【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
五条悟に領域が牙を剥く。
必中する『呪いの種子』。
呪霊たちは、勝利条件を満たさんと追い詰める。
――両面宿儺を単独討伐した五条悟は。
今日まで生きてもいなければ、死んでもいない。
世界を断つ『解』を喰らって、五条悟は死ぬはずだった。
それを覆したのは、死に際の魂の認識による――魂への術式拡張だ。
魂が死んだ肉体から離れるまでの時間。
五条悟の死亡経過は、『無限』に引き伸ばれている。
肉体が完全に破壊されない限りは――、
反転術式による生命エネルギーの作成と、呪力コントロールの一環として肉体を操り、呼吸し、稼働させ、存続する――怪物と化した。
それらを、実現してきた無下限呪術は。
――――ジャック・オーの領域により、縛られる。
「領域展開――」
ジャック・オーの術式は、渋谷事変で起きた現象を模倣する。
故に呪力の、火炎、大波、植物化も可能。
とはいえ『ソレ』は、渋谷事変では使われなかった技。
ジャック・オーは自身のキャパシティ全てを『呪力の植物化』に注ぎ、なおかつ領域の必中効果を『一回限り』に限定する『縛り』を設けることで――初めて。
完全再現された、特級呪霊『花御』の芸当。
『呪いの種子』による――必中のみの領域展開。
「――『
それが、五条悟に必中した。
丹田に根ざし、呪力を吸って育つ種子により――必然、術式稼働のリソースは奪われる。
「な、んという――どうなってるんですか貴方!」
が。『最強』の能力を封じる代償は安くない。
そう――瞬時に、『大木』と化す種子の急成長が示していた。
「……へぇ。パチモンの割には頑張るじゃん―― こっちも、取り戻さないとね?」
植物に姿を変えたとはいえ、自分の呪力だ。
コントロールできなくなれば術が破綻する。
ジャック・オーは己の『六眼』から血を流し、どうにか掌握するも――とても、もたない。
相手が相手だ。これ以上は自壊する。
「う、ぐぐ……どうやら、私の容量はこれで頭打ちになるようです――!」
「わかっている。だが――別に、俺だけでやってしまっても構わんのだろう?」
そこを、もう一体の特級事象呪霊。
ニコラウスの、飛ぶ斬撃が剪定する。
維持できる規模に『呪いの種子』の成長を留まらせる事で――無限ループが成立。
五条悟の呪力が尽きるまで、際限なく『呪いの種子』は根と枝葉を伸ばす。
「勝ってくださるなら、なんでもいいです。――今こそ、役立たずの呪術師を、不甲斐なき五条悟を、嘆く仔らを救う時――障害を打ち払い、あらゆる災禍の輪を終わらせるのです。ニコラウス!」
彼等の勝利条件は、五条悟の殺害・封印だ。
前者を実現するには三つの条件がある。
①無下限呪術の術式を機能不全にさせる
<原理は分からないが恐らく術式で不死となっている。そこを崩す>
②呪力を完全に枯渇させる
③そのうえで、肉体を完全に破壊する
この状況――①はクリア、残るは②と③のみ!
「そうさな。実際、至極愉快よ――生きてもいないのに、生きようとする。なんたる醜態よなァ、五条悟!」
「うっわ。ファンボーイじゃなくアンチだったの? ショックだなぁ、やってて久々に楽しかったんだけど……」
対して、五条悟は――呪力で身体を過剰に強化していた。
無下限呪術の術式、脳の深くまで呪力が届かない状況における最善手。
少しでも魂を身体に残存させ、魂とのつながりを強く保つためだった。
そうでなくとも、『呪いの種子』の肥大化する根に体が壊れるのを抑える必要がある。
だが所詮、申し訳程度の延命措置。
知覚した魂が、抜け落ちる最中にも関わず――。
「ま、どうせ時間制限付きだろ――カウントダウンなんて待たずぶっ
いっそ不気味に――五条悟は、そう不敵に笑ってみせる。
今のままだろうと、勝てる。
そう、己に根差す呪いに拳を打ち、断ずる眼に、
「――笑死。その前に死ぬのは貴様だ、五条悟!!」
ニコラウス――人外魔境新宿決戦の亡霊は、嗤い返した。
これより41秒後。
現代最強への、下剋上を刻む。
――――
――
―
「卓がさもしい。ひとつ、賑やかしを足すとしよう」
手始めに、ニコラウスは術式に有する『十種影法術』により、二体の式神を作成。
自身の存在もろとも、『御廚子』と『無下限』の要素を切り分け、
それぞれが独立する縛りにより、個々の性能は底上げされる。
「どうだ、五条悟―― 三対一だ!!!」
「うん、やっぱそれ、迷子の宇宙人みたくなってますよ~」
「ふッ……、クランプス。あの減らず口を叩っ斬れ」
その一体。式神・クランプス――ヤギ頭の白い、摩虚羅を模した悪魔像の力は、『御廚子』。
右手につけられた刀が斬撃を飛ばし。
間髪入れぬ追撃は雨となって降り注ぎ、
五条悟と、成長する『呪いの種子』を編み目状に切り刻む。
「――シン・影流『簡易領域』」
対して、五条悟は『弱者の領域』を展開する。
本来ならば、領域の必中効果、すなわち『呪いの種子』は解除されるが今回はそうならない。
天元と同等の結界術による領域、それも必中のみの領域展開――考えうる限り最強の押し合い性能を持つソレに、『弱者の領域』では太刀打ちできない。
そんなことは百も承知。
故に、簡易領域の効果を呪力出力強化に限定。
五条悟は身を固め、斬撃を受けていた。
とはいえ。この領域では数秒保たず消える程度――。
「呪力を吸われながらよくやる。――引き剥がせ、クネヒト!」
「――、――”位相””黄昏”” 智慧の瞳”――」
大人気ない、ダメ押し。
二番手の、クネヒト――藁に身を包む黒い顔面の式神は。
フードの落とすベールの下、詠唱と共に――杖を一振り。
「――術式順
ただそれだけで。五条悟を取り巻く空間は引き歪み、簡易領域は潰される。
式神・クネヒトの術式は、『無下限呪術(偽)』。
とは言っても、解釈は真に迫るものでなく、より曖昧に――故にこそ、シンプルで強力な空間作用に終始した能力だ。
斬撃の雨が降り、赤と青、紫色に煌めき爆ぜる破滅的幻想。
それらに裸一貫で晒される、五条悟へ。
(――簡易領域を潰された以上、領域展延で凌ぐか。だが流石に、回復速度は下り坂と見える――ならば)
本体・ニコラウスの手により、
一筋、落とされた影。
それだけで、一変。
大きく開花した影と、そこから噴き出す獣が五条悟に喰いかかる。
「――秘伝・落花の情」
オートカウンターで容易に千切り落とされるも。
破壊されたそばから、影に溶け――再び、別の形をとって無尽蔵に、影の獣は人一人を容易に呑み込んだ。
「なおも
腹の口による詠唱と四つ腕による掌印。
出力を上げていく―― 『十種影法術』。
とはいえ。新宿決戦にてほとんど使用されなかった術式。
故に『影を獣に変えて操る』程度の劣化された模倣。
だが、だからこそ術式解釈は無制限だ。
調布の儀なんて必要なく、そもそも十種の式神なんて定義もない。
――思いついた端から獣の形と特性を与えて産み、
有効打になりうる個体が選別され、放っておけば合体して大きくなる。対五条悟の生態系を構築されるまで、屍を山と積んで、
波となり、氾濫する影の群れは、
その渦中、五条悟を――確かに、上塗る。
「そら、頑張れ頑張れ。俺の呪力そのものを影とし、貴様に叩きつける。通用する形が産まれるまで――俺は何度でも付き合うぞ?」
――不出来な獣の百鬼夜行、
――獣もろともミキサーにかける世界の裁断、
――空間の上下左右を爆ぜ、収束させて掻き回す衝撃。
ひっくり返されまくるスノーボウルに似た、小世界に収まる天変地異。
もはや影の巣窟の中は、どうなっているか確かめようのない。
だがそれでも、五条悟は決して死なない。
そう、ジャック・オーを苦しませる『呪いの種子』の成長が示していた。
――故に、それこそ。
それは――致命打というべきものだった。
「――ジャック・オーか!?」
「容量を、突き詰めました――少しだけですが。助力いたします」
仲間の声。今にも引き潰れそうな、少女像のひねり出す、負の意思。
領域にひとつだけ、芽吹いた――呪力の火種。
彼らは決して、その芽を積みはしない。
「よくぞやった――分霊よ、戻れ‼︎」
「――『◼️』」
「――『
ジャック・オーは、領域内の呪力を火力に変換し、
元の一体に戻ったニコラウスは、術の行使権を受け取り――その掌の上、矢は紡がれる。
「「―――― 『
――竈の門は開かれた。
二体一組によって、完全再現された両面宿儺の最終奥義。
生じる一点多重の爆轟遷移は、正しく竈門となった結界を紅蓮で埋め、煌々と瞬く。
その渦中、呪いの大樹は成長を遅め、焼き切れていく。
それが何より。五条悟の衰弱を示す。
呪力低下と致死量の連鎖衝撃、二つの必殺。
だが――彼らはそれにとどまらない。
「――”龍鱗” ”反発” ”番いの流星”」
「……ニコラウス?」
度重なる、黒閃による潜在能力の解放。
五条悟の、魂を認識した無下限呪術という、術式拡張の学習経験。
それが――彼らを構成した
「征け―――― 『解』」
確かに。丁寧に。示される成果。
結界をすり抜けた刃は、確かに。
五条悟もろとも――世界を、通った。
「――やりましたね。ニコラウス」
領域の崩壊を避けるべく、
ジャック・オーは軌道上、領域に『穴』をあけた。
故に、確かに。
その一閃は、五条悟のみを貫通する。
「あぁ、そうか……今、この瞬間」
ようやく、ニコラウスは自覚した。
「俺は、ここに産まれ落ちた――!」
――――刻まれた、戦跡。
それは何よりも、間違いなく。
ニコラウスという呪霊が、正しく輪郭を得た証であると。
弾ける火薬庫の最中、呪いは、吼えた。
次回、この続きとなります(無慈悲)
【解説①・『一回きり』の必中効果とは?】
文字通り、一回しか必中効果を発揮できません。
ただただ純粋に『呪いの種子』を一度必中で喰らわせるだけに特化した領域となります。
(前例としては、秤の領域ですね。あれも、ルール説明を一回必中させるだけの領域です)
よって二発目の『呪いの種子』はなく、対象にできるのは一人のみです。
そして、この必中効果は天元以上の結界術が使えないと中和できません。
なんで一回切りしかできないか、というと……。
・渋谷事変では起きなかった現象を模倣したい!
(事象呪霊として不可能だけど、自分の有する『花御』の要素を発展させて何とかやりたい!!)
・なおかつ、必中効果を両立したい!
……という、かなり無茶やってる技だからです。
実際ジャック・オーは、この領域展開をやった時点でCPU稼働率100%になってます。
一億総呪殺の儀の結界準備して、空性結界(三分割)を維持した上で、やっとCPU埋まるって。どんなスパコンなんすかねコイツ……。
【解説②・五条悟って何である程度対抗できたの?】
まず、丹田に『呪いの種子』が必中します。
呪力は腹で回すモノ、との事なので、
もし原作五条が『呪いの種子』を受けたと仮定すると、
この時点で頭で回す『術式』『反転術式』には呪力が届かなくなり、機能不全に陥るのではないでしょうか?
とはいえ、『六眼』をもってすれば、
呪力を強制的に吸収してくる寄生虫があっても、
ある程度は『腹で回す』手段はとれるでしょう。
なので『術式』『反転術式』は使えませんが、
単純な呪力強化、シン影、落花の情、領域展延できる。
というのが、原作五条から考えられる結果になります。
でもやっぱり、その腹に『呪いの種子』があるので、
ガンガン呪力消費起きてるんですよね……。