【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
渋谷事変と新宿決戦の呪霊。
その合体領域は、五条悟に突破された。
が、狡猾に彼等は追い縋る――。
――合体領域が、正面突破された。
ニコラウスとジャック・オーの考案した必殺が。
渋谷事変、新宿決戦、
呪霊として誕生してからの七年、自身の中の五条悟と向き合い、形作った。
呪術的理論を完全無視した奥義が。
無下限という。理論ありきのデタラメ呪術に打ち負け、
「――――オーラオラオラオラオラオラ――ッ!!」
「――――ぼばばばばばば――!!!?」
爆ぜた『茈』により、領域を突き破ったニコラウスは吹っ飛んで、
追い込みにかかる五条悟。
それは『蒼』も『赫』もへったくれもない、拳の
「このプラチナムーブで一気に削り切ってやるよ。『
遙か上空、重力など知らぬと横一直線へ。
ニコラウスはタコ殴りにされていた。
五条悟のそれは、完全なるハメ殺しだった!
①ニュートラルな無下限呪術による『無限』のバリアに接触。相手は押し退かれる。
②無下限呪術・術式反転『闢』が発動。
相手と五条悟の間に生じた『無限』は一転して『ゼロ』になり音速を突破した五条悟の拳は届く。
③再びゼロ距離で無下限バリアを展開する。
――以上の三工程が、相手が祓われるまで続行される。まさに無限ループ!!
「なんの、これしき――!!」
――だったのだが。欠陥があった。
無下限呪術・術式反転『
ニュートラルな無下限呪術の反転、それ即ち、バリアの放棄。
距離がゼロになるとは、なんでも喰らうという事。
無論――ボコされながらも詠唱され、繰り出された――『斬撃』もまた例外ではない。
「って、あぶなぁ――い!?」
よって。差し込まれた妨害に『バリア』を吐かされ、手順が前後。ループは途切れ、
「随分と、好き勝手してくれたなァ――!!」
五条悟の魔の手から逃れたニコラウスは。
吹っ飛ぶ最中に――『空の面』を蹴り、飛び出す。
そして、赤帽子に『六眼』を備えた四つ腕の玉体は、拳を固め、
「――――『
「は、ぁ――!?」
現象でなく――技として、黒い火花を起こし。
五条はバリアでなく――手で、その拳を受けていた。
それは――非術師の見た、『黒閃』の模倣。
本来は技術だけで起こせるものではない『現象』だが。
『そういう技がある』と、全国配信された新宿決戦を見た多くが認識した結果の、誤解。
故に、効果は見たままシンプルを極める。
――とにかく大威力が出て、なんか起こした側は一時的にめちゃくちゃ強くなる、以上!!
「――いや、元気一杯が過ぎるだろ。どーなったらそうなんの? そこは死んどけよ、呪霊として……」
互いに、飛び退いて距離を取り。
互いに、当然と空中に佇む――こんな現状、誰よりも五条悟は困惑するほかなかった。
――『黒閃』をマニュアルで撃てる。
それは、まだわかる。
――空の『面』を見出すまでもなく、勝手に『面』を作って二段ジャンプをしていた。
まあ、いいだろう。宿儺の猿真似だ。
……どれひとつ術が成り立ってるようには見えないし、なんなら呪霊の構造が意味不明だし、わかりたくもないが――心に飼う
しかし、今の感触――――『領域展延』で無下限を突破された。
術式によるデタラメ呪術じゃない。
正真正銘の『領域展延』だった。
あれには結界術と呪力操作、両方の理屈が必要なハズ。
「――でも、そうか。そういう事か」
「ケヒヒッ、そうだ言っただろう――俺は、お前だとな!」
――否。コイツは一度見ていた。
五条悟が、先程の領域内で使った『領域転延』を。
あのとき学習し、実践したのだ。
だから、ゼロ距離の『茈』を受けても、さっきのラッシュを受けてもピンピンしている!
(コイツの呪術は、結果が先にある。術の過程は今まさに補完している真っ最中――あの分身技は初手以降、縛って正解だったな。あれを学習されてたらと思うと……)
「……困っちゃうなあ。そんなに僕にお熱だったとは――その割には、僕要素なくない?」
「伏せてるんだよ、殺したい程に憎いのだからな――ッ!!」
かくして幕開ける。7年越しの人外決戦。
――青と赤の燐光がハロウィンのイルミネーションを焼き潰し、
――二者のどつきあいでビルの群れは砕け散り、
――ついでとばかりにクリスマスツリーと109(と思しきモノ)は叩き切られる。
戦闘の長期化は、イコールでニコラウスの強化につながる。
五条悟は短期決戦を強いられたわけだが――。
「――うっわ、なんだこれ!」
人生で初めて。五条悟は己の目を疑った。
なんだ、これ。
自分が前に動くと、動いた分だけ逆の方に、景色が動くぞ!?
(うっげ酔いそう、動かないエスカレータを歩いて降りてるみたいな……)
肌感覚と観測情報のズレは六眼にとって、無視できないほど大きなノイズ。
よって、降ってきた攻撃をひとまず『無下限』の壁を強め、弾こうとして。
「いいのかぁ、棒立ちで!」
「――ぶなっ!」
トラウマ想起。脊髄反射でとにかく上へ飛ぶ。
背後にあったビルは――無数の斬撃が駆け抜け、木っ端微塵に叩き砕かれていた。
(世界を断つ『解』――いや、それなら結界も壊れる。『無限』の付与された斬撃、威力だけのモドキか)
「――おや。三枚おろしにした筈だがな」
「アイツが目論見通り斬れた試しねぇだろ、間抜け!」
「はッ。そのソイツに真っ二つにされたのはお前だろう。『棒立ち凡夫殺人事件』……あれは見ものだったぞ、配信のハイライトだったものなァ!」
「……え、そうだったの。嘘ぉ、まじかぁ」
そして、やはり。
上に飛んだ結果、景色は降下した。
ビルより上に飛んだはずが、五条悟は着地をしていた。
(……あの南瓜頭、結界になんか細工を仕込みやがったな。移動した分だけ結界自体が逆行している……ていうか)
「って、そうだ、あいつはどこに――!」
「余所見をするな五条悟、こっちを見ろ!」
「……いい加減死ねよ、オマエ」
五条悟は出力を上げ――虚式『茈』を連打した。
『蒼』によるワープを交えた、大技の弾き撃ち連打という、品性のカケラもない暴力の具現。
だが、逆を言えば、そうせざるを得なくなっていた。
観測情報のズレ――五条悟の判断速度には、一瞬の間が生じていた。
移動時に発生する支障により、五条悟の挙動は容易に予測されるモノとなっていた。
「い――だだだだだッ――否、それだけよ!!」
だがニコラウスの持つ『六眼』にとって、これは障害とならない。
この結界を設けたのは彼ら側、最初からタネは知っている。
そもそも、あくまでも五条悟の移動に反発する結界なのだ。
彼らが動いても景色は
周囲の認識と挙動に、余計な思考は挟まらない。
ここに、一瞬の優位は築かれた。
「なるほど、こうだな―― 虚式」
「……嘘だろ」
加えて、対五条悟戦の中で広がった術式解釈により、模倣された――、
「――『
宿儺に放った、『無制限』の『茈』を模す超威力と質量の拡大が。
五条悟へと、『無限』による防御を貫通して叩きつけられる。
なにせニコラウスは、過程や手順を無視し、結果の現象のみを排出する『特級事象呪霊』。
故に――本来ピーキーな『無下限呪術』は。
それこそ、無制限で、連打できる。
「――だからって、オリジナルができない道理はねぇだろ……!」
「ケヒッ、ケヒヒヒッ――いいぞ、そうだ。もっと魅せてみろ、五条悟!!」
そこからの戦いは、もはや――災害でしかなかった。
互いに『蒼』による空間転移を行い、瞬時に『茈』を撃ち合う。
広範囲爆撃による遠距離攻撃の応酬。
――――その是非は、先読みだ。
互いに考え得る予測移動地点の潰し合い。
世界を破滅の燐光で塗り合う、王者の戦場。
「だが。いいのか、五条悟――お前は耐えれても、他の者は違うまい?」
「はッ何言ってるよ。人質は今頃、全員ガチガチに固めた結界内でヌクヌク―― な!?」
否――あくまでも、相手は呪霊。
またひとつ、足元をすくう悪意に五条は眼を剥いた。
――人質には、五条悟は結界を施していた。
極小の、それも術者を守らない、考え得る最硬の結界を。
その
(――んなわけがあるかよ空中だぞ。目視でも視認できない。けど、これは――渋谷の、多重結界か!)
『六眼』でなく、呪術師としての思考で五条悟は回答を得た。
――今、薨星宮本殿の空性結界は最低でも、三つに分割されているのだ。
①――第一結界。五条悟と呪霊の交戦地帯。
②――第二結界。ノイズのレイヤー。
③――第三結界。人質の位置する地帯。
①からは、②が邪魔をして、③の人質が見えない。
さっきから景色が逆に動くのは、五条悟に追従して①の結界自体が動いていたからだ。
――人質の配置。移動の支障。
これにより―― 五条悟の動きは制限される。
「ようやく、焦り出したなァ。五条悟!!」
「――ッ!!」
いくら最硬の結界とはいえ、『茈』の連打を受けるなど想定されていない。
五条悟は『蒼』の誘引により、自身に攻撃を集中させていた。
庇い立つ以上、標的の位置は固定され、ダメージレースはニコラウスに傾く。
「そうら、頑張れ頑張れ――お前が死ねば、人質とて死ぬぞ!」
反転術式により回復する五条に対し、ニコラウスの自己回復は呪霊としての性質のためノーコスト。
そうでなくとも、ニコラウスの完全体宿儺を模した肉体強度。埋めようのないフィジカル差は、この場においても揺るがぬ優位であった。
「何言ってんのさ、このぐらいのハンデあってやっと――」
「――領域展開」
その好機、間隙を縫って。
一層下のレイヤーから顔を出す悪意は、花開く。
「終わりです……五条悟」
割って入った、樹木の象る少女像。
ジャック・オーの、必中効果により。
五条悟の丹田に――『呪いの種子』が、植え付けられた。
本作における「俺はお前だ」発言は、例外なく肯定的には使われません。ご了承ください。
【解説・結界の三分割について】
しれっと文中にあった、この内容。
図解を用意いたしました。ご参照ください。
(コイツらに日曜の気力の七割が食われました。誰か褒めてください)
しかし、ニコラウスも強いけど、
こうしてみると、ジャック・オーの仕事量も半端じゃないですよね……。
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