【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
最強への下剋上、ここに刻む!
五条悟を翻弄し、タコ殴りにした呪霊二体。
これは勝ったな、ガハハ!!
――あなたにとって、五条悟とは?
A:卒業生のIさん
「んー。う〜ん……目標かな」
「一時期いなくなったんだけど。そう、封印されて。……本当、代わりのいない人なんだなって思わされたよ」
「でも。同時に、代わりをやれるぐらい、強くなるまでは死ねねぇな、って――あのとき俺が戦えなかったのは、そういう事だろうから」
「にしても。延命かぁ……真逆なんだな」
A:卒業生Fさん
「一応、恩人です。心底、不本意でしたが、一応」
「生き方変えるとか言っといて相変わらず無軌道だし、不始末ばっかだし。挙げ句、自分の仕事を丸投げしてくるわ、せっかく血色よくなってた伊地智さん老けさせるわ」
「……でも、なんだかんだ、筋は通してくれました」
A:卒業生Kさん
「今や先輩ね、教師としても。推薦された時は『いやねーだろ』って思ったわ」
「でもね。どっかで『人にとって環境とは誰と居たか』、って言われたの」
「実際、来てみりゃ都会も大してイイモンじゃなかったし……意外と、ちゃんと人を見て言えた事なんだなって」
「「「それはそれとして」」」
「「「私/俺が勝つ前に負けたら、許しませんよ/許さないかんな――――バカ目隠し!!!」」」
―
――
―――
「しかし――五条悟め。呪力も術式も奪われてなお、ここまで撃たせるとは」
「獄門疆に入れられた直後も、なぜか獄門疆が動かせなくなったそうですよ」
「五条悟だから、か――」
そう。あり得るのだ。五条悟に限っては。
故に。彼らは勝利を確信していながら。
未だ、連鎖爆撃の続く『
「「――、マジか」」
そして――己の。狡猾さを呪った。
「大、マジ……つうか、言ってなかったか?」
否。そんなはずがない。
今ごろ肉体は木っ端微塵のはずだ。少なくとも、術式も呪力も奪われたはず!
「僕さぁ、最近ハマってんだよね――『蕎麦打ち』!!」
「ぐぅッ――うううううゥッつ!?」
再び大きく、『呪いの種子』は枝葉を伸ばし、
ジャック・オーは苦しみだす。
この『開』の真っただ中、その成長速度は破壊速度に上回っていた。
「マジで、どうなってんだ糞餓鬼が――!!」
――『黒閃』。
五条悟の、ボルテージが上がる。
五条悟は、明確に、
その現象を狙って起こし、己の腹の根に拳を叩きつけていた。
「だから、最近できるようになって言ってんのさ、空気読み。オッパッピーだよっ驚いた!? ……いや、呪霊じゃ通じないか」
そう、初めから術式は縛られてなどいなかった。
呪力は大量に垂れ流されていたが、問題ではなかった。
――今の五条悟は、呪力消費自体を克服している。
かつての呪力効率は99%。ほんのわずかだが漏出はあった。
六眼をもってしても知覚できず、掌握しきれない呪力があった。
魂の呪力。
呪術師が、無意識に魂を防衛する呪力。
そして既に五条悟はそれさえも掴んだ。
今の五条悟は、一切のロスなく呪力を扱える。
「お前らが『呪いの種子』の成長でしか僕の生存を判断できないのは確認済みだった。オマケに『魂』見えない程度の『六眼』だろ?
故に――その呪力量は、際限なく。
乙骨、婪佳久以上に膨れ上がる。
「――つうか、言ったろ。タイムアップなんざ待たずに祓えるってさ!!!」
――再び、黒閃。
五条悟のボルテージは、際限なく上がる。
あの爆撃、影と『開』の渦中で、重ねられてきたギアアップ。
とはいえ、『呪いの種子』はあくまで必中効果だ。
どんなに殴って破壊しようと、発生する。
(コイツは、天元の空性結界を転用した『必中のみの領域』。この必中命令はそう簡単に中和できないよな。さっきの簡易領域でもムリだったし……けど。だからなんだっつー話!)
連続して散る黒い火花。
あらゆるエネルギーを焼き焦がしノンストップで回る竈門。
破滅の只中、彼はただ冷徹に――印を結ぶ。
「―― ”九剛 ” ”偏光 ” ”烏と声明 ”」
刹那。領域を上塗り、『呪いの種子』の大きさなど超えて余りある――呪力の膨張。
組まれた掌に、かけあわされる正の呪力と負の呪力。
マイナスを膨らませる掛け算の末、産み出される――『負の自然数』を前に。
「かくなる上は――ジャック・オー!」
「もうやっています。結界条件リセット――分解解除完了。今です!」
呪霊らは、より実現性のある、第二の方針にシフトした。
彼等の勝利は、五条悟の殺害もしくは、『封印』だ。
――ここまで元より五条悟が移動するたび、第一結界は逆に動き、移動距離をプラマイゼロにしてきた。
――それはひとえに、第二の結界で、発動から一分以上経過していた呪物のため。
「すまんな、舐めてたよ―― 『獄門疆』開門!」
分割された結界がリセットされ、
三つに分割された
特級呪物・獄門疆が。五条悟と完全に同一座標で発生した。
そう。この時のため、彼らは必死こいて日本海深くに放置されたコレを拾ってきたのだ。
完全に、座標とタイミングは一致していた。
結界条件変更と同時に発動する呪物を避ける手段はな――!
「「なに――!?」」
この時を、待っていた。
そう、くわっと五条悟は凶悪に笑う。
無下限呪術・術式反転――『
ニュートラルな無下限呪術の反転効果。
『無限』の間を『0』に変換させ、
背後の指定座標に飛び退き、実現した回避。
自分が動けば、結界も動く。
その悪条件が消えた瞬間、
五条悟は、ほんの一瞬だけ先に動いた。
身体破損を抑えるため、距離は数歩分、引くにとどまる。
それで十分だった。
妨害を許す間もなく、
掌印は、前へ。
「―――― ” 表裏の間 ”――」
――無下限呪術・術式順転『蒼』。
――無下限呪術・術式反転『赫』。
ふたつの術式反転の同時併用と、完全詠唱によって。
彼の元いた地点、開かれた獄門疆に。
掌印によって放たれたのは――200%の。
「――――虚式・『茈』」
その場で、獄門疆は破綻した。
獄門疆内部が触れたモノはなんであれ、呪力が完全に抜け落ちる。
だが、『茈』の仮想の質量を前に――物理的に破壊され、破綻していた。
この時点で――、
五条悟の殺害、もしくは封印。
その両条件が、完全破綻した。
――否。すべて、問題なし!
「そこまでできるとは思わなんだ――五条悟!」
「ですが、よいのですか――人質が死にますよ?」
そう。3分割されたレイヤーはひとつに戻った。
この渋谷駅を模した景色においては、彼らと。
――36名の、人質が同地点に設置されていた。
五条悟の判断を、迷わせる。
彼らの魂には『無量空処』が効いている。
肉体を欠損したとしても、フリーズした時点での魂をもとに、反転術式により治療は可能だ。
だが。あくまでも反転術式で治る範囲。
200%の『茈』を受けては原型も残らない。
ましてや、この『茈』は呪力を失った物理質量でしかない、呪霊を祓えるものではない。
(五条悟の領域が人質にも機能した意味。そういうわけだろう!)
このままでは、死ぬのは人質のみ。
祓うには、二度目の『茈』が必要なハズ。そして、
「”龍鱗” ”反発” ”番いの――」
ニコラウスは、世界を断つ『解』の詩を紡ぐ。
同時、ジャック・オーは領域を解除。
もはや『呪いの種子』は無意味。
故に領域を捨てた。術式は焼き切れた。
だが、ここまでの経験で会得した、正真正銘の結界術にキャパシティを集中し――その『解』は、発動直前まで隠される。
そう。新宿の決戦にて、初手に使われたモノ。
発動した術の内容を、見誤らせる結界である。
(仕掛けはすべて崩れた、そう思っているのでしょう。だからこそ、確実に判断は遅れる―― 今度こそ死になさい。五条悟!)
――僅かでも、迷え。
ほんの一瞬だけでも。
その間隙で、喉笛をかき切ってくれ――。
「――領域展開」
否――五条悟は既に決断していた。
間隙を見せたのは、むしろ呪霊の側であった。
「――――『無量空処・改』!」
繰り出された想定外。
景色を上塗る大銀河。
度重なる黒閃などの好条件が実現した極点。
五条悟の新たな領域。
それは『無量空処』の進化形だ。
元より――『無量空処』は特殊な領域である。
基本的に領域展開は、結界に術式効果を付与する身体拡張。
だが『無量空処』は、ただただ相手に直接『前情報を付与するのみ』の効果だった。
あくまでそれは、『術式効果』の前段階。
『無量空処・改』が相手に与えるのは、『無下限呪術』の術式開示。
そして――機能そのもの。
即ち、ニュートラルな『無限』の防護付与である。
「な――――!?」
結果。一般人全員に、バリアは展開され。
36名と2体へ必中した術式開示の結果、
呪霊に迫っていた『茈』の質量はより膨張。
―― 500%の『茈』の閃光は、『無制限』に瞬く。
領域による『無限』の壁を得て、人質はノーダメージだが。
対象外である呪霊にとっては――回避手段が、ない。
そのうえで、二度目三度目の『茈』が撃たれた。どうあらがっても、問答無用で祓われる破壊力の重ねがけに――即座。
「――!」
「――ぁ」
ジャック・オーは動く。
薨星宮に張った全結界のフル動員。
更に『命を捧げる縛り』による結界強化。
「あ、――ぁ」
ニコラウスを蹴飛ばし、破滅の燐光を――己の命ひとつと、天元の結界を代償に、収めてみせた。
「――貴様……ッ、五条悟! ―― よくも、我が
その呪霊は。初めてメッキの裏を見せた。
剥き出しの悪意。腹の奥から出た本音。
その怒りが、借り物でもなんでもない我の現れであると知ってか知らずか。
完全体両面宿儺を模した肉体。
その頭上に浮かぶ歯車の巡り――『適応』により。
即死を逃れたニコラウスは。
爆炎の中で『空を面で捉え』て天上、宙を佇む五条悟へと向かっていく。
「――この俺が、お前を
結ばれる、閻魔の掌印。
好条件が重なったのはこちらも同じ。
既に『世界を断つ解』は会得している。
無下限呪術のメカニズムは完全に開示された。
完全再現された人外魔境の力をもってすれば太刀打ちできる。
故にニコラウスは、単独での領域展開を選択した。
それは全くもって間違いではない。
「 ”位相 ” ”黄昏 ” ”知恵の輪 ” ―― ”
だが。一重に、相手が悪すぎた。
「 ”
――それは、五条悟のオリジナル。
魂までを見通す『六眼』をもって初めて可能となった独自解釈。
領域展開した状態でのみ発動可能となる最終奥義。
術式順転・『蒼』に細胞単位での必中を付与し。『マイナス1の反応』を最大かつ、無限に発生させる――無下限呪術・極ノ番。
「――――『
刹那――景色が歪む。
過聴域外、空気が弾ける。
一点収束する、『茈』とは比にならない火力。
磁場が歪み、擬似重力が観測を遅らせる。にも関わらず、一瞬にしか見えない結末として。
呪力を叩きつけられた呪霊は、宇宙に握り潰され――嘘のように、消えていた。
「オーバーキルすぎて撃てた試しなかったんだけど……いやぁ、まさか実践できる日が来るとはね」
……何ら、そうなるのも不思議ではない。
なにせ領域内でないと、最低でも列島沈没規模の被害が及ぶ威力。
「こんだけ付き合ってやったんだ、成仏しなよ。言われなくても、僕は二の轍なんて踏まないからさ」
そう――銀河より、薨星宮本殿へ、
人質全員と共に降り立ち――五条悟は帰還する。
一瞥、己を呪った者達に別れを告げ、
腹に生えた『呪いの種子』は、『そういやあったな』感覚で摘出、ポイ捨てし。
「さて――どうなってるかな。僕の生徒達は」
ボロボロになった黒布で目元を覆った。
その六眼を、ただ――期待に満たして。
温度やら湿度やらを読む訓練でもあるんでしょうけど。
蕎麦を自前で作れるようになって、誰に食べて欲しかったのかを思うと……。
なんだかんだ北に行っても、五条悟の青春の重さは変わらないんでしょうね。
とはいえ。これにて虎杖も五条も戦いが終わりました。
次回からは正真正銘のラストバトル。最終章③となります。
こんだけ活躍ノルマは果たしたんですから、オリキャラにバトンを譲っても許されるでしょう!(釘崎伏黒も出すけどね!)
どうぞ、次回もお見逃しなく! 最後までご堪能ください!!
【挿絵表示】
こちら、獄門疆の理屈について、いちおう図解置いときます。
【解説①・『無量空処・改』のコンセプトについて】
「俺だけ強くてもダメらしいよ」
→だからみんなに僕のバリア付与するね!
助かる準備のないやつもあるやつも全員守る!
なんなら僕も強化されるからやり得、イェーイ⭐︎
それが『無量空処・改』という、自分の術式効果を相手に与える領域となります。
実際、他のみんなが自分の術式を発展させたりしてる中、一人だけ無下限を使ってやることが「処理できない情報量を相手にぶつけます」だけなわけないですよね。
効果からして、味方に無下限バリアを付与できるようになった、ってのはだいぶデカいと思います。仲間と戦えるわけですからね。
より細かく効果を述べますと、
必中効果:『術式の開示』+任意の対象へ、下記効果を付与。
①『無限』を対象者の周囲に設けてバリアとして展開
②呪具を強化する要領で、五条悟の呪力を与えて身体強化
そう、二重の防御を付与しているのです。
②は、バフ技というよりも『五条悟の呪力』によるコーティングを施すことで、『無下限呪術』によって万が一にも傷つくのを防ぐ目的があります。
(自分の術式・呪力で自分自身がダメージを受ける事はそうない、という状況を作ってます)
要するに。今の五条悟には人質なんて通用しない、という話です。
えっ、もっといいネーミングなかったのかって?
不義遊戯・改が許されるんだ。無量空処・改があったっていいでしょう。
【解説②・五条悟と虎杖悠仁の『黒閃』の違い】
五条悟は、もはや『黒閃』の成立条件を目で捉え、狙って起こす事ができます。
そのため、通常攻撃感覚で『黒閃』が出せます。
ただ、今の呪力量・呪力出力でやると敵がワンパンされるだけでは済まないため、起こせる場面に制約があります。
対して、虎杖悠仁の『黒閃』には制約がありません。
いい意味で規模が馬鹿げていない(素の呪力量自体はいまだに18年の乙骨以下)のため、制約にとらわれず連打できます。
『黒閃』が一発当てれば、二、三発目を狙いやすいという特性上、大一番での瞬間火力ならば虎杖悠仁のが強く使えるでしょうね。
ちなみに虎杖は、素の実力が上がったのもありますが、持ち前の『当て勘』で起こしています。
もちろん発生確率は五条悟ほど確実でないのですが、これはむしろ、『魂を見れる六眼』もなしで、五条悟に次ぐ高確率で起こせる虎杖がすごいと言えるでしょう。
以上の制約の差、威力差がある事から、
『黒閃の最多記録保持者は虎杖悠仁であるものの、五条悟も理論的には同じ以上の事はできる』バランスとなっています。
それぞれの『黒閃』は一長一短で、強みが異なっているわけですね。