【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】

 黒閃を経て、真人は変身した。

 完全体宿儺と同様、複数の腕と口を備え、
 絶えず掌印と詠唱を行い、術式効果を底上げさせ、

 特級術師・虎杖に牙を剥く。



第21話「偏複掌腔体」

 

「―― 『穿血』!」

「穿、血ッ!」

 

「な――!?」

 

 撃ち込まれる虎杖の血液を、

 真人はぐにゃりと歪み、自ら体に穴を開けて回避。

 

 

 

 そして――ストックした家畜(ニワトリ)の肉体を、文字通り圧縮させて無理矢理に『百斂』を再現――穿血を、撃ち返していた。

 

 

 

 命を捧げる縛りを強制させた一発限定。

 故に威力も質も、真人の方が遥か上。

 

 虎杖悠仁は走り、紙一重で回避するも――音速のままそれらは追従していた。そして、

 

 

 

 

「おらおらどーした、お前の技だろ――!?」

 

 

 

 真人は、ストックの数だけ砲門を有する。

 否、もはやストックは問題ではない。

 

 無生物であろうと魂を改竄して、

 生物に変換すれば血液など無限に用意できる。

 

 故に――試行回数の数だけ洗練され、穿血を撃つだけに特化したフォルムが形作られた側から、与えられた命を散らしていく――。

 

 

 

「――『(フーガ)』!」

 

「今更、それがどうしたよ!」

 

 

 

 虎杖は、迫る血液全てを『解』で微塵切りにし、

 呪力を浴びせて着火、蒸発させ難を逃れた。

 

 即座――『世界を断つ斬撃』を撃とうとし、中断。

 

 

 

 今、これだけは使えない。

 使ったが最後、おそらく、使われる。

 

 なんせ相手は、『六眼』を模した、真人なのだ――!!

 

 

 

「無為転変擬貞魂(ぎていこん)――()()()()()()()()()!」

 

 

 

 件の、真人は魔の手を伸ばす。

 

 真人は『無限』も『アキレスと亀』も知らないが。

 自己解釈での『集束』――空間の魂を掴み。

 両者の間の距離を消し、引き寄せ――『無為転変』で直に触れんとし、

 

 

 

「なんだこれ。チェンソー?」

 

 

 

 紙一重。虎杖は手のひらに細かな斬撃を纏わせ、ギリギリで触れる事なく受け止める。

 

 

 

「こっちのセリフだ。なんなんださっきから、グニャグニャ変わって!」

 

「無為転変による術式の改変・覚醒さ!」

 

「あり得ねぇ、無為転変を残した上で成り立つわけ――いや!」

 

「そうだ、俺の体には今、三つの魂がある!」

 

 

 

 『偏複掌腔体』。六つの腕、二つの口腔を備えた真人は、階層構造だ。

 

 ――まず、基盤の魂。ニュートラルな『無移転変』を持つ真人。

 そして、多重魂。複数の術式を内包する不定形の第二核。

 最後に『偏複掌腔体』――上記の二つの魂を噛ませたうえで、この形態は成立している。

 

 

 

 相互で魂を観測し合うために、複数の術式が同時に両立できる!

 

 

 

「俺は今、俺自身と、ひろった魂全てに術式を開示している。お前にもそれを行った――これから、俺の技は全て、際限なく進化する!」

 

「なん、の――!」

 

 

 

 向こうが掴んできたなら、こちらとて触れる。迫る虎杖の拳。

 

 が、真人はあっさりと術を解除。

 虎杖を手放し、再度、石っころ二つを合わせて生物を作成――中断された。

 

 

 

「なるほど。やられてみるとウザいなぁ、それ」

 

 

 

 飛んできたのは、通常の御廚子による『解』。

 

 真人本体も斬られるも、問題ない。

 断たれた部分は、絶えずぐにゃぐにゃ動く体からすれば容易にくっつける。

 魂に響かない斬撃はノーダメージだ。

 

 

 

「それなら、『コイツ』で――って、あれっ?」

 

 

 

 刹那。虎杖の目でさえ瞬き程度の間、

 ――真人は『偏殺即霊体』へと変化し、一瞬で虎杖の眼前、踊りかかって――1秒、フリーズしていた。

 

 

 

(おっかしいなぁ、ターボババアで実験は済んでたんだけど)

 

 

 

 仕様を知らない『投射呪法』の行使、その副作用。

 逃さず、虎杖悠仁は術式を拡張し、

 

「――『解』!」

 

 魂の境界へ、差し込まれる斬撃。

 これにより、三位一体の構造を崩さんとし――思い知る。

 

 

 

(なんだよ、この密度。この魂の結束は――!)

 

 

 

 さながら、それはスパゲッティコード。

 砂粒ひとつの魂さえも拾い上げ、凝固圧縮された――軽く見積もっても5000を超す魂の塊である―― 『偏殺即霊体』には通らない。

 

 

 

 今の真人は。より強大に存在を昇華している――!!!

 

 

 

「いいや、めんどくさくなってきた」

 

 

 

 故に、五体満足。真人は『投射呪法』により虎杖から飛び退く。

 再びぐにゃりと様変わり、再び不定形の、六つ腕の玉体へ。

 

 それでも変わらず――下卑た笑みで、叫んだ。

 

 

 

無為転変『擬貞魂』――『隕』――か、らのッ、『(フーガ)』ァ――ッ!」

 

 

 

 ――真人にとって、その大火力は遠巻きに見物したモノに過ぎない。

 だからこそ、過程を無視して。

 大気の『魂』を一気に燃やして、劣化再現された――巨大質量と大火力で、黙らせにかかる。

 

 

 

「クソ――!」

 

 

 

 ――使わざるを得なかった。

 『隕』の成立を、『蒼』を無視して妨害、裁断し、被害を最小化できる唯一のカード――虎杖の『世界を断つ解』が、網目状に放たれ。

 

 

 

 これにより。擬似六眼に、手本は示された。

 

 

 

「狙いは腹か首――じゃ、ない!?」

 

 

 

 山勘で回避に成功、と思いきや。

 ハナから狙いは、ガードに回された――両の腕。

 

 

 

 虎杖の、両腕が切断され、跳ね飛ぶ。

 

 即座、『赤血操術』により血のつながりを強く保ち、

 回収、接合に動いた。

 

 ――わかってんだよ。そのくらいは!

 

 

 

「領域展開――自閉円頓裹(じへいえんどんか)』!!!」

 

 

 

 刹那。広がる魔の手が世界を仕切った。

 飛ばされた両腕は――結界により、領域外へ分かたれ――修復不可能となり。

 

 

 

 領域に、領域で返す手段は失われる。

 

 

 

「――クソッ!」

 

 

 

 こうなれば、対抗手段は限られる。

 

 

 

「――シン・陰流『簡易領域』!!」

 

「死に体、がぁ――!」

 

 

 

 虎杖は、突撃していた。

 そうせざるを得なかった。

 

 しかし、バカめ。と真人は嗤う。

 両腕を失い、呪力を大幅に損なっているとはいえ――その一時凌ぎに、魂の防護に使っていた呪力も回すなど。宿儺の指がもうないのを忘れたか!

 

 

 

「出力、最大だ――!!!」

 

 

 

 容易く削りとられる弱者の領域。

 噛み潰さんと吠える真人の全身全霊。

 咆哮に、世界は応え――その時がきた。

 

 

 

「くらったな、無為転変を――!!」

 

 

 

 手始めに魂の形から、両腕をなくす。二度と掌印も、姑息な拓の押し付けも使わせない。それから――それから!!

 

 駆け巡る夢想。理想の結実。

 勝利を確信する、必殺を行使した真人は――。

 

 

 

「――――は、ぇ?」

 

 

 

 ――――あり得ない、ものを見た。

 

 

 

『――ばっし!』

『――まっし!!』

『ご令弟!』

『季子!』

『ゆーじ――!』

『悠仁!!!』

 

 

 

『『『『『『――――に、手ェ出すな――ッ!!!』』』』』』

 

 

 

「え。なにッ。なんだぁっ――うわ、ッ!?」

 

 

 

 ただただ理解できないまま、

 弾かれたのだという結果だけを突きつけられた。

 魂の方から、変化を拒絶された。

 あの肉体には虎杖以外の魂があった!

 

 

 

「まさか――受胎九相図!?」

 

 

 

 呪力を血液に変換する体質――その正体。

 真人はかつて、その一番から三番を京都高専より持ち帰った。残りの六体は受肉していないハズ。

 

 

 

 だが、『宿儺の器』に――それらが収まらない道理などない!

 

「そうか……すべては、これを成立させるためのブラフ!」

 

 

 

 だから、虎杖悠仁は。

 迷う事なく走り――今。

 ゼロ距離にまで滑り込むに至った。

 

 

 

――――証明しろ。

 

 

 

「九相図、兄弟ぃ……!」

 

 

 

 飛び上がる。まるで理想そのものな一蹴りのフォーム。

 あらゆる余分の削げた、機械じみた瞳が真人を捉えた。

 しかし、その奥の――彼らの『血』と『熱』の赤は。

 

 

 

――――俺は、

 

 

 

『『『『『『「ファイヤ――――――っ!!!!」』』』』』』

 

 

 

――――呪術師だ!!!

 

 

 

 そう――当然の如く、黒い火花を産む『鬼神』が。

 人間であると――それ以外の何者にもならないと、証明していた。





何度でも〜♪ 何度でも〜言うわ〜♪

私が―― 当主になれなかったのは、娘が出来損ないだったからだ!

じゃなかった。ご感想ご評価よろしくお願いします。

次回は、20日(火)に投稿予定です。

ちなみに今回のサブタイですが、
『GO!! 虎杖GO!!』にしようか迷いましたが、自重しました。



【オマケ①・『擬貞魂』について】

 元より無為転変は『術式の覚醒』は可能でしたが、
 さらに進化した結果、『術式の作成』までもができるようになりました。

 言葉の意味合いとしては、擬態、という意と、
 正しさに沿う、という意図で漢字を選択してます。

 なお、真人の思う正しさです。

「人だったら改造されたら忌避すんだろうけど、家畜ならいくらやってもいいだろ? 人間サマ!」

 といったふうに、命を弄び、どころか命を想像して、人だけにとどまらず他の全てに伸ばされる支配の手。

 そのひとつが、この新技となります。



【オマケ②・ここがすごいぞ『偏複掌印体』!】

 腕が六本、口は腹と口元の二つ、おまけに6つの劣化再現された『陸眼』が備わっています。

 掌が術式トリガーである真人にとって、その三分の一を掌印を結ぶ作業に回すデメリットは大きく、メリットである術式効果の底上げもまた大きく現れます。

 術式解釈の細分化、拡張も止まることを知れず、
 砂の二粒を合わせて『多重魂・撥体』なんて事を容易でやれます。

 本体性能としては常にグニャグニャしており、防御力皆無。
 しかしそれは、常に魂の形を変えているという事でもあります。

 フレキシブルである事に全振りした真人はあらゆる攻撃のダメージを受け流し、もしくは自身の体に穴を開けてかわしたり、なんて事もできます。

 果たして、虎杖はこれを祓えるのか?
 次回もご期待くださいませ。
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