【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
パンダは自分と同じ『完全自立型呪骸』と出逢う。
それは、夜蛾正道がここにいる事を意味していた……。



第2部 51話『パンダとティンカーベル②』

 

 ティンカーベルと名乗ったプテラノドンは、完全自立型の呪骸だった。

 そう知るや否や、パンダは大声で詰め寄る。

 

 

 

「おいじゃあ、まさみちはここにいるのか!? 頼む、今すぐ案内してくれっ!」

 

 

 

 今自分は、彼女の生得領域に匿われている。少なくとも敵ではないハズ。

 明らかに自分と同じ設計ともなれば、仲間意識があるのではと考えた。

 

 

 

「ちょっと言葉遣いには気をつけてよね。アタシ最新型(いもうと)なんですけど?」

 

「えっ、フツー上下関係逆じゃね? お兄ちゃんなのに目下かよオレ」

 

「どう考えてもアタシのが強いでしょ。助けて貰った自覚ある?」

 

「へへーっありがたき幸せでごぜぇやす!」

 

「くるしゅうない」

 

 

 

 が、ずいぶん気位が高いらしい。

 彼女は生意気な態度で突っぱねてくる。

 

 

 

「いやマジな話、助かったぜ。隕石喰らうなんて渋谷で十分だからナ」

 

「……えっ、『外』でも隕石って墜ちるの? トーキョーでも?」

 

「気にすんな小粋なパンダジョークだ。それより……恐竜呪霊を素材に作られた呪骸、だよな? そのわりにはもっとこう、悪意とかないのか……?」

 

「よくぞ聞いてくれました。ふふんそれはね~」

 

 

 

 などと、あれこれ話している最中だった。

 一瞬で、ジャングルに再び転移していた。

 

 そして恐竜呪霊に狙われる!

 

 

 

「やっば時間切れだ! 走って!」

 

「おわわわジュラシックパークなのかピーターパンなのかどっちかにしろよもー!」

 

 

 

 慌ててパンダは走り出す。小ぶりな体で密集した樹木をかき分け、シダ植物の影に突っ込んで行く。

 真後ろに迫る歯の音を感じながらも、プテラノドンを背負って短い足を必死に回転させる。

 

 

「つーか飛べよ最初に颯爽と登場したみたく!」

 

「む、ムリ。さっきの、領域展開と同じぐらい呪力食うから。しばらく動けない……」

 

「領域展開レベルの呪力で生得領域の中身を出し入れしてたのか!? なんか本末転倒じゃねーの!?」

 

 

 

 肩で息をするティンカーベルはこう言った。

 

 

 

「私、パパに逃がされたの! 呪骸として成立するにあたってバグ個体の不良品だからって!」

 

(――違う。まさみちのことだ、そういうテイで逃がしてやったに違いない!)

 

「だからパパの監禁位置がわかる! この空性結界の裏道がね! 案内してあげるから走って!」

 

 

 

 信じるしかない情報だった。

 ――この恐竜呪骸たちも夜蛾が作った完全自立型呪骸で、監禁されて従わされている。

 ――ティンカーベルは夜蛾を解放したい。

 

 誘導に従えば、夜蛾に会える! だがしかし――!

 

 

 

「いやっその! いま裏道に着く前に喰われかけてるんですけど!?」

 

「そこは頑張ってよお兄ちゃんでしょ!」

 

「都合のいーときだけ妹ぶってロートルに働かせるのかよ!?」

 

 

 

 単純に実力不足だ。今の小さなパンダにはロクな戦闘能力が無い。

 

 

 

「一時しのぎでいい! 私が体力を回復するまでの時間くらい稼いで!」

 

「あーもう仕方ねぇやってやらあ!」

 

 

 

 故にパンダは、『へそくり』を解禁する――。

 

 

 

――

―――

 

 

 

 この戦闘手段について。過去、某G教師はこのように言及した。

 

 

 

「んー、まぁ戦えるっちゃ戦えるけど。ぶっちゃけ弱いしコスパ悪すぎるから止めた方がいーよ?」

 

 

 

 ……普通に失礼だよなアイツ。

 

 と思いつつ、パンダも同意だ。少なくとも乙骨には絶対に止められる。

 だが命あっての物金だ。やるしかない――!

 

 

 

「残穢全開ぃ――『ゴリラトプス・モード』!」

 

 

 

 小さなパンダの体が、膨れ上がる。

 そして四足歩行となり疾走する。

 その頭には、お姉ちゃん譲りの大兜(おおかぶと)

 

 ――肉食恐竜たちは、これ幸いと併走し、側面からの同時攻撃を仕掛けるも――!

 

 

 

「劣化『激震掌(ドラミングビート)』ぉ!」

 

 

 

 徐に繰り出される、お兄ちゃん譲りの大腕に巻き込まれた。

 祓うことはできなくとも、内部破壊攻撃を喰らった恐竜たちは転倒し、パンダをそれ以上追うことを諦める。

 

 ――ヤツらはマトモに『腕』のある生物と戦ったことがないのだろう。

 ゴリラ要素が初見殺しとして機能してくれた。

 

 

 

「すごいすごい! やりゃーできんじゃん、その調子!」

 

「あーったく、パンダ遣いが荒いヤツらだぜ」

 

 

 

 重すぎる頭を、無理やり大腕で支えながら、不格好な体を走らせる。

 

 ――この形態は、過去失われた『核』の残存情報(ざんえ)を『パンダ核』だけで無理やり引き出している。

 

 決して多くない今の呪力量では、長時間維持できない。

 今でさえ、『たまに喋れる』将来を投げ捨ててまで戦っている体たらくだ。

 

 

 

(まぁどうとでもなるだろ。まさみちに再会したらワタ詰め直してもらおーっと)

 

 

 

 このまま走り切る。パンダの決意は確かなものだった。

 代償が重い分、パンダの疾走は力強くジャングルを駆け抜ける。

 

 その進路に――。

 

 

 

「……嘘!? もう完成していたの!?」

 

「あぁ? 今度はなん――なんだあれ?」

 

 

 

 新たなる影が――『王』が、到来した。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 

 一目見て分かった。規格が違うと。

 それは、究極の『骸』であると。

 

 

 

(おいおい、ありゃ……地層そのものじゃねーか!?)

 

 

 

 大地が静かに、しかし圧倒的な質量を伴って盛り上がる。

 緑は押しのけられ、土と岩がゆっくりと裂け、まるで地底そのものが意思を持って起き上がるかのように、巨体が姿を現した。

 隕石に葬られ、長い年月を影に隠れていた空洞な相貌は――こう名乗る。

 

 

 

 

「――よォ、(オレ)だゼ」

 

「なんだこのほねほねザウル、のわあぁっ!?」

 

 

 

 幾重にも積み重なった骨の層の集合体。

 その雄叫びに呼応し、地面を突き破る無数の白い柱――埋まっていた骨の山が、パンダの『ゴリラトプスモード』を打ち貫く。

 

 ――体力を回復させたティンカーベルが飛行しなければ、確実に『核』を破壊されていただろう。

 

 

 

「おーっティンカーベルじゃーん! 後継機(おとうと)に会えて嬉しいだろ~(オレ)もだぜ! さぁ『外』行こう、全人類を地にブッ沈めてやろーぜ!」

 

 

 

 実際、パンダのことなど眼中にもなかったらしい。

 骸骨の空洞な目は、小さくなったパンダをひっ捕まえて飛ぶ翼竜にのみ、視線を向けていた。

 

 

 

(千、いや万単位……いくつの魂が入ってんだ!? そしてそれを、無理やり三つの(たましい)として区分させてるのか!?)

 

 

 

 もはや恐竜というより怪獣の出で立ちだろう。

 骨と腐肉と石壁、そして強大な呪力が、かろうじて恐竜として認識できるフォルムに収まっている。

 この空性結界内の屍が一存在に結集した、最高傑作そのもの――。

 

 

 

(オレ)の話は、……えっとなんつーんだっけ。や、やっ……夜蛾から聞いてるだろ~!?」

 

「――対御三家決戦用特級完全自立型呪骸『恐竜王(プロドロムス)』――ウチら恐竜呪骸シリーズの最終個体……パパ優秀すぎでしょ。予定より完成が早すぎるんですけど」

 

「そうだ、オマエも(オレ)の一部になれ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ? だったら(オレ)破壊行為(オレ)に貢献しろ!」

 

 

 

 その呪骸の声には、悪意だけがあった。

 親に対する愛もなければ、兄弟愛もない。

 

 だが、ティンカーベルは迷っていた。

 ――『恐竜王(プロドロムス)』の一部となる事を前提に、彼ら恐竜呪骸は設計されている。

 そして――オマエだけじゃ『外』に出ても消えるだけ、という言葉に、どう答えるべきか逡巡していたのだ。

 

 

 

「ティンカーベル!」

 

「……っ、分かってる!」

 

 

 

 辛くも、パンダの呼びかけにより逡巡を振り切る。

 二人の姿は消え、ティンカーベルの『生得領域』へ転移する。

 

 

 

「あーぁ。ま、いいかぁ順番なんて……(オレ)は、何もかも呑み込むだけだからなァ~ッ!」

 

 

 

 墓穴は開かれた。究極の骸が、元気奔放に移動し始める。

 底知れない暗闇へと引きずり込むために――。

 





呪いの骸ってんなら地層が最強素材だろ!

暴れ暴れ暴れまくれ!(なお暴れた数だけ優しさを知ることはない)
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