僕のヒーローアカデミア 僕の師匠は異世界最強の魔導士!?   作:ポップ推しの視聴者

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雄英高校体育祭の予選を3位で通過した緑谷出久。次の競技、騎馬戦に決まったがなんと1位の配点が1000万pt!?1位となった轟はその重圧に動揺しながらも上鳴、飯田、八百万を自分のチームに勧誘する。対する緑谷は麗日、発目、常闇の3人をチームとして完成させる。そして始まりのゴングは競技場に鳴り響いた。



第19話 隠したもの

 

「START!!!」

 

その掛け声と同時に、6騎の騎馬が轟組をめがけて駆け出していく。

もちろん狙いは一択、1000万pt。

駆け出してきたすべての騎馬に対して対応しなければならない。

轟は、数ある手札のうち切り札とも呼べる手札を切る。

 

「八百万!」

 

轟の掛け声に呼応するように、すぐさま【なにか】を生成し、轟に渡す。

 

「麗日さん!発目さん!気を付けて!バック!それと、飛ぶよ!」

 

2人は頷いて、頭を下げる。

緑谷がボタンを押すと背後に背負っているジェットパックが起動し、空を飛ぶ。

轟の騎馬の足元がぬかるみ、姿勢を崩すも作戦の遂行に大きな問題はなかった。

 

「いくぜ!無差別放電、100万V!!!」

 

上鳴の大放電が1000万を取ろうと挑んだ不埒者共を一網打尽に感電させていく。

そして、感電している相手に八百万が創造した棒を伝い、地面ごと氷結させて動きを止める。

 

「過去の失敗を改善してるな。」

 

相澤先生が、状況を冷静に分析する。

 

「予選では躱されたからな。放電によって確実に足を止めてから凍らせた。流石と言うべきだな。」

 

そんな正確な戦局分析にプレゼント・マイクもグッドサインを相澤先生に贈る。

緑谷たちの騎馬は、後方にかつ、飛び上がることによって最も有効的な範囲からは抜け出していたため大きなダメージを受けることはなかった。

それでも彼らの皮膚はその電撃を感じ取る。

 

(と、轟くん!?こんな開幕から範囲攻撃を!)

 

轟チームは、氷結させたメンバーたちのハチマキを回収する。

しかし、回収に回っていたのは轟だけではない。

緑谷チームももちろんそんな好機を逃すわけもなく、他のチームのハチマキを奪いポイントを確保していく。

だがその様子には違和感があった。

轟の耳に聞こえてくるのは、激しく地面や氷を踏みしてる音、ホバーシューズの音、そしてその中に混ざる金属がこすれるような音。

何かを巻き取るような音だった。

轟は緑谷に視線を移すと、緑谷の腕からは金属の糸状の物が射出され、B組の鉢巻きを回収する姿が見つかった。

それを見た轟は、その音の正体を理解する。

 

「…アンカーショットか。」

 

先程の放電の回避で緑谷がいくつものサポートグッズを待っていることを瞬時に把握する。

ホバーシューズ、背部のバックパック、そして左腕のアンカーショット。

ホバーシューズ、バックパック、アンカーショットも全て機動力の確保である。

轟の視線を感じた瞬間、緑谷はその機動力を用いて即座に轟チームから距離を置く。

ホバーシューズは慣れるまでコントロールが難しい。

それを補助するためのアンカーショットなのだろう。

曲がる瞬間に、アンカーショットを地面に突き刺し、そこを軸として回転させることで曲がる。

そのためのサポートアイテムであることは瞬時に理解できた。

思考の中、ノイズが走るかのような確かな雑音が轟の鼓膜を揺らす。

音の主などは考えなくてもわかる。

反射とも言える速度で、棒を伝って自身の騎馬の右に氷の障壁を作り出す。

次の瞬間、その氷に爆音が響き渡り、空中には削れた氷が水晶のように飛び散っていく。

氷壁の日々和気の隙間から、互いの視線が交錯する。

爆豪も、轟も敵対心を全開にして睨み合う。

どうやら爆豪だけが爆破によって飛んできたようで、騎馬である瀬呂がテープで爆轟を自分の騎馬に連れ戻す。

ミッドナイト先生曰く、テクニカルでありセーフらしい。(地面に落ちたらアウト)

そんな乱戦が起きているなか、次に行動を起こしたのは緑谷チームだった。

いや、正確に言えば行動を起こさざるを得なかった。

動こうとした。

麗日が足を上げようとした瞬間何かが地面に吸い付けるような力を感じた。

麗日が視線を落とす。

ホバーシューズの裏に何かがある。

だがそれが何かまでは本人には見えない。

その答えは隣の発目の口から語られる。

 

「なんですかそのブヨブヨは!?」

 

恐らく、峰田のモギモギだろう。

だがどこから?

緑谷チームの騎馬に向かって大量のモギモギが投げつけられる。

視線の先に峰田の姿はない、だがそれよりも目の前のモギモギへの対応を即座にするべきだ。

 

初級火炎呪文(メラ)!!!」

 

緑谷が火炎魔法でモギモギを燃やし尽くす。

だが、それでもどんどん後ろからモギモギが投げられ続ける。

逃げるべきである。

だが動けない。

 

「緑谷!ホバーのモギモギを先に燃やせ!!」

 

そう言いながら常闇はダークシャドウに指示を出し、緑谷を掴んでホバーシューズのそばへと連れてくる。

緑谷は出力を最大限落として、火炎魔法をモギモギにぶつけて灰とする。

その間にもモギモギは投げつけられる。

 

「くっ!初級火炎呪文(メラ)!!!」

 

再び火炎呪文でモギモギを迎撃する。

再び騎馬に乗った緑谷はすぐさまジェットパックを作動させて戦線を離脱する。

すると、麗日が敵の正体を緑谷に伝える。

どうやら、障子くんの腕の中に峰田と蛙吹さんが隠れており、その檻の中からモギモギを投げつけていたようだった。

そして、火炎呪文でガードした時に蛙吹さんの舌を火傷させてしまったことを後で聞き、本気で謝る緑谷の姿が見られたらしが、それはもう少しあとの話だ。

先程の峰田チームは肝心の騎馬が凍らされており、動けないで散るため距離を置けば問題ない。

緑谷チームは周りの様子を見ながら、次の騎馬に狙いを定める。

それはB組の騎馬だった。

個性も分からないが、だからこそ挑む。

そんな緑谷の意志を感じ取った、メンバーは眼の前の騎馬へと攻め立てる。

小大チームは自分たちが標的とされたことに感づき、すぐさま狙いを緑谷チームへと定める。

 

「ニョキニョキニョキ!!」

 

吹出が突然擬音語を叫び始める。

常闇がそれとほぼ同時にダークシャドウの腕を伸ばす。

地面からいきなり生えてきたのは、木の幹のようなものだった。

それに合わせるように大小が個性を発動させる。

すると、木の幹が3人を守るかのように巨大な壁となって立ちはだかる。

ダークシャドウの腕は木の幹に深刻なダメージを与えるも一撃で破壊することはできなかった。

だが、もう一度腕を振り回せば、目の前の幹は粉々に砕け散る。

B組の騎馬は緑谷チームから離れるように後退する。

ダークシャドウは一度常闇の元へ戻り、緑谷チームはホバーと麗日のゼログラビティを駆使してB組大小チームとの距離をあっという間に縮めていく。

再び、吹出が同じ言葉を叫ぶと、同じように木の幹が生えてきて、大小が大きくし壁を作り出す。

凡戸が個性の発動する準備を整える。

彼の個性はセメダイン。

固形化する液体を出すことができる。

その個性で壁を破壊した瞬間に固定して動きを封じる。

そのつもりでいた。

が、目の前で壁が破壊させることはなかった。

壁を睨みつけていたが、壁の【上から】何かが飛び出してくるのが視界の端に映った。

B組大小チームは全員がその影を追う。

すると緑谷チームが空を飛んでいた。

そしてその緑谷の腕から何かが咄嗟に飛び出してくる。

騎手の大小はそれが何かを確認するよりも先に、その何かをギリギリで躱す。

凡戸は頭上を飛ぶ緑谷たちに向けて、液体を噴出する。

緑谷は右手を凡戸たちに向ける。

 

初級真空呪文(バギ)!!!」

 

突如として現れた突風が、凡戸の放つ液体をそのまま逆送りにする。

相手にめがけて放った個性がすべて自分たちに降りかかる。

B組大小チームは液体にまみれ、あっという間に固形化する。

空中の緑谷チームに他チームから牽制に近い攻撃がくり出されるも、緑谷は地面に突き刺さるアンカーショットのワイヤーを巻き取り、即座に着地する。

そして、動けなくなったB組大小チームのハチマキを直接奪い取る。

得点的にはすでに上位2番手に食い込んでいるため、決勝進出は濃厚だった。

だがしかし、それで止まることなどはない。

緑谷は自分の騎馬に静かに告げた。

 

「1000万ptを取りに行こう。」

 

その言葉に静かに頷いた騎馬たちは、そのまま轟のグループへと走り出す。

ここでプレゼントマイクから、現在の戦況の解説が放送で流れるも、その状況はあまりにも驚きを隠せないものであった。

 

「ば…爆轟チーム、0点!?」

 

その実況に緑谷は思わず目を見開いて爆豪のチームを探す。

すると、爆豪の頭には確かにハチマキがつけられてはいなかった。

どうやら誰かに奪われたようだったが、まったく想像ができなかった。

誰に?どうやって?いつ?

あらゆる疑問が頭に浮かぶ。

だが、そんなことを考えている頭に一つの鋭い声が貫く。

 

「緑谷!!今は1000万ptだろう!集中しろ!!」

 

我に返った緑谷は、常闇に謝罪をすると、すぐさま轟似視線を移す。

ホバーも、バックパックも、アンカーショットもまだまだ問題なく動く。

消耗はほとんどないと言ってもいい。

時間は後半分。

轟チームも自分たちの姿を認識したのか正面から対峙する。

 

(来たか。)

 

轟の言いたい言葉が感覚でわかる。

その瞬間、緑谷は背中を押されたかのように轟チームに向かって突撃していく。

轟の右側から、巨大な氷結が緑谷チームに襲いかかる。

緑谷チームは、バックパックを作動させて氷結を飛び越えてさらに進軍を進める。

だが、一瞬。

巨大な氷を飛び越える手前のわずか一瞬。

しかし確かに一瞬だけ氷河によって視界を遮られ、轟チームを見失った。

飛び越えた瞬間に緑谷たちが見たのは、何かのマントを被る轟チームの姿だった。

何をするか瞬時に見抜いた緑谷は、即座にアンカーショットを放ち妨害しようと上鳴に攻撃を仕掛ける。

だが

【間に合わない】

 

「無差別放電…130万V!!!」

 

凄まじい電撃が緑谷チームを貫抜かんと一瞬で迫りくる。

アンカーショットに通電し、緑谷が感電する。

だが、大部分の電撃はダークシャドウを身を挺して守り、致命傷は何とか避ける。

空中の勢いは完全に止められて、その場に落下する緑谷チーム。

緑谷は痛む全身にムチを打って、常闇に感謝を伝える。

しかし、常闇は緑谷に急いたことを鋭く責める。

 

「急いたな、緑谷。相手は予選TOPだぞ。」

 

緑谷は苦々しい顔をしながら頷き答える。

そして、その甘さは確かな結果となって緑谷チームに襲いかかる。

 

「で、デクくん!バックパックから変な音と煙が…!!」

 

そこで初めて気がつく。

感電したであろうバックパックが嫌な音を立てている。

使えないことがはっきりとわかる。

そして、その音とは別に静かな崩壊の音が緑谷の左耳から聞こえてくる。

金属が軋み、壊れかけの機械音。

アンカーショットももう限界が近いだろう。

今の作戦のミスで、2つものサポートが壊れてしまった。

いや、まだアンカーショットは生きてはいるが、もう余裕はない。

焦る緊張感の中で、緑谷は思考を巡らせる。

今のミスを取り返さなければ、1000万ptを取るどころか騎馬戦を勝ち抜くことすら危ぶまれる。

緑谷はバックパックを脱ぎ捨てる。

発明が変な悲鳴を上げているがそんなことに構っている暇はなかった。

思考を巡らせる中で、常闇が緑谷と対話を始める。

 

「八百万さん…やっぱりすごく万能性が高い個性だ。」

 

「…いや、それより厄介なのは上鳴のほうだ。」

 

思わぬ返答に目を丸くして常闇を見つめる。

彼曰く、ダークシャドウとは闇の個性。

光が強いところでは扱いやすくはなるが攻撃力は弱くなり、闇の深いところでは扱いが難しくなる代わりに攻撃力が強大になっていくとのことだった。

攻撃力の低下、ポイントを追う立場での攻撃力の減少は正直に言えばかなり痛手だ。

だがそれでも立ち止まるわけには行かない。

再び緑谷の視線が轟を…いや、1000万ptを捉える。

 

「その弱点、他に知ってる人は?」

 

緑谷の問いに常闇は首を横に振ることで返答する。

緑谷は真っすぐに轟のことを見据える。

緑谷は相手の騎馬の戦力を分析する。

上鳴の表情に余裕はない、あと何発も放電を使うことはできなさそうだ。

一方八百万、飯田、轟はまだ余裕を見せていた。

緑谷は最たる警戒は轟と判断し、思考を巡らせる。

 

(轟くんの個性は強すぎる…。氷結だけでここまで戦えるなんて、熱の方も使われたら…。使われたら?)

 

自分の思考に違和感を感じる。

轟は予選で炎を使わなかった。

いや、それどころの話ではない。

 

(そう言えば…氷を溶かす以外で轟くんが左側を使うのを…見たことがない?)

 

轟のコスチュームの形状、これまでの轟の動き、個性の使い方。

それらを加味して緑谷は一つの仮説を導き出す。

そしてそこから一つの作戦をメンバーに伝える。

 

轟チームは緑谷チームを警戒する。

緑谷たちが構える。

 

「…!来るぞ。」

 

轟が静かに告げると、八百万も飯田も構える。

緑谷チームがホバーを使って素早く轟チームを右に膨らみながら狙ってくる。

飯田はエンジンの個性を活用して、その速度でホバーに負けず劣らずの速度で轟の騎馬を牽引する。

轟側からみれば、最短距離ではなくなぜか不可解に膨らみながら接近しようとしてくる緑谷たちに疑念を抱かざるを得ない。

 

「…作戦か?」

 

「警戒するに越したことはありませんわ。相手は…緑谷さんです。」

 

騎馬の飯田と八百万がそれぞれ警戒しながら緑谷を睨みつけている。

そんな戦況を見ていたエンデヴァーは自身の息子の愚かさにため息を漏らす。

 

見抜かれてる(・・・・・・・)じゃないか、アホが。」

 

それは轟自身も感じていた。

緑谷が執拗に自身の右側にたとうとする理由。

それは、左側(凍結)しか使っていないことであった。

緑谷から轟に注がれる意識の矛先が左側に縛られている。

右に回り込まれた状態で、最短距離の凍結を放てば飯田が凍結に巻き込まれる。

轟は舌打ちをしながら、騎馬に後退を指示出す。

その逃げの一手を取った轟たちを見て緑谷は作戦固めた。

 

「全速!!」

 

緑谷が叫ぶと、緑谷たちの騎馬はさらに速度を上げる。

そしてそれと同時にアンカーを轟に向かって放つ。

荒々しい金属音を立てながら、迷いなく轟たちに向かうそのアンカー。

しかし、直線的な動きをかわすことは容易く轟たちはそれを容易にかわす。

それは緑谷もわかっていることだ、アンカーショットを使う理由は攻撃がメインではない。

曲がれない速度で加速する緑谷たちの騎馬が、地面に刺さったアンカーを軸にすることで曲がり始める。

 

「ちっ!」

 

轟が何とかアンカーに攻撃しようとするも、逃げながらかつ、離れすぎたことで難しい。

アンカーは嫌な音を立てながらも必死で地面にくらいつく。

保たない。

緑谷の騎馬のメンバーはそれを理解していた。

だがまだアンカーショットを失うわけにはいかなかった。

だからこそ知識を振り絞り、もう一つの案を実行する。

氷の壁に乗り上げ、アンカーの負担を減らしながらカーブを描く。

轟が作った氷壁、それに添うように曲がる。

速度を加速させ続けながら、カーブを曲がり切り、轟の騎馬に接近する。

轟も飯田に指示を出すが、加速の乗り切った緑谷たちの騎馬から離れることはできなかった。

アンカーショットを引き戻し、対面する。

 

「もらうよ!1000万!」

 

緑谷が轟の額に向かって手を伸ばす。

轟はすぐさま右手を自身の前に出して氷結の準備をする。

それを見た緑谷は予測していたのかすぐさま対策を講じる。

 

初級火炎呪文(メラ)!!」

 

右手から炎が舞い上がる。

放つことなく右手に留めながら、轟に突き出す。

轟はそれを右手で氷結を発動させながらガードする。

轟の氷結のほうが強いのか、緑谷の火炎呪文では冷気に押されつつある。

だが本命はそこじゃない。

黒い手が轟の額に向かって伸びてくる。

常闇から伸びるその黒い腕は、轟の右側から鉢巻に向かって一直線に進む。

 

「!させません!!」

 

八百万の腕から金属製のシールドが飛び出してきてダークシャドウの手を妨害する。

そのシールドを破壊することができずに鉢巻の手前で防がれる。

加速したままに轟たちと接敵し、勢いでも流れも緑谷たちにある。

だが、残り一押しが届かない。

何をしても防がれる。

緑谷たちの騎馬が轟たちの騎馬に衝突する。

 

「くっ!?」

 

どちらの騎馬もバランスを崩す。

緑谷の手が轟の首元にかけてある鉢巻に触れて、何本か奪い取る。

だが本命はそこではない。

狙っているのは頭のハチマキだけなのだ。

奪ったハチマキを左手に握りしめたまま右手で轟の額を狙うが全て捌かれる。

轟も思考を巡らせる。

この距離感はまずい。

上鳴の放電も、この距離では絶縁体シートをかぶせても、直接触れられて通電される可能性がある。

轟の氷結も緑谷の炎があるせいで本領を発揮できない。

迎撃方法が限定されすぎている。

だが、そんな轟たちを押しきれない緑谷たちも焦りが生まれる。

そんな時、轟たちの騎馬が止まる。

押されていたはずの轟たちの騎馬が踏ん張り、態勢を立て直し始める。

なぜ?

そう感じた轟の視線は一人の男に注がれた。

両足をフィールドにめり込むほど強く踏みしめて、騎馬を支える男の姿を見ていた。

 

「飯田!?」

 

「飯田くん…!」

 

驚愕する轟と、悔しそうに呻く緑谷。

飯田は両足に全力を注ぎ込みながら、緑谷に挑戦的な目線を叩きつける。

 

「言ったはずだ…君に…挑戦すると…!!」

 

飯田がさらに一歩踏み出し、緑谷たちの進撃を真っ向から抑え込む。

状況は五分五分に戻される。

 

「デクくん!勢いが…!」

 

埒が明かない。

そう判断した緑谷は騎馬に後退を指示して、一度下がる。

それを見た瞬間、轟の指示が出る前に八百万は自身の判断で絶縁体シートを創造する。

プレゼント・マイクの声がフィールド全体に告げる。

 

「残りあと一分だー!!なんと、轟!ここまで1000万を守りきってるぞ!?」

 

残り時間を考えてもこれが最後の攻勢になるだろう。

会場全体がそれを理解して視線が、緑谷と轟の双方のチームに集まる。

緑谷が最後の作戦を騎馬の全員に伝える。

 

「やってやりましょう!」

 

発目の掛け声に残る二人も力強く頷く。

その雰囲気を轟チームも感じ取り、迎撃態勢をととのえる。

緑谷が右手で重々しい物体を轟たちに向けて投げ飛ばす。

だが2つのチームの間は20mほど、ちょうどその真ん中あたりに落下していく。

 

初級火炎呪文(メラ)!!!」

 

火炎呪文を受けたホバーソールは大きな爆発を巻き起こす。

自身のサポートアイテムを意図的に破壊されたことに悲鳴を上げる発目。

その行動の意味を轟たちはすぐに理解する。

 

(((目眩まし!)))

 

爆煙が2つのチームの間に巻き上がる。

 

初級爆裂呪文(イオ)!!!」

 

緑谷の詠唱とともに、速度のある爆裂呪文が放たれる。

突如として煙を割いて、現れ出てきた光弾。

その性質が爆発であることは、轟チーム全員が把握している。

轟が即座に氷柱を作り出し、その光弾を防ぐ。

着弾した光弾は爆発し、氷柱を吹き飛ばす。

轟は目を見開く、攻撃を防いだはずの目の前から何かが伸びてくる。

アンカーショットだった。

地面に黒い影を作りながら、轟の額のハチマキ目指して鋭く伸びてくる。

爆裂呪文の背後に隠し玉としてアンカーショットを潜ませていた。

移動の補助としてではなく直接的にハチマキを取るための攻撃手段として使われたことに小さな動揺が生まれる。

だが、

 

「させません!!」

 

八百万が腕からシールドを創造し、アンカーショットを防ぐ。

アンカーショットはその衝突の衝撃がとどめとなり、その身体が崩れていく。

隠された2発目も防ぎきった。

飯田も、八百万も、上鳴も笑みをこぼす。

轟は緑谷に視線を移す。

その目はまだ何も諦めていなかった。

その瞳の奥には確かな光を…いや、策略が宿っていた。

終わっていない。

アンカーショットの影が急に地面から轟に向かって伸びていく。

その影はアンカーショットが壊れたのにもかかわらず形状を保っていた。

気づいた。

だが遅すぎた。

緑谷の本命に気づいた時にはすでに手遅れだった。

 

「ダークシャドウ!!!」

 

常闇の掛け声とともに、轟の額に巻きつけられた1000万ptのハチマキをダークシャドウの手が奪い去る。

爆裂呪文、そしてそれに隠した最後のアンカーショットさえも餌にしたダークシャドウの腕。

その何重にも重ねた謀略が、轟チームの強固な防御陣を貫いた。

轟チームの全員がその不意打ちに目を丸くする。

ダークシャドウの腕が常闇のもとに戻り、緑谷の首に掛けられる。

 

「と…!」

 

「とったぁぁぁぁぁぁあああ!!!緑谷!!幾重にも張り巡らされた策略で!ついに轟焦凍から、1000万ptを奪取したぁぁぁあああ!!!」

 

会場中から凄まじい歓声が巻き起こる。

残り15秒の奇跡、これまで轟が守りきっていた1000万ptの奪取に最高潮も盛り上がりを見せる。

 

「デクくん!!」

 

「やりましたね!!」

 

緑谷チームのメンバーもついにダッシュした1000万ptに感動をあらわにする。

緑谷の表情にも、騎馬戦始まってから初めての笑顔が生まれる。

勝敗は決した。

誰もがそう思っていた。

ただ1人を除いて。

 

「取れよ!!轟くん!!!」

 

ただ1人だけが、緑谷の首にかかる1000万ptを狙っていた。

名前を呼ばれた轟は、飯田を見つめる。

本気だった。

瞬時に何かを理解して緑谷の1000万を睨みつける。

次の瞬間、彼らの身体は全てを置き去りにした。




お久しぶりです。
かなり久しぶりの投稿になります。
これまで定期更新を心がけていましたが、かなりの空白を空けてしまうこととなり申し訳ありませんでした。
作品のモチベやアイデアの不足など様々な苦戦を強いられました。
こういったものを経験すると、本職の方々の大変さの一部でも垣間見える気がします。
また定期更新とはいかないかもしれませんが、少しずつ更新していければと思いますので、これからもよろしくおねがします。
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