【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
――特級呪霊『花御』、再発生。
術式、身体構造ともに、過去確認された同個体と同格。
しかしその呪力量は、格段に上昇している。
「――
「押忍! ――えっ、あれ相手にタイマンですか!?」
その威圧、圧倒的実力差を前に。
夏油
まるで現実的に受け取れない命令に思えたのだ。
だが乙骨は至極真面目だった。
「脳負荷をクールダウンさせる時間がいるんだ。『呪いの種子』は必ず避けるよう気をつけて」
息を呑み、夏油勲は敵へ向き直る。
その呪霊は聞いたこともない言語を発話しているのに――意味だけは、不思議と理解できた。
「――やめなさい、愚かな
「私はただ、この星を守りたいだけだ。空も森も、命をもって泣いています。いまだ人間の舞台装置として消費される不条理に――」
単なる呪いの戯言ではない。独自の言語体系を確立している。呪霊としての格の高さを目の当たりにした、夏油勲は――。
「ひっ、ひぃっ! なんてことだ! これが大地の怒り! やはり大自然には逆らえないんだぁっ!」
などと恐れ慄き、腰を抜かして間抜け面を見せた!
(こいつとの実力差は明確だ! 正面からやりあえば瞬殺される! 時間を稼ぐために今すべきは――庇護すべき弱者ぶることだ!)
「くっ来るなぁっ! やめろぉーっオレにそばに近寄るなぁーっ!!」
無論、これは弱者の演技!
ピーターパンを見て学んだ経験が遺憾なく発揮された!
夏油勲は苦し紛れとばかりに、低級呪霊を次々と放った。
――それさえ、花御と触れただけで消し飛ばされるという結果を前に、
「ゆっ、許してくれぇっ! オレたちもこの世界のシステムに従うしかなかったんだぁっ!」
勝つためならば、土下座すら躊躇いなく彼は行う。
現に彼は擬似術師――自ら呪力を捻出できない半端者だ。
産まれたての花御にとっては、彼を殺す程度、赤子を捻るようなものに見えた。
「星に優しい人間がいることは彼らも知っています――しかし、その慈愛がどれだけの足しになろうか」
(――そういうスタンスなのかコイツ。じゃあ対話は有効じゃないな! 分かっちゃいたけど!)
「死して、賢者となりなさい」
慈悲深い言葉とともに、花御は拳を振り落とす。
勲の断末魔は、抗いようもなく刈り取られ――!
「なぁんちゃって⭐︎ やったれ、
「かぶりぃいいい!」
「――!?」
――る前に、凶悪な紅の大鋏が顔を出し、花御を殴り返した。
低級呪霊の消失反応の中、何度も死んで呪力出力をパンプアップさせた、超巨大ヤドカリ呪霊が!
(速攻だ! こいつは産まれたてで実戦経験が低い! そこに突け入り、攻め倒すっきゃねえ!)
「
「イエッサー! オラオラオラァ――っ!」
呪霊操術の利点のひとつは、持ち主が弱くても、持ち主以上に強い呪霊が出せることだ。そうして成立した奇襲に、この呪霊はもってこいの性能だった。
「かぶりゃぁああっ!」
(このヤドカリは式神! しかし防御力が全くない、容易に破壊できる……)
「復⭐︎活ぁっ! とりゃあああ!」
(――先ほどより呪力出力が上がった!? 攻撃に特化した式神を量産する術式! なんてピーキーな……!)
初見殺しに次ぐ初見殺し。翻弄される花御は、しかし優れた頑強さでダメージを耐え、事態に適用しようとしていた。
故にこそ、畳みかける。
「厄介だよなぁ、この術式は。オレが弱いことが利点になるだけじゃなく――相性ゲーを強制できるんだからよぉ!」
呪霊操術の最大の利点は、適用されようと別の呪霊を繰り出せばいいことだ。
夏油勲が繰り出す次の一手。
それは、この北陸
「よくやった
「これは――!?」
またも花御は瞠目する。
現れたのは、脈動する汚物の塊だった。
金属の塊はいくつもの口があった。
頭頂の煙突からは煙が、
その他からは黒い液体が、
とめどなく垂れ流され、汚染を広げていく。
その呪霊の姿もさることながら――真に驚いたのは。
自分が、別世界に放り込まれたという事実!
「――フシャアアアッ!!」
領域展開
掌印のもとに、広がる黒塗りの小宇宙。
花御に炸裂する必中効果。
――その効果は本来、人間や呪霊相手には『遅効性の毒』として機能する。
しかし自然という存在を圧縮し完成した花御にとっては――速攻性の猛毒となる!
「ぐぅっ、ううううっ!?!?」
「どうだ! オレはともかく、オレの仲間を舐めるんじゃあないぞ! オレは兎も角なっ!」
血を吐き、跪く。
いくつもの異常が身に起きていた。
時間をかけて耐え、適用する方針が悪手なのは明白だった。領域とは何か分からずとも、本能でどう対策すべきかは理解していた。
領域の主そのものを叩くべきだと。
「ぬ、ぅううう!」
「くっ流石にそうするか――!」
術式解放。花御は――『倒木攻撃』に打って出た。
自身の呪力によって具現化した巨大植物は、形状こそ歪ながら――『質量で叩き潰せばいい』という、至極もっともな
(『公GUY』はノロいし頑丈でもない! シンプルに殴られたら死ぬ! なんとかしねぇと!)
相性の問題で戦闘が成立してこそいるが、純粋なスペックは花御よりも数段劣る。
次の手を。次の攻め手を重ねることが、夏油勲には求められていた。
(しかも、あいつ――速すぎるだろ!!)
疾走する花御の速度は、倒木が到達する速度を上回っていた。
毒に蝕まれてなお健在の屈強なフィジカル。
術式効果の全貌も見えていない。
いかにして対処するか、勲に判断する時間がほとんどなかった――故に。
一分経っていたなど、思考の埒外だった。
「ありがとう、
「!?」
倒木が、『リカ』の両手に受け止められた。
そして花御の拳に、抜き放たれた刀身が正面衝突する。
――
「ぐっ――!?」
(浅い!? 半分『精霊』だから効きにくいのか……!)
本来、呪霊ならば即死する、反転術式のアウトプット。
それが決定打とはならなかったものの――乙骨憂太は、花御を飛び退かす事に成功した。
「乙骨さんっ!」
「接続限界まで残り1分――ここでカタをつける!」
「ラジャーです! 仲間パワーで押し切ってやりましょう!」
依然、求められるのは短期決戦。
夏油勲の呪霊操術と、乙骨の『