【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
特級術師となった伏黒恵の戦闘のみが読みたい方は、
一話前も見た上で読むことを推奨します。
また、伏黒恵の戦闘パートにおいては、
『Your Battle is My Battle ft. Chica』
を聴きながら読むと良いかもしれません。
――特級呪霊・『
それは、『空』の呪霊。最大にして最重。
精霊でもあり、悪意をもって出現しない。
発生条件・全体像は、名付けられるまで不明であった。
最後の出現記録は平安初期の書類のみ。
『突然に現れ、溶け込むように消えた』という一文と絵巻のみであった。
が――2025年3月20日23時33分33秒。
東京にて、再度の出現を『窓』と、
事態を察知し、八王子に転移した特級術師・五条悟が同時に観測。
『窓』曰く、横幅は800メートル以上。
だが五条悟曰く、呪霊自体が一種の生得領域。
周囲の空間は歪み――内部に囚われた者にとっては、そのサイズさえも優に越す。
術式は――『
領域展開を前提とする術式。
太陽の熱、大気の風、毒を伴う雨、落雷に氷雪。
およそ自然に起こる現象を、呪力特性に反映させて模倣する。
また『天垓』は出現するのは術式行使、領域展開の場合のみ。
発動しない間は消え入り、五条悟においても観測不能となる――が。
「……――――……」
その発生メカニズムは――『釈魂刀』の一撃により、魂単位で喪失された。
天垓は、この場から逃げる手段を失っていた――結果。
「……――――……、……――ッ!!!!」
(こいつ――領域が本体でもあるのか)
――同日時、34分59秒――。
天垓は、崩壊する最中――『極ノ番』を発動。
呪力の創造性を棄却し、破壊力へ転換。
身を丸め、残った領域の内郭を鎧とし、
術式と己の全機能を、熱と擬似質量に変換させ、
『隕石』を模して――特級術師・伏黒恵に接近を開始した。そして、
「――領域展開」
――同日時、35分0秒。
特級術師・伏黒恵。
記録上、九度目の領域が観測された。
―――
――
―
――焼け落ちていく空の下。
円鹿の背後、浮かび上がった脊髄のオブジェを中心に――呪力、結界と術式が液状に膨らむ。
(この質量をまんま飲み込めば、影の重みで俺が死ぬ。それでも最悪、威力は東京にとどまる程度にはできるだろう――だが)
かりそめの日光を喰らい、影の世界は開花。
――影の象る大穴が、大口を開けて待っていた。
「――――『
第一段階――、
伏黒恵、領域展開。
完成された伏黒恵の領域。
それは、必中効果を設けない縛りにより、結界を設けず実現された神業――『閉じない領域』。
最大範囲は150m。
呪力による踏ん張りができなければ、液状化した影に引き摺り込まれる。
だが相手が相手――問題は、収まり切るか。
(そこは、解釈を広げる……!)
第二段階――、
伏黒恵、十種影法術の『領域外』行使。
完全体両面宿儺との戦闘において、五条悟は結界内外の条件を逆転させた。
伏黒恵の領域は、結界を用いない領域。
結界術を挟まず、より容易にその成立が可能である。
よって、領域外。
影の巣から外へと、『十種影法術』は作動する。
「死ぬ気で来い。そのつもりで――やってやるよ」
――この領域には、必中効果が存在しない。
機能は『必殺』限定、すなわち術式強化。
それによりここに可能となった――第三段階。
「――――全員、集合!」
伏黒恵による――式神全種同時召喚。
『嵌合暗翳庭』内では、伏黒恵に以下のルールが適用される。
①同名の式神を複数召喚してはならない。
・ただし、脱兎や玉犬など、複数前提の式神は群全体を1体としてカウントする。
・他の式神から能力を継承した合成獣は、オリジナルとは別個体としてカウントする。
②式神との相互同意がある限り、領域維持には、自分だけでなく式神の呪力も動員できる。
③上記に抵触しない限り――
調伏の完了有無を問わず、
過去に破壊された個体を含め、
――全式神を無制限に召喚できる!
――つまり。
「――――『
「そして――『玉犬・渾』!」
天高く吠える白黒混ざった人狼の両隣。
後追って遠吠えをする――白と黒の玉犬。
下半身を得て佇んだ鵺の合成体と、
その肩に乗る鵺本人に、同様と伴った虎葬・円鹿・大蛇――このように。
「『脱兎』×『魔虚羅』――
影より這い出た、戦隊の完成。
十種の式神全召喚に留まらず、
無限に、式神の継承・召喚が可能となる。
ここからが、解体の本番――第四段階。
「――食っていいぞ」
号令と同時、領域外へと獣の群れは一斉に突っ込んだ。
『万里の鎖』を咥えたまま、一歩も引かぬ突撃で山を築いて足止めする、半数が『適応』能力を伴う脱兎達。
その解析結果から、的確に降り注ぐ追撃。
――玉犬の牙と爪が削ぎ、
雷を伴った鵺は裂き、
貫牛と虎葬が突き通り、
満象が押し返し――魔虚羅と顎吐の、正の呪力が呪いを打ち祓う。
蝦蟇と大蛇、不知井底とが足となって円鹿の回復を届け。
「次――『玉犬・渾』×『円鹿』×『脱兎』!」
さらなる影を形作り、片っ端から外へ投入する。
ぐんぐん、拡張を続ける影らの生態系。
突き詰められていく捕食の最適化。
――領域外である以上、彼らは領域による
かくして――――領域発動から一分。
呪霊の巨体は押し止められ、三分の一にまで刈り取られた。
それでも、『天垓』落下の瞬間が秒読みで迫る。
「最終段階だ――入れ込むぞ!」
伏黒恵が巻きにかかる。
円鹿をより前に行かせ、自身は呪力全開。
150mの最大範囲を立ち昇る影のベール。
その手はより広く、高く天へと伸ばされた。
もう伏黒だけは助かるラインだが他がマズい。
このまま落ちれば東京自体――旧・東京高専にも被害が及ぶ――それだけは、回避する!
「……――――……」
囲いの中へと沈む力の塊。
常闇を焦がす泡音は、さながら焼石の断末魔。
呪力による踏ん張りと、直接接触した影が産む摩擦の正面衝突。
『天垓』はわずかに縁から削られ、溶け落ち、押しつぶされていく。
それでもギリギリ。外の拾い残しは完全に式神に任せる形だったが――。
「条件クリア――収まったな」
――領域内に、『天垓』の全身が収容完了。
計、63体。式神の奮闘がかろうじて成り立たせた成果――。
(死を意識して呪力が増したか。削っても、このパワーと疑似質量。これ以上、影で飲み込んだら許容範囲外。圧死する――なら)
伏黒恵は領域内外の条件をリセット。
領域内へと集結する式神の群れ。
主人は従僕達を労い、
「――休め。あとは、俺がやる」
そして、すぐ眼前。影に塞がれた天を仰いで。
おもむろに――無手で、歩いて向かっていた。
「――『儀定采択』――完了」
影だけの小宇宙。
影で通じ合った彼らは、話すまでもなく意志を交わし。従僕と主人と、議決が敷かれる。
同意者――玉犬、玉犬・鵺、満象、貫牛、虎葬、顎吐、大蛇――――42体。
非同意者――円鹿、不知井底、蝦蟇、魔虚羅、脱兎、畏凱将群――――21体。
「三分のニって。やれるってのに、心配性だな」
かたどられる、握り拳。
そこに重なるは――式神達の
――この領域は、自分だけでなく式神が呪力を割いて維持している。
領域を維持できるギリギリまで、その場の
幾重もの影色が、重なって渦巻く。
すなわち、これは。
式神自身の保有する
呪力消費を上回ってあまりある呪力獲得――掌握できるかは、彼次第。
「――十種影法術――『極ノ番』」
抱擁から免れた隕石が煌々と迫り。
伏黒恵は相対する。
――かつて、両面宿儺受肉時。
式神を召喚せず、その
伏黒恵もまた可能であるが、彼は式神を道具のように扱う事を嫌い――あくまでも、相互同意による形をとった。
故に、万が一のため、残り二十一体は自ら彼の傍に集っていた。
一人の呪術師としてはマイナスの選択。
だが、後悔はない。
実際、縛りを設けた分、結果の大きさはこちらが上。
つまりは、これこそが。
彼らと、彼らの主人足らんと――
領域内でのみ成立する、伏黒恵の最終奥義。
「――――『
四十二体と一人の収束。
拳はひとつ。
レベルアップに伴う潜在能力の解放、結果。
容易に、影を上塗る――黒い閃光を伴って。
「……――――……、……!」
――。
――――。
――――――、
――午後11時36分23秒。
事態発生から僅か、83秒で。
「……はぁ。……しんど」
神の創意は。
なんでもない。佇む男の、影のひとつとなった。
――
からの
何度でも言うぞ。ご感想ご評価お待ちしております!!
はい~無事書き切れました伏黒恵23歳。
正直オリキャラより達成感ありました。
やっぱ大一番は十話目でないとですよねぇ。
まぁ彼まだ出番ありますけどね。
むしろ次回が本命です。
助ける価値のない迷惑系配信者について。
伏黒の善悪は今どうなっているのか。
性能の次は精神面での成長を描きます。
乞うご期待下さい。
【オマケ①・天垓のモチーフについて】
パクリ元もといモチーフ解説。
まず、クソでかくて隕石になって墜ちてくるのは、
エヴァのサハクィエルがイメージ元です。
また、術式名は某真祖の姫君の能力名をもじりました。
天蓋がどうのといった表現も同じです。
割と原作者の方、肩月作品がお好きなのかなと思い、
ありそうかなと思えるラインをついてみました。
垓、というのは数字の桁です。とにかくでかいです。
【オマケ②・ラスボス性能と化した伏黒恵について】
本作の伏黒恵ですが、
閉鎖空間を結界に転用しないと成立しない、
地力では閉じられない領域展開だったとこから、
よりセンスを磨き、本物の閉じない領域に昇華させています。
また、逆算して他の技術を強くするという、日車メソッドで強くなってもいます。
反面、今では強すぎて、領域を使える場面が限られます。
(今回も、範囲の広さから味方を巻き込むことがないか、わざわざ領域外の様子を確認した上で発動しました)
というのも、最大範囲が150mと宿儺ほどではないけど広いのと、領域外への式神召喚ができるからです。
いくら『同名の
最大動員数↓
・通常の式神:10種
・2体合体の拡張術式:10 × 9 = 90通り
・3体の場合:10 × 9 × 8=720通り
・4体の場合:10 × 9 × 8 × 7 =5040通り
……であるからして、総勢5860体が召喚可能です。
夏油の百鬼夜行3倍弱です。
羂索の放った1000万体には遠く及びませんが、
少数?精鋭の完成度なら負けない塩梅ですね。
なにせ、全員が軍として役割分けて統制されてますし、
585体は『摩虎羅』混じってますからね?
さて。カタログスペックをまとめますと↓
①総勢6000弱の軍勢を召喚できる
②式神から領域維持の呪力をバックアップでき、維持コストは低い(なので式神出し得)
③領域を崩そうにも結界がない
④領域対決になると陀艮戦同様、必中命令を相殺された上で『必殺』のみに特化した伏黒の領域に勝たねばならない
⑤よしんば本体に辿り着いても周り影だらけ
⑥その気になれば内外条件リセットにより一瞬で式神全集結できる。このとき領域の恩恵によって式神の性能は底上げされる
⑦最悪本体がクソ強くなって殴りかかってくる(高確率で『黒閃』発動)
これが、私の考えた最強の伏黒恵です。
……そりゃー、特級術師の条件、
単独での国家転覆可能、クリアですよね。
というわけで。晴れて伏黒は宿儺から免れた後も、
化け物の烙印を押されたのでした。
【オマケ③・極ノ番『
あれは、影の重さと呪力を伏黒に一点集束させ、
無理矢理レベルを底上げさせることで、
伏黒に眠る『超特級の才能』を完全解放させる奥義です。
自分の手札すべてをひとつの攻撃とするのは『うずまき』と似てますね。
(前回オリキャラで『自分が持てる以上の呪力を持つとどうなるか』書きましたが、伏黒のキャパシティはそれに耐えれるほどデカいわけですね)
式神遣いは術者本体を叩け、という理論に対するカウンターでもあり、
今回のように領域の九割を動員せずとも、ちょっと伏黒にバックアップするだけでも、十分強力な自己強化となります。
ちなみに今回、クソデカ隕石を削ったとき、
影に加算された重量を、バックアップなしの素で伏黒は耐えていました。
そんなヤツが天与の暴君の呪具を同レベルで使えるって……。