【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
『空』の呪霊の領域展開。
影のない世界に囚われた伏黒恵に、
特級呪霊『黒沐死』と『虹龍』が迫る――!
――事は、電話口で急に伝えられた。
「彼女の内なるものが、活性化したり休眠したり。なんか不安定なんだよね」
「例の彼女ですか」
「うん。だからプランを変えたい。東京では『非術師の呪力』はほぼ呪霊に向かうから、確実に呪力消費ができるし。定期的に行かせて、彼女にメリハリを与えたいわけ」
「――で、その面倒を見ろと」
――嫌な予感しかしなかった。
東京攻略が進むのは結構、だが。
仮にも五人目の特級術師とされた――不発弾の面倒を、他の特級が見ろというのだ。
「いやぁ、禍福ってマブもできたし。いよいよ僕離れの時期かなぁって思うしさ……つってことでよろしくね。僕ワイハでバカンス行ってくるから⭐︎」
「もしアレが『完全』に暴走したら、対処できませんよ」
「あぁ大丈夫、その時はもっとヤバいの二体は来て、相手してくれるよ、多分」
「……はぁ?」
「でも大丈夫でしょ。もう恵も特級なんだから♪」
返答を待たず、電話は切れた――。
あとで一発殴ろう。
容易に想像できる笑顔に誓い、携帯を閉じた。
「……今の俺なら、やれるかもな。実際」
――本当、あの人は。
何年経っても、無茶振りを軽く言ってくれる。
―
――
―――
そこは――影のない世界だった。
「何故、邪魔ヲスル、術師――」
「ゴキブリの呪霊……乙骨さんが言ってたヤツか」
真夏のような日照りが全方位を覆う領域。
その天井に開いた一つ目から落ちる、得体の知れない雨――毒液を垂れ流し、体力を奪う。
――言うなれば、『空』の自然呪霊。
(まずアレを祓えない事には『影』が使えない。領域そのものが呪霊とかんなもんアリかよ――!)
それに加え――、
「――私ハ血ノ味ガ、好キ、ダッ!」
「っ、野郎――!」
唯一の攻撃手段、呪力を籠めた拳は。
横入りした『
こいつは『精霊』だ。『対魔の剣』といった正の呪力の攻撃も効かないだろう。
その絶対防御の向こうから、迫る『黒沐死』と『
「絶対に、バックがいるな」
確信した。できすぎている。
明らかに、伏黒恵をガチガチに対策している。
こいつらを組ませた、何者かがいる――!
「――ぐっ」
回避。だがすでに一度喰らった。
体内で孵化し、生じる呪力で強化されたゴキブリが顔を出す。
傷口の空いた側から、高濃度の酸性雨が染みこんでくる!
反転術式を回して対処するも――毒が複合的すぎて判別不能、間に合っていない。片膝をつき、
「ぶね!」
――シン・陰流『簡易領域』。
必中効果で落ちた雷をジャストで防ぐ。
が、その切れ間、再び打ち込まれる爛生刀――!
このままでは。ダメージレースで、ジリ貧だ。
「やっぱり、乙骨さんみたいにはいかないか」
伏黒は手を重ねる。
だが。黒沐死はハッタリだと判断、臆さず迫った。
「でもな……俺にもやり方ってのがあるんだよ」
『十種影法術』――影を媒介に発動する術式。
手影絵を模した掌印を結んで、対応した式神を召喚する。
だが。影なんて全方位から光を照らされるここには――!
「――『
「ぱぉおおおおお――んッ!」
――。えっ?
と、一瞬。その場の呪霊全員は固まった。
突然、ドコっと降り立った迫真の大音量、つぶらな瞳の特大質量。しかし、どこから?
疑問符が浮かんだ黒沐死と虹龍、だがともに上を見て、回答を得た。
吹っ飛んだ黒い制服の上着――ゴキブリと龍、故にできなかった発想。
「
――服の下の影を媒介に、式神を呼んだのだ!
それも最大サイズの死神を。
この中で影を確保するために――!
「――呪術師ッ!!
「――満象、放水!」
「ぷくぅ――ぱぉおおおんっ!」
一瞬の顕現。消える間際の影はそれでも主人に報いた。
その鼻先は溜めた水流を解放――突撃するゴキブリの軍勢を怒涛の質量で押し流す。
だがそれでも、虹龍に乗った黒沐死本体は健在。
それっきりで、満像は消える。
ここは魔虚羅でさえ存在できない影なき世界。
伏黒本体は、内部からゴキブリに喰われて手負の状態かつ、最後の式神を潰されたのだ。
――ならば、突撃あるのみ。
「呪術師――ッ!!」
黒沐死の爛生刀による攻撃、
虹龍による高硬度の防御が一体となった突進が迫った。それを――、
「――秘伝・『落花の情』」
影より
天与の暴君、その忘れ形見――オリジナルの『
「――抜刀ッ!」
あらゆる物の硬度を無視する、呪具の一閃。
魂を観測できる者のみが発揮しうる真価。
雷の妨害を呪力で弾き返し、間髪入れず。
肉体限界を無視したオートカウンターは――黒沐死より先に虹龍の頭を叩き切って落とした。
「――何故!?」
祓われた龍の背を下り、飛翔。
体制を立て直し、黒沐死は目を剥く。
――その隙だけで十分だった。
伏黒恵の手の上には。
万象の影によって取り出された『釈魂刀』と――『万里の鎖』が、連結され――振り回され。
「――――
なまじ領域内。逃げられる場所はない。
空間を埋めた斬撃に為す術はなかった。
生理的嫌悪は木っ端微塵、死の舞踊を踊って斬り祓われ、
地に埋めた卵もろとも刈り取られ、嬲られる。
そして、次こそ相手は。
この領域を張っている空の呪霊――!
「まずは。外を確認しないとな――!」
落雷を受けた。雨は強風と唸りを伴った。
問題ない。出力全開の『落花の情』、呪力のカウンターで相殺できる。
構わずフルスイング。有り余る鎖をたわませ、遠心力を束ねて一息に一点――射出。
真上へと、打ち上げた。
呪具を扱う技術は、とっくに
「――――ッ!!?」
文字通りの、杞憂。
晴天は影の手に穿たれた。
呪霊の魂もろともの切断。
内側から崩壊する小宇宙。
ようやく拾えた外の情報。そして、
「二人の離脱完了、確認……しかし。やっぱりゴキブリの卵は外にもあったか」
――復活した十種影法術により。
天高く嗎を高鳴らせ、現れたるは――『円鹿』。
その効果、周囲一帯フルオートの反転術式。
オート判別により、伏黒の受けた毒は解消された。
そして伏黒恵自身と、円鹿、その合算結果。
伏黒恵は――乙骨憂太以上の正の呪力量を行使。ものの一瞬で完治させ、
「――それじゃあ、加減抜きだ!」
――待っていました、と。
影色の呪力が爆発。笑い、両手を結んだ。
呪霊の領域には歪みが産まれた。
そして、領域同士のぶつかり合いは――より洗練された術が、その場を制する!
「――領域展開」
ゴキブリ呪霊君こんなやつだっけ?
と思ったそこのあなた。
特撮宇宙人の2、3代目はなんかキャラ違うでしょう。
世の中そういうこともあるのです。