【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
舞台は2018年から2025年へ。
現代の呪術高専一年生に、五条悟は仕事を運び入れる。
第1話「廻縁」
2025年1月末。某所、山奥の屋敷にて。
少女は崖っぷちにいる事を自覚した。
「どうしよ、お金ないや――しょうがない、闇バイトおじさん呼ぼ」
熟考0秒、シームレスに携帯を動かして連絡。
寝床から這い出て――8分後、確認する。
学生証よし。高専バッチよし。
ワイドパンツに袖膨らんだ白制服よし。
詰襟を結ぶ黒リボンよし。
肩口で散乱してた白髪の手入れ、及び呪具の装備ヨシ。
あとはブーツ履けば完成だ。
これ以上、少女に容姿をこだわる気はなかった。
何せ、会う人が会う人だ。
「――はいっ久しぶり、
「……なんで合鍵持ってないのに入れんのかな」
「いやワープできるし……んで! こちら今回のホワイトでクリーンな仕事ね! 廃工場で楽しい迷子探しだ!」
「絶対よくないよね。まぁいいけど……」
――この、実年齢35歳とは思えぬ、目隠し脚長おじさん(もとい先生)。
一応、恩人であるが――、
会えるのは仕事持ってくる時か訓練かのみで、術師としては正論しか吐かない『最強』の呪術師。おまけにウザ絡みがデフォルトときた。
そんなのを歓迎する気になる人間、そういないのである。
だが――ちょっとここからは、想定外だった。
「――見つけたぞ、五条悟!!」
「わ」
鼓膜を裂く、パリーンと砕ける窓の音と怒声。
「って、あ〜。部屋の窓が……」
術式だろうか。
人離れした速度で踏み入る襲撃者は脇目も振らず、先生に向かって踊りかかり、
(……まあいいか。私に来るならまだしも、どうせ攻撃は通用しな)
――パリーン!!
「え……!」
――五条悟の脳天を、刃が突き抜けていた。
無下限呪術。絶対に接触できない筈の力が霧散、強制解除され。鮮血は目を丸くした純白の少女と、その部屋を盛大に汚す。
答えはひとつ――特級呪具・『天逆鉾』。
「……なんで。君がそれ持ってるのかな」
……うっわキモっ。
と、声に出なかったのは奇跡だった。
まさかとは思ったが、やはり効かなかった。
五条悟は、自身の顔面を貫通した刃物を引き出してポイ捨てし、すぐに反転術式で完治。
一切変わらぬ軽薄さで向き直り、来客に問うていた。
「ちいっ!」
失敗だ。即座、そう見て窓から退避する襲撃者。
なんだったんだろう、あれ――と思う間もなく。
「投射呪法みたいなもんか。追うの面倒だな……長引かせたくないし――術式順転」
「えっ、ちょ。待って先生。すごく嫌な予感が――!」
今度こそ悲鳴が出る。慌ててその体を掴んで両耳を塞ぐ。止める間もなく、
「――出力最大・『蒼』!!!」
――刹那。屋敷は一瞬で分解された。
引力に引かれ、飛ばされた巨大質量による、山肌を削ぐほどの範囲攻撃によって。
全ては、なす術なく崩されたのだった――。
―
――
―――
――後日。呪術高専・新東京校。
「五条。座れ。なんで呼ばれたかわかるな」
「日下部さーん! 犯人探しはよくないと思いまーす!」
「
報道上、ガス爆発ということになった本騒動について。
これでもかと縛り付けられてお札まみれになった襲撃者の少年と一同。
そして、一級術師・日下部篤也は会していた。
「先生、わたし今から家なき子なんだけど」
「ちえっ、反省してまーす」
「――えっ、あそこお前の家だったのかよ。あんなデカくて山奥って、五条家の別荘地とかじゃ」
「わたしの家でもあったの」
「それは……すまなかった」
どうやら、律儀な暗殺者らしい。
まだこちらの方が模範囚ではないだろうかと、少女――
「まあいいよ。家賃は先生持ちだし」
――そう、家が壊れたのはいい。
元より自分の財産ではないのだ。
――襲撃もまあいい。
自分を狙ったわけではないし、五条悟を狙った時点で無力も同然だ。
でも――家を壊すような考えなしのアホは許せない。
「ちょっと、ケチケチしないでよあんな狭い家くらい〜」
「金銭感覚バカだからそんなこと言えるんだよ。だいたい『天逆鉾』に脳天刺されて生きてるって。やっぱ人間じゃなかったんだね、先生は」
「……、いやいや。あれはタネありきっていうかね」
「言われてもしょうがないことしまくってる先生のが悪いっ! なにさ、海外に封印しといて忘れてたって……」
(……おかしい。俺が原因のはずなのに。なんで俺そっちのけで言い争いしてんだコイツら……)
……と。MVPではあるが、被害規模的にはブッチギリの戦犯を晒しあげつつ。
「まあまあお前ら。言い分はわかったから。そのへんにしとけよ」
半目の婪佳久がつっかかり、五条悟は笑い。
そして篤也は『優しく』嗜め、議題を本題へ移した。
「気になるのは、なんで五条悟暗殺なんて無茶を図ったかっちゅー話だろう」
―――
――
―
「――――そうだ。お前が、俺の家を! 覚えがあるだろう、五条悟! 俺は
……なにやら、ただならぬ事があったらしい。
シリアスに押しだまる五条悟なんて、初めて目にした。
それこそ、五条の身に『何か』があった――?
「日下部さん……」
異常事態への直面。
婪佳久は、隣のトレンチコート男を手招き、
「――女性関係ですかね」
「ああ、やりかねんな」
「憂太と同じジョーク言わないでくれるかなっ!?」
地獄耳発動、五条先生は普段の我を取り戻した。
で――どういう思考手順を踏んでそうなったのか。
「――よし、禍福くん無罪! 僕が決めた今決めたっ!」
ドン!! と擬音の聞こえそうな勢いで。
突然、五条悟はそんな事を言い出した。
「フリーの術師だそうだし、腕っぷし確かだし。今の超人手不足な時勢で高専入りさせない理由ないっしょ。肉体年齢15歳ってんだから――婪佳久、待望のクラスメイトだよっ! イェーイ!」
「え。本人の同意は……」
「そうだ。なんでそうなる。てか俺の話はまだ――」
「逆らったら五条悟襲撃罪で死刑ね。もし億が一でも僕が死んでたら責任とれたの?」
「「……」」
――目を見合わせる婪佳久と、安曇野なる少年。
――婪佳久はふるふると、首を横に振った。
ごめん、こういう人なんだよ五条先生。
「てことで。いいよね日下部さん!」
「別にいい、どうせ狙われたのお前の命だからな」
「……えっ」
――まあ実際、自分の命はどうでもいいとは思ってるが。
それはそれとして他人にそう言われると一丁前に傷つく。
それが五条悟である――。
しかしまぁ、そういうわけで。
「はいちゅーもく転校生だよ~! 僕の命を狙いに来た
その日のうちに制服を着せられ、教室に連れ出された不満顔の少年。
ぶちまけられるクラッカーのリボン。
「あぁ。ごじょセン狙ったの。勇気あるわね〜。女性トラブル? まあよろしく」
「なんかみんな反応悪くない?」
一年担当・釘崎教官も暖かく祝福した入学式を経て、
「って事で。今日から君たちマヴね、M.A.V.! ちょうどいいし、一緒に任務いってきな!」
「……映画観たでしょ、五条先生」
「いやだからやる道理がな――」
などと――これまた同日。
入学早々に『蒼』で転移され、二人は任務に駆り出されたのであった――。
次回より、一話ずつ毎日投稿に入ります。
あと15話はストックがあるので、そこまでは一気に出しちゃいます。
今後ともよろしくお願いします。
【オマケ①・婪佳久について】
(先生、乙骨さんからも女性関係とかツッコまれてんの?)
(じゃあやっぱ今回そーなのかな。やってんなぁマジで……)
……と、五条先生にドン引きしてるオリヒロイン・婪佳久ちゃんですが、
男子用学ラン制服を改造して着てます。
ロングズボンをスカートみたく履いてます。
中性的な顔立ちで、服も髪も真白の少女という想定です。
いったい誰に似たのでしょうかねぇ()
【オマケ②・『天逆鉾』について】
原作においては天元様曰く「破壊もしくは封印された」との事でしたが、
本作においては封印されていた事にして、登場させます。
どうやって禍福少年が入手したかは、この先の回でお確かめ下さい。