【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
突如、脳内に溢れ出す『存在しない記憶』。
半端に明かされる真実、謎深まる関係……。
第12話「なつのおもいで」
――術師同士は戦いの最中、稀に相手と精神的に『繋がる』ことがある。
これは、呪力が人間の感情由来であるための副作用。
東京遠征に出向いた禍福と婪佳久の間にも、同じことが言えた。
禍福は黒閃を起こしていたし、
婪佳久は元々、呪力に乗った負の感情を感じ取れる体質があった。
そんな二人が共闘し、特級呪霊討伐という死線を共にくぐり抜けたのだ。
故に、その任務後の夜。
眠りについた二人は、同じ夢を見た。
突如、脳内に溢れ出した、
――
―――
――
―
……その体より、自分の視点は少し遠くにあった。
まるで、押し込められた内部から覗き見る感覚。
のぞき窓の前で固定された自我。
自分の目は、大きな生き物の体内機関の一部に成り下がったように、受け取る情報をただ通す導線として、着ぐるみの中にあった。
だがそれでも――見えたものに慟哭せざるを得なかった。
なんでだ。
どうして――コイツに。
五条悟が押されてる――!?
『言ってるだろ、逃げろ。アンタらは非術師保護が最優先――祓うのは、僕がやる』
コントロール皆無、圧倒的な呪力放出。
唯一の指向性は、脅威に対する恐れ。
よって放たれた――呪力特性の混在する『波』。
コイツの体が撒き散らす混沌を――五条悟は無下限の『蒼』で自身に集中させていた。
そこまではいい、まだわかる。
だが――なんでコイツ、『無限』の壁を突破できる!!
(なんなんだよコイツは、両面宿儺か。いやそれとは明らかに別ケース――!?)
領域展延といった技巧なんて欠片もない。
『
(くそ。ここが何処なのかまではわからない……!)
とにかく、確かなのは――。
ここが辺り一面、燃え盛る生き地獄で。
コイツの攻撃を五条悟は自身に集中させ、
反転術式を全開で回して肉壁となり。
蒼やら赫やらを牽制として撃ち、物理ダメージで押し返してこそいるものの――コイツには殆ど通用しておらず。
反転術式全開による負荷で、五条悟の呪力出力が下り坂の一途であること――!
『はぁ、やーっとその他大勢はお暇したか――で。どうしたもんかな、これ』
だが――どうやら時間稼ぎは完了したらしい。
五条悟は、ただ冷静な目で印を結ぶ――待て。
いけない。それだけはダメだ。
虚式『茈』――確かに、多重の『無限』をコイツは『食いきれない』。
だが、この呪力量が楔を失えば?
自分という、基盤が喪失されれば――それだけで、被害はおそらく、列島単位で及び得る――!
そのリスクを、当然のように認識していた六眼は。
『――、っあー、やめだ。やめだ』
その目の色を、一転させた。
『どーせ僕以外には止められないだし。トチっても皆んな死ぬ。なら、一か八か――!』
術師として迷いのない、ある種、小さくまとまろうとする思考を投げ捨てて。
およそ、発想を持て余し、全能感に満ちた餓鬼の――実験感覚のそれとなって。
――掌印は、変更される。
『ぶっつけ本番。実証実験だ――――領域展開!!!』
――――その瞬間に。
電源が引っこ抜かれたかのように。
それ以降の認識は、ぷつりと途絶えた。
―――
――
―
――そして、跳ね起きた、禍福と婪佳久は。
しばらく呆然としていた。
ただ、見たものを受け取れずにいた。
目を手で覆い、疑い。だが――、
互いに、寮の隣室から耳で拾った情報。
それを確かめんとして、
「「――、ぁ」」
確信は事実へ。
同時に扉を開けて顔を出し、
ひどく肌に吸い付いた寝巻き姿の、酷い面と対面。
隣人と目は合った――遭ってしまった。
やはり。互いに同じ夢を見て、起きたのだと。
「「……」」
――――酷い、夢だった。
そう。互いに無言で、これを終わらせたい両者の利害は一致し。
何事もなかったかのように戸を閉めて、努めて静かに、夜の自室へと彼らは戻る――、
――振り払えない、言いようのない不安。
――二人の胸中に去来した、大きな謎。
それは謎のまま、朝焼に影を落としていった――――。