【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

12 / 84

【あらすじ】
『空』の呪霊の領域展開。
影のない世界に囚われた伏黒恵に、
特級呪霊『黒沐死』と『虹龍』が迫る――!



第9話「干天」

 

 ――事は、電話口で急に伝えられた。

 

 

 

「彼女の内なるものが、活性化したり休眠したり。なんか不安定なんだよね」

 

「例の彼女ですか」

 

「うん。だからプランを変えたい。東京では『非術師の呪力』はほぼ呪霊に向かうから、確実に呪力消費ができるし。定期的に行かせて、彼女にメリハリを与えたいわけ」

 

 

 

「――で、その面倒を見ろと」

 

 

 

 ――嫌な予感しかしなかった。

 東京攻略が進むのは結構、だが。

 仮にも五人目の特級術師とされた――不発弾の面倒を、他の特級が見ろというのだ。

 

 

 

「いやぁ、禍福ってマブもできたし。いよいよ僕離れの時期かなぁって思うしさ……つってことでよろしくね。僕ワイハでバカンス行ってくるから⭐︎」

 

「もしアレが『完全』に暴走したら、対処できませんよ」

 

 

 

「あぁ大丈夫、その時はもっとヤバいの二体は来て、相手してくれるよ、多分」

 

 

 

「……はぁ?」

 

「でも大丈夫でしょ。もう恵も特級なんだから♪」

 

 

 

 返答を待たず、電話は切れた――。

 あとで一発殴ろう。

 容易に想像できる笑顔に誓い、携帯を閉じた。

 

 

 

「……今の俺なら、やれるかもな。実際」

 

 

 

 ――本当、あの人は。

 何年経っても、無茶振りを軽く言ってくれる。

 

 

 

――

―――

 

 そこは――影のない世界だった。

 

 

 

「何故、邪魔ヲスル、術師――」

 

「ゴキブリの呪霊……乙骨さんが言ってたヤツか」

 

 

 

 真夏のような日照りが全方位を覆う領域。

 その天井に開いた一つ目から落ちる、得体の知れない雨――毒液を垂れ流し、体力を奪う。

 

 

 

 ――言うなれば、『空』の自然呪霊。

 

 

 

(まずアレを祓えない事には『影』が使えない。領域そのものが呪霊とかんなもんアリかよ――!)

 

 

 

 それに加え――、

 

 

 

「――私ハ血ノ味ガ、好キ、ダッ!」

 

「っ、野郎――!」

 

 

 

 唯一の攻撃手段、呪力を籠めた拳は。

 横入りした『虹龍(こうりゅう)』に防がれる――硬い。

 

 こいつは『精霊』だ。『対魔の剣』といった正の呪力の攻撃も効かないだろう。

 その絶対防御の向こうから、迫る『黒沐死』と『爛生刀(らんしょうとう)』――これは、あまりに。

 

 

 

「絶対に、バックがいるな」

 

 

 

 確信した。できすぎている。

 明らかに、伏黒恵をガチガチに対策している。

 

 こいつらを組ませた、何者かがいる――!

 

 

 

「――ぐっ」

 

 

 

 回避。だがすでに一度喰らった。

 

 体内で孵化し、生じる呪力で強化されたゴキブリが顔を出す。

 傷口の空いた側から、高濃度の酸性雨が染みこんでくる!

 

 反転術式を回して対処するも――毒が複合的すぎて判別不能、間に合っていない。片膝をつき、

 

 

 

「ぶね!」

 

 

 

 ――シン・陰流『簡易領域』

 

 必中効果で落ちた雷をジャストで防ぐ。

 が、その切れ間、再び打ち込まれる爛生刀――!

 

 

 

 このままでは。ダメージレースで、ジリ貧だ。

 

 

 

「やっぱり、乙骨さんみたいにはいかないか」

 

 

 

 伏黒は手を重ねる。

 だが。黒沐死はハッタリだと判断、臆さず迫った。

 

 

 

「でもな……俺にもやり方ってのがあるんだよ」

 

 

 

 『十種影法術』――影を媒介に発動する術式。

 手影絵を模した掌印を結んで、対応した式神を召喚する。

 

 だが。影なんて全方位から光を照らされるここには――!

 

 

 

「――満象(ばんしょう)!」

 

「ぱぉおおおおお――んッ!」

 

 

 

 ――。えっ?

 と、一瞬。その場の呪霊全員は固まった。

 

 突然、ドコっと降り立った迫真の大音量、つぶらな瞳の特大質量。しかし、どこから?

 

 疑問符が浮かんだ黒沐死と虹龍、だがともに上を見て、回答を得た。

 

 

 

 吹っ飛んだ黒い制服の上着――ゴキブリと龍、故にできなかった発想。

 

拡張術式(サポーター)は消えるが、まぁ。そのくらい平気だろ、アイツら」

 

 

 

 ――服の下の影を媒介に、式神を呼んだのだ!

 それも最大サイズの死神を。

 この中で影を確保するために――!

 

 

 

「――呪術師ッ!! (くらい)(くらい)(くらい)ッ、土中蠕定(どちゅうせんじょう)――」

 

「――満象、放水!」

「ぷくぅ――ぱぉおおおんっ!」

 

 

 

 一瞬の顕現。消える間際の影はそれでも主人に報いた。

 その鼻先は溜めた水流を解放――突撃するゴキブリの軍勢を怒涛の質量で押し流す。

 

 

 

 だがそれでも、虹龍に乗った黒沐死本体は健在。

 それっきりで、満像は消える。

 

 ここは魔虚羅でさえ存在できない影なき世界。

 伏黒本体は、内部からゴキブリに喰われて手負の状態かつ、最後の式神を潰されたのだ。

 

 

 

 ――ならば、突撃あるのみ。

 

 

 

「呪術師――ッ!!」

 

 

 

 黒沐死の爛生刀による攻撃、

 虹龍による高硬度の防御が一体となった突進が迫った。それを――、

 

 

 

「――秘伝・『落花の情』

 

 

 

 満象(ブラフ)の裏に控えた本命。

 

 影より(いで)(ひるがえ)るは。

 天与の暴君、その忘れ形見――オリジナルの『釈魂刀(しゃっこんとう)

 

 

 

「――抜刀ッ!

 

 

 

 あらゆる物の硬度を無視する、呪具の一閃。

 魂を観測できる者のみが発揮しうる真価。

 

 雷の妨害を呪力で弾き返し、間髪入れず。

 肉体限界を無視したオートカウンターは――黒沐死より先に虹龍の頭を叩き切って落とした。

 

 

 

「――何故!?」

 

 

 

 祓われた龍の背を下り、飛翔。

 体制を立て直し、黒沐死は目を剥く。

 

 

 

 ――その隙だけで十分だった。

 

 伏黒恵の手の上には。

 万象の影によって取り出された『釈魂刀』と――『万里の鎖』が、連結され――振り回され。

 

 

 

「――――(ころ)す!」

 

 

 

 なまじ領域内。逃げられる場所はない。

 空間を埋めた斬撃に為す術はなかった。

 

 生理的嫌悪は木っ端微塵、死の舞踊を踊って斬り祓われ、

 地に埋めた卵もろとも刈り取られ、嬲られる。

 

 

 

 そして、次こそ相手は。

 この領域を張っている空の呪霊――!

 

 

 

「まずは。外を確認しないとな――!」

 

 

 

 落雷を受けた。雨は強風と唸りを伴った。

 問題ない。出力全開の『落花の情』、呪力のカウンターで相殺できる。

 

 構わずフルスイング。有り余る鎖をたわませ、遠心力を束ねて一息に一点――射出。

 真上へと、打ち上げた。

 

 

 

 呪具を扱う技術は、とっくに本家様(フィジカルギフテッド)にしごかれて足りている。そこに負の呪力が加わり――結果。

 

 

 

「――――ッ!!?」

 

 

 

 文字通りの、杞憂。

 晴天は影の手に穿たれた。

 

 

 

 呪霊の魂もろともの切断。

 内側から崩壊する小宇宙。

 ようやく拾えた外の情報。そして、

 

 

 

「二人の離脱完了、確認……しかし。やっぱりゴキブリの卵は外にもあったか」

 

 

 

 ――復活した十種影法術により。

 天高く嗎を高鳴らせ、現れたるは――『円鹿』。

 

 その効果、周囲一帯フルオートの反転術式。

 オート判別により、伏黒の受けた毒は解消された。

 

 そして伏黒恵自身と、円鹿、その合算結果。

 伏黒恵は――乙骨憂太以上の正の呪力量を行使。ものの一瞬で完治させ、

 

 

 

「――それじゃあ、加減抜きだ!」

 

 

 

 ――待っていました、と。

 影色の呪力が爆発。笑い、両手を結んだ。

 

 呪霊の領域には歪みが産まれた。

 そして、領域同士のぶつかり合いは――より洗練された術が、その場を制する!

 

 

 

「――領域展開」





ゴキブリ呪霊君こんなやつだっけ?
と思ったそこのあなた。
特撮宇宙人の2、3代目はなんかキャラ違うでしょう。
世の中そういうこともあるのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。