【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
連続で投稿しちゃいます。
次回は明日、5/12(月)です。
白昼堂々、街中に張られた、小さな帷。
とはいえ一般人には認識できず、触れない。
一般人がぶつかる危険性はあったが、
位置は街道の端にある電灯付近。心配ないだろう。
この中では、先生の呪術師が戦っている。
自分らも入るべき、でなくとも補助監督に連絡すべき……なのが普通だが。
「……お前らはデート続行、って」
「なんだかんだ、ここまで流されてきちゃったね」
「あぁ。勢いに押され続けてるな。調子崩されっぱなしだ」
「ムッツリ露呈したもんね〜」
「しつけェ」
タイマンをやる。助太刀不要。
そう言われた以上、この場の始末は管轄外だ。
――さしあたって。
「……で、どうしよっか」
「……しおりの消化を続行する、とか?」
「異議なぁーし」
漫然と、二人は街道を流されていった。
―
――
―――
なんとなくで婪佳久はグリーンダカラを。
禍福も、同ブランドの麦茶を買っていた。
なにやら市のゴリ推しで催された花火大会は、
生憎の雨で中止されて、
コンビニのビニール傘片手に歩き、
立ち入った観覧車のなか。
彼女は、急にこんな事を言い出した。
「……ねぇ、さっきの術師(?)さぁ。自分らしく、とか言ってたよね」
……それは。つい先ほど、自分を殺しにかかった暗殺者の言葉だった。
彼女は体質上、呪力に乗った負の感情、すなわち悪意を感じるのに長けている。
襲撃を受け、何か感じるものがあったのだと予想はついた――故に。
「わからないんだ、あれ」
「――わたし、人間なのかな」
その発言が、普段とは違うと、すぐ分かった。
「……どういう事だ」
「正直思うんだよ。まだ、呪いを回すための存在って方がしっくりくるって」
「こんなのがタダの術式じゃないぐらいわかってる。でなきゃ軟禁とかしないでしょ、普通」
不意に否定をしようとして――否定材料がないことに気づく。
――『受愚戴転』。
術者を殺してでも、
天与呪縛とも違う。もはや、呪術として成立するものなのかさえ――、
「これ多分。最後の思い出作りだったりするんじゃないかな」
「わかるんだもん。どんどん力が強くなってるの。2018年から、ちっともいい方に向かわない」
「わたしって、悪感情の器でしかないのかな」
「……」
……なにも、言えない。
彼女とは知り合ってから四ヶ月ほど。
彼女の過去については殆ど知らない。
ただならぬことがあったのは分かるが――。
そこに踏み込んだら、最後。
関係が、終わってしまう気がする。
「……ごめん。曖昧な話しちゃった」
「アンタも、釘崎先生と同じだよ」
「いつも全身全霊で術式使って。復讐、命賭けなんだもんね」
どこか、遠い景色を眺めるような眼で見られた。
コイツはいつもそうだ。
俺の何を見て、何が善いというのか。
なぜ、微笑みがそこで伴うのか。分からないが――勘違いだ。
「……そんなんじゃないさ」
「俺だって、中途半端な人間だ」
復讐者である事を一貫できない。
このような存在である事に甘んじている。
釘崎先生に着せられた服も、何もかも享受している。
俺は、なりゆきのままここに居る。
そのくせ。口では、復讐を諦められない。
「俺なんてのは……惰性とポーズの復讐者だ」
本来それは、幻滅されて然るべき人間だ。
少なくとも――生き残るにはそれしかなかったとは言え、自分で道を決めて突き進んだ――彼女ほどの者ではない。
「そっ、か……そーだよね、あんた明らか呪術師とか向いてないもん!」
「うっせえ」
それはそれとして、そこまで言われる謂れはない。
と、眉間に皺が寄せられるのを見てか、彼女はケラケラ笑った。
「……調子が戻ったなら何よりだよ」
「お前が考え詰めるなんて、らしくもない」
そして――逆転が決まった。
豆鉄砲でも喰らったような顔。
してやったり、と思わなくもない。
「どうせ、長生きしてればわかるだろ。先の話だ」
「大人なら。大人になった時には、きっと分かっている事だ」
「お前も、道半ばで終わる気はないだろう」
「はは……うん。そうだね、その通りかも」
――そうだ。
俺たちは、たぶん。焦りすぎている。
世の中、答えの出ない問題はありふれている。
要は、自分が納得できるか。
それは自分が決める事だ。
その決断が大事ならば、すぐに結論づけなくたっていいはずだ。
呪術高専の一年生。
本来なら二年になってる時期だが、何にせよ。
まだまだ、進路票を渡される時分ではない。
「とりあえず、もうちょっと回って行こうよ」
「……そうだな」
そう――割り切る事もできないまま。
漫然と決めかね、悩みながらも。
あと少しだけは、このままでいたいから。
霞んだ夕焼け空の下。
二人は――横浜遠征を制覇した。
幼魚と逆罰の、苦みがありつつも希望もある雰囲気、好きだったんですよね。
起首雷同なら釘崎の「共犯ね」とかも。
それに近いものが作れていたら嬉しいです。
あと、改行を多めにしてみました。この方が読みやすかったりしますかね?
ここすき乗ってなさそうな回もそうすべきでしょうか…?
【余談・今回の内容は、夏油傑の『大義』と真逆です】
夏油傑は、結論を急ぎすぎたのでは、と筆者は思います。非術師を嫌悪する自分、弱者を守りたいという善意、二つのどちらが結論なのか。
そうなるだけの理由は書かれていましたが、それでもやっぱりやりすぎたことしてるし、本人にもその自覚があるように思えました。
今回、もし彼ら二人が結論を急いでも、きっと同じで良い方には転びません。
先延ばしというのは怠惰で退廃的ですが、それでも、人間にはあるべき機能なのです。
これも、マイブラザーの請負ですが……、
思うに、人が大人である定義のひとつは、
『どんな時でも生活を維持・継続できる存在』なんじゃないでしょうか。
誰かがボタンを押したら即滅ぶ世界で、
たとえ災害で全部がおじゃんになっても、
一個人として大事なものを失っても、
それが、形骸化した体裁だけの惰性であろうとも、
それでも人として暮らしを維持できる。
日常を作ることができる。
預かり知れぬ事を棚上げして、日に三食食べて寝こけることができる。
それは紛れもない美徳でもあり、世の平穏。
多くの地域と環境に順応してきた、人類が霊長足りえる理由。
『意味』や『大義』なんぞより、人にとって大事な事だと思うのです。
だってなんだかんだ、世の中って、そこそこ頭空っぽでいられた方が楽じゃないですか。
だから、今回の禍福と婪佳久は、
防衛本能的に『無知』を発揮するのです。
でも、夏油傑は、その楽ができなかったのでしょう。
無知が良い事なのか、悪い事なのかを考えすぎた。
術師の屍の上に成り立つ一般人の暮らしが肯定できなくなった。
これまでの『家族』や『日常』を良しと思えなくなった。
だから、夏油はああなっちゃったんじゃないですかね。
家入の「お前も大概子供だよ」的発言も、そういう事……なのかな?