【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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投稿頻度ですが、今後は一日置きとなります。
親友との審議の結果です。
と言うことで次回は5/7となります。

【あらすじ】
悩める少年少女、安曇野禍福と婪佳久。
そんな二人の仲を取り持とうと、釘崎先生は外へと連れ出す


第三章「桶魚と杖罰」
第13話「横浜じゅじゅさんぽ with釘崎」


 

 2025年、4月――もはや。進学以前に、終業式どころではなくなった。

 

 特級呪霊『真人』の復活。

 そして、告知された『一億総呪殺の儀』。

 その対策で、新東京高専はてんてこまい。

 

 

 

(――とても、これは)

(――相談とか無理だし……そもそも、できないか)

 

 

 

 故に。婪佳久(らんかく)禍福(かふく)

 特に何をするわけでもないのに、教室の指定席に漫然と座した二人。

 

 

 

「……なんで来んのさ」

「別に。寮の他にはここしかないだろ」

 

 

 

 彼らは、今日。同じタイミングで起きた。

 そして、同じ夢を見ていたのだと悟った。

 

 目覚めた朝、たまたま同時に寮の部屋から出て、酷い顔のお隣さんと対面し――逃げるようにルーティンに従って、今に至る。

 

 

 

(……明らか、偶然ではない。体でわかる。だが)

(でも……確証はない、よね)

 

 

 

 ――そんな、二人の間にある蟠りなど。

 ――この後の驚天動地を前には、もはや粗末ごとでしかなく――だからか。

 

 

 

「生徒ども、アンタらはデートにでもいってなさい!」

 

「「……はい?」」

 

 

 

 クソ忙しいだろうに、あえてか。

 ドタドタと廊下を走り、戸を開け、入ってきた彼らの担当教師――釘崎野薔薇・一級術師の発言に、目が点になり。

 

 

 

「あーまどろっこしッ。じゃー私についてきなさい、先生命令よ!」

 

 

 

 隙のある方が悪いとばかりに。

 初めての、課外授業が実施された。

 

 

 

―――

――

 

「かくして到着! 釘崎プレゼンツ横浜遠征!」

 

「旅のしおりあんだけど……」

「計画的犯行だな」

 

 今や高専卒業生は海外案件ひっきりなし。

 釘崎が帰国できたのは久々であった。

 その遅れを取り戻すが如く――ファッション誌など、移ろうトレンドの切り貼りが多分に含まれた大百科。

 

 

 

(……つか、ほぼショップ情報じゃねぇか。自分が行きたいだけだろコレ)

 

 

 

 もとい、旅のしおりを開きつつ。

 一同は、埃っぽい春風と人混み行き交う、街の中に行き着いていた――。

 

 

 

「しかし……婪佳久いーねそれ、やっぱかわいーじゃん」

「ふふん。そりゃ、先生が選んだヤツですもんね」

 

(……普段からこうなのか、釘崎先生)

 

 

 

 釘崎教官は、ストリート系のジャケットに、なんとも春らしい華やかなワイシャツと短パン姿。

 

 婪佳久はというと。首元にレースとネクタイのある白シャツに、オーバーサイズの黒レザージャケット。そこからはみ出すフリルのスカートに、厚底スニーカーというモードな様相だった。

 

 

 

 ――こんなに白い脚だったのか。

 と、わかりきっていたハズながら思わされる。

 

 

 

「それに引き換え禍福ぅッ! なんだテメェその体たらくは!」

 

 

 

 そんな、両名に挟まれた禍福は――まさかの、ジャージ姿にいつものローラーシューズであった。

 

 

 

「えぇ〜……夜もそのカッコだったじゃん」

「は? マジで?」

 

「いや、制服以外持ってねえし、あったところでしょう。呪術師は高給取りなわけでもなし。怪我で引退もあり得る、すべきは貯金と投資です――お前に言ってんだぞ、そこの薄い女」

 

「うぐっ……!」

 

 

 

 ――圧倒的温度差。あまりにも、あんまりなコントラスト。

 いかに大衆文化と外れてきたか、その証明に。

 思わずこれには釘崎教官は涙し――。

 

 

 

「カーっなにそれつまんな! 聞きましたか婪佳久ちゃん、このヒト非文化圏お住まいですって」

「先生やっちまってください、春の恵を。文明の利器を与えてやってくださいよ。ついでにメガネも」

 

 

 

 ――否。婪佳久とノリノリで酒の肴とした。

 突如ハブられ、なんだか分からんがとにかくこき下ろされてるのだけ理解させられた禍福は。

 

 

 

「しゃーねぇな生徒がそこまで言うなら」

「いやなんも言ってな――」

 

 

 

 貴様に人権などない。

 と拒否権を取り上げられ、

 不満顔などお構いなしに。

 

 

 

 ――連れ回されて服着せられて紙袋を大量に抱えられて、奴隷労働の憂き目にあったのだった。

 

 

 

―――

――

 

「ふふ。やっぱメガネ似合ってる。私の見込みは間違ってなかったね」

「解せねえ……」

 

 整った目鼻立ちの上、ズレ落ちたスクエアフレームのメガネを満足げに少女は乗せ直す。

 

 ようやっと勝ち得た、安息。

 荷物を持たされたまま、婪佳久の要望でスイーツ巡りと題し、中華街などを踏破させられた禍福は――足を休めるため。

 

 

 

 転がり込んだスイーツ店、かき氷屋のテラスで、三名ともに腰を落ち着かせていた。

 

「やーようやっと海外案件から解放されて買えた買えた! 円安様々ね〜って事でハイ、報酬。私の奢りよ!」

 

「いただきます」

「貰えるもんはもらうんだね」

 

 

 

 ぶっちゃけ、すこぶるすわりが悪い。

 ぴらぴらと、ベルトにまとまらないシャツと、薄っ平いトレンチコート未満の何かが気になる。

 だるんだるんのジーパンと疲労で足が重い。

 

 とはいえ、さすがは新品。清潔感は過去最大。

 疲労が心地よく感じるのはそのせいだろうか。

 

 

 

 えてして禍福は上着を脱ぎ、眼前、差し出されたものに手を合わした。

 

 

 

「すでに衣服をお恵みいただいた身分なんでな」

「頭ユニセフじゃん」

「戦災孤児だっけ君?」

 

 

 

 もちろん。かき氷の店なので、かき氷が出た。

 ただし、屋台のそれでない。

 

 こう、やけにふわふわした。シロップも色だけの出まかせでなく、マンゴーの果汁が染み込んだような、ごろごろ果実の乗る高級品である。

 

 

 

「……禍福、このかき氷どう思う?」

「いいんじゃないですか、しっかりしてて」

 

 釘崎教官に感想を聞かれ、そう答える。

 

 

 

 実際、素直にうまかった。

 禍福は最初に食べ終えていた。

 ――ついつい、食べれるもんは奪われる前に食べる、という早食い癖が出ていた。

 

 過去最大の糖度だったかも知れない。

 

 

 

「そーよねッ、しっかりしたやつのが美味しいわよね! 屋台のボッタクリ品よりよっぽどいーわよね!!??」

 

 

 

「……え。どういうことだ?」

「気にしないで、青春の不完全燃焼が出てるだけ」

 

 これに文句をつける奴がいるのか。

 いや居るまい。いるならば修正してくれる。

 そう、怪訝げな顔の禍福は、だが音もなく食器を置いて口元を拭いた。

 

 

 

 ――人前では、早食いといった悪癖を、禍福は今日まで毛ほども見せなかった。

 

 故に、婪佳久からすれば、珍しい光景だった。

 

 ふだん、目の下のクマが示す通り、この癖っ毛男は神経質で鋭い人相なのだが。

 ……意外と、草食系めいた童顔だったのだなと。

 

 

 

「――はい、ウチらもごちそうさまでした。次行くわよ次!」

「なんたるコンテンツの消費速度だ。余韻とかないのか……」

 

 

 

「あっちょっと待って、先生」

「何よ」

「はい」

 

 

 

 と、席を立とうとした時。

 シームレスに、ごく当然と。

 ――婪佳久はポイントカードを差し出していた。

 

 無論、自分の。

 

 

 

「……マジか、お前」

「え、なにその反応。普通じゃない?」

 

 

 

「「普通でたまるか」」

 

「えっ!?」

 

 

 

 そう、こーいうとこなのよコイツ。

 と、服という霊長の誇りを得て、これ以上なくつけ上がった禍福は「はー恥ずかし」と吐息する。

 

 よくもこれで、人様に常識を問えたものだなこんにゃろう、と。

 

 

 

「ごめんなさい、五条先生とはいつもそうだったから……」

「オーケー許す。アンタ悪くないわ」

「甘やかすな甘やかすな」

 

 

 

 が――やっぱり優しい釘崎教官。

 快く受け入れて受け取ろうとするのを、恥を知ったらしい少女は「もういいです」と突っぱねた。

 

 普段、真っ白すぎる耳の赤かさが、やけに禍福の眼には残った――。

 

 

 

―――

――

 

 ……などと。順調にうつつを抜かし。

 次を目指して席を立とうと会計を終え、

 街道の中、一同が旅のしおりに目をやった時だった。

 

 

 

 その――婪佳久の、背後。

 ――――虚空が。突如として歪んだのは。

 

 

 

「――、ッあ!?」

「婪佳久!」

 

 

 

 ――婪佳久は悪意で即応し。振り向きざま、即座に有り余る呪力を固めて防御体制をとり。

 ――だが一手速く、禍福の抜いた『天逆鉾』が迎撃に成功。

 そうして初めて攻撃方法を目にし、瞠目した。

 

 

 

 ――――『天逆鉾』が無かったら、死んでいた。

 

 

 

 だって、その牙は、どんなに呪力で身体強化をしようと防げなかった―― 空間ごと、自分たちを引きちぎらんとしたもので。

 

 

 

 あと、その……なんだ。

 

 

 

「っ、え――は!?」

 

 

 

 不可抗力。理性を介さずに漏れた禍福の声。

 いやでも、仕方あるまい。だってその。

 

 

 

「邪魔立てを――貴様も、藤原か――ッ!」

 

 

 

 可愛げのかけらもないとはいえ。

 何がどうして、振り向いたら全裸女が浮いて出てくるのだ――!

 

 

 

「とんだご挨拶ねェ――ええオイ!!」

 

 

 

 そしてそこへ、最初から釘が飛んでいた。

 

 本来、その襲撃者は姿を晒すつもりはなかったのだろう。

 だが、『天逆鉾』により、わずかながら発生した術式行使のノイズ。その隙に、

 

 

 

「釘さ――」

「先生っ!」

 

 

 

 『鄒霊呪法』、釘を通して炸裂する呪力。

 だが、それらは本命ではない。

 

 本命は、投げずに手に持ったままの釘。

 そこに仕込んだ仕掛けの起爆だ。

 

 何がなんでも逃さないがための。

 

 

 

 ――嘱託式の『帷』の至近距離展開!

 

 

 

「問題ない。アンタらデート続行、いいわね!」

 

 

 

 刹那、白昼堂々と開かれた夜の世界。

 だが、結界の内外の広さは必ずしも一致しない。

 

 今回もその典型――およそ人一人の収まらない小さな結界へ、両者は収納されて――、

 

 

 

「邪魔をするな――私はッ、私でありたいだけなのに!!」

「そらぁ一大事ねェ。泣かせてやんよ――!」

 

 

 

 ――、私が、私であるために。

 

 最後に聞いた、その言葉が――残された婪佳久には、ひどくこびり付いていた。

 

 

 

「――それはそれとして。いっかい離れようか、ヘンタイさん」

「庇われといてそりゃ無くない――、……か」

 

 

 

 あと。白昼堂々。

 言われるまで庇ったまま、息のかかる距離なのを忘れていたらしい少年については――、

 

 そのレアな反応に免じて、見逃すとしよう。





三日おきと言いながら、二日おきに投稿してたバカがいたんですよ~。
なーにぃやっちまったな!

まあ過ぎたことはいいよ。
ここから4話ほど、釘崎編になります。
最終局面はもう一歩先です。ひとつお付き合いください。


…てか今回言うほどじゅじゅさんぽしてたか?
まあ日常は書けたんだしいいでしょう。
術師同士のバトルもやっときたいですからね。

にしてもこの戦闘頻度。これジークアクスってよりドラゴンボールなのでは?



【解説・かき氷にキレてる釘崎なんだったの?】

 五条悟 かき氷 でご検索下さい。



【オマケ①・婪佳久の普段着について】

 たぶん普段は韓国系ジェンダーレスファッションです。
 なんかこう、美少女には違いないし、
 美形だからこそ似合うんだけど、ハマりすぎてるのが逆に怖い感じと思われます。
 このへん五条悟は監修してません。

 あと、釘崎って髪型変わってたりするんでしょうか。
 人によって解釈があるかと思うので、そこはご想像にお任せします。



【オマケ②・烏鷺ちゃんの藤原センサーについて】

 11話「慈雨」にて、安曇野家は藤原時平の末裔、という設定がありましたが。今回の烏鷺ちゃんによる藤原認定は大当たりです。
 なんなら初めて的中したんじゃないでしょうかね?
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