【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
最初の任務説明は裏設定です。読み飛ばしていただいても構いません。
【あらすじ】
五条悟暗殺を謀った少年、安曇野禍福は、
その場で五条悟に呪術高専一年として任命され、
同じく高専一年の少女と、曰くつきの廃工場に出向いていた。
「今回の任務地は、こちらの廃工場。東京外での二級案件、探索任務になります」
以下は――伊地知による任務の説明である。
「先月、ここで過去に事故があった疑惑が、決算報告書の不正調査に伴って表面化しました――縦割りの激しかった職員らの監督不行により、工場見学の列からはぐれた児童が自動のプレス機に巻き込まれ、死亡したとの事です」
この廃工場に、いかにして呪いが宿ったかの経緯。そして、
「ご遺族の追求の結果、この事件は半年前、SNSで話題に。裁判も行われましたが、示談が成立――それ以降、ここでの行方不明者が頻発しています」
その被害と。脅威度の共有。
「あくまで目的は内部探索と、生存者の確認・回収です。対処できない場合は引き返してください――では。お気をつけて」
かくして、帳は降ろされ。
彼らの任務は、開始された。
―
――
―――
――いや。なんで、俺が?
こんな学ラン着せられて。そのくせ仕事?
何故こんな気味の悪い工場を、2月手前の寒い夜に、懐中電灯片手に歩かされているんだ??
「お兄さん目のクマすごいね〜。術式なに?」
「教えん」
「ちょっとメガネかけてみない?」
「断る。馴れ合う気はない」
そして。そもそも、なんなんだよコイツは。
さっきからウザ絡みばかりしてきて。
コミニュケーション方法も五条悟仕込みか?
「む、せっかくクラスメイトになったのに……」
「五条悟が勝手に言っただけだろう。俺は承知していない」
「まぁ、それはそう」
……もういい。どうにでもなればいい。
あれは脅迫だ。さながら恐怖政治だった。
どうせ今後、消耗品として使い潰される運命なのだろう。
流石は五条悟、組織浄化を謳っておきながら総監部を粛清しただけはある――、
「あ、気をつけて――右からくるよ」
「――!」
脊髄反射。迸った蹴りが穿つ一撃。
下級呪霊だ、すぐに祓えた。が、
――気づけなかった。
隠れるのが得意な呪霊……いや違う。
この空間が特殊なのだ。まるで呪力の認識が定まらない。結界、もしくは領域か?
「お前。何でわかった」
「やだよ、教えない」
コイツ……減らず口だけは一丁前らしい。
こう、他人と関わると欠点ばかりが目につくから、フリーの術師をやってきたのだが。
もはや、背に腹は変えられまい。
「……悪かった、謝る。話してくれ」
―――
――
―
「体質だね。わたし、呪力に乗った負の感情、何となく感じるの」
「ちなみに術式は『受愚載転』……漂ってる『非術師の呪力』を吸収する。オンオフはできないクセに、自分の呪力にできるかは、わたし次第の欠陥品」
「このせいで体に呪いが勝手に溜まって、そのうち死ぬんだってさ」
……納得はした。
コイツに信用なんてないが、コイツの呪力量。
高専で会った、誰よりも大きい。
「
「特級術師。収入も特級だったらいいのにね」
「そうか……日本に五人しかいない特級術師が、まさかこれとは」
「これとはなんだよ、失礼しちゃうな」
ぼんやり浮かんだ少女の笑顔は白々しい。
色素が抜け落ちた容貌の通り、白々しいが――。
負の呪力に乗った感情を読み取るとは。
すなわち呪いの意図が分かるという事だ。
――探索任務が振られるだけはある。
「じゃあ、ここはなんなのか分かるか」
「呪霊の腹の中、工場全部がそう。そいつの気配がデカすぎて小さい呪霊はわかりにくい。ハズレの順路に行ったら喰われる。後退しても同じだよ」
指定する順序を取らせる。儀式的な呪術らしい。
となれば、生存者回収の目的だったが――、
「正解のルートはどうなる」
「わかんない。プレッシャーしか感じれないからね〜」
――退路は断たれた。もう討伐するしかない。
「なんで、今まで黙っていた」
「え、……や。違うよ、今知ったの。入る前にわかればよかったけど、現場で直に感じないと無理で」
……今のは、俺のが意地悪だった。
コイツは進んで食われる性格ではあるまい。
その余裕面の下が拝めただけ、よしとしよう。
「……なら、仕方ないな。行ってみよう」
「――っ、お〜!」
―――
――
―
「ゴールここだねぇ。やっぱ、プレス機か〜」
電気が通ってないのに駆動している……。
そして。ここを中心にそこら中、人だったものの断片が散乱していた。
「気持ち悪っ。完全に呪物化してんじゃん」
「これに向かわせるのが目的なんだろうな。引っ張られる感じがする。一般人には抵抗できないだろう」
……これにかつて、巻き込まれた子供が。
きっと、皆んな同様の目にあったのだろう。
ここまでの道中。
ついに生存者は誰一人いなかった。
「さっさと壊そーよ、その五条先生にブッ刺したやつでさ」
「……まったく、解せないな」
というのに、コイツといると気が抜ける。
実際、この一突きでおしまいだが。
「お前みたいな能天気が、なんで呪術師なんてやってんだ」
そう、手に取った『天逆鉾』を、プレスに突き刺し――、
「――――!!!!」
「な――!?」
返答を聞くより先に、呪霊って叫びが大声で反響した。
咄嗟に逆鉾を手放し、両耳を塞ぐ。そして想定外にも、
「え――わっ!」
婪佳久と、天逆鉾は、星空へと投げ出されていた。
突然天井が消えて、どぷん、と次には戻る。
まるで、工場が生き物として咳をしたような。
――理解した。ここは呪霊の体内。
――対処しきれないと判断されたものは、体外に吐き出される!
「……そうかい。甘く見られたもんだ」
――場の空気が変わる。
目の前のプレス機は姿を変えた。
工場全体からごっそりと、呪力が抜け落ちて一点収束。
像を結び――現れた本体。
甲高く金属を軋ませツイストされ、爆笑を奏でる人形の呪霊に。
「後悔させてやるよ」
加速最大。
安曇野禍福ただ一人が、立ち向かう。