【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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今回、どうか最後だけでも読んでください。

【あらすじ】
真人の手により、己の過去を知った婪佳久と禍福。
そして産まれ落ちた、彼らの過去。
禍福の『復讐』は、これ以上なく明確な輪郭を帯びて、眼前にあった。



最終章①「再廻忌誕」
第19話「受愚戴転 -漆-」


 

 呪術高専・新東京校は。

 その日、音を立てて、盛大に崩れ去っていた。

 

 代わって聳える、最凶の呪霊。

 脊髄反射で脱出が間に合ったのは、二名。

 

 

 

「俺が――アイツ、を――?」

 

「おい! おいってんだ、聞こえてねーのか、禍福! ――えぇい!」

 

 

 

 ぼーっと突っ立ってる禍福と、日下部。

 ……なのだが。ぐわんぐわん、と日下部に両肩を掴んで揺らされても、禍福は応答しなかった。

 

 

 

 ――禍福の、十二年間。

 形だけであろうと成長期の大半を捧げ、

 固めてきた復讐の姿勢は、その足元から崩壊していた。

 

 手にした天逆鉾は震え、それを抑えようとする手も、足も――心も、もう――。

 

 

 

「クソ……これが、五条の言ってた超特級か!」

 

 ――今の禍福は使い物にならない。

 

 

 

 それよか、目に見えた突発業務だ。

 日下部は普段の思考を回そうとし、

 

 ――それが通用しない事態だと一眼で断じた。

 

「おい禍福、逆鉾借りんぞ。あとお前は逃げとけ、俺言ったからな!」

 

 生徒を置き去り、自ら突撃する。

 

 

 

 不幸中の幸いは爆心地が教室だったことだ、来客用の部屋は直撃こそ免れた。

 

 まだあそこには『窓』の連中も一般業者もいる。

 そもそもここは関東呪術界の心臓部。

 捨て置くわけには――――!

 

(……って、おいおいマジでか、オイ!?)

 

 だが、相手が悪すぎる。

 

 

 

 ――特級超過呪霊『喇誑(ラテブラ)

 あらゆる呪力を喰らう、虚無の(うろ)

 罪を一身に負う寵児は。

 

 

 

 校舎を巣とし、幼鳥の嘴を大きく開いて、

 補完されていた呪具・呪物を――瓦礫ごと食っていた。

 

 さながら、栓を抜かれた水場の如く。際限なく吸い込み、私腹を肥やし――他を、廃絶すべく。

 

 

 

 2013年ぶりの災厄が、

 ――呪力の飽和攻撃となって、周囲一帯へ押し寄せる。

 

 

 

「……、ッ――――!!!」

 

 ただ感情のままに鳴く赤子の声と共に、

 輝く翼は『無制限』に呪力を広げた。

 

 

 

 それは――翼にしか見えない、顔を出した呪霊の数々が、その場で潰されて絞り出された呪力。

 内包された呪霊達の断末魔が――幾重もの、光線をまき散らす。

 

 

 

喰った呪霊を絞って呪力を抽出、『浴』みたいなもんか。乱雑なくせして、この量と質――もうほとんど流星群じゃねぇかよ!)

 

 

 

 結果、校舎は粉微塵に吹き飛んだ。

 山奥の校舎だったのだが、その山肌からして掘り返され、焼かれ、蹂躙される。

 

 あちゃ〜、間に合わなかったか?

 

 などと。『簡易領域』という命綱で、爆撃地帯を辛くも踏破した日下部の苦労は、水泡に――。

 

 

 

 ――待て。この、結界の気配は!

 

 

 

伊地知か――分業するぞ、俺が戦う、他は離脱だ。こんなの相手するもんじゃねぇ!」

 

 

 

 仲間の気配を察知。

 秒で一般人警固の全責任をおっかぶせた。

 

 返答は聞かない。気にする余裕もない。

 役割でないことは頭から除外した。

 

 

 

 今は――コイツの注意を引くのが最優先。

 

 

 

「立ち止まってたら死ぬ、前進あるのみ――い〜言葉だぜぃ、クソッタレ!」

 

 二度とゴメンだと心底思いつつ。

 ――真正面を切り、突撃した。

 

 

 

 爆ぜる建物のガレキに呪力を込め、チャフとして、傘の下を潜り抜ける。

 

 その場のアイデアの即実践は功を奏した。

 コイツは、呪力を拒絶している。

 他の呪力に反射で攻撃を飛ばしている。

 

 

 

 その攻撃全てが、日下部に集中する。

 

 

 

(逆鉾使ってられる余裕ねェな、慣れた呪具でねぇと。誤差だけでも詰む!)

 

 ひとつの迫る呪力の対処に、

 呪力リソースを割いてるうちに百個の別の呪力がやってくる。雨を素手で払い切るような無理難題。

 

 それらを、すべて真正面からひとつひとつ、

 脊髄反射で切って落とし、前へ。

 

 

 

「…………」

 

 ――この世全ての悪意と、対面する。

 

 

 

(そーか、狙ってるんじゃなく無意識の防衛。認識さえされねぇですかい)

 

 紛れもない過去最大のプレッシャーに頬が凍った。

 脈打つ煮こごりは、閉じた目蓋の奧でも、爛々と憎悪に滾っているのが目に見えた。

 

 

 

 ――一級最強は釘崎に譲った身分だ。

 ――コイツを相手に長期戦できるほど人間をやめちゃいない。故にこそ――接近一択。

 

 

 

「シン・影流『簡易領域』」

「居合―― 『夕月』!」

 

 

 

 間隙を塗って飛ばされた斬撃、奔る呪力の一閃(カウンター)

 だが効果なし。

 てゆーか……吸い込まれた?

 

(そりゃ無理か。五条の無下限が効かなかったらしいもんなぁ)

 

 帰りたい。もうこの時点で帰りたいが。

 懐に潜ったのだからタダでは帰れない。

 

 心底、不本意であるが――リスクをとって、有効打突を繰り出す。

 

 

 

「なら、こいつはどうよ」

 

 

 

 次に見出した間隙で――日下部は簡易領域を一気に範囲拡張。本体と接触した瞬間、簡易領域は『食われた』。その結果――、

 

 

 

「シン・影流『簡易領域』――与太吉(メカ丸)式!」

 

「――、――ッッ!!?!?

 

 

 

 内部起爆。万象を食む虚空は、簡易領域を吸収。火の車と化す。

 初めてダメージを知った雛鳥は、盛大な声で慌てふためいていた。

 

(よし、こいつは通用する!)

 

 簡易領域を体内で使われたら、どんな術式を持とうが問答無用でダメージは通る。

 

 そちらがルール無視なら、こちらも同じ事をするまで。

 

 

 

 ――だが。それは下策でもあった。

 

 

 

「――、っなにィ!?」

 

 慌てて飛び退く。

 周囲一帯、生じたソレは――シン・影流『簡易領域』。

 

「おいおいおいおい――嘘だろオイ!」

 

 呪霊に、それを使われた。

 カウンターのためというより、簡易領域内での呪力強化が目的だろう。

 いやそれよりも――あれだけで!?

 

「冗談キツいぜ。一発受けただけで、結界術の基礎を学習するか!」

 

 その一度だけで、形勢は逆戻り。

 

 

 

 どころか、初めて明確に、

 喇誑は『外敵』を定義し、

 

 ――呪力の波状攻撃が、より精密に一人へと押し寄せる。

 

 

 

「こりゃぁ、もーらしくない事してられっか!」

 

 ともあれ、近接の必要はなくなった。後は離脱だ。

 

 させてもらえるか?

 否、やれなきゃ死ぬ。

 

 

 

「全身全霊で、のらりくらり――長引かせる!」

 

 押し寄せる本流を、居合で迎撃しつつ全速で後退する。

 

 隙があろうものなら簡易領域を一息に拡張。

 簡易領域を吸収させて痛手を与えるヒットアンドアウェイ。

 

 より餌を食わせる事になるが背に腹は変えられない。

 アレの成長を破壊して足止めせねばならない。

 

 防衛・撤退戦こそが彼の本懐、多少はマシになる――自分に釣られて高専からついに離れた!

 

 

 

 問題は。人力でこの体制を維持するにも限界があること――、

 

 

 

「あーくそッ、これでギックリ腰起こしたらマジ呪うぞ、テメェ!」

 

 突き詰められる迎撃プログラム。

 フルオートで息つく間もなく踊らされる肉体。

 僅かにでも動きを怠れば、先ほどよりも対処すべき数も質も増えていく。

 簡易領域でなく肉体強化で耐えるべきケースも増加、体力がゴリゴリ持っていかれる。

 

 理論値でなら5分はいけるが絶対数が違う。

 これでは保って30秒。

 否、そうでなくとも、コイツは――!

 

 

 

「――、なんだ?」

 

 

 

 ――喇誑の、興味が。

 自分から外れたのだと日下部は感じ取った。

 

 その確信は即座、現実に現れる。

 

 

 

「――、…………」

 

 

 

 それは――ようやく乾いた翼を広げ。

 もとい、羽を散らすように、大量の呪霊を使い捨ての推力として。

 

 飛び立ち、一直線。

 ……23区の結界内へと飛び入っていた。

 

 

 

「そうか……そりゃそうだ。そっちのが、ギョーさん餌あるんだろうしなぁ」

 

 

 

 ――、満身創痍。

 布団があれば今すぐにぶっ倒れてしまいたい。

 

 刀を納めてすぐ、無視してきた痛みが刺した。

 戦闘不能だ。言い訳でもなんでもない。

 当面、とてもこれ以上戦えない――だが、

 

 

 

「――日下部さん!」

「伊地知か、新高専内の人員は!」

 

「全員無事です、補助員の車に乗せ、ただちに離脱させました」

 

「よくやった。んじゃすぐ総監部に俺を繋げ」

「そのために来たんです、こちらを」

 

 駆け寄り、携帯電話を寄越した伊地智。

 その顔も、またこちらの回答を伺っている。

 退避するにせよ――伝言役をせねばならない。

 

 

 

 日下部はうぉっほん、と咳払いをひとつ――。

 

「――五条の認識は甘かった。2013年の件は一番マシなケースだったらしい。アレは術式が効かないんじゃねぇ、術式も結界も食っていた。要はグレートサイズの領域展延――――いや、もうこう言うしかねぇな」

 

 

 

喇誑(ラテブラ)は『呪いの呪霊』――宿儺とは別の、呪いの王だ。アレはあらゆる呪いを己に置き換える」

 

 

 

 みるみる顔色が険しくなる伊地知。

 同じく頬を硬くする日下部。

 だが、これは紛れもない真実――。

 

「まだ産まれ途中だ。不完全なうちは、領域やら高等呪術は通用する――なにがなんでも祓え。もうすでに日本の非術師一億人の呪いが、アレに集中し始めている」

 

 

 

 日下部は、2013年において。

 婪佳久の秘匿死刑に反対した。

 

 この事態は、その最たる理由だ。

 

 

 

 ――呪霊操術のように、肉体という楔を失えば、内なる呪霊がどうなるのかわかったもんじゃない。

 

 一番丸く収まる手段は、『無量空処』によって行動不能になっていた期間、婪佳久をレベルアップさせて自身の呪いを御せるようにさせる事だった――なんなら、呪力コントロールについて、日下部は誰よりも婪佳久を鍛えていたまである。

 

 

 

「婪佳久の生死は問わない。もうその次元じゃなくなった」

 

 それだけに、大変遺憾であるが――。

 

 

 

「頼むぜガキども。完全顕現されたら最後……呪術の全部がアイツに成り代わられる。五条を含め、あらゆる呪術的アプローチが通用しなくなるぞ!

 

 新東京高専学長・日下部敦也は。

 そう――極めて。最重篤の事態を宣言した。

 

 

 

「特にィッ! 遅刻した阿保卒業生、きっちり働いて取り戻すように!!」

 

 ……きっちり、恨み言も忘れずに。

 

 

 

―――

――

 

「やー、めでたいめでたい! それになにより、若人の営みはいいもんだよねぇ!」

 

 いい仕事をした感のある顔で、ぶっ壊れた新高専を後にし。

 

 ――東京タワーと隣り合い、より高く聳えた巨影に。

 人の叡智の塔を壊す大怪獣の産声に――手を叩く真人はご満悦だった。

 

 

 

『じれってーな、俺いい雰囲気にしてきます!』

 

 と、場を掻き回すだけ掻き回してのトンズラ。

 その結果がこの始末である。

 やっぱり呪いはこうじゃなきゃ、と大満足だ。

 

 

 

「俺も部分的には見習いたいなぁ。不確実性故の不安定さ、自由奔放にして加減知らずな感情の爆発――あの頭でっかち共には分っかんねぇだろうけど!」

 

 こりゃあ、羂索の夢も分かるわ、と大怪獣にはしゃいで納得しつつも。

 

 

 

 実のところ――真人は初めから、『一億総呪殺の儀』をする気はなかった。

 

 

 

 だって、人の呪霊だし。

 人を人と思わぬ運用はするけれど、誰一人いなくなる、なんて困るのだ。

 

 

 

「てか力技すぎんだよアイツら。とにかく殺す、いいから殺す、全部殺せば解決、って。大衆(ニワカ)の思う呪術の形ってだけあって――縛りもゆるガバだし」

 

 

 

 真人と、渋谷新宿呪霊は、同じ目標に沿って行動せねばならない。

 などと『縛り』を結んだつもりだったようだが……成立していない。

 

 まったく。君達の頭まで貰った覚えはないんだけど?

 

 

 

 そうでなくとも、儀式を止めるべく、あそこには魂を認識した五条悟に、伏黒釘崎までも来ていたのだ。

 

 とてもやってられない。

 んなもん『逃げまーす⭐︎』の一言に尽きる。

 

 

 

「デカい顔した新参が多くて困ったもんだよ――いや、本当に」

 

 とはいえ。アレばかりは、殺しておくのが正解だ。

 

 

 

「次世代『呪いの王』、大衆の呪いに対する呪い。いわば呪いの呪霊――『喇誑(ラテブラ)』」

 

 

 

 人の呪い。大地への呪い。

 自然への呪い、海への呪い――etc。

 

 呪霊を産むのは、非術師のコントロールされていない呪力の漏出だ。その対象にはカテゴリがあり、それを反映して多種多様に呪霊は産まれる。

 

 

 

 だが。アレは、呪いの形を均一化する。

 

 

 

 大衆によって決定された、呪いの象徴。

 呪いそのものへの、呪い。

 

 その完全顕現は、呪霊と呪術の再定義を意味する。

 

 そうなったが最後――呪霊発生、術師誕生は今後起こらず、代わりに非術師の呪力はすべて、アレを模る力になる。

 

 

 

「術師側にはピンキリのピンが揃ってる。五分五分ってとこかな?」

 

 

 

 真人とて呪霊だ。本能でわかる。

 アレだけは承知できない。

 

 だって……千年後の荒野で、みんなと会えなくなってしまうじゃないか。

 

 故に、本能の命ずるまま、真人は――婪佳久を殺す事で、内に宿るアレを殺すつもりだったのだ。

 

 

 

 ……つい、先程までは。

 

 

 

「でも。水子は可哀想だよね」

 

 

 

 だが……いくらなんでも、酷だろう。

 

 自力で『無量空処』を克服しても。

 いかに機会につけ入ろうと。

 あの術師の腹の中に居る限り、アレは一生『呪胎』のままだったのだ。

 

 ずっと、殻を破るべく(もが)いてきたというのに。

 

 

 

「勝って産まれたなら祝福してやるし、祓われるならそれまでだ……漏瑚ともども。また、千年後の荒野で待ってやるよ」

 

 

 

 ――機会は与えた、あとは奴次第。

 術師への嫌がらせを兼ねて――ついでに少年少女の間を引っ掻き回す道楽としても、最悪のタイミングで起爆させた。

 

 勝てば、形はどうあれ、呪いの世がやってくるわけだし。負けたら負けたで、これまで通りだ。

 

 

 

 ……あとは、やっぱり。

 今日この日。

 自分を、見つけやすくするためでもある。

 

 

 

「――よぉ。久しぶり」

 

 立ち止まる。

 感動が、身を震わせた――宿願の気配だ。

 

「……なんだ。いたなら、早く言えよ」

 

「いやぁ、今着いたんだよ。道中でまた色々あったもんでさ……一応聞くぞ。――俺がいない間。なにをやった」

 

 向き直る。いつかのやり直し。

 互いに、当時よりレベルアップした姿形。

 七年の歳月を超えた――俺の。

 

「決まってんだろ、自由気ままだ。今は――お前を過去にする。今度こそ、この手で!」

 

 刺すような怒りの眼差しを、大手を振って歓迎する。

 もはや背後の天変地異なんて興味はない。

 今日が俺の、長々と待ち侘びた誕生日――!

 

 

 

「デケエ声出してけよ――虎杖悠仁!!!

 

「本当に。どこまでいっても――仕様(しょう)()ぇな、お前は」

 

 

 

 0時2分――特級術師・虎杖悠仁。

 『真人』案件発生により――東京に、帰還。

 

 

 

「「――領域展開!!」」

 





みんな~っ!オリキャラだのオリ呪霊無双だの篤哉の『優しさ』よりも、原作主人公のが見たいよな!!!

って事で。大変お待たせ致しました。
虎杖悠仁、参戦です。

禍福くんの話は、最終章③まで置いときます。
ていうか、これ以上の最終章の幕開け(ゴング)はないでしょう。

これより、最終章①、真人VS虎杖を展開します。

なお、次回はどうせなら休日に出したいので、
一日ずらして、金曜でなく土曜に投稿します。
(その次の回は普通に日曜、そのまた次は火曜と一日おきになります)

いよいよ終わりにさしかかってきました。
どうぞ最後までご笑覧あれ!!



【オマケ①・真人は仲間にとことんフェア】

「一億総呪殺? 人も呪いも罪? カーッお高く止まりやがって。好き勝手やってこその呪いだろ!」
→「まあそれはそれとして中々のビックマウスだ。五条悟に勝ったら認めてやろ」

「喇誑ってヤツ、完全顕現したらもう呪霊発生しないの!? ふーんじゃあ殺すしかねぇな」
→「……やっぱ生きようとしてる同胞を殺すのはな。産まれ落ちる事さえできないってのは、ちょっと……うし。チャンスだけは与えよう、それで勝ったら祝福してやるさ、新生・呪いの王サマ♪」

 本作の真人は、とことん同胞には公平です。
 たとえ本能が排斥すべしと命じようと、自分の天秤の元に行動しています。



 今回、高専サイドは、禍福達を五条、虎杖、(後アツヤ)のかなり厳重な警備をしてました。

 高専を出し抜き結界を秒で突破し、婪佳久自体を弄るんじゃなくて心を折ることで『喇誑』顕現まで繋げた真人が一枚上手だったのです。



【オマケ②・『喇誑(ラテブラ)』は婪佳久を殺せば死ぬの?】

 はい、さほど重要でもありませんが、
 この機会に徹底解説しときましょう。

 最初から婪佳久を死刑にしとけばよかったじゃん。
 と、真人の発言から考えた皆様。
 その考え、正しいです。

 本編ではそれほど重要ではないのですが、この機会に徹底解説いたします。


 まず、術師側の想定は、事実と異なっています。

「呪霊操術のケースから、術者が死んだらどうなるか分からない」

 コレが術師側の想定でした。
 そもそも2013年時点では、呪胎の状態だったわけですし、
 五条悟でも全体像が掴めなかったのもやむなしでしょう。

 2013年当時の総幹部は世襲の保守派揃いだったので、現状維持を選択。
 五条は呪術師として若人を教育しよう、と決意。

 ある意味めずらしく、満場一致で「コイツを術師として鍛えるのが、リスクを抑える最善手に違いない」と認識したのです。


 ですが、呪霊側の認識は逆でした。

「今回は『宿儺の指』のケースと同様、母体が死ねば呪霊も死ぬ」
「だからさっさと婪佳久を殺さねばならない」

 という考えで、実はこっちのが正解だったのです。

 どうして正解が分かるのか?
 本能です。本能で、こうすればコイツは死ぬ、そうせねば種が終わる、排除せねば、と認識していたのです。

 なので、二章で婪佳久は呪霊にやたら狙われて、
 三章では真人(の差し向けた烏鷺)に暗殺されかけたワケですね。

(二章で狙われたのは、術式そのものが呪霊発生を阻害する侵略的外来種だから、という理由もありますが)



 ちなみに、二章の時に「こんなに狙われたのは初めて」というリアクションだったのは、体内の『喇誑(ラテブラ)』が最近になって『無量空処』を克服し始めていたからです。

 こないだまでは行動不能で、呪霊側も気付けなかったけど、
 最近は元気になって、呪霊側も気づけた。というワケですね。


 呪霊にとっても術師にとっても情報不足。
 死刑にしときゃよかった、ってのはその通りなのですが、結果論でしかないのです。


 婪佳久の「わたしって怪物なのかな」という直感、大正解でしたね。
 かつての虎杖と同じく、婪佳久は死んでおくべきヤツだったんですから。


 ……でも、真人は同族にはフェアなヤツなんで。
 本能で排除すべきと感じつつも、『喇誑(ラテブラ)』にチャンスを与えたのです。

 えっ婪佳久は?
 そりゃイジめますよ。真人ですよ?
 こんな哀れなガキ見つけたら、ゲラゲラしたいに決まってるじゃないですか!
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