【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
パンダは自分と同じ『完全自立型呪骸』と出逢う。
それは、夜蛾正道がここにいる事を意味していた……。
ティンカーベルと名乗ったプテラノドンは、完全自立型の呪骸だった。
そう知るや否や、パンダは大声で詰め寄る。
「おいじゃあ、まさみちはここにいるのか!? 頼む、今すぐ案内してくれっ!」
今自分は、彼女の生得領域に匿われている。少なくとも敵ではないハズ。
明らかに自分と同じ設計ともなれば、仲間意識があるのではと考えた。
「ちょっと言葉遣いには気をつけてよね。アタシ
「えっ、フツー上下関係逆じゃね? お兄ちゃんなのに目下かよオレ」
「どう考えてもアタシのが強いでしょ。助けて貰った自覚ある?」
「へへーっありがたき幸せでごぜぇやす!」
「くるしゅうない」
が、ずいぶん気位が高いらしい。
彼女は生意気な態度で突っぱねてくる。
「いやマジな話、助かったぜ。隕石喰らうなんて渋谷で十分だからナ」
「……えっ、『外』でも隕石って墜ちるの? トーキョーでも?」
「気にすんな小粋なパンダジョークだ。それより……恐竜呪霊を素材に作られた呪骸、だよな? そのわりにはもっとこう、悪意とかないのか……?」
「よくぞ聞いてくれました。ふふんそれはね~」
などと、あれこれ話している最中だった。
一瞬で、ジャングルに再び転移していた。
そして恐竜呪霊に狙われる!
「やっば時間切れだ! 走って!」
「おわわわジュラシックパークなのかピーターパンなのかどっちかにしろよもー!」
慌ててパンダは走り出す。小ぶりな体で密集した樹木をかき分け、シダ植物の影に突っ込んで行く。
真後ろに迫る歯の音を感じながらも、プテラノドンを背負って短い足を必死に回転させる。
「つーか飛べよ最初に颯爽と登場したみたく!」
「む、ムリ。さっきの、領域展開と同じぐらい呪力食うから。しばらく動けない……」
「領域展開レベルの呪力で生得領域の中身を出し入れしてたのか!? なんか本末転倒じゃねーの!?」
肩で息をするティンカーベルはこう言った。
「私、パパに逃がされたの! 呪骸として成立するにあたってバグ個体の不良品だからって!」
(――違う。まさみちのことだ、そういうテイで逃がしてやったに違いない!)
「だからパパの監禁位置がわかる! この空性結界の裏道がね! 案内してあげるから走って!」
信じるしかない情報だった。
――この恐竜呪骸たちも夜蛾が作った完全自立型呪骸で、監禁されて従わされている。
――ティンカーベルは夜蛾を解放したい。
誘導に従えば、夜蛾に会える! だがしかし――!
「いやっその! いま裏道に着く前に喰われかけてるんですけど!?」
「そこは頑張ってよお兄ちゃんでしょ!」
「都合のいーときだけ妹ぶってロートルに働かせるのかよ!?」
単純に実力不足だ。今の小さなパンダにはロクな戦闘能力が無い。
「一時しのぎでいい! 私が体力を回復するまでの時間くらい稼いで!」
「あーもう仕方ねぇやってやらあ!」
故にパンダは、『へそくり』を解禁する――。
―
――
―――
この戦闘手段について。過去、某G教師はこのように言及した。
「んー、まぁ戦えるっちゃ戦えるけど。ぶっちゃけ弱いしコスパ悪すぎるから止めた方がいーよ?」
……普通に失礼だよなアイツ。
と思いつつ、パンダも同意だ。少なくとも乙骨には絶対に止められる。
だが命あっての物金だ。やるしかない――!
「残穢全開ぃ――『ゴリラトプス・モード』!」
小さなパンダの体が、膨れ上がる。
そして四足歩行となり疾走する。
その頭には、お姉ちゃん譲りの
――肉食恐竜たちは、これ幸いと併走し、側面からの同時攻撃を仕掛けるも――!
「劣化『
徐に繰り出される、お兄ちゃん譲りの大腕に巻き込まれた。
祓うことはできなくとも、内部破壊攻撃を喰らった恐竜たちは転倒し、パンダをそれ以上追うことを諦める。
――ヤツらはマトモに『腕』のある生物と戦ったことがないのだろう。
ゴリラ要素が初見殺しとして機能してくれた。
「すごいすごい! やりゃーできんじゃん、その調子!」
「あーったく、パンダ遣いが荒いヤツらだぜ」
重すぎる頭を、無理やり大腕で支えながら、不格好な体を走らせる。
――この形態は、過去失われた『核』の
決して多くない今の呪力量では、長時間維持できない。
今でさえ、『たまに喋れる』将来を投げ捨ててまで戦っている体たらくだ。
(まぁどうとでもなるだろ。まさみちに再会したらワタ詰め直してもらおーっと)
このまま走り切る。パンダの決意は確かなものだった。
代償が重い分、パンダの疾走は力強くジャングルを駆け抜ける。
その進路に――。
「……嘘!? もう完成していたの!?」
「あぁ? 今度はなん――なんだあれ?」
新たなる影が――『王』が、到来した。
―――
――
―
一目見て分かった。規格が違うと。
それは、究極の『骸』であると。
(おいおい、ありゃ……地層そのものじゃねーか!?)
大地が静かに、しかし圧倒的な質量を伴って盛り上がる。
緑は押しのけられ、土と岩がゆっくりと裂け、まるで地底そのものが意思を持って起き上がるかのように、巨体が姿を現した。
隕石に葬られ、長い年月を影に隠れていた空洞な相貌は――こう名乗る。
「――よォ、
「なんだこのほねほねザウル、のわあぁっ!?」
幾重にも積み重なった骨の層の集合体。
その雄叫びに呼応し、地面を突き破る無数の白い柱――埋まっていた骨の山が、パンダの『ゴリラトプスモード』を打ち貫く。
――体力を回復させたティンカーベルが飛行しなければ、確実に『核』を破壊されていただろう。
「おーっティンカーベルじゃーん!
実際、パンダのことなど眼中にもなかったらしい。
骸骨の空洞な目は、小さくなったパンダをひっ捕まえて飛ぶ翼竜にのみ、視線を向けていた。
(千、いや万単位……いくつの魂が入ってんだ!? そしてそれを、無理やり三つの
もはや恐竜というより怪獣の出で立ちだろう。
骨と腐肉と石壁、そして強大な呪力が、かろうじて恐竜として認識できるフォルムに収まっている。
この空性結界内の屍が一存在に結集した、最高傑作そのもの――。
「
「――対御三家決戦用特級完全自立型呪骸『
「そうだ、オマエも
その呪骸の声には、悪意だけがあった。
親に対する愛もなければ、兄弟愛もない。
だが、ティンカーベルは迷っていた。
――『
そして――オマエだけじゃ『外』に出ても消えるだけ、という言葉に、どう答えるべきか逡巡していたのだ。
「ティンカーベル!」
「……っ、分かってる!」
辛くも、パンダの呼びかけにより逡巡を振り切る。
二人の姿は消え、ティンカーベルの『生得領域』へ転移する。
「あーぁ。ま、いいかぁ順番なんて……
墓穴は開かれた。究極の骸が、元気奔放に移動し始める。
底知れない暗闇へと引きずり込むために――。
呪いの骸ってんなら地層が最強素材だろ!
暴れ暴れ暴れまくれ!(なお暴れた数だけ優しさを知ることはない)