【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
真人の領域に対し、虎杖の『黒閃』がぶちあたる。
悪意の悉くを跳ね除けて咲く火花。
若き血を燃やす『鬼神』は今、猛追する。
――領域展開直後の、黒閃命中。
その衝撃のあまり――崩された結界から、真人は吹っ飛ばされ。
(よし、両腕回収――!)
結界外にあった、切断された両腕を、虎杖は回収。
赤血操術と反転術式により接合、完治させ。
真人に塗りつけておいた血液と、自身が引き合う事で――間隙なく。
虎杖悠仁は、追い縋る。
「――『黒閃』!!!」
「ごっ、あぁ……ッ!」
また、黒閃の効果から――これより。
虎杖悠仁の攻撃は、『世界を断つ解』を除いて、
全て――魂に響くものとなった!
「――――『
「ぎ、――ァアアあッ!!?」
手始めに、『六眼』へ致死の
無為転変の術式が焼き切れた真人に、対応手段は皆無。
今更目蓋を閉じようと、手で覆おうと、
その内側で六つの眼球は八つ裂きにされ、体内深くへと毒牙は回る。
そして、その追尾機能の備わった血の道筋は。
「『超新星』――!」
「が、ァアアあ――あ!!?」
導火線となり――必中で、超威力の喝采が赤々と真人を打ち上げる。
即座、その血の呪力を発火、簡易的な『開』を重ねがけさせ、上空へ。
つい先ほどに真人が模倣し、落下中だった――『開』を伴う『隕』の破片に叩き付けた。
「――『解』ッ!!」
「ぶ、ぐ。ぁ――あ、ぁ」
追撃、ノーモーションで放たれる裁断の雨が。
可能な限り細かく、その巨塊を砕いていく。
あれらは既に術者のコントロールを逸している。
故に無制限の火力の塊。
――簡易の『竈』であろうと、着火剤には十分。
「――火力勝負だ――――『
――火の矢は、血の紅と共に飛び立つ。
超圧縮血液の四散と、連鎖爆発の重ねがけ。
酸素を運ばれた竈は真っ赤に開いた。
連鎖飛沫が連鎖爆発を呼ぶ超多重衝撃。
「ごぉおおあああアアア――ッ!?!?!」
膨れ上がった呪力の爆炎は――地上に到達する前に。
諸共、全てを真正面から焼き尽くす。
(今の真人は不定形。ぐにゃぐにゃして完全に崩すのは難しい――なら!)
焼けこげた真人の形は、原型がなく。
しかし――逃す理由など、ひとつもない。
「――黒、閃」
(何百回何千回でも、祓えるまで――叩き潰す)
復活した両腕が火花を呼んだ。
先程まで真人の領域があった場所に叩き落とし、
「――『解』」
ついでとばかりに、斬撃の雨を叩き付ける。
まだ、虎杖悠仁のここまでの行動は、一度目の黒閃から僅か十五秒――故に。
「指向性を真人に限定・出力最大――『
2018年、五条悟と交戦した完全体宿儺の再現。
虎杖の『解』を受け呪力を帯びた、『自閉円頓裏』の結界の破片を着火剤に――再び。
出力最大の『竈』が一点に開かれた。
――真人の肉体は散々、斬撃と血を浴びていた。
――故に、真人の肉体自体も着火剤となる。
真人の体は内側からの連鎖爆撃により膨れ上がり、
外側からの連鎖爆撃による減圧により潰される。
無慈悲に咲き乱れる赤い薔薇、その中央へ――!
「黒――、閃ッ!!!」
虎杖悠仁は、上空から。
拳ひとつで、全威力を地の底へと叩き込んだ。
下敷きになったビル跡は跡形もなく、
溶け落ちてできた溶岩地帯に、ダメ押しで形作られたクレーター。
その一撃。黒い閃光は――連打され、更に景色を上塗っていく。
――『赤血操術』による身体コンディションの最適化・『黒閃』による潜在能力解放により――虎杖の呪力運用効率は、限りなく100%に近い。
故にこそ。今の虎杖には呪力切れは発生しない。
この一撃一撃は、正真正銘。
全てが、最大出力の『黒閃』――――!
その、爆心地の中心――真人は。
「――――領、域――展開――ッ!!!」
その口を開き――掌印を、形作る。
領域展開による術式焼き切れの上で、
分解の猛毒・『解』の連打・『開』が三度――更には、『黒閃』九連発。
まぎれもない大ダメージ。だが、だからこそ最後の蝋燭の火は、大きく燃え上がる。
――術式が焼き切れた時点で、真人は術式復活に全霊を注いだ――そして。
今際の際、掴んだ―― 呪力の確信!!!
絶対的な死のインスピレーションに触れた結果。
20秒未満で、一切の縛りでも小手先でもなく、呪術史において初めて――真人は、術式の焼き切れを真正面から克服していた。
(俺の、勝ちだ――虎杖!!!)
前代未聞。かつてない偉業。才能だけでも、努力だけでも届き得ぬ、至りに立った――真人は。
「――、な」
突然。貫く衝撃に、その
――おかしい。
真人は、上の口と見せかけ、腹の口で印を結んだ。
妨害は予想されていたからだ。
それも攻撃の間隙を縫って、一瞬を狙った。
間違いなく虎杖は何も行動していな――!
「これ、は――呪力が、足に遅れて!」
――否。既に、行動は完了していた。
両腕は『黒閃』だけを産んでいた。
そのタイミングにおいて、両手は真人から離れていた。
だが、右脚は――真人を足蹴にした、それだけで。
――時間差で、二重の衝撃……!!
既に、虎杖悠仁は『逕庭拳』を拳以外でも発動できる。
そして真人がしたように――隙を見過ごす彼ではない。
「――領域展開」
「しま――っ!」
生じた間隙は致命となった。
真人も領域展開の発動に動く。
だが。それより一手早く――炸裂する、必中効果。
吹っ飛び、転げ回り――真人は。
受けて即座、理解した。
それが――これまでの何より、致命打であると。
「――、ぁ、あ。え?」
突然――世界から、自己がズレた。
存在がズレた。基盤がひっこ抜かれた。
産まれた時から、初めて立ち歩くより先に手にした――無為転変が。魂の世界が。
呪いが。この体から、抜け落ちた。
ここにあるのは。
ただの、人間のなり損ない――。
「――――『
真人は仰ぎ、呪いの抜けた世界を見張る。
そこは――いつか、垣間見た氷原の上。
闇を祓って、拡がり渡る
――虎杖悠仁に結ばれた、地蔵菩薩印。
その背後、聳え立つは――四つ腕の十字架。
黒いマダラの包帯が巻き付いて、幾つもの釘が刺さった懲罰のシンボル――正に、これは。
まごうことなき、両面宿儺の器としての到達点。
「あの日、言いそびれてたな――真人」
これは――虎杖悠仁の、閉じない領域。
自身を領域の対象内とする縛りにより成立した、結界を設けない必中のみの領域。
効果は、付与された『御廚子』による――『魂』に必中効果で『解』を打ち込む、一時的な―― 肉体と呪力の繋がりの切断。
あらゆる呪いを取り上げ、己がものとして吸収稼動する、世界に付与された術式の独立稼動――!
「誕生日おめでとう。これで名前通り――
それは――。
呪霊にとってすれば、
存在否定に他ならない。
「舐め、てんじゃねぇぞ、虎杖ぃい――――俺はァッ、呪いだ――!!」
雪が、音もなく降り積もる。
核の抜かれた体が。
ボダボダと、崩れ行く足で走り出した。
魂が見えない世界、だからこそ、折れてなどいないと言い聞かせ、進んだ――あの時と同じ結末など、決して、認められない――!
「……」
「俺が死ぬ一秒先にお前が殺せれば、俺は――!」
足掻きでしかないと知りながら。
ぐずぐずの拳を固めて殴りかかった。
己が崩れるより先に、爪を立てた。
認められない、認め難い――ズルい。
なんだってお前らは、そうもタダで存在できる!
「――ぐぅ、ッ!?」
「……」
ただの一撃、それだけでわかった。
虎杖悠仁は、既に――呪術とはなんら関係なく、
『魂』への攻撃を体得していた。
この状況においても、呪力なんてなくても――真人は、
「ぐ、ぅぅぅう――あぁ、あ!」
「……祓ってやるよ。これからも――何度でも」
痛くもない拳を、虎杖は、無言で受けていた。
手首から先の消えた腕に、不出来に叩かれた。
足が折れ。ずるずると、立てる爪も無くし、
「俺が生きてる限りは――必ず」
その果てに――雪の積もる上には。
抵抗虚しく――兎が一匹。
「……それが、役割ってか?」
兎は――狼を見据えていた。
己が顛末を悟り切っていながら、拒絶していた。
「違う――俺がみんなと生きて、死にたい。そのために」
――、認めがたい。
虎杖悠仁。お前が、
そんな風にのうのうと生きて、
そのような享受をしているなど。
「なんだ、それ……ジジイになっても、ガキのままかよ」
「……そうかもな」
ありきたりな悪意が、
ありきたりで脆い善意の巣を、壊せないでいる――だから。
「なら、俺は――引き摺り落としてやるさ――何度でも」
そうだ。次こそ。
次こそは――この手で。今度こそ…………。
―――
――
―
『――俺はァッ、呪いだ――!!』
……またひとつ。断末魔を、聞いた。
「…………知ってるよ――呪われて産まれたのは、お前だけじゃないから」
白んだ世界を見上げ、狼は独り、呟く。
――最後の、両面宿儺の指。
今となっては己の断片も同然のそれは――2022年、海外案件が同時多発した呪術界の混乱期に、予期せぬ『何者か』によって奪い去られた。
それをめぐって、青年となった少年は。
今では海外を飛び回り、旅をしている。
この雪空の外。どこかに、あとひとつ。
……今度こそ、俺は。
この言葉を、お前に伝えたいんだ――宿儺。
【6/1・追記】
最後の宿儺の指を持ち去った人物ですが、
『受愚戴転・第二部』の構想に支障があったので、
裏梅でなく、『何者か』に変更しました。
話が変わってしまい申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
……とはいえ、これにて無事、真人VS虎杖、決着です。
次回からは最終章②、再び五条悟の出番となります。
引き続き、こうご期待ください。
しかし…虎杖の領域名、どうでしょう。合ってましたか?
是非ともご意見ご感想、お聞かせ下さるとありがたいです。
【オマケ①・領域ネーミング解説】
『渺廻滅度』ですが、
渺は『極めて小さいさま』
(また、渺々は、広々として果てしないさま)を示します。
精密な術式効果に基づく領域なので。
これを『氷海』『氷解』とかけて、【渺廻】としました。
『廻』入るのはマストですからねぇ!
虎杖といったら氷原、雪景色だろうと思って、
本来なら火属性の術式が、虎杖の生得領域によって一転して白一色、というコンセプトでの造語です。
滅度はというと、仏教用語まんま、入滅の意です。
呪いを脱し、悟りの境地に至った仏は現世という地上にはいられません。
この場合「呪いは成仏しろ拒否権はナシな!」ってニュアンスでしょうか。
総合して、『隅々まで悟りを行き渡らせる』領域、という漢字です。
また、生得領域のシンボルが十字架というのもミソで、
これは、あらゆる人の罪、世の不浄を一身に追う、という虎杖の決意の現れであり、
それもあって『あらゆる呪いを取り上げる領域』となりました。
以上。あくまで、解釈のひとつとして受け入れていただければ……。
【オマケ②・書き切れなかった虎杖のスペックについて】
実は、虎杖の地蔵菩薩印から繰り出される技は『3つ』あります。
①世界を断つ解
②領域展開『渺廻滅度』
に加えて、三つ目。
赤血操術による領域展開があるのです。
②は呪肉体特攻、呪霊特攻なのに対し、
③は対人特攻の役割となっており、
こちらは結界を閉じる、『必中必殺』の領域展開。
相手の血を掌握し、『百歛』を必中化するという、
もはや殺意しかない領域となっています。
しかも、虎杖はどちらかの領域を閉じても、
もう片方の術式が生きているため、
この両方を連続して領域展開するという事も可能です。
まあ、そこまでさせるヤツいないでしょうけども。
てか、『渺廻滅度』も今回書いたのって『必中効果』だけなので、
付与された『御廚子』で、もっと何かできるのでは……?
【オマケ③・本作における1年ズのパワーバランスについて】
本作での1年ズは、領域や強みを分散させて作っています。
まず、領域を比べてみますと……
・虎杖:閉じない領域、必中効果限定の古代式。押し合いにとことん強い
・伏黒:閉じない領域、必殺限定。術式強化に全振り。
・釘崎:必中必殺の領域。純粋な呪術戦の境地。
と、いい感じに分散していますね。
次に、三人の性能を比較しますと。
虎杖:
①『世界を断つ解』が掌印か詠唱のどちらかで撃てる
②呪力のコスパは五条悟並みで長期戦可能
③オールレンジの対応力
④択の多さによる不意打ち性能
→虎杖はタイマン向き。不利条件皆無。単独スペックTOP
伏黒:
①『魔虚羅』が調伏済み
②フィジカルギフテッドと同精度で『釈魂刀』『万里の鎖』が使用可能
③領域でのみ、式神を6000体弱、同時使役可能
④領域効果を『領域外』で行使可能、圧倒的範囲効果
⑤領域維持に式神の呪力を動員できる続戦能力
⑥本体を叩こうにも、最悪本体が強くなって殴りかかってくる。
→伏黒は広範囲物量戦特化。ただし最大値を出せる場面は限られる
釘崎:
①領域効果により受肉タイプの元回游泳者が動員可能
②釘による呪術のアイテム化(嘱託式の帳、反転術式、簡易領域)
③正の呪力を込めた釘による、領域後の焼き切れ即解消
④『術式反転』による『解呪』が可能
⑤領域で必中必殺化する『共鳴り』
→釘崎は決定力特化。どんな状況でも打開策を呼び込む鬱フラグクラッシャー。
……てなカンジで。
みんな強いのですが、強さのベクトルが異なる状態です。
また、虎杖と伏黒の強さは対等となっており、
今の二人なら、完全体両面宿儺に勝てる想定です。
そして、この三人が一緒に戦う場合、
本作の五条悟と対等に戦えるレベル、となっています。
いや~。強くなりましたね、みんな。