【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
渋谷事変と新宿決戦の呪霊。
その合体領域は、五条悟に突破された。
が、狡猾に彼等は追い縋る――。



第25話「呪術に対する呪い」

 

 ――合体領域が、正面突破された。

 

 ニコラウスとジャック・オーの考案した必殺が。

 

 渋谷事変、新宿決戦、

 呪霊として誕生してからの七年、自身の中の五条悟と向き合い、形作った。

 

 

 

 呪術的理論を完全無視した奥義が。

 

 無下限という。理論ありきのデタラメ呪術に打ち負け、

 

 

 

――――オーラオラオラオラオラオラ――ッ!!

 

――――ぼばばばばばば――!!!?

 

 

 

 爆ぜた『茈』により、領域を突き破ったニコラウスは吹っ飛んで、

 追い込みにかかる五条悟。

 

 それは『蒼』も『赫』もへったくれもない、拳の連打(ラッシュ)だった。

 

 

 

「このプラチナムーブで一気に削り切ってやるよ。『(しろ)』だけにねっ!!」

 

 

 

 遙か上空、重力など知らぬと横一直線へ。

 ニコラウスはタコ殴りにされていた。

 五条悟のそれは、完全なるハメ殺しだった!

 

 

 

①ニュートラルな無下限呪術による『無限』のバリアに接触。相手は押し退かれる。

②無下限呪術・術式反転『闢』が発動。

相手と五条悟の間に生じた『無限』は一転して『ゼロ』になり音速を突破した五条悟の拳は届く。

③再びゼロ距離で無下限バリアを展開する。

 

 ――以上の三工程が、相手が祓われるまで続行される。まさに無限ループ!!

 

 

 

「なんの、これしき――!!」

 

 

 

 ――だったのだが。欠陥があった。

 

 

 

 無下限呪術・術式反転『(しろ)』。

 

 ニュートラルな無下限呪術の反転、それ即ち、バリアの放棄。

 

 距離がゼロになるとは、なんでも喰らうという事。

 無論――ボコされながらも詠唱され、繰り出された――『斬撃』もまた例外ではない。

 

 

 

「って、あぶなぁ――い!?」

 

 

 

 よって。差し込まれた妨害に『バリア』を吐かされ、手順が前後。ループは途切れ、

 

 

 

「随分と、好き勝手してくれたなァ――!!」

 

 

 

 五条悟の魔の手から逃れたニコラウスは。

 吹っ飛ぶ最中に――『空の面』を蹴り、飛び出す。

 

 そして、赤帽子に『六眼』を備えた四つ腕の玉体は、拳を固め、

 

 

 

 

「――――剋閃(こくせん)』ッ!!!

 

「は、ぁ――!?」

 

 

 

 現象でなく――技として、黒い火花を起こし。

 五条はバリアでなく――手で、その拳を受けていた。

 

 

 

 それは――非術師の見た、『黒閃』の模倣。

 本来は技術だけで起こせるものではない『現象』だが。

『そういう技がある』と、全国配信された新宿決戦を見た多くが認識した結果の、誤解。

 

 故に、効果は見たままシンプルを極める。

 

 

 

 ――とにかく大威力が出て、なんか起こした側は一時的にめちゃくちゃ強くなる、以上!!

 

 

 

「――いや、元気一杯が過ぎるだろ。どーなったらそうなんの? そこは死んどけよ、呪霊として……」

 

 

 

 互いに、飛び退いて距離を取り。

 互いに、当然と空中に佇む――こんな現状、誰よりも五条悟は困惑するほかなかった。

 

 

 

 ――『黒閃』をマニュアルで撃てる。

 

 それは、まだわかる。

 

 ――空の『面』を見出すまでもなく、勝手に『面』を作って二段ジャンプをしていた。

 

 まあ、いいだろう。宿儺の猿真似だ。

 

 

 

 ……どれひとつ術が成り立ってるようには見えないし、なんなら呪霊の構造が意味不明だし、わかりたくもないが――心に飼う篤也(やさしさ)を以って、よしとしよう。

 

 

 

 しかし、今の感触――――『領域展延』で無下限を突破された。

 

 術式によるデタラメ呪術じゃない。

 正真正銘の『領域展延』だった。

 

 あれには結界術と呪力操作、両方の理屈が必要なハズ。

 

 

 

「――でも、そうか。そういう事か」

 

「ケヒヒッ、そうだ言っただろう――俺は、お前だとな!」

 

 

 

 ――否。コイツは一度見ていた。

 

 五条悟が、先程の領域内で使った『領域転延』を。

 あのとき学習し、実践したのだ。

 

 だから、ゼロ距離の『茈』を受けても、さっきのラッシュを受けてもピンピンしている!

 

 

 

(コイツの呪術は、結果が先にある。術の過程は今まさに補完している真っ最中――あの分身技は初手以降、縛って正解だったな。あれを学習されてたらと思うと……)

 

 

 

「……困っちゃうなあ。そんなに僕にお熱だったとは――その割には、僕要素なくない?」

 

「伏せてるんだよ、殺したい程に憎いのだからな――ッ!!」

 

 

 

 かくして幕開ける。7年越しの人外決戦。

 

 

 

 ――青と赤の燐光がハロウィンのイルミネーションを焼き潰し、

 ――二者のどつきあいでビルの群れは砕け散り、

 ――ついでとばかりにクリスマスツリーと109(と思しきモノ)は叩き切られる。

 

 戦闘の長期化は、イコールでニコラウスの強化につながる。

 五条悟は短期決戦を強いられたわけだが――。

 

 

 

「――うっわ、なんだこれ!」

 

 人生で初めて。五条悟は己の目を疑った。

 

 

 

 なんだ、これ。

 自分が前に動くと、動いた分だけ逆の方に、景色が動くぞ!?

 

 

 

(うっげ酔いそう、動かないエスカレータを歩いて降りてるみたいな……)

 

 

 

 肌感覚と観測情報のズレは六眼にとって、無視できないほど大きなノイズ。

 よって、降ってきた攻撃をひとまず『無下限』の壁を強め、弾こうとして。

 

 

 

「いいのかぁ、棒立ちで!」

 

「――ぶなっ!」

 

 

 

 トラウマ想起。脊髄反射でとにかく上へ飛ぶ。

 背後にあったビルは――無数の斬撃が駆け抜け、木っ端微塵に叩き砕かれていた。

 

 

 

(世界を断つ『解』――いや、それなら結界も壊れる。『無限』の付与された斬撃、威力だけのモドキか)

 

 

 

「――おや。三枚おろしにした筈だがな」

 

「アイツが目論見通り斬れた試しねぇだろ、間抜け!」

 

「はッ。そのソイツに真っ二つにされたのはお前だろう。『棒立ち凡夫殺人事件』……あれは見ものだったぞ、配信のハイライトだったものなァ!」

 

「……え、そうだったの。嘘ぉ、まじかぁ」

 

 

 

 そして、やはり。

 上に飛んだ結果、景色は降下した。

 

 ビルより上に飛んだはずが、五条悟は着地をしていた。

 

 

 

(……あの南瓜頭、結界になんか細工を仕込みやがったな。移動した分だけ結界自体が逆行している……ていうか)

 

 

 

「って、そうだ、あいつはどこに――!」

 

「余所見をするな五条悟、こっちを見ろ!」

 

 

 

「……いい加減死ねよ、オマエ」

 

 

 

 五条悟は出力を上げ――虚式『茈』を連打した。

 

 

 

 『蒼』によるワープを交えた、大技の弾き撃ち連打という、品性のカケラもない暴力の具現。

 

 だが、逆を言えば、そうせざるを得なくなっていた。

 

 

 

 観測情報のズレ――五条悟の判断速度には、一瞬の間が生じていた。

 移動時に発生する支障により、五条悟の挙動は容易に予測されるモノとなっていた。

 

 

 

い――だだだだだッ――否、それだけよ!!」

 

 

 

 だがニコラウスの持つ『六眼』にとって、これは障害とならない。

 

 この結界を設けたのは彼ら側、最初からタネは知っている。

 

 そもそも、あくまでも五条悟の移動に反発する結界なのだ。

 彼らが動いても景色は異常(ズレ)を示さない。

 

 

 

 周囲の認識と挙動に、余計な思考は挟まらない。

 

 ここに、一瞬の優位は築かれた。

 

 

 

「なるほど、こうだな―― 虚式」

 

「……嘘だろ」

 

 

 

 加えて、対五条悟戦の中で広がった術式解釈により、模倣された――、

 

 

 

「――(むらさき)』!!」

 

 

 

 宿儺に放った、『無制限』の『茈』を模す超威力と質量の拡大が。

 五条悟へと、『無限』による防御を貫通して叩きつけられる。

 

 

 

 なにせニコラウスは、過程や手順を無視し、結果の現象のみを排出する『特級事象呪霊』。

 

 故に――本来ピーキーな『無下限呪術』は。

 それこそ、無制限で、連打できる。

 

 

 

「――だからって、オリジナルができない道理はねぇだろ……!」

 

ケヒッ、ケヒヒヒッ――いいぞ、そうだ。もっと魅せてみろ、五条悟!!」

 

 

 

 そこからの戦いは、もはや――災害でしかなかった。

 

 互いに『蒼』による空間転移を行い、瞬時に『茈』を撃ち合う。

 広範囲爆撃による遠距離攻撃の応酬。

 

 

 

 ――――その是非は、先読みだ。

 

 互いに考え得る予測移動地点の潰し合い。

 世界を破滅の燐光で塗り合う、王者の戦場。

 

 

 

「だが。いいのか、五条悟――お前は耐えれても、他の者は違うまい?」

 

「はッ何言ってるよ。人質は今頃、全員ガチガチに固めた結界内でヌクヌク―― な!?」

 

 

 

 否――あくまでも、相手は呪霊。

 またひとつ、足元をすくう悪意に五条は眼を剥いた。

 

 

 

 ――人質には、五条悟は結界を施していた。

 極小の、それも術者を守らない、考え得る最硬の結界を。

 

 その呪力供給(パス)のつながる先は、渋谷駅?地下でなく――なぜか、自分の背後に位置していた。

 

 

 

(――んなわけがあるかよ空中だぞ。目視でも視認できない。けど、これは――渋谷の、多重結界か!

 

 

 

 『六眼』でなく、呪術師としての思考で五条悟は回答を得た。

 

 

 

 ――今、薨星宮本殿の空性結界は最低でも、三つに分割されているのだ。

 

①――第一結界。五条悟と呪霊の交戦地帯。

②――第二結界。ノイズのレイヤー。

③――第三結界。人質の位置する地帯。

 

 ①からは、②が邪魔をして、③の人質が見えない。

 さっきから景色が逆に動くのは、五条悟に追従して①の結界自体が動いていたからだ。

 

 

 

 ――人質の配置。移動の支障。

 

 これにより―― 五条悟の動きは制限される。

 

 

 

「ようやく、焦り出したなァ。五条悟!!」

 

「――ッ!!」

 

 

 

 いくら最硬の結界とはいえ、『茈』の連打を受けるなど想定されていない。

 

 五条悟は『蒼』の誘引により、自身に攻撃を集中させていた。

 

 庇い立つ以上、標的の位置は固定され、ダメージレースはニコラウスに傾く。

 

 

 

「そうら、頑張れ頑張れ――お前が死ねば、人質とて死ぬぞ!」

 

 

 

 反転術式により回復する五条に対し、ニコラウスの自己回復は呪霊としての性質のためノーコスト。

 

 そうでなくとも、ニコラウスの完全体宿儺を模した肉体強度。埋めようのないフィジカル差は、この場においても揺るがぬ優位であった。

 

 

 

「何言ってんのさ、このぐらいのハンデあってやっと――」

 

「――領域展開」

 

 

 

 その好機、間隙を縫って。

 

 一層下のレイヤーから顔を出す悪意は、花開く。

 

 

 

「終わりです……五条悟」

 

 

 

 割って入った、樹木の象る少女像。

 ジャック・オーの、必中効果により。

 

 五条悟の丹田に――『呪いの種子』が、植え付けられた。

 





本作における「俺はお前だ」発言は、例外なく肯定的には使われません。ご了承ください。



【解説・結界の三分割について】

しれっと文中にあった、この内容。
図解を用意いたしました。ご参照ください。

(コイツらに日曜の気力の七割が食われました。誰か褒めてください)

しかし、ニコラウスも強いけど、
こうしてみると、ジャック・オーの仕事量も半端じゃないですよね……。

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【フリー画像・引用元】

https://icooon-mono.com/00323-%E6%A8%AA%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%9F%E7%9B%AE%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%B3%E7%B4%A0%E6%9D%90

https://kuku-keke.com/archives/727643
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