【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
真人の領域に対し、虎杖の『黒閃』がぶちあたる。

悪意の悉くを跳ね除けて咲く火花。
若き血を燃やす『鬼神』は今、猛追する。



第22話「この日」

 

 ――領域展開直後の、黒閃命中。

 その衝撃のあまり――崩された結界から、真人は吹っ飛ばされ。

 

 

 

(よし、両腕回収――!)

 

 

 

 結界外にあった、切断された両腕を、虎杖は回収。

 赤血操術と反転術式により接合、完治させ。

 真人に塗りつけておいた血液と、自身が引き合う事で――間隙なく。

 

 

 

 虎杖悠仁は、追い縋る。

 

 

 

「――『黒閃』!!!」

 

「ごっ、あぁ……ッ!」

 

 

 

 また、黒閃の効果から――これより。

 

 

 

 虎杖悠仁の攻撃は、『世界を断つ解』を除いて、

 全て――魂に響くものとなった!

 

 

 

「――――『翅王(しおう)』!」

 

「ぎ、――ァアアあッ!!?」

 

 

 

 手始めに、『六眼』へ致死の分解毒(けつえき)を入れ込む。

 

 無為転変の術式が焼き切れた真人に、対応手段は皆無。

 

 今更目蓋を閉じようと、手で覆おうと、

 その内側で六つの眼球は八つ裂きにされ、体内深くへと毒牙は回る。

 

 そして、その追尾機能の備わった血の道筋は。

 

 

 

「『超新星』――!」

 

「が、ァアアあ――あ!!?」

 

 

 

 導火線となり――必中で、超威力の喝采が赤々と真人を打ち上げる。

 

 即座、その血の呪力を発火、簡易的な『開』を重ねがけさせ、上空へ。

 つい先ほどに真人が模倣し、落下中だった――『開』を伴う『隕』の破片に叩き付けた。

 

 

 

「――『解』ッ!!」

 

「ぶ、ぐ。ぁ――あ、ぁ」

 

 

 

 追撃、ノーモーションで放たれる裁断の雨が。

 可能な限り細かく、その巨塊を砕いていく。

 

 

 あれらは既に術者のコントロールを逸している。

 故に無制限の火力の塊。

 

 ――簡易の『竈』であろうと、着火剤には十分。

 

 

 

「――火力勝負だ――――(フーガ)』プラス『百斂(びゃくれん)』――千孿開闢(せんれんかいびゃく)ッ!!」

 

 

 

 ――火の矢は、血の紅と共に飛び立つ。

 

 超圧縮血液の四散と、連鎖爆発の重ねがけ。

 酸素を運ばれた竈は真っ赤に開いた。

 連鎖飛沫が連鎖爆発を呼ぶ超多重衝撃。

 

 

 

「ごぉおおあああアアア――ッ!?!?!」

 

 

 

 膨れ上がった呪力の爆炎は――地上に到達する前に。

 諸共、全てを真正面から焼き尽くす。

 

 

 

(今の真人は不定形。ぐにゃぐにゃして完全に崩すのは難しい――なら!)

 

 

 

 焼けこげた真人の形は、原型がなく。

 しかし――逃す理由など、ひとつもない。

 

 

 

「――黒、閃」

 

 

 

何百回何千回でも、祓えるまで――叩き潰す

 

 

 

 復活した両腕が火花を呼んだ。

 先程まで真人の領域があった場所に叩き落とし、

 

 

 

「――『解』」

 

 ついでとばかりに、斬撃の雨を叩き付ける。

 

 

 

 まだ、虎杖悠仁のここまでの行動は、一度目の黒閃から僅か十五秒――故に。

 

 

 

「指向性を真人に限定・出力最大――(フーガ)』ッ!!

 

 

 

 2018年、五条悟と交戦した完全体宿儺の再現。

 

 虎杖の『解』を受け呪力を帯びた、『自閉円頓裏』の結界の破片を着火剤に――再び。

 

 

 出力最大の『竈』が一点に開かれた。

 

 

 

 ――真人の肉体は散々、斬撃と血を浴びていた。

 ――故に、真人の肉体自体も着火剤となる。

 

 真人の体は内側からの連鎖爆撃により膨れ上がり、

 外側からの連鎖爆撃による減圧により潰される。

 

 無慈悲に咲き乱れる赤い薔薇、その中央へ――!

 

 

 

「黒――、閃ッ!!!」

 

 

 

 虎杖悠仁は、上空から。

 拳ひとつで、全威力を地の底へと叩き込んだ。

 

 

 

 下敷きになったビル跡は跡形もなく、

 溶け落ちてできた溶岩地帯に、ダメ押しで形作られたクレーター。

 

 

 

 その一撃。黒い閃光は――連打され、更に景色を上塗っていく。

 

 

 

 ――『赤血操術』による身体コンディションの最適化・『黒閃』による潜在能力解放により――虎杖の呪力運用効率は、限りなく100%に近い。

 

 故にこそ。今の虎杖には呪力切れは発生しない。

 この一撃一撃は、正真正銘。

 

 

 

 全てが、最大出力の『黒閃』――――!

 

 

 

 その、爆心地の中心――真人は。

 

 

 

「――――領、域――展開――ッ!!!」

 

 

 

 その口を開き――掌印を、形作る。

 

 

 

 領域展開による術式焼き切れの上で、

 分解の猛毒・『解』の連打・『開』が三度――更には、『黒閃』九連発。

 

 まぎれもない大ダメージ。だが、だからこそ最後の蝋燭の火は、大きく燃え上がる。

 

 

 

 ――術式が焼き切れた時点で、真人は術式復活に全霊を注いだ――そして。

 

 今際の際、掴んだ―― 呪力の確信!!!

 

 

 

 絶対的な死のインスピレーションに触れた結果。

 20秒未満で、一切の縛りでも小手先でもなく、呪術史において初めて――真人は、術式の焼き切れを真正面から克服していた。

 

 

 

(俺の、勝ちだ――虎杖!!!)

 

 

 

 前代未聞。かつてない偉業。才能だけでも、努力だけでも届き得ぬ、至りに立った――真人は。

 

 

 

「――、

 

 

 

 突然。貫く衝撃に、その体制(もくろみ)を崩された。

 

 

 

 ――おかしい。

 

 真人は、上の口と見せかけ、腹の口で印を結んだ。

 妨害は予想されていたからだ。

 それも攻撃の間隙を縫って、一瞬を狙った。

 

 間違いなく虎杖は何も行動していな――!

 

 

 

「これ、は――呪力が、足に遅れて!」

 

 

 

 ――否。既に、行動は完了していた。

 

 両腕は『黒閃』だけを産んでいた。

 そのタイミングにおいて、両手は真人から離れていた。

 

 だが、右脚は――真人を足蹴にした、それだけで。

 

 

 

 ――時間差で、二重の衝撃……!!

 

 

 

 既に、虎杖悠仁は『逕庭拳』を拳以外でも発動できる。

 

 そして真人がしたように――隙を見過ごす彼ではない。

 

 

 

「――領域展開」

 

「しま――っ!」

 

 

 

 生じた間隙は致命となった。

 真人も領域展開の発動に動く。

 だが。それより一手早く――炸裂する、必中効果。

 

 

 

 吹っ飛び、転げ回り――真人は。

 受けて即座、理解した。

 

 

 

 それが――これまでの何より、致命打であると。

 

 

 

「――、ぁ、あ。え?」

 

 

 

 突然――世界から、自己がズレた。

 

 存在がズレた。基盤がひっこ抜かれた。

 産まれた時から、初めて立ち歩くより先に手にした――無為転変が。魂の世界が。

 

 呪いが。この体から、抜け落ちた。

 

 

 

 ここにあるのは。

 ただの、人間のなり損ない――。

 

 

 

 

「――――渺廻滅度(びょうかいめつど)

 

 

 

 

 真人は仰ぎ、呪いの抜けた世界を見張る。

 

 

 

 そこは――いつか、垣間見た氷原の上。

 闇を祓って、拡がり渡る銀世界(ゆきげしき)

 

 

 

 ――虎杖悠仁に結ばれた、地蔵菩薩印。

 その背後、聳え立つは――四つ腕の十字架。

 

 黒いマダラの包帯が巻き付いて、幾つもの釘が刺さった懲罰のシンボル――正に、これは。

 

 

 

 まごうことなき、両面宿儺の器としての到達点。

 

 

 

「あの日、言いそびれてたな――真人」

 

 

 

 これは――虎杖悠仁の、閉じない領域。

 

 

 

 自身を領域の対象内とする縛りにより成立した、結界を設けない必中のみの領域。

 

 効果は、付与された『御廚子』による――『魂』に必中効果で『解』を打ち込む、一時的な―― 肉体と呪力の繋がりの切断。

 

 

 

 あらゆる呪いを取り上げ、己がものとして吸収稼動する、世界に付与された術式の独立稼動――!

 

 

 

「誕生日おめでとう。これで名前通り――()()()()()()

 

 

 

 それは――。

 呪霊にとってすれば、

 存在否定に他ならない。

 

 

 

「舐め、てんじゃねぇぞ、虎杖ぃい――――俺はァッ、呪いだ――!!

 

 

 

 雪が、音もなく降り積もる。

 

 核の抜かれた体が。

 ボダボダと、崩れ行く足で走り出した。

 

 

 

 魂が見えない世界、だからこそ、折れてなどいないと言い聞かせ、進んだ――あの時と同じ結末など、決して、認められない――!

 

 

 

「……」

「俺が死ぬ一秒先にお前が殺せれば、俺は――!」

 

 

 

 足掻きでしかないと知りながら。

 ぐずぐずの拳を固めて殴りかかった。

 己が崩れるより先に、爪を立てた。

 

 認められない、認め難い――ズルい。

 なんだってお前らは、そうもタダで存在できる!

 

 

 

「――ぐぅ、ッ!?

「……」

 

 

 

 ただの一撃、それだけでわかった。

 

 虎杖悠仁は、既に――呪術とはなんら関係なく、

 『魂』への攻撃を体得していた。

 

 

 

 この状況においても、呪力なんてなくても――真人は、(ころ)される。

 

 

 

「ぐ、ぅぅぅう――あぁ、あ!」

 

「……祓ってやるよ。これからも――何度でも」

 

 

 

 痛くもない拳を、虎杖は、無言で受けていた。

 

 手首から先の消えた腕に、不出来に叩かれた。

 足が折れ。ずるずると、立てる爪も無くし、(くずお)れて、

 

 

 

「俺が生きてる限りは――必ず」

 

 

 

 その果てに――雪の積もる上には。

 抵抗虚しく――兎が一匹。

 

 

 

「……それが、役割ってか?」

 

 

 

 兎は――狼を見据えていた。

 己が顛末を悟り切っていながら、拒絶していた。

 

 

 

「違う――俺がみんなと生きて、死にたい。そのために」

 

 

 

 ――、認めがたい。

 

 

 

 虎杖悠仁。お前が、

 そんな風にのうのうと生きて、

 そのような享受をしているなど。

 

 

 

「なんだ、それ……ジジイになっても、ガキのままかよ」

 

「……そうかもな」

 

 

 

 ありきたりな悪意が、

 ありきたりで脆い善意の巣を、壊せないでいる――だから。

 

 

 

「なら、俺は――引き摺り落としてやるさ――何度でも」

 

 

 

 そうだ。次こそ。

 次こそは――この手で。今度こそ…………。

 

 

 

―――

――

 

 

 

『――俺はァッ、呪いだ――!!』

 

 

 

 ……またひとつ。断末魔を、聞いた。

 

 

 

「…………知ってるよ――呪われて産まれたのは、お前だけじゃないから」

 

 

 

 白んだ世界を見上げ、狼は独り、呟く。

 

 

 

 ――最後の、両面宿儺の指。

 今となっては己の断片も同然のそれは――2022年、海外案件が同時多発した呪術界の混乱期に、予期せぬ『何者か』によって奪い去られた。

 

 

 

 それをめぐって、青年となった少年は。

 今では海外を飛び回り、旅をしている。

 

 この雪空の外。どこかに、あとひとつ。

 

 

 

 ……今度こそ、俺は。

 この言葉を、お前に伝えたいんだ――宿儺。

 





【6/1・追記】
最後の宿儺の指を持ち去った人物ですが、
『受愚戴転・第二部』の構想に支障があったので、
裏梅でなく、『何者か』に変更しました。

話が変わってしまい申し訳ございませんが、よろしくお願いします。



 ……とはいえ、これにて無事、真人VS虎杖、決着です。

 次回からは最終章②、再び五条悟の出番となります。
 引き続き、こうご期待ください。

 しかし…虎杖の領域名、どうでしょう。合ってましたか?
 是非ともご意見ご感想、お聞かせ下さるとありがたいです。



【オマケ①・領域ネーミング解説】

『渺廻滅度』ですが、

渺は『極めて小さいさま』
(また、渺々は、広々として果てしないさま)を示します。

精密な術式効果に基づく領域なので。

これを『氷海』『氷解』とかけて、【渺廻】としました。
『廻』入るのはマストですからねぇ!

虎杖といったら氷原、雪景色だろうと思って、
本来なら火属性の術式が、虎杖の生得領域によって一転して白一色、というコンセプトでの造語です。



滅度はというと、仏教用語まんま、入滅の意です。
呪いを脱し、悟りの境地に至った仏は現世という地上にはいられません。

この場合「呪いは成仏しろ拒否権はナシな!」ってニュアンスでしょうか。



総合して、『隅々まで悟りを行き渡らせる』領域、という漢字です。



また、生得領域のシンボルが十字架というのもミソで、
これは、あらゆる人の罪、世の不浄を一身に追う、という虎杖の決意の現れであり、

それもあって『あらゆる呪いを取り上げる領域』となりました。



以上。あくまで、解釈のひとつとして受け入れていただければ……。



【オマケ②・書き切れなかった虎杖のスペックについて】

 実は、虎杖の地蔵菩薩印から繰り出される技は『3つ』あります。

①世界を断つ解
②領域展開『渺廻滅度』

 に加えて、三つ目。
 赤血操術による領域展開があるのです。

②は呪肉体特攻、呪霊特攻なのに対し、
③は対人特攻の役割となっており、

 こちらは結界を閉じる、『必中必殺』の領域展開。
 相手の血を掌握し、『百歛』を必中化するという、
 もはや殺意しかない領域となっています。

 しかも、虎杖はどちらかの領域を閉じても、
 もう片方の術式が生きているため、
 この両方を連続して領域展開するという事も可能です。

 まあ、そこまでさせるヤツいないでしょうけども。



 てか、『渺廻滅度』も今回書いたのって『必中効果』だけなので、
 付与された『御廚子』で、もっと何かできるのでは……?



【オマケ③・本作における1年ズのパワーバランスについて】

 本作での1年ズは、領域や強みを分散させて作っています。



 まず、領域を比べてみますと……

・虎杖:閉じない領域、必中効果限定の古代式。押し合いにとことん強い
・伏黒:閉じない領域、必殺限定。術式強化に全振り。
・釘崎:必中必殺の領域。純粋な呪術戦の境地。

 と、いい感じに分散していますね。



 次に、三人の性能を比較しますと。

虎杖:
①『世界を断つ解』が掌印か詠唱のどちらかで撃てる
②呪力のコスパは五条悟並みで長期戦可能
③オールレンジの対応力
④択の多さによる不意打ち性能

虎杖はタイマン向き。不利条件皆無。単独スペックTOP

伏黒:
①『魔虚羅』が調伏済み
②フィジカルギフテッドと同精度で『釈魂刀』『万里の鎖』が使用可能
③領域でのみ、式神を6000体弱、同時使役可能
④領域効果を『領域外』で行使可能、圧倒的範囲効果
⑤領域維持に式神の呪力を動員できる続戦能力
⑥本体を叩こうにも、最悪本体が強くなって殴りかかってくる。

伏黒は広範囲物量戦特化。ただし最大値を出せる場面は限られる

釘崎:
①領域効果により受肉タイプの元回游泳者が動員可能
②釘による呪術のアイテム化(嘱託式の帳、反転術式、簡易領域)
③正の呪力を込めた釘による、領域後の焼き切れ即解消
④『術式反転』による『解呪』が可能
⑤領域で必中必殺化する『共鳴り』

釘崎は決定力特化。どんな状況でも打開策を呼び込む鬱フラグクラッシャー。



 ……てなカンジで。
 みんな強いのですが、強さのベクトルが異なる状態です。



 また、虎杖と伏黒の強さは対等となっており、
 今の二人なら、完全体両面宿儺に勝てる想定です。

 そして、この三人が一緒に戦う場合、
 本作の五条悟と対等に戦えるレベル、となっています。

 いや~。強くなりましたね、みんな。
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