【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
五条悟に領域が牙を剥く。
必中する『呪いの種子』。
呪霊たちは、勝利条件を満たさんと追い詰める。



第26話「沈丁花」・上

 

 ――両面宿儺を単独討伐した五条悟は。

 今日まで生きてもいなければ、死んでもいない。

 

 

 

 世界を断つ『解』を喰らって、五条悟は死ぬはずだった。

 

 それを覆したのは、死に際の魂の認識による――魂への術式拡張だ。

 

 

 

 魂が死んだ肉体から離れるまでの時間。

 

 五条悟の死亡経過は、『無限』に引き伸ばれている。

 

 

 

 肉体が完全に破壊されない限りは――、

 反転術式による生命エネルギーの作成と、呪力コントロールの一環として肉体を操り、呼吸し、稼働させ、存続する――怪物と化した。

 

 

 

 それらを、実現してきた無下限呪術は。

 

 ――――ジャック・オーの領域により、縛られる。

 

 

 

「領域展開――」

 

 

 

 ジャック・オーの術式は、渋谷事変で起きた現象を模倣する。

 

 故に呪力の、火炎、大波、植物化も可能。

 

 とはいえ『ソレ』は、渋谷事変では使われなかった技。

 

 

 

 ジャック・オーは自身のキャパシティ全てを『呪力の植物化』に注ぎ、なおかつ領域の必中効果を『一回限り』に限定する『縛り』を設けることで――初めて。

 

 完全再現された、特級呪霊『花御』の芸当。

 

 

 

 『呪いの種子』による――必中のみの領域展開。

 

 

 

「――『岱行迦遺(だいこうかい)』」

 

 

 

 それが、五条悟に必中した。

 丹田に根ざし、呪力を吸って育つ種子により――必然、術式稼働のリソースは奪われる。

 

 

 

「な、んという――どうなってるんですか貴方!」

 

 

 

 が。『最強』の能力を封じる代償は安くない。

 

 そう――瞬時に、『大木』と化す種子の急成長が示していた。

 

 

 

「……へぇ。パチモンの割には頑張るじゃん―― こっちも、取り戻さないとね?」

 

 

 

 植物に姿を変えたとはいえ、自分の呪力だ。

 コントロールできなくなれば術が破綻する。

 

 ジャック・オーは己の『六眼』から血を流し、どうにか掌握するも――とても、もたない。

 

 相手が相手だ。これ以上は自壊する。

 

 

 

「う、ぐぐ……どうやら、私の容量はこれで頭打ちになるようです――!」

 

「わかっている。だが――別に、俺だけでやってしまっても構わんのだろう?」

 

 

 

 そこを、もう一体の特級事象呪霊。

 ニコラウスの、飛ぶ斬撃が剪定する。

 

 

 

 維持できる規模に『呪いの種子』の成長を留まらせる事で――無限ループが成立。

 

 

 

 五条悟の呪力が尽きるまで、際限なく『呪いの種子』は根と枝葉を伸ばす。

 

 

 

「勝ってくださるなら、なんでもいいです。――今こそ、役立たずの呪術師を、不甲斐なき五条悟を、嘆く仔らを救う時――障害を打ち払い、あらゆる災禍の輪を終わらせるのです。ニコラウス!」

 

 

 

 彼等の勝利条件は、五条悟の殺害・封印だ。

 

 

 

 前者を実現するには三つの条件がある。

 

①無下限呪術の術式を機能不全にさせる

<原理は分からないが恐らく術式で不死となっている。そこを崩す>

②呪力を完全に枯渇させる

③そのうえで、肉体を完全に破壊する

 

 

 

 この状況――①はクリア、残るは②と③のみ!

 

 

 

「そうさな。実際、至極愉快よ――生きてもいないのに、生きようとする。なんたる醜態よなァ、五条悟!」

 

「うっわ。ファンボーイじゃなくアンチだったの? ショックだなぁ、やってて久々に楽しかったんだけど……」

 

 

 

 対して、五条悟は――呪力で身体を過剰に強化していた。

 

 

 

 無下限呪術の術式、脳の深くまで呪力が届かない状況における最善手。

 

 少しでも魂を身体に残存させ、魂とのつながりを強く保つためだった。

 そうでなくとも、『呪いの種子』の肥大化する根に体が壊れるのを抑える必要がある。

 

 

 

 だが所詮、申し訳程度の延命措置。

 

 知覚した魂が、抜け落ちる最中にも関わず――。

 

 

 

「ま、どうせ時間制限付きだろ――カウントダウンなんて待たずぶっ(ころ)してやるよ」

 

 

 

 いっそ不気味に――五条悟は、そう不敵に笑ってみせる。

 

 

 

 今のままだろうと、勝てる。

 

 そう、己に根差す呪いに拳を打ち、断ずる眼に、

 

 

 

「――笑死。その前に死ぬのは貴様だ、五条悟!!」

 

 

 

 ニコラウス――人外魔境新宿決戦の亡霊は、嗤い返した。

 

 

 

 これより41秒後。

 現代最強への、下剋上を刻む。

 

 

 

――――

――

 

「卓がさもしい。ひとつ、賑やかしを足すとしよう」

 

 

 

 手始めに、ニコラウスは術式に有する『十種影法術』により、二体の式神を作成。

 

 

 

 自身の存在もろとも、『御廚子』と『無下限』の要素を切り分け、

 

 それぞれが独立する縛りにより、個々の性能は底上げされる。

 

 

 

「どうだ、五条悟―― 三対一だ!!!」

 

「うん、やっぱそれ、迷子の宇宙人みたくなってますよ~」

 

「ふッ……、クランプス。あの減らず口を叩っ斬れ」

 

 

 

 その一体。式神・クランプス――ヤギ頭の白い、摩虚羅を模した悪魔像の力は、『御廚子』

 

 

 

 右手につけられた刀が斬撃を飛ばし。

 間髪入れぬ追撃は雨となって降り注ぎ、

 五条悟と、成長する『呪いの種子』を編み目状に切り刻む。

 

 

 

「――シン・影流『簡易領域』」

 

 

 

 対して、五条悟は『弱者の領域』を展開する。

 

 

 

 本来ならば、領域の必中効果、すなわち『呪いの種子』は解除されるが今回はそうならない。

 

 天元と同等の結界術による領域、それも必中のみの領域展開――考えうる限り最強の押し合い性能を持つソレに、『弱者の領域』では太刀打ちできない。

 

 

 

 そんなことは百も承知。

 故に、簡易領域の効果を呪力出力強化に限定。

 

 五条悟は身を固め、斬撃を受けていた。

 

 

 

 とはいえ。この領域では数秒保たず消える程度――。

 

 

 

「呪力を吸われながらよくやる。――引き剥がせ、クネヒト!」

 

 

 

「――、――”位相””黄昏”” 智慧の瞳”――」

 

 

 

 大人気ない、ダメ押し。

 

 二番手の、クネヒト――藁に身を包む黒い顔面の式神は。

 フードの落とすベールの下、詠唱と共に――杖を一振り。

 

 

 

「――術式順()・『()』」

 

 

 

 ただそれだけで。五条悟を取り巻く空間は引き歪み、簡易領域は潰される。

 

 

 

 式神・クネヒトの術式は、『無下限呪術(偽)』。

 

 とは言っても、解釈は真に迫るものでなく、より曖昧に――故にこそ、シンプルで強力な空間作用に終始した能力だ。

 

 

 

 斬撃の雨が降り、赤と青、紫色に煌めき爆ぜる破滅的幻想。

 

 それらに裸一貫で晒される、五条悟へ。

 

 

 

(――簡易領域を潰された以上、領域展延で凌ぐか。だが流石に、回復速度は下り坂と見える――ならば)

 

 

 

 本体・ニコラウスの手により、

 一筋、落とされた影。

 

 それだけで、一変。

 

 

 

 大きく開花した影と、そこから噴き出す獣が五条悟に喰いかかる。

 

 

 

「――秘伝・落花の情」

 

 

 

 オートカウンターで容易に千切り落とされるも。

 破壊されたそばから、影に溶け――再び、別の形をとって無尽蔵に、影の獣は人一人を容易に呑み込んだ。

 

 

 

「なおも苗床(はら)を回すか。その足掻き諸共、食い破ってくれるわ――凡夫!」

 

 

 

 腹の口による詠唱と四つ腕による掌印。

 出力を上げていく―― 『十種影法術』。

 

 

 

 とはいえ。新宿決戦にてほとんど使用されなかった術式。

 

 故に『影を獣に変えて操る』程度の劣化された模倣。

 

 

 

 だが、だからこそ術式解釈は無制限だ。

 

 調布の儀なんて必要なく、そもそも十種の式神なんて定義もない。

 

 

 

 ――思いついた端から獣の形と特性を与えて産み、

 有効打になりうる個体が選別され、放っておけば合体して大きくなる。対五条悟の生態系を構築されるまで、屍を山と積んで、

 

 

 

 波となり、氾濫する影の群れは、

 その渦中、五条悟を――確かに、上塗る。

 

 

 

「そら、頑張れ頑張れ。俺の呪力そのものを影とし、貴様に叩きつける。通用する形が産まれるまで――俺は何度でも付き合うぞ?」

 

 

 

 ――不出来な獣の百鬼夜行、

 ――獣もろともミキサーにかける世界の裁断、

 ――空間の上下左右を爆ぜ、収束させて掻き回す衝撃。

 

 

 

 ひっくり返されまくるスノーボウルに似た、小世界に収まる天変地異。

 

 もはや影の巣窟の中は、どうなっているか確かめようのない。

 

 だがそれでも、五条悟は決して死なない。

 そう、ジャック・オーを苦しませる『呪いの種子』の成長が示していた。

 

 

 

 ――故に、それこそ。

 それは――致命打というべきものだった。

 

 

 

「――ジャック・オーか!?」

 

「容量を、突き詰めました――少しだけですが。助力いたします」

 

 

 

 仲間の声。今にも引き潰れそうな、少女像のひねり出す、負の意思。

 

 領域にひとつだけ、芽吹いた――呪力の火種。

 

 

 

 彼らは決して、その芽を積みはしない。

 

 

 

「よくぞやった――分霊よ、戻れ‼︎」

 

 

 

「――『◼️』」

「――『(カミノ)』」

 

 

 

 ジャック・オーは、領域内の呪力を火力に変換し、

 元の一体に戻ったニコラウスは、術の行使権を受け取り――その掌の上、矢は紡がれる。

 

 

 

「「―――― (フーガ)』!!! 」」

 

 

 

 ――竈の門は開かれた。

 二体一組によって、完全再現された両面宿儺の最終奥義。

 

 

 

 生じる一点多重の爆轟遷移は、正しく竈門となった結界を紅蓮で埋め、煌々と瞬く。

 

 

 

 その渦中、呪いの大樹は成長を遅め、焼き切れていく。

 

 それが何より。五条悟の衰弱を示す。

 呪力低下と致死量の連鎖衝撃、二つの必殺。

 

 

 

 だが――彼らはそれにとどまらない。

 

 

 

「――”龍鱗” ”反発” ”番いの流星”」

 

「……ニコラウス?」

 

 

 

 度重なる、黒閃による潜在能力の解放。

 五条悟の、魂を認識した無下限呪術という、術式拡張の学習経験。

 

 

 

 それが――彼らを構成した概念(かたち)に、確かな骨格を与えてみせた。

 

 

 

「征け―――― 『解』

 

 

 

 確かに。丁寧に。示される成果。

 結界をすり抜けた刃は、確かに。

 

 五条悟もろとも――世界を、通った。

 

 

 

「――やりましたね。ニコラウス」

 

 

 

 領域の崩壊を避けるべく、

 ジャック・オーは軌道上、領域に『穴』をあけた。

 故に、確かに。

 

 その一閃は、五条悟のみを貫通する。

 

 

 

「あぁ、そうか……今、この瞬間」

 

 

 

 ようやく、ニコラウスは自覚した。

 

 

 

「俺は、ここに産まれ落ちた――!」

 

 

 

 ――――刻まれた、戦跡。

 

 それは何よりも、間違いなく。

 ニコラウスという呪霊が、正しく輪郭を得た証であると。

 

 

 

 弾ける火薬庫の最中、呪いは、吼えた。

 





次回、この続きとなります(無慈悲)



【解説①・『一回きり』の必中効果とは?】

 文字通り、一回しか必中効果を発揮できません。

 ただただ純粋に『呪いの種子』を一度必中で喰らわせるだけに特化した領域となります。

(前例としては、秤の領域ですね。あれも、ルール説明を一回必中させるだけの領域です)



 よって二発目の『呪いの種子』はなく、対象にできるのは一人のみです。
 そして、この必中効果は天元以上の結界術が使えないと中和できません。



 なんで一回切りしかできないか、というと……。

・渋谷事変では起きなかった現象を模倣したい!
(事象呪霊として不可能だけど、自分の有する『花御』の要素を発展させて何とかやりたい!!)
・なおかつ、必中効果を両立したい!

 ……という、かなり無茶やってる技だからです。

 実際ジャック・オーは、この領域展開をやった時点でCPU稼働率100%になってます。

 一億総呪殺の儀の結界準備して、空性結界(三分割)を維持した上で、やっとCPU埋まるって。どんなスパコンなんすかねコイツ……。



【解説②・五条悟って何である程度対抗できたの?】

 まず、丹田に『呪いの種子』が必中します。

 呪力は腹で回すモノ、との事なので、
 もし原作五条が『呪いの種子』を受けたと仮定すると、

 この時点で頭で回す『術式』『反転術式』には呪力が届かなくなり、機能不全に陥るのではないでしょうか?

 とはいえ、『六眼』をもってすれば、
 呪力を強制的に吸収してくる寄生虫があっても、
 ある程度は『腹で回す』手段はとれるでしょう。

 なので『術式』『反転術式』は使えませんが、
 単純な呪力強化、シン影、落花の情、領域展延できる。

 というのが、原作五条から考えられる結果になります。

 でもやっぱり、その腹に『呪いの種子』があるので、
 ガンガン呪力消費起きてるんですよね……。
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