらしい。
あくまで脳無を使って仕留めるつもりなのだろう。
そんな様子についつい苦笑いを浮かべる。
轟も切島も既にダウン。
爆豪も、まだ状況をつかめていない。
瀬呂は戦意喪失。
助けも期待できない今の状況はまさしく詰みであった。
脳無が再び動き出すのに30秒もかからなかった。
脳無はゆっくりと動き出し、緑谷の頭上に高々とその右拳を振り上げる。
もう緑谷に残された手立てはルーラで逃げることのみであった。
まだ魔法を一発放つだけの魔力はあった。
だがそれをしたところで、少しあとに追い込まれるのは目に見えていた。
それでも、今死ぬよりはマシだと呪文を唱えようとした瞬間。
彼の鼓膜を聞き覚えのある声が貫いてきた。
「
脳無と緑谷の間に向かって放たれたさその呪文は激しい突風を巻き起こし、緑谷を吹き飛ばした。
何が起きたのか、瞬時に理解した。
そして、瀬呂にぶつかりながらも視線を脳無の方角へと移す。
そこには、自身の師匠の姿があったのである。
今回も呼んでいただきありがとうございます。
今回でいよいよ10話を迎えることができました。
これも読んでくださる読者の皆様のおかげです、本当にありがとうございます。
来週の更新ですが、個人的な予定や事情がかなり忙しく動けないため、休載とさせていただきます。
そのため次回の更新は2週間後になります。
申し訳ありませんが、ご了承ください。
次回もよろしくお願いします。