【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
第23話「双頭」
2025年4月20日0時0分――五条悟。
薨星宮本殿に現着。
「そういや、僕はここ来た事なかったか……」
同時刻、伏黒恵、釘崎野薔薇両名も到着。
二名の役割は、この結界内にいると思しき『真人』が、外へ逃げ出した場合の後詰であった。
「帳……みたいな、結界ですね」
「うん。五条悟以外は入るな、って感じだね」
「入るのだけでなく、出るのもダメなやつみたいね。結界内の呪力の流れは非術師に向いてる――他が入れば、人質の命はないって感じ?」
旧東京高専地下。今は亡き天元様の膝元。
国内主要結界の基底。
その階段を降り、門を潜り、中央の大樹の根元に、彼等はいた。
そこは高専を囲う特別な結界の内側。
招かれた者しか入ることはできない。
――今回においては、五条悟の他に立ち入り禁止である。
「じゃあ、予定通り。俺らはここで万が一、真人が出てこないよう見張っておきます」
――伏黒、釘崎はこの後、特級超過呪霊の顕現により、
薨星宮から離脱する事となるのだが。
それは、また別の話である。
「はいはい。つっても、あり得な――ぅわ!!」
――、突然。五条悟の背後。
背中を、
「……なによ、恒例じゃないの?」
「先生、行ってきてください」
「なにも『領域展延』使う事ないでしょッ、ビックリしたな〜まったくもう!」
無下限術式の中和による、接触。
それもぬるりと、さも自然動作のようにやられ、さしもの五条悟も肝を冷やした。
しかし――あぁ、そうだった。
「え、五条セン初手読み違いしてんすか〜?」
「そんなじゃ、寝首かかれても知りませんよ」
――この二人。できてなかったもんね、それ。
「へへっ――バッチこい!」
――背中を押されるまま、五条悟は飛び立った。
侵入したそこは、悪用された天元による空性結界。
五条悟の同意なしには成立しない『縛り』があった。
その無理難題に近い条件は今、満たされ――結界は機動し――――その結果。
「なるほど、そういう感じね。……乗ってやるよ」
聳え立つ、ビルの群れ。
夜闇を突くクリスマスツリーに隣接した、ハロウィンのイルミネーション。
結界の内外の広さは必ずしも一致しない。
しかしこれは、なんと広大な――渋谷と新宿の
「――って、待った。おかしいな。ツギハギ顔が見当たらない」
が――あるべきものが見当たらず。
五条悟は首を傾げた。
今回の本命である真人こそ、今しがた行われようとしている呪術テロで必須要員のはず――結界から出たのか?
「まぁ、成り立ちからして、わざわざ日本人全滅なんでやる理由ないしね」
――問題ない、想定内だ。
この状況、真人は絶対に祓われる。
高専結界を通っていたと言う伏黒の報告から、結界外には伏黒と釘崎が張り込んでいる。たった今逃げ出したなら、今頃袋叩きだ。
万が一、新高専が狙いでも、
伊地智の結界トラップと、悠仁もいるし。
もし今の一年生とぶち当たっていたとしても数分は保つ。無意識で魂を知覚し、アホほど高い呪力を持つ婪佳久と、『天逆鉾』を持つ『最速』の術師。今の
……あくまで、スペックだけを見る限りは。
「とはいえ、心配だよなぁ。外も中も。これ百鬼夜行パターンだもんなぁ――どっちもやれなきゃなのが、先生の辛いとこよねェ」
少し悩み――決めた。
両方、実現してみせると。
―――
――
―
「で――これら全ては傀儡か、五条悟出てこい!」
四本腕を振り回し、青く透き通る四つ目をひん剥き、
――特級事象呪霊『ニコラウス』はマジギレしていた。
激おこであった。
かの邪智暴虐の男を降さんと憤怒していた。
「――うぇーいここまでおいでよ〜⭐︎」
「バッカもーんッ、ソイツが本体だ!」
「いや僕だよ僕!」
「うっわそこの僕、何で生徒のスカート履いてんの、34歳男性として恥ずかしくないのか!」
「ちょっ『蒼』飛ばすんじゃないよ、ええぃ『赫』ぶちこんで掛け合わせて爆破してやる!」
「――対消滅しろ、乗ってやると言っておいてこれか。それこそ恥を知れ凡夫がッ!!」
なにせ、眼前。
見える限り二十三人の五条悟が居た。
だが決して、ただの幻覚ではない。
なにせ、ちゃんと赫も蒼も打ってくる。
ニコラウスの飛ばす斬撃と衝撃波で、即座に消し飛ぶ幻とはいえ。
――放置すれば、いつ『茈』が起こるかもわからない!!
「だいたい真人はどこだ。また散歩かアイツは。既に計画は最終段階――無為転変の術式を列島全土の結界に付与するだけで、『一億総呪殺の儀』は可能だというのに!」
――なるほど確かに。
五条悟以外は入るなとは言った。
言ったけども――!!
「馬鹿ですか。何を凡夫とやらの戯言を間に受けているのです、ニコラウス――あと。計画したのも用意したのも、私ですからね」
対して、この結界を張ったジャック・オーは冷静だった。
「抜かせ。貴様もさっきまで見抜けてなかったであろうが、南瓜頭!」
「逝ね。いや失礼、隠居なさい赤帽子」
女体の形をとって産まれたのもあるだろう。
冷静
いくつもの樹体がねじれ合い模られた体の、南瓜型の頭部が咲かせた黄色い花冠から――炎を立ち昇らせて憤怒を示し。
ぐぬぬ、といがみ合う両者は――だが、同時に勘付き空を見上げる。
「なんだ……見えてねーのかよ。間抜け」
重力法則に真正面から喧嘩を売り。
中空、幻影を消した本体は、佇む。
0時7分――五条悟。
再び、薨星宮の結界に現着。
「言ったでしょう、ニコラウス。人質を殺すのは性急でしたね」
「あぁ、そのようだな――逃げたかと思ったぞ?」
「そこは悪かったよ、僕GTGだもんでね。いつだって生徒が最優先なのさ。でもわかったろ――これが僕とお前らの『間』にある、無限だよ」
人質は――術師13名、非術師54名。
いつでも殺せる、そう誇示するように。
ハリボテのスカイツリーの上、人々は大樹の檻で吊り下げられていた。
が――最早そんな程度は粗末事とばかりに。
「君たちは『今』を視れていない――眼を通した情報は必ず『過去』だ。天体観測できる星の状態が数万年前の姿なように、必ず認識に『間』が生じる――さっきのは、それを応用した分身業さ」
目隠しを外し、彼は地に降りる。
殺意と冷徹さに濡れた睥睨。
「この『間』は決して、何人も埋め合わせられない。ただし――この僕を除いてね」
文字通りリアルタイムで全てを見通し。
その全てを、己以下と正しく定義する。
驕りでもなんでもなく、ただの事実として、自他共に認める――2025年『最強』五条悟。
「ま、心配せずともこれは使わないでおいてやるよ。一方的すぎんのも面白くないし?」
対するは、ある意味、彼の産んだ影。
「――ケヒヒッ。どういうワケか死に損なった分際で説教か。笑わせるな、五条悟!」
「中身がない、正にその通りです。私達は存在が先にあり、呪術としての理論は伴っていなかった」
「開示して良かったのか。俺たち二人は、五条悟の概念も内包した呪霊。お前を喰らい、進化するぞ!」
五条悟と完全体両面宿儺を足して割り、赤い三角帽子を被せたような呪霊と。自然呪霊の再臨。
亡霊は、ここに存在意義を得た。
これは。彼らという過去が挑む、現代最強への挑戦――!
「そこなんだよねぇ。有名人になると出歩くにも苦労するよ――あと、受肉直後はともかく。その笑い方あんましなくなってたよ、
「知ったことか! 残った者こそ本物なのd――」
無 量
空 処
が――初手から為された、対話拒否。
何せ、まずは人質優先。
それ故の五条悟――0.2秒の領域展開。
「ま、相手の術式が煙たいなら、こーしないほうが悪いよね♪」
その刹那、その場で彼以外は行動不能となり。
領域直前、遠隔発動した『蒼』によって――人質の檻は転移。
手近な、渋谷駅?と思しき駅地下へと入れ込まれた。
(これで多少傷があっても、反転で治せる範囲なら野薔薇がなんとかしてくれる。防護のために極小の結界に入れ込んだ。人質はまず問題ないかな)
――今の『無量空処』の必中効果は、人質に対して魂単位で拡張されて放たれた。
これにより、彼ら人質の魂には半年分の情報認識を叩き込まれ、フリーズ――肉体が損傷したとしても、魂の状態は五体満足なまま固定される。
そして、釘崎野薔薇も魂を認識済み。
釘を用いれば、反転術式のアウトプットも可能である。
これで最悪、多少の欠損が生じても、五体満足の情報で停止した魂をベースに完全修復してくれるだろう――。
「「――――」」
「言ったつもりなんだけどな〜……今の僕を殺せるのは、時間だけだよ」
そして――今の五条悟は、焼き切れた術式のリセットがノーリスクで行える。
脳でなく『魂』によって思考できる今、脳の損傷を考慮する必要はない。
よって迷わず呪力で脳を自壊させ、反転術式で、術式を回復しつつ。
祓うために、接近をした――瞬間。
「「――――領域展開ッ!!」」
「……へぇ、マジか……!!」
その瞬間を、狙い。
『無量空処』を食らった上で――、
ジャック・オーとニコラウスは、喰らい付く――!!
…バカの掛け算みたいな章題になってますけども。
今度は5話連続で、
五条悟 VS 『呪術の呪霊』といかせていただきます。
もうちっとだけイベントムービーにお付き合いください。