僕のヒーローアカデミア 僕の師匠は異世界最強の魔導士!?   作:ポップ推しの視聴者

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10ヶ月の魔法の特訓を経て、ついに入試当日を迎えた緑谷出久。
彼の会得した魔法、そしてその戦術とは如何に?


No.3 入試

 

「こ、これが…雄英、高校…!」

 

その大きな校舎についつい見惚れてしまう緑谷。

雄英高校。

No.1ヒーローであるオールマイトはもちろん、No.2のエンデヴァー、No.4であるベストジーニストなど、多くの名実共に素晴らしいヒーローを数多く輩出している最も素晴らしく最も入学が難しいとされている高校である。

雄英高校のヒーロー科の倍率は毎年300を超えてくるという。

そんな超難関校へ緑谷は足を踏み出そうとしていた。

 

「どけ!デク!」

 

そんな怒号にも近い声が背後から聞こえてくる。

思わずびっくりして振り返るとそこにはヘドロの事件から話すことすらなかった友人の姿があった。

彼の姿を見た瞬間に体はガタガタと震えだし、ついつい挙動不審になってしまう。

声をかけようと話しかけるも言葉さえも震え、相手にまともに伝わっているかすらわからなかった。

そんな緑谷を睨みつけながら爆豪は横を通り過ぎて先に会場へと入っていく。

 

「俺の前に立つな。殺すぞ。」

 

そんな言葉を吐き捨てながら、彼は会場の中へと消えていった。

怯えることがもはや癖となっている現状に項垂れる。

夢にまで見た(魔法)を手に入れたと言うのにこれではまだまだ何かを成し得ることなどできない。

それを理解しているのか緑谷は首を左右に思い切り振り回すと、目つきを変えて雄英高校の校章を見つめる。

Aの文字を大きなUが囲い込む、そんな形をした独特なシンボルだった。

これから自身が挑む場所を再認識して、体に力がこもる。

意を決して、ヒーローとしての緑谷出久の第一歩を踏み出す。

 

【ガッ】

 

足が引っかかり、前に倒れ込む。

 

(そんなバカな…)

 

自分でも呆れてもはや言葉すら出ては来なかった。

倒れ込む体にもはや抵抗すらできずに運命を受け入れていた緑谷だったが、いつまでも顔面が地面に激突することはなかった。

 

(…あれ?まさか飛翔呪文(トベルーラ)?いや、まだ使えたことがないのに無意識に使えるわけが…。)

 

そう考えていると自分の体に手が触れる。

いきなりのことに驚いて視線を向けるとそこには自分よりも少し背が手の低い女の子が自分の体を支えていた。

そして少年の体を軽々と持ち上げて立てるような体勢に直してくれる。

少女が自身の指を重ね合わせると、少年の浮いていた足が地面に触れる。

どうやらこの少女が"個性"を用いて緑谷を助けてくれたようだった。

 

「転んじゃったら、縁起悪いもんね。」

 

笑みを浮かべながら緑谷に語りかける。

その眩しい笑顔についついどもってしまう。

 

「緊張するよねえ〜。」

 

「…え…へ…。…えっと……。」

 

「じゃあ、お互い頑張ろうね!」

 

そう言いながら助けてくれた少女は駆け足で会場の中へと向かっていった。

肝心の緑谷はと言うと、単語にすらなっていない文字の羅列のみを口から出していたにも関わらず…

 

(女子と喋っちゃった!)

 

と、わけの分からない解釈をしていた。

果たしてこんな調子で入学できたとしてもコミュニケーションを取ることができるのかと別の心配すら出てきてしまうような状態であった。

あまり時間を無駄にするわけにもいかず、緑谷もついに会場へと入る。

入試の説明が始まると大講堂のような場所の中心で一人の人物が話し始めた。

 

【プロヒーロー:プレゼント・マイク】

 

プロのヒーローでありながらラジオのメインパーソナリティを務めるなど様々な活動に関わっている人気のプロヒーローだ。

緑谷も毎週のラジオを鑑賞しており、感動ゆえについつい独り言を呟いてしまう。

そんなプレゼント・マイクだが、受験者(リスナー)一同に投げかけを行うも一切返ってくることはなく、一人だけテンションバクアゲのような場違い感を醸しながら説明を進めていった。

それも仕方ない。

なぜなら彼らはみな、人生をかけた受験に挑んでいる真っ最中なのだから、そんなテンションになれという方が難しい。

彼の説明を聞くに、ポイントを割り振られたロボットを倒していけという内容らしい。

まぁその中に一つ怪しい0ポイントがいたのだが、それは誤植などではないことがメガネの少年の質問で明らかになる。

どうやらお邪魔虫、マリオで言うドッスンのようなポディションらしい。

だが問題はそこではない。

 

「そこの縮れ毛の君!ボソボソと気が散る!」

 

なんと緑谷がご指名で注意を受ける。

これだけの大人数がいるならでこんな事ができるなど、どれほどの胆力かあるのかと思ったのも束の間、

 

「物見遊山のつもりなら、即刻雄英(ここ)から去りたまえ!」

 

と厳しい警告まで受けてしまった。

気圧されてついつい謝ってしまう。

こんな大衆の前でここまでの醜態を晒されてしまうのは新手の拷問なのだろうか?

そう感じてならなかった。

その後、いよいよ会場に移動したが、爆豪(同級生)とは違う会場だった。

どうやら同じ学校ごとに協力ができないように組まれているらしい。

そのとき同級生から発せられた衝撃的な言葉は聞かなかったことにした。

会場に着くと周りの人たちの姿に焦りを感じる。

個性に合わせた服装などを着ており、準備段階からすでに差を感じてしまう。

これから戦う相手の様子をこれでもかと観察する。

様々な個性に様々な服装。

自分たちの個性にある程度の理解と"慣れ"を感じてしまう。

 

(あの服装は全て自分たちの"個性"が問題なく使用できるように準備したものだろう…。不味いぞ、僕は魔法を実戦で使うのは【初めて】だ…。)

 

不安がこみ上げてくる。

師匠(魔法使い)にも言われた、経験不足。

それを試験直前から感じ取ってしまう。

嫌な考えが浮かぶ頭を横に振り回し、考えを振り払い、今一度観察へと戻る。

慣れていなかったとしても、ポイントを取れれば問題はない。

そう切り替え、視線を巡らせるとある人物で視線が止まる。

それは、入学試験の直前に自分を助けてくれた少女の姿だった。

緑谷は、まだお礼すらいえてなかったことを思い出し、少女に声をかけようと近づく。

しかし、その途中でいきなり肩に手が置かれる…いや、強い力で肩を握られる。

振り返ると肩をつかんできていた人物は、先程自身に対して強い警告を飛ばしてきたメガネの少年だった。

 

「君は何だ?妨害目的で受験をしているのか?」

 

またもや強い口調で注意を受ける。

その威圧感についつい怖気付いてしまう。

あまりから見ればまるで噛みつきぐせのある強面な犬が弱々しいチワワに向かって威嚇をしているかのようにでも映っているだろう。

 

【ラッキー】

 

会場全体が、そう思っているであろうことは空気からわかる。

心のなかで大きなため息をつきながら、かつての心のトンネルのような情景が再び彼の内面に湧き上がる。

決して大きなほころびではないがそれでも確かに彼の中に再び巣を作る。

そんな自分に嫌気が差し、拳を強く握りしめ、何かを噛み砕くかのように歯軋りをする。

 

「ハイスタート!」

 

そんな感情をぶち壊すかのように、突然言い放たれた言葉に、緑谷を含む会場の全員がある一点を見つめた。

それはすべての会場から見える高台の上に立つプレゼント・マイク(プロヒーロー)の姿だった。

 

「賽が投げられてんぞ!!?」

 

開戦の合図だった。

まさかそんなにあっさりと告げられるなど考えているはずもなく、会場にいる人間はもれなくその姿に目を奪わざるを得なかった。

しかし、次の【賽】という言葉を聞いた瞬間には受験者のほぼ全員は駆け出し始めていた。

そう、"ほぼ全員"は

緑谷は、その言葉の意味が理解できずに、プレゼント・マイクのすべての言葉を聞き終えてからゆっくりと振り返る。

そして目にしたのは脱兎のごとく走り去る受験生の姿だった。

その状況をようやく把握し目を見開く。

 

【出遅れた】

 

ようやく脳が状況を理解し、今のこの惨状に答えを出す。

マズイ状況だと理解した緑谷はすぐさま全速力で駆け出し、前にいる集団に追いつこうとする。

速度に問題はなく、最後尾にはすぐさま追いつき、試験に参戦する。

次の瞬間、建物の中から自分よりも大きなロボットが壁面を破壊しながら飛び出してくる。

 

(大丈夫だ!あれだけ訓練も特訓もしたんだ…!僕は、ヒーローになるんだ!!)

 

心のなかでそう叫ぶも口からはなんの言葉も音さえもこぼれることすらなかった。

目の前に標的(1P)が現れたというのに、足はその思いを嘲笑うかのようにガタガタと震え、体は固まったかのように動かない。

 

(な…怯えてるのか!?これもう癖か!?そんなバカな!?)

 

やがて足の震えは体全体へと伝染していき、ようやく口からこぼれたものも、言葉にすら満たない短い悲鳴にも似た音だった。

 

「据え膳。」

 

そんなセリフとともに、一閃の光がロボットの左側からその装甲をいとも簡単に貫き、目標を沈黙させる。

それに驚いた緑谷はその(レーザー)が放たれたであろう方向へと顔を向ける。

 

「メルシー。いいチームプレイだったね。けど…、」

 

金髪の派手な少年がこの攻撃を行ったらしい。

彼は彼にチームプレイの感謝を告げるとその後、ある言葉を告げてからその場を急ぎ足で去っていった。

緑谷はその言葉に目を見開く。

そして拳を強く握りしめる。

 

「でも君と会うことは二度となさそうだ。」

 

言われた言葉が頭で反復される。

だが試験前とは明らかに違うものがあった。

彼の中にあったトンネルの闇などは全て消え去っており、ふつふつと燃え上がる何かを感じさせていた。

体の震えなどはなく、むしろその顔には不敵な笑みが浮かべられていた。

 

(なんだ、簡単に倒せるじゃないか。なら僕にだってできるだろう…!なぁ、魔法使いの一番弟子!緑谷出久!!)

 

「うおぉぉぉぉぉおおお!!!」

 

心と現実で共に大きな雄たけびを上げると、彼は全速力で先ほどの少年を追い抜き、前線へと駆け上がる。

正面から現れたロボットが緑谷を標的とし、右アームを振り上げて襲いかかる。

それを発見した緑谷はもう怯えない。

相手を壊すイメージはさっきのレーザーで十分だった。

もう彼にはロボットを倒せるイメージが映し出されていたのだ。

右手を肩の高さまで掲げて引き絞る。

すると彼の右腕からは光の魔法陣が輝きを放つ。

 

「行くぞ!!」

 

右腕を突き出しながら呪文の名前を叫ぶ。

 

初級火炎呪文(メラ)!!!」

 

緑谷の右手から放たれた火球は、まっすぐとロボットへと飛んでいき直撃する。

火球の攻撃を受けたロボットは着弾した瞬間に爆発を起こし、粉々に砕け散る。

それを見た緑谷は拳を握り、再び不敵に笑う。

 (戦えるんだ…!僕は、僕の力で!戦える(ヒーローになれる)!!)

 

その先も順調であった。

緑谷の攻撃呪文はロボットが1Pであろうが2P.3Pであろうが問答無用で一撃のもとに行動不能にしていった。

だが、戦いの中で気づくことがあった。

それは、魔法力(MP)の残量だった。

魔法は無限に撃てるものではない。

だからある程度制限をしなければ、すぐにガス欠になってしまう。

そこでわずかに焦りを感じる、なぜならば…

 

「ふ〜、28P…。」

 

「45P!」

 

周りの得点が想定よりも高かったのだ。

1体ずつ処理していっては、いつか魔法力が空になり、追いつかれたり突き放されてしまう危険があった。

それゆえに一度彼は、攻撃をやめてロボットにも出会わずに辺りを観察できる高台に移動し、観察を行い思考を凝らす。

そこで師匠の言葉を思い起こす。

 

(魔法使いをやるのなら一番に覚えておくんだ。魔法使いは…)

 

「常に冷静でなくてはならない。」

 

そう呟きながら、辺りを見回す。

試験時間が決められている以上長考は死路である。

思考はするがものの10秒ほどであった。

作戦を固めた緑谷は、再び試験会場(戦場)へと駆り出す。

辺りには、攻撃による瓦礫が散在しており、投擲武器には困らなかった。

その瓦礫をいくつか拾い上げて、ロボットに向かって投げつける。

その瓦礫を受けたロボットは、もちろん標的を緑谷へと向ける。

そうして惹きつけられたロボットが6体。

得点や敵の大きさ、強度はバラバラだったが大きな問題ではなかった。

これから彼が行う呪文に強度はほとんど関係なかったからだ。

彼は6体のロボットの中心に向かって飛び上がると、空中から再び右手を突き出して標準を絞る。

そして6体のロボット目掛けてある呪文を放った。

 

初級電撃呪文(デイン)!!」

 

複数体のロボットに電撃が放たれる。

全てのロボットだけでなく、付近にいたロボットにも電撃が伝わり、機能を停止していく。

ロボット(機械)である以上電気には弱い。

だからこその作戦であった。

この一撃で、多くのロボットを戦闘不能にした威力のポイントを稼ぎ出す。

 

(37P…悪くはない。だけど、集める性質上効率自体は単機撃破よりも遅くなる。今僕は合格圏内なのか?それともまだなのか?)

 

そんな考えを巡らせながら再び作戦を実行し、ポイントを加算する。

3度目の作戦を開始しようとしたとき、突然大きな地響きが辺り一帯に響き渡る。

受験者の多くは、「地震か!?」と騒ぎ始めるがその音の正体を見つけた途端に例外なく受験生の全員が言葉を失うこととなる。

緑谷がその姿を見つけると、思わず目線をその巨体に奪われることとなる。

誰がこんなことを予想したというのだろうか?

 

【全長が100mはあろう巨大なロボット(お邪魔虫)だった。】

 

あまりに強大な力に戦意すら喪失するものが現れた。

まさかこれだけ巨大なものが(ヴィラン)になるとは思ってもいなかったのだ。

目の前の光景に行動を起こせないものがほとんどの中あるもの…いや、機械だけが行動を起こし始めていた。

その大きな右アームを自身の頭上に持ち上げて、そのまま振り下ろす。

恐ろしく強大な力はそのまま空気抵抗すらも意に介さず、コンクリートの地面に叩きつけられる。

強靭な強度を誇るコンクリートがいとも簡単に陥没し粉々に飛散する。

辺り一帯には強風が吹き荒れ、小さな雄英の志願者の心を簡単にへし折っていく。

 

【死ぬ】

 

直感した。

逃げるしかないと、感じた頃には多くの志願者は巨大ロボットとは反対方向に駆け出していた。

プレゼント・マイクの残り2分という掛け声ももはや彼らには届かない。

緑谷も逃げようとするがあまりの恐怖に尻もちをついて情けない姿を晒していた。

彼も周りの雄英受験生と相違なく、逃げ出そうとしていた。

四つん這いになりながら、勝てるわけもない巨大ロボット(ヴィラン)から逃げ出す。

そんなとき、激しい轟音の中に小さな何かを感じ取る。

 

「いっ…たぁ…。」

 

声だった。

小さな、本当に小さな声。

だがそれを聞いてしまった緑谷の行動は先ほどとは打って変わって凍りつく。

振り返り、声の下方向を向き直る。

正確な場所までは分からない、だが、その声は…

 

【ロボットのいる方向から聞こえてきた。】

 

「うぅ…。」

 

いた。

ロボットの直ぐ側に倒れている少女がいたのだ。

それは、入試の前に倒れ込みそうなのを助けてくれたいい人が、ロボットの足元でうつ伏せになっていた。

少年は駆け出していた。

ほぼすべての受験生がロボットから背を向けて逃げ出すなか、水色のジャージ姿の少年が、たった一人だけ、その巨大ロボットに向かって走り出す。

少年は巨大なロボットと少女の間に割って入る。

少女もその存在に気がついて視線を向ける。

するとその少年は屈託のない笑顔を浮かべながら振り返り、彼女にこう語りかけた。

 

「転んだままじゃ、縁起が悪いからね。」

 

明るく、そういった。

少女は目を丸くする。

まるで今の状況を理解していないのか、とでも言いたくなるほどに和やかで、柔らかい言葉で、優しい笑顔で語りかけられた。

少年はある日の出来事を思い出していた。

いや、既視感を感じていたと言ったほうが正確であろう。

10ヶ月前。

彼は今と同じ状況に立たされていた。

目の前で、助けを必要とする人がいたことを。

だが、今と10ヶ月()とでは大きく違うことがあった。

それは…

 

(大丈夫、きっとあいつにも通用する。)

 

少年は、右手に自身の魔法力を集める。

 

(破壊できなくとも間違いなく通用する。)

 

そして右手の人差し指をまっすぐに伸ばし、ゆっくりと頭上へと持ち上げる。

 

(あの時とは違うんだ…今の僕には…。)

 

彼の右腕が真っすぐに伸び切り、天を指さしたとき、天空には暗雲が立ち込み始める。

それはまるでこれから起こることを予期するかのごとく…。

 

中級雷撃呪文(ライデイン)!!!」

 

彼が呪文の名前を叫びながら、渾身の力を込めて指をロボットに向けて振り下ろす。

それとほとんど同時に、黒い雲から稲妻が放たれ、巨大なロボットに直撃する。

雷に打たれたかのごとく激しい轟音が辺り一帯に響き渡り、その光景をそのフィールドに居る全ての人間が見つめていた。

雷撃呪文の直撃を受けたロボットはガタガタを大きな震えを起こした後に、機能を停止した。

 

「「ぉっ…ぉぉぉおおおおお!!?」」

 

目の前で起きた出来事が理解できないかのように受験生のほぼ全員がロボットと一人の少年の姿に魅入られていた。

注目の的であった少年は、ロボットが機能を停止したのを確認すると、自分の両手をまるで信じられないとでも言うかのような顔で見つめていた。

 

(ほ、本当に僕がやったのか?こんなでかいロボットを…!)

 

その事実を噛みしめるかのように、両の手を強く握りしめる。

が、そんな時間はないことをすぐに思い出して、少女の下へと駆け寄る。

どうやら足を瓦礫で邪魔をされて動けないようだった。

緑谷は、その瓦礫を持ち上げて投げ捨てる。

少女に立てるかを確認すると、少女はすぐに自力で立ち上がる。

彼女は緑谷に対して短くお礼を告げる。

フラフラと立ち上がる様子を見て心配をする緑谷だったが、彼女が歩き出すのを見て手助けをすることは止めた。

今は試験中。

彼女も自分もお互いに狭き枠を争い合う敵同士なのだ。

だからこその行動だと自身に言い聞かせた緑谷は、安堵のため息とともに全身の力を一度抜く。

もう一度力を入れて、ポイント稼ぎをしようと決めた瞬間辺り一帯に響き渡るほどの大音量が響き渡る。

 

「終ー了ーーーーーーー!!!」

 

試験会場が一瞬静まり返る。

そして、終わったことによる安堵、衝撃、不安、等様々な感情が声となって試験会場を覆い尽くし始めた。

終わった。

その事実が頭で理解できた瞬間全身から力が抜けて尻もちをついてしまう。

 

(終わったのか…。試験が…。)

 

そう考えながら、巨大なロボットを見上げる。

ロボットの顔にあった赤いランプは消灯しており、活動が停止していることが分かる。

おそらく、試験が終わったと同時に電源を切ったのだろう。

緑谷のライデインでは、一時的に行動を止めることはできても完全に破壊することはできない。

そんな停止したロボットを見上げながらもの思いにふけっていた。

試験への緊張、ロボットへの恐怖、戦えた自信、巨大ロボットへの恐怖や戦えたことへの高揚など様々な感情が彼の頭を巡っているのにもかかわらず思考は極めて落ち着いていた。

 

(終わったんだ。)

 

その事実が彼の中で最も大きかった。

結果は全く予想すらできなかった。

最後の時間、巨大ロボット(0P)に使ってしまった時間にポイントを稼ぐことができなかった。

何分間かは分からないがそれでもその時間を無駄にしてしまったのは事実だった。

 

「あの!」

 

突然声をかけられてびっくりする。

視線を向けるとそこには先ほど助けた少女(良い人)が立っていた。

緑谷は驚いて飛び起きると、彼女に怪我がないか心配して慌ただしくなる。

少女も彼につられたのかアワアワとしだし、試験のあとだというのに不思議な空間が二人の間だけできあがっていた。

そんな時間も、大きなため息が一つでてくる程度の時間でしかなかった。

 

「あの…助けてくれて、ありがとうございます!」

 

少女は深々とお辞儀をし、感謝の言葉を緑谷へと告げる。

緑谷はその姿に見惚れる。

彼女の容姿に惹かれたのではない。

確かに彼女は可愛らしかった。

だがそこに魅了されたのではない、惹かれたのではない。

正面から、心の底からの感謝を告げられたことに彼は魅入られたのだ。

いつ以来なのかすら思い出せない、心からの感謝。

涙が出そうになるのを唇をかみしめて必死に堪える。

 

「…あの、け…怪我がない…こともないかもしれないけど…。でも、大きな怪我もなさそうでよかったよ。」

 

笑顔を浮かべながらそう答えた。

少女もケガがないと伝えるかのように笑顔で自身に問題がないことを伝える。

今度はその彼女の笑顔に思わず見惚れてしまう。

そんな時間を過ごしながらも、プレゼント・マイクの誘導もあり、試験会場をあとにするのであった。

 

 




今回も作品を見ていただきありがとうございます。
いよいよ緑谷が魔法を使い始めましたね。
まだまだ出てきている呪文は少ないですが今後どんどん増やしていこうと思いますのでよろしくお願いします。
今回デイン系の呪文が出てきましたが、漢字に少し特殊性があります。

デイン→電撃呪文

ライデイン→雷撃呪文

と漢字表記を変えています。
ライデイン以降の呪文については全て雷撃呪文の表記で行くつもりです。
また次回もよろしくお願いします!
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