【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
釘崎と烏鷺の領域対決。
その最中、突如として割って入る絶叫。
何やら「刀ァー!」「相撲だぁー!」などと叫ぶ彼らは一体……!?



第16話「魂の座」

 

 一級術師・釘崎野薔薇は。

 臨死体験により魂を観測した術師である。

 

 よって現在の鄒霊呪法は、術式対象拡張に伴い、魂にも作用できる。

 

 無論、手軽にはできたものではないが――、

 

 

 

 彼女の思う『釘』の概念を付与された、この領域には、過去に干渉した魂の記録が登録される。

 釘というパスで開通された、他者の魂へと繋がる複数の通路、その全てが内包された世界。

 

 ――あらかじめ魂との相互同意を得たうえで。

 ――過去一度やった事の再現ならば。

 

 

 

「鄒霊呪法――憑扮飾(ひょうふんしょく)

 

 

 

 このように、釘崎野薔薇は。

 釘をパスとし、元々の肉体から呪力と魂を、領域の藁人形(シンボル)の一部へと付与させる事で――、

 

 極めて高精度での、降霊術の再現。

 即席での、受肉体作成が可能となった!!

 

 

 

(この術式。受肉体特攻でもあるのか、必中効果を消せてなかったらそれだけで――!)

 

 

 

 本来であれば。

 烏鷺の領域に足をついた時点で、呪力の踏ん張りなしには不可避の『宇守羅彈』を喰らう――だが。

 

 釘崎の領域による呪力強化が施された事で、着地狩りは不発となり。

 

 受肉体は、動き出す――!

 

 

 

「――相撲しよ〜ぜェ! なぁマッパ女、相撲しようぜ!」

 

「るせェ禿げザルッ!」

「グワ―ッ!!」

「ふむ」

 

 

 

 至近距離の河童頭はとりあえずブン殴った。

 そして、その下を潜って迫る――刀を持ってる事以外ごく普通の、マッシブな中年男性は。

 

 

 

「またもけったいな場に呼びおる――だがな!」

 

 

 

「虚空が斬れるものと知った後なら、斬れぬ道理などないわ!!」

 

「いや何言って――、って、はぁ――!?!?

 

 

 

 なんの呪力も帯びていない刀で、一閃。

 それだけで、冗談のように。

 

 烏鷺の領域は――空間もろとも切断された。

 

 

 

「おいィイ大道! 領域で呼んでんだから領域を斬るなって何度言やわかんだテメェ!!」

 

「なんと。そこも含めて相互同意ではなかったか」

 

世界斬(ソレ)やっていいとは言ってねぇよ。刀振りたいだけのヤツにそうさせない縛りが成立しなかったんだよ!」

 

「そりゃそうだとも、むしろ言いつけ通り、帳とやらは残したぞ。成長したぞ儂!」

 

 

 

 ――防御の手間が面倒で、かわしていなかったら直撃だった。

 

 

 

「なん、なんだよ。コイツら……!」

 

 

 

 目の前で漫才をされ、トラウマゾーンど真ん中ストレートの『飛ぶ斬撃』に逆鱗をなぞられつつ――それどころじゃない状況悪化に烏鷺は瞠目した。

 

 領域は壊れた、術式は焼き切れて使えない。

 向こうは二人増えて三対一になった。

 帷のせいで外に脱出もできない!

 

 だが、まだだ――向こうも領域後。

 術式は焼き切れている。

 そして左腕には、呪力を吸収する呪具が――!

 

 

 

「――――超新星(ちょうしんせい)

 

「がっ――、あ!!」

 

 

 

 呪力を帯びた、血液の攻撃を。

 左腕が血液ごと吸収し――即座に、その色と状態が不健康なそれへと変わった。

 

 今度こそ、毒だ。そして、それを左腕以外にも浴びてしまった――!

 

 

 

「……脹相、さん。すみませんね、毎度」

 

「弟達の事はいい。むしろ弟の友人なら俺の護衛対象だ。そうでなくとも、回游案件は俺の領分でもある」

 

 

 

全力で――任務を遂行する

 

 

 

 三対一じゃなかった。四対一だ。

 くそッ、もう一人術師を呼んできた!?

 それも受肉体という形で――嫌味か。ああ、もうそうとしか受け取れない!

 

 

 

「どいつも、こいつも――――!!」

 

 

 

「――待ってほしい、烏鷺だったな。俺たちに交戦する意思はない。証拠に――その呪具を潰す以外、『赤血操術』は使っていない」

 

「――、は、ぁ?」

 

 

 

 もうヤケになり、特攻しようとし――気付く。

 確かに。血は、へばりついたりせずにあっさりとこぼれて落ちていた。

 反転術式を回す余力がない以前に、全く毒の兆候が現れていない。

 

 なんなら――上着を投げ渡して。

 彼は、こう申し出た。

 

 

 

「烏鷺――高専に来い」

 

 

 

「呪術規定は改訂された。昔、受肉体は無条件に殺処分だったが今では、――魂を認識した自慢の術師がいてな」

 

「俺たちのように空の肉体を用意し、受肉先を移す方法が確立されている」

 

 

 

 ――受胎九相図一番・脹相。

 

 2018年の受肉時、使われた体の人物はすでに解放され、無事に社会復帰をした。

 同様、死滅回游で受肉者となった人間は、登録された限りは解放されている。

 

 

 

「有事の際は戦力として投入される条件付きだが。もう俺たちは、他人の肉体を縛らずとも存在できる」

 

 

 

 だが、死滅回游は大規模すぎた。

 全受肉体の完全把握はできず、漏れがある。

 その回収が――現在の脹相が買って出た任務である。

 

 

 

「お前にも――人として生きる道があるんだ」

 

「相撲もできるしな!」

「妖の類ならば、好き勝手に刀も振えるぞい」

 

「…………」

 

 

 

 ――知らなかった。

 いや、知らないのは、当然だろう。

 高専から逃げ隠れしてきたわけだし。

 

 しかし、だからだろうか。

 

 

 

「……これから、私はどうすればいい」

 

 

 

 ――助かるなんて全く思ってなかった。

 そう、口にして初めて実感が浮かんだ。

 

 

 

「あんたが決めなさいよ。それこそ、あんたの人生でしょ」

 

「――、……」

 

 

 

 そして、やはり――コイツは嫌いだ。

 

 最初から全部、答えを知っている。

 否、回答があろうがなかろうが、堂々としていられるのだろう――烏鷺は。

 

 何事か、答えようとして。

 

 

 

 ――――『はい、残念』

 そう、聞いた気がした。

 

 

 

「――ぇ、え。な――これは!!」

 

 

 

 死んだ筈の義手――真人手製の義手が。

 突如として呪力を放ち出していた。

 

 吸収してきた呪力の、解放。そして、そのスイッチを押したのは――!

 

 

 

『やー、おかげで本番前にいいもん見れたよ。んじゃ報酬として――楽に逝かせてやろっか♪

 

 

 

 死に際。おそらく魂を通して聞こえた、ヤツの声――真人の、無為転変。その遠隔発動。

 

 ここまで潜伏されたマーキング。

 よりにもよって今ここで。

 その効果は表出し、義手を通して、神経に命令を送り――今しがた。自分を壊さんとしている!

 

 それだけではない。帷という閉鎖空間でこの呪力量が炸裂すれば――!!

 

 

 

「ふ、ふざけんな、酷い! こんなの――!」

 

『言ったじゃん。好きなように嫌いなものは踏み潰す。俺、呪いだよ? まー大丈夫大丈夫、後輩ちゃんも同時に送ってやるから⭐︎』

 

「嫌、いや――ダメだ、ふみちゃんは関係ない――止めっ、止めてください、やめ――!!」

 

 

 

 正しく、受肉体にとって『魂』を潰されるとは死刑宣告。

 

 最期を認識した脳が過集中を起こす。

 圧縮される時間、脳内を巡る走馬灯。

 大慌てで突入する人生の総決算。

 

 

 

 その混乱を――ゲラゲラ、ゲラゲラと、脳内に響くけたたましい嘲笑が支配した。

 

 

 

 そんな、絶望の最中。

 彼女は――――、奇行を、見た。

 

 

 

「『――、は??』」

 

 

 

 こればかりは真人と感想が一致した。

 最早あれを前には冷静になっていた。

 

 いや、え――ほんと何してんだあの女。

 

 

 

 ――額に釘当てて、自分の頭にトンカチ打ってるって。どういう絵面だ、それ。いったい何の意味が――、

 

 

 

(――、いや。まさか!?)

 

 

 

 ――が、極限の集中により烏鷺は回答を得る。

 

 その釘には。あらかじめ反転術式が籠っていた。

 トンカチがスイッチとなり、釘をパスに、自傷した脳は即座に回復。

 

 釘が引き抜かれた時には――脳と、焼き切れた術式は、復活する。

 

 

 

(嘱託式の、それも、擬似的ながら――反転術式のアウトプット!?)

 

 

 

 そして――感覚の加速とは関係なく。

 一瞬で目の前に迫る釘崎。

 その手には、同じ、正の呪力が籠った釘。

 

 

 

「―― 鄒霊呪法

 

 

 

 ――黒閃経験、臨死体験。

 二度に渡る、呪力の確信との接触。

 

 釘崎野薔薇は魂観測の他に、得た能力がもうひとつある。

 反転術式。負の呪力同士を重ねてプラスを産み出す芸当。そして、それによる――!

 

 

 

「――――術式反転・『(くいぜ)』!!!」

 

 

 

 刹那。首元を刺した鋭い痛み。

 そして撃ち込まれる、負の呪力と正の呪力のブレンド――ただ、それだけで。

 

 大脳に至らんとしていた無為転変は。

 その途上で、断ち切られていた――!

 

 

 

『――――はァ――ッ!?!?』

 

 

 

 魂の向こうから真人の驚愕が聞こえる。

 構う事なく、同様――左腕の爆弾は解体された。

 

 

 

「ふみちゃんが……なんだって?」

 

 

 

 呪詛――釘をパスに呪力を流す、その反転効果は『釘の呪術的絶縁体化』である。

 負の呪力による呪力切断と、正の呪力による呪力中和の二段重ね――すなわち、『解呪』!!

 

 

 

 よって、機能しようとした無為転変は。

 突如、指向性を失い、暴発し、烏鷺の体外へ。

 色濃く――残穢となって吹きこぼれていた。

 

 

 

「――烏鷺!!」

「――ッ、そういう!」

 

 

 

 失いかけた生存の実現、即座。

 烏鷺は、空を面で捉え――無為転変の残穢を空間に平面に固定した。

 そこに、グサリと釘は刺さり、

 

 

 

「術式順転・領域展開――『継棘勅座』――必中必殺出力最大!」

 

 

 

 更に、術式に付与される必中効果。

 領域全体の呪力はその一点へと集まる。

 あえて実物の釘を使用する縛りと、

 あえてトンカチでなく拳を使う縛りにより、

 

 ――――威力は、過去最大に跳ね上がる。

 

 

 

「ここにあったが百年目だ。左眼の借り含めて、晴らされおくべきか――!!」

 

 

 

 縦一直線、長さ2センチの杭打ち運動。

 そこに全身全霊――黒い火花をも伴って、

 

 

 

「――共、鳴りぃいい――ッ!!!

 

 

 

 ――――大気が、閉じた。

 余波ひとつもなく。

 さながら。水泳の飛び込み選手の着水。

 

 

 

『げ――ッ、え、ァッ――そう、だった……!』

 

 

 

 あれだけの一撃が、嘘のように。

 それは、余す事なく全威力が――完全無添加無濃縮でアイツに向かった事を、示していた。

 

 

 

『俺の天敵はもう一人――また、魂を半分も持って行きやがって、あの、女ぁ――!!!

 

 

 

 呪力の本質とのニアミス、刹那の魂の交錯。

 釘崎は、会心を垣間見た。

 

 この拳と釘で。アイツを突き穿ち、思っきし吐瀉物を吐き出させたという手応えを――!

 

 

 

「――だいッたい、ワンパなのよ陰湿野郎が。人を呪わば穴二つだ、どうだ思い知ったか、バーカバ〜↑カ〜ぁ↓!!」

 

 

 

 がっははははは――!

 と、空に向かって中指を立て。

 半沢直樹ばりの、もはや可愛げのかけらもない大爆笑をかます釘崎。

 

 

 

 烏鷺は、もはや生存、だけでなく復讐さえも叶ったわけだが。喜ぼうにも実感が間に合わず、

 

 

 

「ナイスアシスト、うぇーい!」

 

 

 

 と、求められたハイタッチに手を挙げ、応えるのがやっとで。

 

 

 

「あい、皆さんもお疲れ様っした。色々同時達成したんで撤収していーわよ、さー戻った戻った!」

 

 

 

「……わかった。烏鷺については任せたぞ」

「えっ相撲はァ!?」

「刀っ! 呼び出した時みたく、刀も一緒に送り返しておくれ!」

 

「わーってるわかってる、ったく。無生物の魂むずいんですけどねぇ」

 

 

 

 釘崎は指を弾く、それを合図に。

 

 作成された受肉体三名と一刀は。

 その場で、四つの椅子になり変わった。

 

 彼らの呪力と魂は、この領域(くぎ)を通して、本来の体に送り返されたされたのだろう。

 

 いっそ手品じみた光景。

 未だ烏鷺はポカン顔であったが――、

 

 

 

「欲を言えば、真人(アイツ)の魂に触れて登録(とっつかま)えたかったけど。残穢で共鳴りはかなり無理あったか……まあいっか、あの痛手じゃ高専とやり合う上では引っ込みざるを得なくなるし。当分悪さできないでしょ」

 

 

 

 ――流石に理解できた。

 そう。これは文字通り、特定の魂の指定席。

 

 この領域はいわば、魂と肉体、彼女とその他の『縁』をつなぐ場所。

 

 

 

「――てか、ねーな。やれても勘弁だわ。もう金輪際アイツと関係持ちたくねぇ、あんなのに受け渡す席なんてあってたまっか。ったく」

 

「それは、もう全く同意。なん、だけど……」

 

 

 

 この領域(くぎ)を流れる呪力に、敵意はなかった。

 どころか――、いや間違いなく。

 迎え入れられているような気がして――顔を見上げれば。

 

 

 

「で……どうすんよ、烏鷺。この通り空席、まだ全然あるけど?」

 

 

 

 そう、ひときわ無個性な椅子を引き出して、彼女は待っていた。

 

 他はもっと何かしら、椅子の形状などに個性があった。

 まさしく、空席というような。

 

 

 

 まさか――本当にできるのか。

 

 自分だけの肉体が。

 自分だけの椅子が――居場所が、私に?

 

 

 

「あと。乗ってくれたなら早速初任務ね。アンタのバイト先に調査立入をする。共鳴りは余韻長いし『無為転変』は機能不全だから平気とは思うけど、ふみちゃんの無事も確認したいし――真人は四月までにゼッタイ何かしでかす――少なくとも婪佳久を狙ってくるとは踏んでたけど。まさか四月初っぱな回遊案件って。正直、予想外の結果ね」

 

 

 

「誘導を兼ねて……だからアンタ、あんな、外に忌み子を?」

 

「あんなとかゆーな。……望んであーなってんじゃないのよ、あの子は」

 

 

 

 んで、どーすんの?

 と、彼女は座して回答を待っていた。

 自信満々に、最も自分に似合う姿で。

 

 

 

「……タダで、じゃないんだっけね」

「そういうんじゃねぇよ」

 

 

 

 それも。豪奢な赤椅子、俗に言うキングチェアで足を組み。

 棘のある笑みを見せる、彼女は。

 

 

 

「呪いは祓う、それだけでしょ」

 

 

 

 つくづく呪術師――だからか。

 どっちかってーと、ヤクザの盃だな、これ。

 と、思いながらも烏鷺は――今度こそ。

 

 迎え入られた事を、光栄であると、受け取った――――。

 





 幼魚と逆罰要素どこだよって?
 あるさ! 今回の1話がな!

 ってなわけで。第二の順平は無事生まれずに済みましたとさ。めでたしめでたし。

 しかし、どっかの呪術のコラボカフェで、
 釘崎とか呪術のキャラが揃ってキングチェアに座ってるイラストを見たのですが。そのときからやりたかった事が書けてよかったです。



【オマケ①・本作での『脹相』について】

 ちょっと出たぜ、お兄ちゃん!
 着々と『アイツ』の前振りもされてきましたねぇ。

 本作での脹相は、五条悟が宿儺倒したので、出番がなく死なずに済んでいます。

 彼なりに九十九の遺言、「これからは人として生きろ」という言葉を考えた結果、死滅回游の後処理に協力する事を決意。
 多くの受肉体を、自分と同じように、人として解放しています。

 釘崎の受肉要請に必ず二つ返事で答えてくれるので、釘崎からすれば頭の上がらないエースカードですね。

 現在は高専(の特定の人物)に、後方腕組み面で協力しつつも、一人の人間としての暮らしを謳歌中。
 趣味はBBQです。黙々と焼きまくって皆の皿を満たしてくれます。



【オマケ②・釘崎のヤバさについて】

 伏黒を盛りに盛った前科のある本作ですが、
 釘崎も盛りました。

 性能としては、
『他の一年ズに比べて、単純な強さでは劣る』
『それはそれとして一人だけやってることがおかしい』
 という、トリックスター仕様です。

 こってこての古風な呪術と見せかけ予想外がいくらでも飛び出してきます。

 特にヤバいのは、呪術のアイテム化に成功した事でしょう。

 渋谷事変で登場した『嘱託式の帷』。
 あれ釘だったじゃないですか。
 釘崎もやれんじゃね?
 と思って、拡大解釈した結果……、

・正の呪力を込めた釘
・帷を込めた釘
・『簡易領域』を込めた釘(メカ丸のやつ)

 といったような。
 誰でも呪力を込めれば起動できる釘が作成できる、としました。

 誰でも呪霊に有効打突を出せるって無課金UR配布かな?

 なので、一年ズの中では貢献度はトップでしょうね。多分。

 本体が戦闘すればどうなるかは今回十分書いたのですが、ぶっちゃけとても前線にいていい人材ではありません。
 絶対に替えが効かない、家入さんや夜蛾学長枠です。
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