【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
五条悟に導かれ、
安曇野禍福は戦地へ。
託された彼女を救うべく、高専術師らが打って出る――。
2025年4月20日0時6分――。
特級超過呪霊『
「お願いします、『俺たち』を勝たせてください……俺を、助けてください」
摩天楼を軽々と越す、巨影。
今や、列島の六割の呪力を吸い上げ、育ち、聳え立った悪意の
それは、
――その負債を、今こそ祓う。
「……私情か?」
「私情です。毎度ご迷惑おかけしますが、お願いします――なんとかしてください」
そのための、安曇野禍福の申し出に。
「わかった――こいつは
「……はい」
その、特級呪具。
禍福は――天逆鉾を、受け取った。
「……なんの請負よ、さっきの」
「ほっとけ――行くぞ」
作戦変更を伏黒、釘崎は決意した。
なにせ、流れが変わった。
禍福の登場によって――アレには、ワンチャンスが生じていたのだ。
―――
――
―
特級超過呪霊『
既にその呪力、列島全域の六割。
次なる変態を許そうものなら、恐らく。
今度こそ、新生『呪いの王』が完全顕現する。
「……、――――!、!?」
「おっ、なんだ。やっぱ鳥型で
――と、思いきや。
電撃を浴びせ、成長を阻害していた
その体は、わずかに崩れやすくなっていた。
突如として輪郭が薄まり、解けかけていた。
開かれた超高出力収束呪力の砲門は腐り落ち、
でろでろと起こる異常に塗れ―― 『
全身から開いた眼を、一点に向けていた。
――確信した。アイツのせいだ。
アレを見た途端、二つの魂の調和が大きく乱れた―― 押し潰した母体側の魂が、わずかに動きだした。
もとより、釘崎や伏黒にも反応はあった。
だがアレを前には比にならない。
受動的な脅威への拒絶でなく、
『
――あいつを殺す。コイツらなんてどうでもいい。
――あれを殺して、この体の魂を折る。
それでこそ、己は――初めて産まれ落ちる!!
「――――――ッ!!!」
誰に望まれるでもなく、飛ばされる悪意の咆哮は、ついに己の持つ呪力に我を通す。
「オイオイ。そっちにお
鹿紫雲は理解した。
己の役目が変わった。故に身を引いた。
これまでの『悪癖』、単に呪力を垂れ流すというだけの、『
その結果、千を越す呪力の放射が描く流星群は――精緻に、ただ禍福一人にのみ追従していた。
そう、状況は変わった。
今の『
ならば、もっといい手段だってできる。
「そういう因果、か――ったく。あんま
満場一致、白羽の矢は立った。
―― 『
それが、安曇野禍福の役割であった。
―――
――
―
(自分の事も解っちゃいなかった……きっと、誰の事も理解できやしない身分だろう、でも)
「これを抱えて、笑えてたんだよな。お前は」
束になって落ちる死の斜線。
狙いすまし、周到に尾を巡らせ、想定されうる軌道の全てに重なった邪魔立て。
挙げ句、ビルだったものを解体しての質量攻撃という、人間一人には贅沢なオーバーキル。
――その飽和攻撃を、既に遠く置き去って、少年は。
――己を睨む、宿業を見据えていた。
「いつまでいいようにされてんだ、婪佳久」
「……ッ、――――――!!!!」
翼を広げた獣が、東京を股にかけて吠え猛る。
無限の怒りが彼を見ていた。
無数の光線が彼を掻き消さんと迫った。
そのどれひとつとして。もう、目を逸らしはしない。
彼は、身軽な気分に従って制服の前を開き、
ただ静かに、『逆鉾』を手にして、
「……言われないと分からないか、呪霊」
――その全てを、斬って捨てる。
それは――術式と『簡易領域』の同時併用。
シン影流『簡易領域』が起こす自動の抜刀モーション、そのカウンターを、禍福は『人体には構造上不可能な速度』で設定していた。
さながら、同時に刃を三つ出せというような。
それこそ、雨を刃ひとつで斬り伏せろという指定。
だが、彼の術式効果。
Gの発生しない『擬似加速』で、縛りは実現。
簡易領域による呪力出力増加・術式『爆縛呪法』の『命を賭ける縛り』による呪力出力上限解放・呪力コントロール先鋭化によって――彼は。
――際限なく、ボルテージを上げていく。
「……確かに、お前は俺の復讐対象そのものだよ」
とはいえ、呪力保有量という絶対値は覆らない。
如何に強まったところで相手が相手。
それに禍福は反転術式が使えない。
『
「だが、物事には順番がある。お前は、後だ」
事実彼は、じりじりと後退せざるを得なかった。
このままではいずれ、必敗。
――否。
踏みとどまり、前傾――今こそ、前へ進む。
「教えてやるよ――女に会いに行く男を阻めば、どうなるかを!」
極限に極限を重ねた限界稼働。
死中に求めた活、その実現。
かろうじて両足が収まる程度の『線』。
術式の発動条件は、解釈の拡張により、
――空中に、発生していた。
「
それは、自殺行為でしかない。
人間である限り、絶対に踏めない位置の『線』だ。
それを踏まねば、加速は得られない。
無論、地面はマグマ一色、即死判定のみが敷かれる。
その両脚は跳躍していた。
まさしく狂気の沙汰。
己に対する必中必殺の『命を賭ける縛り』。
だが五条悟――先生に、教わった。
――確かな土壌と、一握りのアイデア。
呪術師の成長曲線は。
必ずしも――、一定ではない。
「――――『
禍福は――空の『線』を、駆け昇る。
それは、二段ジャンプだった。
空を『面』で捉え、小さく呪力で蹴る。
流動的な大気から見出す『面』は本来、そうそう捉えられるモノではなかった。
――だが今ここに、
死線を幾重も踏み抜いた脚はある!!
「鬼さん、こちらだ――俺を、
これより、始まるのは。
理論上、五条悟を含めた術師史上、最速の立体起動。
・踏み外せば即死の『命を賭ける』縛り
・空を歩けと言う人には『無理難題』の縛り
2つのブーストを得た術式効果『擬似加速』。
そこに二段ジャンプの速度は加わり、
飛翔した――安曇野禍福は。
「天上天下ッ――唯我独尊!」
その速度、マッハに到達。挙げ句、その身は。
単独で――ヒットアンドアウェイを演じ出す。
空一面を覆う呪力の
針鼠が如く広がる、呪力の『波』による超長距離広範囲のホーミング。
そこから空の一蹴りから抜き出て、前へ。
追従さえ許さず一瞬で『
ただ一人の手にした『天逆鉾』が、その物量を真正面から手数で斬って落とし――――本体をも、貫く。
「…… ――――――!!!!」
完全なるランナーズハイ。
まぎれもない少年の人生における絶頂。
黒閃を撃つまでもなくゾーンに突入した禍福は、今の好条件でのみ『空を面で捉え蹴る』行為を、拡張した術式の範疇として解釈していた。
加えて、今起きている全ては『擬似加速』。
付与されたのは仮想の速度。
この速度で衝突すればぶっ潰れるだの。
そもそも天逆鉾は物理的に壊れるはずだの。
――知った事かと、韋駄天は止まらない!!!
「――――『黒閃』ッ!!」
マッハ2、突破。
もはや呪力とインパクトの一致は半ば必然。
なんならソニックブームだけでも巨体が焦がされ、
続く滅多刺しが流星群を上塗り、全身くまなく抱擁せんと奔る。
ビル以上の巨木が如き多脚は穿たれ、
翼を柱としていた頭は首から落ち、
その翼は焼き切れんとばかりに呪力を飛ばしていた。
それでも。『擬似加速』に、上限などない。
――間違いなく、その牙は。
この新生『呪いの王』に届き得る域。
だが――安曇野禍福はあくまで、囮役だ。
「――伏黒さんッ!!」
彼の一歩が――空を、一閃する。
東京を覆っていた呪力、全方位の日射は切り裂かれ、崩壊。
世界に、夜影は戻された。
そして、今。
頭上の禍福に翻弄される『
――伏黒恵の術式が、回帰する。
「『脱兎』×『摩虚羅』―――― 『
刹那。広がる影は輪郭を得た。
現れ出でる、翼の耳飾りを備えた兎の群れ。
その一体一体の知性はさほどないが、脱兎は群れでひとつの式神――『適応』による検証結果は、伏黒恵を含め全個体に共有され、並列思考が成立する。
「鹿紫雲、位置は!」
「あぁ、診断完了。腹の下、
そして雷神のイカズチが、活路を切り開く。
レントゲン診察は既に完了済み。
内包された婪佳久の位置は推定されていた。
加えて今の『
指定のポイントに叩きつけたマイナス電荷に、手にした如意棒のプラス電荷を込め、放たれる――――領域展開をするまでもなく『必中必殺』となる
「了解――
解剖、完了。
そこへ『適応』を終えた脱兎が『正の呪力』を帯びて、一斉に潜り込む。
術師単体での『相互の縛り』ができるのは、式神使いである伏黒のアドバンテージだ。
脱兎との相互に結ばれたモード限定の縛り。
相互の術式開示による術式効果底上げによる、本来備わらない戦闘機能の追加。
それによる集団突撃が――出来物めいた形で、『
「釘崎!」
「あいよおっ――『共鳴り』!!」
そして、脱兎に運ばれた釘崎野薔薇は――。
――ガガガガガガッ!!!
と、 『
間髪入れずに差し込まれる釘打ちの押し出し。
パイルバンカーの如き掘削作業。
釘崎、伏黒の手によって、
『
確かな、少女の輪郭は浮かび上がっていく。
より細く、顕在化した深すぎる繋がりの境。
さながら臍の緒の切れていない胎児。
根ざすのが腹でなく、脊髄という悪趣味極まるモニュメントとは――まさしく、呪縛。
だがまだだ。この繋がりを断つには呪力だけでは足りない。
婪佳久は『呪霊を孕む』体質――呪霊を祓うのでなく、彼女の持つ『物理的な繋がり』を断つ必要があった。
何より、むき出しの婪佳久本体に負荷を与えるわけにいかない。釘を刺すなんてもってのほかだ。
執刀には寸分違わぬコントロールと、何より手早さが必須。
――故に、導く。
「一丁上がりぃ――やったれ禍福!」
「――了解!」
脱兎ともども始まる自由落下。その間際。
釘崎は空にトンカチを振り――そこに乗った足を、押し出した。
刹那、轟く、超速の爆音。
飛翔せし禍福。その手には――『天逆鉾』。
あらゆる
(――ああ。借り物ばっかりだ。――先輩に頭下げて、先生に迷惑かけて、最後の決め手も借り物の武器)
黒閃現象、正の呪力、必中攻撃。
高等呪術のみが通用する呪霊ならば――特級呪具も、また例外ではない。
(結局俺は、自分では何もできなかったのかも知れない。けど――)
「――――起きろ。婪佳久――!」
それでも――手を伸ばした。
それでも――刃を差し込んだ。
お前を助けたい。それだけは決して、偽りない本音であると。そして、刹那。
――――少女の。魂に、触れた。
今の禍福くんは劇場版限定フォームみたいなもんです。
別に主人公最強モノじゃないので、マッハ3(直哉ライン)越す描写はしません。あくまで『理論上は五条悟以上に加速できる、現にマッハ2を突破した』としか書いてません。
なんなら呪霊直哉のが強いと思ってます。
Fate/Zeroの全盛期言峰みたいなもんですよ。この時だけヤバいのです。
なのでその。このぐらいの無双展開は許してください。
ってかオイこら鹿紫雲ー!
オリ主人公が頑張って加速して突っ走ってるのに『超加速電磁気力砲』なんて完全上位互換技をしれっと撃ってんじゃねぇ!!
いやむしろやってくれ。原作でやれなかったぶん暴れてもええんやで。