【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
虎杖と2018年の卒アル見る話です。
前回知らなくても大体読めます。
エピローグ①「またな」
かつての東京は、一級術師であっても単独行動の許されない魔境であった。
だが今や、その危険度は低下している。
要因は二つ。
まずは、東京のボス呪霊だった特級事象呪霊2体が祓われたコト。
あれらは、東京に踏み居る術師を悉く皆殺ししていた。
そうでなくとも、渋谷事変と新宿決戦の呪霊が祓われた影響は大きい。
次に、特級超過呪霊が祓われたコト。
呪いの呪霊、なんてのが消えたのだから、同じ以上に大影響。
それも日本列島の呪力を七割も喰らった上で消えたのだ。
……揺り戻しの大きさも半端ではなさそうだが、少なくとも呪霊問題は、これまでよかマシになるだろう。
――かくして、東京の脅威度は下がり、
日本政府の意向もあって、東京攻略は現実的目標となった――。
……一方、そのころ。
「なんじゃこりゃーッ。お、お給料が……ッ!!」
……2025年4月某日。
少女は崖っぷちにいる事を自覚した。
「……どうした。隣室まで響く声だして」
「いや。だってこれ、ほら!」
「くっつくな暑苦し…… なーっ!?」
寮全体に響き渡る事件性を帯びた少女の悲鳴。
ごく自然に部屋に入ってくる禍福に対し、
婪佳久はスマホの明細を覗き合って、悲鳴は連鎖した。
そう。給料が少なくなっていたのだ。
もっというと等級が下がり、四級術師に認定されたなどという一方的な通知まで。元々は一級術師程度に稼いでいたというのに……!!
「……いや、そりゃそうなるだろ。お前に憑いてた『
「ふふ……世界を救った勇者は、やっぱり排斥される運命なんだね……あはは……」
(も、燃え尽きている……あの日見た以来の絶望ぶりだ……!)
事こうなっては、笑うしかなかった。
さしもの禍福も毒舌を控え、そっとしておくレベルで、空笑いを浮かべるばかりの婪佳久。
――よって、せめてもの小遣い稼ぎとして。
彼女は、新東京高専の復興作業にアサインされる憂き目にあった――。
―――
――
―
「にしても。せめて肉体労働がよかったなぁ……」
そこでの役割は、一般の工事業者にはできない呪術的価値のある物品の仕分け。なんでも、『
そもそも、首都ですらなくなった東京の新高専に重要資料なんぞ元からなかったし、あったとしても他の高専にもスペアはある。取り返しはついた。
とはいえ、まだ使えるものは使うだけ。
原型のあるモノは整頓して残し、使えないモノは秘匿化でシュレッダーにかけるのだ。
「山奥ってなると蒸し暑いし……サボってんのに休んでる気がしないんですけど」
……かくして目の前には、仕分け作業の山。
……そして、その中に紛れ込む、卒アルの束。
死んだ目で迷いなく、婪佳久はサボリを決意。
ペラペラと、歴史の一片を流し見していく。
「すご。60年代熱いな。生徒20人もいる……言ってて悲しくなってくるな」
とにかく、どれも薄いアルバムだった。
そりゃそうだろう。生徒の数がまず少ない。
各々任務で、みんなが集まる事なんて稀だろう。
運動会とかの行事ないし。
「これなんか見開き1ページだけって。もう写真集ですらないじゃん……五条先生の代も負けず劣らずの薄さしてるし。二人だけだとそうもなるか……わ、家入さん可愛い」
などと、現実逃避に耽っていたところに。
「あれっ皆んな留守!? 五条先生とか挨拶したかったんだけど、いない?」
予想外の、来客が来ていた事に気づく。
ごりっごりのオートバイが止められ、
降りていたのは、ピンク髪の細マッチョ。
彼は、たしか特級術師の。
釘崎先生の同期とかいう、
「……ああ、はい。留守です」
「そっかぁ……って、卒アル見てんの!? 俺らの代あったり?」
「ありますよ〜。えっと、これ」
虎杖悠仁が、その図体に反してひょこっと隣に座り、読者に加わってくる。
……実のところ、もっと奥に行けば、パラソル構えてグラサンかけてメガホン片手の釘崎野薔薇・現場監督殿とお目見えできるのだが。
そこは、呼びに行く手間めんどいし、サボったのがバレたくないしで、黙秘した――しかし、
「うわ伏黒さん細っ、こんなモヤシだったんだ……って、写真多くないですか?」
「あー、五条先生がめっちゃ撮ってくれてたらしいよ。何かとカメラ片手に」
「ああ、だから最近から分厚めになってたのか……って野球!? なにこのチョンマゲゴリラ。こんな行事あったんすか、ズルい!」
「いやぁ五条先生、それ四年周期でやりたがるのよね」
「甲子園なのにオリンピックなんスね……」
色彩豊富なページの数々。
フレンドリーな青年のノリも相まって、ついつい少女の声は弾む。
こことは別の高専で展開された、少女の知らない物語。
彼らが主人公となった日々の風景は、活き活きとそこにあってーー。
「うわっ。なんで五条先生スカート履いてんの。きもっ……なんか後半からパンプアップしてません?」
「おっ、それはね! ……そういや、なんでなんだろ?」
「おー、なんかみんな『イッ』ってしてる。なにこれ。あと……オッパッピー?」
「あー、それは、その。当時のノリと言いますか……」
「わー、パンダさんでっかい……って、なんすかこれ。釘崎先生ぶん回されてるんですけど」
「え、何その修行!? あーフィジカル鍛えてた時期か。俺そのころ死んでたからなぁ」
「へぇ〜……はい???」
「あっ、これこれ。あったわ! 京都校交流戦の後、みんなでピクニックいったやつ!」
「……こうして並んでるの見ると、高専の制服って見栄えめっちゃ地味ですよね」
「いや個性! 俺らの個性が見えない!? カスタムで差がついてるでしょ!」
「お~、こっちじゃ卓球大会やってる……で、誰なんですか。このチョンマゲさん」
「よりにもよってそこに目がついちゃうかぁ……」
「だって、個性的なんですもん〜」
そうして、すごろくみたく、視点が留まったり進んだりの反復は。
……例外なく、その人にも、順番が来た。
「このゴーグルの人、どなたなんですか? 生徒でも先生でもないのに映ってますけど」
「……、そうだな……呪術師の先輩だよ。今でもね」
「……ふぅん」
こういう、カッチリした大人も、ここにいたんだな。
というのは、ずいぶん意外に感じられる。
白スーツとはいえ、ヤのつく人ではないだろうし。
たぶん、五条先生をウザがってただろうなぁ。なんて風にも思った。
……そんな時間は、携帯のアラームが終わりを告げる。
「あ。やべ、もう飛行機の時間近いわ。これお土産なんだけど、皆に渡しといてくれる?」
「あ、はい。……え、これ。ハニワ?」
「そんなもん。どっかの部族の遺跡の発掘品!」
「どっかて……」
しれっと、仕分け作業すべき物品の山に、追加される謎の彫り物。
それに気を取られる間に、「ほっはっほいよっと」と軽々彼はバイクに跨って、エンジンを起こしていた。
「あ、そうだった。……遅れちゃってごめん。でも、無事そうでよかったよ」
「あ~……、お構いなく。なんとかしてくれる人いますから」
「そっか。そうだね。……じゃっ、またな!」
そして、あれよあれよという間に。
静かに早く、その背中は遠ざかっていく――。
んで、わずかに遅く、
「あ! あれっ!? 虎杖いたんじゃなかったの!?」
「えっ、今帰りましたよ」
「マジかよ。あいつ、へんなとこドライなんだから……」
現場監督がお出まししていた。
彼が居たのは、時間にして十分弱。
パラソルの下でヌクヌクしていたら、そりゃあ取り逃すだろう。
ていうか、なんでいたのが分かったんだ?
「あぁこれ、お土産ですって。なんとかって部族の」
「……この、ビジュアルだけなら特級呪物の代物が? やっぱセンスないわね、アイツ」
ですよねぇ、と空笑いを返す。
仕方ない。本当は2017年も読みたかったけど、監督者が戻った以上は作業再開だ。
そう、あたかもさっきまで作業していた風に、手を動かそうとして、
「よぉ。順調か?」
「禍福――っ!?!!!」
「ぐぉあッ!?」
秒で演技は崩壊。
真白の短髪は元気よく黒制服へと突撃。
任務を『最速』で終わらせ、帰還した少年の懐に、少女は飛び込んだ。
というか、共倒れしていた。
「ふっへ、えへへ」
「この、石頭……ぜってえ四級じゃねぇ、だろ。ガクリ」
そして。その瞬間を、待っていましたとばかりに、釘崎先生はシャッターで切り取るのだった……。
五条先生の代の卒アル写真は本来めちゃくちゃありました(劇場版特典参照)
ただ、戦後の教科書ばりに黒く塗りつぶされまくった結果、
九割九部のページが消えています。
あと多分、虎杖が帰国したというニュースをさも当然と受け取り、
東堂と脹相は画面外で「や」「うっわ」してると思われます。