【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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【あらすじ】
絶望を知り、立ち尽くす少年。
その元に、かつての復讐対象、五条悟が現れる。

大決戦の最中で顔を出した、彼の思惑とは――?



第29話「満ち引き」

 

 ――婪佳久(アイツ)を呪物に仕立て上げたのは、

 安曇野本家だった。

 

 その結果、婪佳久(らんかく)の暴走によって安曇野本家は滅亡。

 五条家への対抗意識が強かったジジババによるもの?

 五条悟は両親など殺していなかった。

 

 真犯人は――。

 

 

 

「俺が―― アイツを――!」

 

 

 

 眼前、夜闇に聳えた、安曇野の負の遺産。

 横で叫ぶ日下部の声も。

 日下部に奪われた天逆鉾も。

 

 なにひとつ、頭に入らなかった。

 

 

 

 ――禍福の、十二年。

 固めてきた復讐の姿勢は、その地盤から崩壊していた。

 

 歯の根の合わない顎、抑えようとする手も、足も――心も、完全に折れていた。

 

 故に、否、そうでなくとも。

 

 

 

「―― 『下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり』

 

「……、は?」

 

 

 

 呆気に取られた。

 突如、周囲を取り巻く世界の一変。

 

 

 

「これは縛りを極限まで排除した『簡易領域』。ここではダメージはゼロとなって、互いに害されない」

 

 

 

 景色の全ては、加速もしていないのに止まって見え――結界に隔たれていた。

 

 

 

「そして、外界よりも時間の進みが早い――わかりやすく言うなら。『精神と時の部屋』ってヤツかな?」

 

 

 

 我流『簡易領域』・『蘇迷盧(そめいろ)』。

 そして、その結界を構築したのは。

 

 

 

「――五条、悟……!」

 

 

 

 昨日までの、復讐対象。

 相変わらずの薄笑いを浮かべる、『最強』の姿。

 

 

 

「教育方法としては下も下なんだけど、緊急事態だし。ま、仕方ないよね」

 

 

 

 なぜここに。なんのつもりだ。

 

 彼は23区の結界に向かった筈。

 というか真人を取り逃してるじゃないか。

 

 

 

 ――疑問は尽きない、だが。

 

 

 

「ほら、何ぼっとしてんの。僕に復讐すんじゃなかったんスか〜?」

 

「――あぁ、やってやるよ……!」

 

 

 

 破れかぶれ。ヤケクソ全開。

 前々から気に入らなかったという事実。

 

 その一点に、頭は赤く染まった――。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 ――その後の戦闘は、あまりに一方的だった。

 

 

 

「どーしたよ、そんなもんか!」

 

「――ッ!」

 

 

 

 天逆鉾のアドバンテージが消えた今。

 禍福は歯牙にも欠けない存在であった。

 否、あったところでだった。

 

 

 

 五条悟は。術式を使わず、呪力強化のみで、加速した禍福を楽々と拳で捉える。

 

 

 

「俺の、両親は―― やはり最後まで、貧弱な術師で! 真人間だった!」

 

 

 

 たっぷり迂回して、加速を乗せて再度迫る。

 

 

 

「俺は、捨てられてなんていなかった。祖父母に合わせて貰えなかったのも、呪術を教われなかったのも―― あの人たちが、術師であるより親であるのを選んでのことだった!」

 

 

 

 だがそもそも。その過程自体を潰すなど彼からすれば容易。明らかな手加減。

 

 その上で、これほどの一方的な戦いぶり――。

 

 

 

「なのに。なんでッ……なぜ俺だけが、生き延びた!」

 

 

 

 それでも気が済まない。止まらない。

 俺は形だけとしても。人生の大半を、コイツを殺すために費やしてきた――!

 

 

 

「なんであの日、俺だけは死ねなかったんだ!」

 

「それは、僕の知るところではないよ」

 

「――、!!!

 

 

 

 平然と言い捨てる男に殴りかかる。

 なぜ、あの全てが焼けた日に、お前はそんな風でいられた。

 

 なぜ、俺は、生きていられる――?

 

 

 

「俺は、ずっと――あんたに復讐したかった」

 

 

 

 一度、片膝が折れた。

 一歩押されるだけで、脱線。

 集中していた呪力が暴発し、重ねてきた速度が身を潰す。確かな、絶命を体感し。

 

 だが、死ねもせず――楽になれず。

 

 

 

「でも、アンタは何もしてなかった―― なんにも! 俺が、信念だと思っていた事は。騙し騙しやってきた事は……そもそも逆恨みでしかなかったんだ!」

 

 

 

 地面を、殴った。

 このさい五条悟じゃなくてもよかった。とにかく当たり散らしたかった。

 

 

 

「もう、わッかんねェよ――俺はッ、アイツを()らなきゃいけないのか――!」

 

 

 

 吼える。こんな大声を出すのはいつぶりか。

 感情の収集がつかない。枯れたと思った怒り、涙が、止まらない。己を律する事ができない。

 剥き出しの感情は、膿のようで。

 

 

 

 だからか――。

 

 

 

「いや無理だよ、君弱いもん。それに僕、最強だから。……そんなんじゃ、一生勝てないよ?」

 

 

 

 ついに。脳天が逝かれたのか。

 

 

 

 ――まずは、全部吐き出せ。

 そう、彼が言ってるように聴こえた。

 

 

 

「請負だけどね。呪術師に、後悔のない死はない」

 

 

 

 それから――無謀に向かっては。

 正論で返された。

 

 

 

「ならせめて復讐やって死にたい、ってんなら叶えてやるけどさ……それが、本当にやりたいことなわけ?」

 

 

 

 五条悟は。ただ静かに見据えて問うていた。

 淡々と出端をくじき、姿勢を崩し、作業として呪力を打ち込む――年季が違う。

 

 

 

 文字通り、いつでも術師として殺せる。

 

 そう体で教えられて、つい。

 

 

 

「違う」

 

 

 

 口に出た。

 つい言ってしまった、というには。

 

 

 

「――こんなとこで、死にたくねぇよ…… 死にたく、ないに決まってんだろ――やっと。人生が楽しく思えてたんだ! 勘違いでもなんでも、何もかも、全部よくなるように思えていた!」

 

 

 

 続いて出た言葉は。あまりにも断言していた。

 呪術師としての実力差など頭から抜けていた。

 

 体は。ただ静かに聴く彼の――邪魔立てのない道を加速し、拳を象り、

 

 

 

「アイツを殺したくない、助けられるものなら――助けたいに、決まってる!

 

 

 

 だが、やはり届かず。

 『最強』を前に容易く砕かれる。

 

 

 

「よく言った――でも。まだ無理だ」

 

「っぶ!?」

 

 

 

 初めて。術式を使われた。

 『蒼』による誘引を伴った呪力の拳。

 肉体は原型そのまま、結界の壁にまで吹っ飛び、本来なら爆発四散すべき威力が籠る。

 

 

 

「おッ、ぁ……あ、あ」

 

 

 

 搾り出された胃の中身が、喉を焼く。

 

 

 

「あの子は、とっくに助けられる準備ができてる。どっかで死にたくないって思ってんだろうね。あの呪霊には殺しきれないよ」

 

「な――ん、だと……?」

 

 

 

 そして、そんなことお構いなしに、淡々と。

 ――眩く。確かに、希望は提示された。

 

 

 

「けど。君は、助ける準備ができていない――君は目標を真剣に追いかければ、それでいいと思っている。でしょ?」

 

 

 

 ――図星だ。何も返せない。

 『最強』に勝てる、なんて思ったことはない。

 

 

 

 アイツは助かる。そう、六眼で断言されたところで――十二年。形だけでも、引き摺ってきた復讐心(いま)がある。

 

 

 

「暴走した彼女を鎮める。それが、今の君の役目じゃないわけ?」

 

 

 

 復讐という、俺の殻。

 このまま、戦えるか――――否だ。

 

 そう、思い至って。

 

 

 

「――、……。……お願い、します」

 

 

 

 禍福は。頭を下げた。

 

 

 

「勝たせてください。俺たちは――俺は」

 

 

 

 みっともなく。矜持も何も捨てて。

 敷かれた道の上に立つ事を、求めた。

 

 ――導いて欲しいと、寄り縋るしかなかった。

 

 

 

「もう、なにひとつだって奪われたくない。だからッ――護れるだけの、力を、ください」

 

 

 

 こればかりは、伏黒さんも釘崎先生にも頼めない。

 屈辱でしかなかろうが、『最強』以外にあり得ない。

 騙し騙し、突き放してきた挫折が今なのだと知った。

 嗚咽混じりの声なんて、聞かせられるものじゃない。

 

 

 

 けど……そんなのに拘っていたら、俺はアイツを助けられない。

 

 それこそ。また俺は一生分、後悔する。

 

 

 

「……オッケー。任せなさい! とはいえ、掴めるかは君次第だ。口だけなうちは解放しない――僕の指導は、甘くないよ?」

 

 

 

 もう。この後に、何にも屈しないために。

 間違いだとしても、貫き――守り抜く為に。

 

 

 

「――、ッ!」

 

 

 

 初めて――五条悟が構えた。

 そこへと前傾、地を蹴り飛ばす。

 なりふり構わず、足掻いて肉薄する。

 

 そうだとも。

 たとえ、気に食わないやつだろうと。

 

 

 

 俺は盗んでやる――『最強』の技術を!

 

 

 

――

―――

 

 

 

 ――そうして、何時間だろうか。

 

 

 

 加速した彼には何十年にも感じる、最高速で積まれた敗走の数々。

 それでも、確かに伸びていく道筋を辿り。

 

 空を切ってきた拳は――、

 

 

 

「――うん。及第点!」

 

「――、クソ」

 

 

 

 ――掠めた。

 

 あと少しで届いた。

 

 それを、無下限の『不可侵』に阻まれて、時間切れが知らされる。

 使わせた、というには――結局、一方的でしかなかった。

 

 

 

「本ッ、当――気に食わねェ」

 

 

 

 向こうは術式抜きとはいえ、組手が成立した。

 そしてヤツに一歩引かせ――術式を使わせた。

 

 

 

「や〜。ほんと、期待した甲斐があったもんだよ。蒼パンチ喰らいまくっといて、なんなら今、赫も喰らって――まだ、その眼ができたとはね」

 

 

 

 その果てに。

 一丁前になったのは受け身の出来だけ、とは。

 なんとも、煮え切らない……だけど。

 

 

 

『――許せないんだろう。なら、好きなだけ()れ』

 

「……伏黒さん、やれました」

 

 

 

 体が、軽い。

 たぶん、五体満足なのとは別の理由で。

 

 

 

 あの日――俺は我を通せなかった。

 何もできなかった。我を通さずに、受け入れるなんてできない――けど、今は。

 

 文字通り、一生分以上の命を投げうって、五条悟に肉薄できたのだ。

 

 

 

「うんうん、よく知らないけど。何か掴めたようで何よりだよ」

 

 

 

 そして、事実。過去の自分を超えた。

 何よりもその六眼が、それを証明していた。

 

 結局は負けただけだ。まるで割にあっていない。この十数年は、傷ついただけで終わった。

 

 

 

 これ以上の、決着があろうか。

 

 

 

 もう、未練はない。

 けど、これを最後にしたくはない。

 

 だから――俺は、この先も進める。

 

 

 

「じゃ、席座って。漸く――君と話ができそうだ」

 

「……、え、これから本題なのか」

 

「もちろん。この件は、僕からも説明する必要があるからね――本当は、僕から全部説明したかったんだけどさ」

 

 

 

 ――さも当然と。

 学校の椅子を転移させた五条悟に促され、共に向かい合って座す。

 

 確かに――いくつか、気になることはある。

 

 

 

「まず、最大の疑問にお答えしよう――何故、『僕が安曇野家を粛清した』事になったのか。答えはシンプル。それが一番、丸く収まったからだ

 

 

 

「他所から婪佳久やら一般人やら拉致してたっていう安曇野家の蛮行を、他の総監部員は認識していながら止められなかった。その結果、御三家全体の呪術師が二割も死亡した」

 

「安曇野家に生き残りは当時見つからなかったけど、君の存在がバレてたら、責任を押し付けられていただろうね」

 

「婪佳久もそうなるところだったけど。秘匿死刑をしたとこで体内の呪霊も死ぬ確証はなかった。若人に罪着せるとか、お天道様が許しても僕が許しませんし?」

 

「んで。誰が事の責任とるかとなって、僕が名乗り出た。その結果――五条悟の独断で安曇野家は滅び、あと婪佳久という子もたまたま拾ったので、五条悟が今後管理します! という表のシナリオが作られた――ってなわけ」

 

 

 

 ……ふむ。要約すると。

 俺の本家はロクでもない事をしでかし、婪佳久の資質を見出して生きたまま呪物に仕立て上げ、他ならぬ五条悟がそのケツを拭いて回った――と。

 

 

 

「いろいろ、ツッコミたいけども……なんで、今日まで俺に真実を黙っていた?

 

順序を踏みたかったからだよ。婪佳久の事を知った後でなきゃ殺してたでしょ。少なくとも、僕が何を言っても聞かなかっただろうし?」

 

 

 

「当時、現場でガキの頃の俺と目があったハズだ。その時にも誤解を解けただろう?」

 

「うーん、ごめん。全く見た覚えないわ」

 

「は?」

 

 

 

「いやだって、当時君2、3歳だよ。まだ術式が発現してない。被害者続出の火事場でパンピーのガキ一人を僕が記憶してると思う?」

 

「そうか――認識さえされていなかったか。あの日の俺は」

 

 

 

 そりゃそうか、と腑に落ちる。

 いや、釈明すんならもっと真面目に言わんか、とも思うが。

 

 

 

「政治問題になって、挙句お前が全部の罪を被ったと……ズルい大人がいたもんだよ」

 

「全くだよ。こんなの知らせて幼児の人生縛ろうだとか、大人気ないよね?」

 

 

 

「じゃあ、なんだ。俺の誤解を解かないまま、俺を雇用してたのは、お前の責任だってのか?

 

 

 

 しかし、その五条悟は。

 ここまでの建前とやらを貫くでもなく――笑った。

 

 

 

「そうだとも。だって僕は――その方が。君が強くなると思った」

 

 

 

 何が見えているのか。

 爛々と、本性を隠すまでもなく。

 

 ある意味――無垢な眼をして、俺を見ていた。

 

 

 

「実利でも私的にも、1月に出会った君を引き入れない選択肢はなかったよ」

 

 

 

「『天逆鉾』を最速で扱える術師が味方になる。オマケに倦怠期ときた。君ってば典型的な一級手前で頭打ち起こしてるタイプだったし――何かのキッカケで、大きく成長するのは目に見えていた」

 

「婪佳久もまた、僕以外で彼女を止められる、欲を言えば対等な誰かとの出会いが必須だったし?」

 

「野薔薇も先生やれそうなレベルになってたし――しばらく、黙ってたほうがいーかなって⭐︎

 

 

 

「うん。やっぱお前殴らせろ、この後に一発」

 

 

 

 うっえ、気持ち悪っ、この男。

 それが全てを聞いた感想、まぎれもない本音だった。

 

 ようやく腑に落ち、理解した上でゾッとする。

 やっと生理的嫌悪が形になった。

 

 

 

 ――だって、こいつの眼は一度も。

 

 喉元に食い付かんとした俺の殺意を。

 呪力と、そこに乗った負の感情を。

 悪感情を――まるで拒絶しなかった。

 

 

 

 むしろ。喜んで、本気の刃を受けていた。

 強くなる生徒を、ただただ喜んでいた。

 

 

 

「……やっぱ、非人間だ。アンタ」

 

 

 

 自己解釈だが――たぶん、『六眼』のせいだ。

 彼からすれば、呪力も呪霊も、産まれた時から見えて当然の一物質に過ぎない。

 

 故に彼の視点はズレている。人の悪感情など早々、知り得ない。

 

 ましてや御三家当主だ。ハナから術師として育てられ、術師である事に迷わない。

 

 

 

 まさしく、人外――教師にして『最強』。

 んなもん、殺せんせーじゃあるまいに。

 

 

 

「はは、こればっかは呪われても文句言えないよ、実際。悪い誤算もあった…………頼る先がなくなり、君が我流で呪術を学んだ結果、無茶苦茶な術式運用をしていた事。12年もの間――僕への復讐で動いていた事もね」

 

 

 

 ――それだけに、その顔は。

 心底、似合わぬ眼に思えた。

 

 それこそ、本来その目が知るべくもない後悔の色が、映ったようで――。

 

 

 

「結局のところ、僕は君がただの子供でいられる時間を奪った。そのところは本当に、申し訳ない。済まなかった――今後は、婪佳久同様に君も――」

 

「――いや、保護する、とか言うんじゃねえぞ気持ち悪い。術師代表だからってヒーローを気取んな」

 

 

 

 ――つい、突っぱねた。

 あれだけ、コイツを屈したいとは思っていたが。

 今は、むしろ。頭を下げられたって困る。

 

 

 

「力を求めたのは俺だ。それも、無為に終わるハズだったが……こうやって、役立てる時が来た」

 

 

 

 立ち上がる。

 もう用は済んだ。十分、導いてもらえた。

 

 真の敵は、この結界の外で待っている。

 

 誤解で形付けられた足を。

 そこへこそ――正しく、進ませる時だ。

 

 

 

「そっか。……じゃ、改めて。婪佳久をお願いね――僕じゃあ。あの子を、人間にはできないからさ」

 

 

 

 また、目の前で。

 守りたいモノが失われようとしている。

 

 義務感なんかじゃなく――俺は。

 

 

 

「……あぁ」

 

 

 

 この力で、今度こそ――お前だけは、救い出す。

 

 

 

「行ってきます、五条先生」

 

 

 

 その一瞬。ほんの一瞬だけ。

 目の前の男は、鎮まりを垣間見せ、

 

 

 

「――おう。これ終わったら始業式だからね、新二年生!

 

 

 

 そう、結界と共に、幻のように消えた。

 

 

 

「……さて」

 

 

 

 そして。少年は駆け抜け――――23区にて。

 己の、宿命と相対する。

 

 

 

「……、――――!!!!!

 

 

 

 ――夜の暴風が肌を焦がす。

 ――甲高い音色が鼓膜を裂く。

 ――その全てが、背中を押しているように心地いい。

 

 

 

 現実時間において――この間、僅か五分。

 

 

 

 その程度の時間は。

 彼ら二人にとって、場を保たせるには容易だったらしい。

 

 

 

「あれ? どしたのよ禍福、いー顔して出てきて。カネ貰った?」

 

「いや違うだろ。察せよ、それぐらい」

 

 

 

 一級術師、釘崎野薔薇。

 特級術師、伏黒恵。

 

 婪佳久の暴走を感知し、一歩早く、彼らは俺を待っていた。

 

 

 

 ――思えば。この言葉は、俺の十二年。

 一度として、意味を為さなかった言葉で。

 

 

 

「伏黒さん、釘崎先生――『俺たち』は、アレを祓わなきゃいけない」

 

 

 

 でも――既に、過去は過ぎたと知ったから。

 

 

 

「お願いします――俺たちを、勝たせてください。どうか――助けてください」

 

 

 

 そう、恥も外聞もなく、

 安曇野禍福は、そんな事を口にした。

 





原作キャラに尺を割きまくったのもあって、
この土壇場で、オリ主人公の修行回を挟むというね。

ここからはオリキャラのターンとなってしまいますが、何卒お付き合い下さい。



【オマケ・五条悟の我流『簡易領域』誕生秘話】

三代「なぁオマエ! 相撲しようぜ!」
五条「ぶっふぉww え、ちょ。なにそれマジ?」
三代「だから、相撲だ相撲! やらないのか?」
五条「ああ、うんやるやる。いやぁ、まだまだ僕も勉強不足みたいだね」

五条(なるほどね。縛りを極限まで排除した、互いに傷つく事の無い『簡易領域』か。そりゃ真希と相撲しまくれたわけだ。外界との時間の流れには差がある……面白いなぁ、ホント)

五条「それに、なんか肩の荷が降りたカンジもするし。いい勉強になったよ、あんがとね」
三代「ふっ。喰えないヤツだぜ。だが……どうだ。相撲、サイコーだろ?」

五条(……う~ん。頷きたいとこだけど、なんでだろう。なんかこう、洗脳感あるというか……)



【ここまでの最終章時系列まとめ】

0時0分:
・作戦決行。五条、釘崎、伏黒の3名、薨星宮本殿へ
・真人、婪佳久と禍福に接触。無為転変発動

0時1分:
・真人により『喇誑(ラテブラ)』顕現
・日下部、『喇誑(ラテブラ)』と交戦。
 簡易領域による成長の阻害に成功。
・ラテブラ、東京へ飛び立つ

・このときの禍福、
 五条の『簡易領域』内で指導される

0時2分:
・虎杖悠仁、真人と交戦開始。
 以降、このタイマンが続く。

0時3分:
・『喇誑(ラテブラ)』、東京結界へ移動。呪霊を鏖殺

0時4分
・『喇誑(ラテブラ)』変態。第二形態へ。
 この時点で呪力量が列島全域の3割に到達
・伏黒・釘崎、交戦開始。
 日下部からの前情報で辛うじて戦闘が成立。
 成長の阻害に成功。

0時6分:
・禍福、吹っ切れて戦線復帰

0時7分:
・五条悟、一時離脱を経て薨星宮に帰還
 以降、特級事象呪霊2体との戦闘が続く。



 ……こうして見ると分かりやすいですが(五条悟を除く)MVPは日下部です。

 一号打者に立たされた彼が頑張って中継ぎをした事で、
 バトンは継がれ、この状況が成り立っています。

 なにもなければ、『喇誑(ラテブラ)』は5分で完全顕現してたので。

 サンキュー篤哉。フォーエバー篤哉。
 やはり優しさは世界を救う。



【オマケ・安曇野禍福は『シンアスカ』】

・誤解によってメインキャラを目の敵にする
・偽りの主人公(先代キャラのが目立つ)
・痛い目にあってやっとスタートラインに立てる

 こう羅列してみると、性質的に似てるよなぁって。

 とはいえ。ここからは、ちゃんと主人公として頑張ってもらいます。
 だってもう、五条先生の生徒の一人ですからね。
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