【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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第2部 57話『スーパーパンダVS恐竜王②』

 

「くらえーっ全方位骨スパーク!」

 

 

 

 『恐竜王(プロドロムス)』の叫びに呼応して、地の底から巨大な骨の柱が立ち上がる。

 

 鋭利な殺意と呪力の塊。その数々を──!

 

 

 

「いよっ、よっ、ほいっと」

 

 

 

 ──パンダは、ぽよんぽよんとバウンドし受け流す。

 貫通される前に、弾力に富んだ身を回して衝撃を分散。

 避けられない攻撃は欠損してもいい部位で受け、

 ゴムボールのように針の山を跳弾して、

 

 

 

「狙うは本た──」

 

「からの、追加増築ぱーんち!」

 

「あうち!?」

 

 

 

 『恐竜王(プロドロムス)』に、おもむろに生えた大腕に殴られた。

 またもバウンドし、パンダは「いてて」と立ち上がる。

 

 

 

「おまえ、恐竜のくせにパンチできんだな」

 

「てめぇ見て学んだんだ、白黒! つーか『核』のブラフ何回やんだよ、またハズレかよ! いーかげん気持ちよく殴らせろっ!」

 

 

 

 さすがに動きづらかったのか。『恐竜王(プロドロムス)』は自分で生やした腕を自分で喰い千切り、かみ砕きながらも地団駄を踏んでいた。

 

 パンダは考察する──コイツは呪骸として『骨を操る』能力を持つ。今の肉体改造もその一環であろう。

 

 

 

「そっちは分かりやすいな。バカでっかいの三つで隠しようもねぇ」

 

「おう! 王(オレ)の冠みたいなモンだからなァ!」

 

 

 

 『恐竜王(プロドロムス)』は胴体に、三つの大きな球体を抱えていた。

 パンダには、その部位の意味するところがすぐにわかる。

 

 ──完全自立呪骸としての基本構造。

 相互観測させられた三つの魂だ。

 

 だが同じモデルであっても、規格(スケール)が違う。

 

 

 

(たぶん恐竜三世紀ってヤツだよな。素材になった何万体もの恐竜呪霊の魂を、世代という大枠に押し込めて、ひとつの魂として定義してる……)

 

 

 

 この空性結界(ジャングル)にリポップし続けた恐竜型の呪霊。

 それを元手に構築された恐竜型の完全自立呪骸。

 それらすべての魂が、『恐竜王(プロドロムス)』に備わっているのだ。

 

 ──完成度が、違いすぎる。

 ──現にパンダは、既に全身の至る所が欠損し、中身(ワタ)を露出させていた。

 

 

 

「……なぁ、人殺すのやめられねぇのか。そしたら俺と、一緒に外へ出れるぜ?」

 

 

 

 パンダは、交渉を試みた。

 理論上は、あの部位を攻撃し続ければ倒せる。

 しかし──たとえ危険な相手だろうと、弟殺しは躊躇われた。

 

 思わぬ問いだったのだろう。『恐竜王(プロドロムス)』はしばし攻撃の手を止めて、「んー……」と小首を傾げた。

 

 そして、こう言った。

 

 

 

「ヤだね! 王(オレ)は外で力を示したいのさ! ついでに人間いっぱい殺すんだぁー!」

 

 

 

 パンダは理解した。ああ、こいつは子供なのだ。

 強大な力という生まれ持った玩具を、ただ思うままに振り回したいだけの、子供──。

 

 

 

「テメエいなくたって自分で出ていくっつーの! こーんな狭っちいとこじゃつまんねえ!」

 

「あーOK、よくわかったよ」

 

 

 

 交渉決裂。そう見るや、パンダは一息に踏み出していた。

 狙いは魂の含まれた胴体部位。

 そこにまっすぐと正拳を叩き込む。

 

 

 

(硬ってぇ! わかっちゃいたが重厚な造りだな!)

 

「やる気戻ったか! んじゃーいくぞ、モードチェンジだ!」

 

 

 

 易々とパンダの拳は、堅牢に重なった骨組によって弾かれた。

 そして『恐竜王(プロドロムス)』は、咆哮と共に地中の骨を呼び出す。

 再び自分に向かってくるに違いない、そう思ってパンダは身構え、

 

 

 

「いっただっきまーす! んがっんがんが!」

 

(自分で食った!?)

 

 

 

 予想と違った光景が飛びこんできた。

 骨の数々は、『恐竜王(プロドロムス)』の口腔に呑まれていく。

 そして目を疑った──『恐竜王(プロドロムス)』の図体が増していくことに!

 

 

 

(さっきの腕生やしたのはそういう──!)

 

「またちいちゃくなったなァ白黒ぉ!」

 

 

 

 倍返しとばかりの蹴りが、パンダを弾き飛ばした。

 逃れようのない上空に放たれた体を、突進する口が食らい付こうとして、

 

 ──パンダの姿が、その一瞬のみ消えた。

 

 

 

「んが!? ちぃっ、またコレかよ!」

 

(あぶねー。ありがとな、ラプンツェル)

 

 

 

 

 生得領域への待避。世界を断つ『解』であろうと機能する絶対回避能力は、バランス重視の『パンダ核』にも標準搭載されている。

 

 絶体絶命の瞬間を棚上げしたパンダは、『恐竜王(プロドロムス)』の通り過ぎた地点に再発生していた。

 

 

 

(そりゃーそうか。こいつの骨を操る能力は、自身にも機能する……)

 

 

 

 生存によって勝ち得た情報をパンダは整理する。

 

 ──巨体に反し、異様に軽やかな動きだった。

 骨を増設することでフィジカルを強化した、だけではない。

 

 ──『恐竜王(プロドロムス)』は、骨を呪力に還元できるのだ。

 それによって瞬間的に速度と威力を増していた!

 

 瞬間的な増設と還元。それが『三畳紀核』の強み──!

 

 

 

(──待てよ。それなら──できるか!?)

 

 

 

 パンダは、ふと思いついて、ソレを二の腕から外した。

 夜蛾から受け取っていた、ぶかぶかのグローブを。

 

 

 

「よし……やってみるぞ!」

 

「なにをしようってんだぁ、アァッ!?」

 

 

 

 再び突進する『恐竜王(プロドロムス)』を前に。

 パンダは、自身の主要核を変更する。

 

 

 

「って、そのメガネは!?」

 

 

 

    パンダ 夜蛾正道モード

 

 

 

「せりゃァ!」

 

「ぐが!?」

 

 

 

 長くなった手足(リーチ)によりアッパーが入る。

 間髪入れず顔面を蹴り、足場として──突進を受ける前に、パンダは跳躍。

 

 着地した足元の地面に、五本指の両手で触れた。

 

 刹那──土が、その手元に自ら集まり出した!

 

 

 

「……いよぉし、いいぞ。ここを、こうすれば……」

 

「なっ、まさみち!? まさみちじゃねーか、なんでそいつに!?」

 

 

 

 土を粘土のように手で取ってこねる。

 そうするうち、泥塊はワタへと変化していた。

 

 パンダは自ら、それを欠損部位に突っ込んでいく。

 

 

 

「なぁ知ってるか。どこぞの話じゃ、人間って土から造られたんだってよ」

 

 

 

 この形態のパンダは、呪力をワタに還元できる。

 だが例外として、呪術的価値の高い、この空性結界の地面も機能していた。

 

 そして、ワタに還元できるのは『自身』の呪力に限られず、

 周囲の、コ(・)ン(・)ト(・)ロ(・)ー(・)ル(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)呪(・)力(・)も含まれる。

 

 

 

「まっ、呪骸(おれたち)にゃ関係ない話だけどな」

 

 

 

 欠損が補われ、なおも質量(ワタ)が増大し──パンダは『恐竜王(プロドロムス)』と同等の巨体を得た。

 

 

 

「あれ? じゃあ、オマエ食べたらまさみち貰えるんだ! いよっしゃあ逃がさねえぞ!」

 

 

 

 巨体同士が激突する。

 パンダは格闘術で、恐竜王(プロドロムス)は身体性能を用いて。

 自身の骨子を燃やしながら快哉を響かせ合う。

 

 

 

 

(思ったよりテクニカルだな。骨を消費して自由自在にウェイトを調整している。それに──!)

 

 

 

 パンダの狙いは依然、恐竜王(プロドロムス)の胴体。

 しかし折っても折っても、それを覆う骨のガードは増設される。

 

 決め手がない。それは恐竜王(プロドロムス)も同じだった。

 

 

 

「だーっテメエどんだけ死にたくねえんだよ死ねよテメー!!」

 

 

 

 今のパンダは、核を呪力強化したワタで覆うことで隠蔽したうえで、核の位置のブラフを見せている。

 

 致命傷を与えようにも、危険を感じたなら『生得領域への待避』を行う。

 

 ──恐竜王(プロドロムス)がパンダを殺すには、パンダに危険と思わせない形で核を破壊する必要があり──全身を破壊しない限り、事実上不可能だった。

 

 

 

 むろん、質量で上回ろうと恐竜王(プロドロムス)は骨を喰らうが、パンダも土と大気中の呪力を吸い、巨大化を続けている。

 既に互いの図体は森林の木々を超えて、視界の半分が青空を占めた。

 大地を踏みならす両者の格闘は、怪獣決戦の様相を呈していた。

 

 

 

「そらそらそらぁ!」

 

(なんとか五分五分に持って来れた! むしろ火力ならこっちが上! いける、いけるぞ!)

 

 

 

 そのぶん恐竜王(プロドロムス)の身体増設と、パンダの身体増設の差が大きくなる。

 

 恐竜王(プロドロムス)は増設によって、自身の構造を変化させる。

 パンダは軽いワタのすべてに呪力を浸透させ、伸縮性によって威力を得る。

 

 ──すっかり拳にぴったりと収まったグローブを振るいながら、パンダは勝利を確信していた。

 

 

 

「ならァ! いいぜ! オレの最強モードを見せてやるぜぇ!!」

 

「なに──!?」

 

 

 

 ──恐竜王(プロドロムス)は、メイン核を変更。

 通常形態の『三畳紀核』でも、『ジュラ紀核』でもない──切り札の使用を決意した。





たぶんこれだけ強くなっても鹿紫雲には勝てない
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