【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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ネタ回です。オリキャラはでません。
宿儺の強さ以外、一切気を遣っていません。ご容赦ください。



余談(単話の番外編など)
虎杖悠仁が生還した五条先生から『世界を断つ解』を教わる話


 

 2018年、12月24日――。

 五条悟は、完全体宿儺に勝利した。

 

 最後の『宿儺の指』は、バッチリ五条悟によって高専保管庫の最奥に封印され、

 伏黒恵も、なんだかんだで引き出された。

 

 

 

 2018年より端を発する一生徒の物語を、

 空気読まずに本気を出した教師が解決する、

 という、なんともご都合的な超展開。

 さながらそれは、うまく行った場合の渋谷事変。

 

 こうも完璧に丸く収まってしまったのだから、応援席のギャラリーは総スカン一色であった。

 

 

 

「楽に宿儺殺せた、のはいいんだが。……よかったのかな、こんなんで」

 

 

 

 という、ポロっと出た真希さんの発言は、その場の総意だったに違いない。

 

 

 

 挙げ句の果てには……『五条先生どのツラして帰ってきたんですか回』が歌姫命名の元で開催されるわ、伏黒の前で釘崎が「おっぱっぴー!」したわ、

 

 

 

 もうとにかく、緊張感に欠けるレベルではない笑い話で、すべてが終わったという始末。

 

 ……だったので、

 

 

 

「さて、虎杖悠仁くん、久々のGTGが宿題を言い渡します――配信動画の僕がぶった斬られてるとこ無限リピして、『世界を断つ解』覚えてねっ!」

 

 

 

 ……アレ? 先生、もしかして根に持ってる?

 

 と、呪術高専三年・17歳となった虎杖悠仁は、密かに思わずにはいられなかった。

 

 

 

――

―――

 

 

 

「いや、ごめんて先生。2.5条先生とかネタ擦ってたのは流石に甘え過ぎてたよ、反省します! 反省しました‼︎」

 

「あー、そこはいいよ。実際、僕としちゃあ有り得ない節穴だったし……大人とて間違いをする生き物なのですよ、ハハっ」

 

 

 

 あっ。本当にコレ落ち込んでんな。

 と、目隠し白髪男の裏側を、ピンク髪ヤンキー風少年は察する。

 

 まぁ、そこはそのうち菓子折りを持ってお詫びを入れよう。じいちゃんの墓参り土産で喜久福あげよう。

 

 と……内心でこき下ろしながら詫びつつも、

 

 

 

 その実、虎杖悠仁は乗り気であった。

 

 

 

「えっと、宿題だったよね、喜んでお受けしますとも、先生っ! 制限時間とかあったりすんの?」

 

「特にないよ〜。覚えるまでは監禁だけどね。それこそ『世界を断つ』レベルじゃなきゃブッ壊せない結界を用意するから」

 

「えっ、じゃーメシとかどうすんの!?」

 

「大丈夫、結界内には建物丸々収まってるからね。衣食住完備、個室寝床付きよ。すごくない?」

 

「……壊しちゃっていいのかな、そんなの。――まいっか。いけるいける! チョチョイと覚えて、ソッコー帰還してやっし!」

 

 

 

 誰であろうとバッチこい!

 とばかりに、有り余る元気に従って、軽やかに体はウォーミングアップ。

 

 さっきまで窮屈そうに椅子と机の間に挟まっていたとは思えぬ挙動、その若さに教壇の先生(怪しい目隠し男)は微笑む。

 

 

 

 そう――宿儺は消えたけど、停滞する暇なんてない。

 これからも日本は外国相手に逆境が待っている。

 

 

 

 否。そんな理由なんてなくても、

 虎杖悠仁個人にとっての理由がある。

 

 

 

「うんうん、その意気や良し。やれるの前提とは勝気じゃん。どしたの、なんかいい事あった?」

 

「んー? 別に。久々に先生に担当してもらえたの嬉しいし。それに、証明したいんだよ――俺の、天才性をね!!」

 

 

 

 そう。なにせ俺は――!

 

 

 

「あっ、そっかあ! 日下部さんに『お前の才能は宿儺のせい』って言われたの根に持ってんのか、そうかなるほ、ど……プククッ」

 

 

 

 ――。うん。

 ますますやる気になってきた。

 

 この先生が痛い目に遭ってるシーンを無限に見ても、たぶん今なら心が痛まない。

 

 

 

「ちょっ、笑うな――!! マジで、今に見てろよ先生っ。ほら結界張って、はよっ!!」

 

「はいはい。んじゃ、いってらっしゃーい」

 

 

 

 てなわけで。虎杖悠仁は、自信満々に監禁生活へと突入したー――。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 んで。虎杖悠仁は、「うーむ…」と難しげな顔をして、腕を組み、画面を見続けていた。

 

 

 

「よっ悠仁、進捗どうですか~?」

 

「あ、先生、お久! わっかんね! けど、なんかわかった気はしてきた!」

 

「ああうん、了解。その調子で頑張ってもろうて……」

 

 

 

 24時間、見せられ続ける世界斬。

 24時間、繰り返される、アッパレワスレン。

 

 よって、その言葉は必然であった。

 

 

 

「ねぇ先生、アレやってよ」

 

「アレって?」

 

「"初めての自爆で――ごっは!?」

 

 

 

 その日、様子を見に来た五条悟は、

 無言で虎杖をぶん殴って、そのまま退室した。

 流石に、気にしていたらしい。――とはいえ。

 

 

 

「いっで、確かにこれ、吐きそ……もうちょっと、オマエの力を認めるって文脈で喰らいたかったな」

 

 

 

 虎杖悠仁は既に、『蒼』の誘引を伴う拳を耐えるレベルであった。

 なんなら、この二年で赤血操術のマニュアル技はマスターしている。

 ただ、御廚子だけはからっきし、レベル0なのである。

 

 ――五条悟が単独で両面宿儺を倒したことで、虎杖は両面宿儺戦に参加していない。戦闘中に『黒閃』による潜在能力解放で御廚子を引き出した、という経験が無いのだ。

 

 なので、虎杖は。

 

 

 

「――『黒閃』!!!」

 

 

 

 最も、自身のレベルアップを加速させうる現象を、

 五条悟のマジパンチを受け、研ぎ澄まされた神経で発生させた。

 

 結界の内殻への呪力パンチ連発で、クリティカルを叩きだし――自身の、潜在能力解放に至る。

 

 

 

「よし。敵なしでやれたのは初だけど、この上でなら――!」

 

 

 

 よって、レベルは1になり、切り取り線付きの『解』がここに成立。

 あとは、ひたすら御廚子を極めれば――!

 

 

 

 

 

 ――そう。できると。

 

 

 

 

 

 そんな風に思っていた時期が、

 

 私にもありました。

 

 

 

「……タイムアーップ!! ちょっ、悠仁どしたの、このままじゃ卒業が先になっちゃうよ!?」

 

 

 

 かくして。少年の全能感は、

 またも無惨な形で破られた。

 

 

 

 結界内の非常食も枯渇してきた時期を見計らい、五条悟によって解放されたのだ。

 

 もちろん、『世界を断つ解』は、いっぺんも再現できなかった。

 

 

 

「――いや、惜しかったんだよマジで。切り取り線なくても『解』できるようになったし! 掌印だけで斬撃飛ばせるようにはなってたし!」

 

「あー、うん。これは僕の見込みが悪かったわ。まずは宿儺の経験量に追いつくとこから必要だったよね、メンゴ!」

 

「そーだよ、てか五条先生、最近生徒への期待デカすぎんだよ。ゴールが過程を飛ばしすぎてんだって! 友情・努力・勝利の努力どこよ!?」

 

「生徒が先生に正論パンチしないでくれるカナ!?」

 

 

 

 実際、死滅回游の頃は武器に呪力込める基礎技術さえ教われてなかったし!

 

 結界術やら何やらは日下部さんから教わったし!

 そこは五条先生から教わりたかったんですけど!!

 

 と。無謀な宿題への猛抗議に、

 

 

 

 ――五条先生は、方針転換を余儀なくされた。

 

 

 

(……しっかし。どうするかな。僕は生で見たとはいえ、言葉で伝えられるもんでもないしなぁ)

 

 

 

 そう。五条悟は、

 任務の数々をちょちょいと片付ける傍ら、

 

 新たなる授業内容を考えに考え抜いた。

 

 

 

 今となっては、睡眠も食事も極論必要ない。

 以前までの、三時間睡眠からの四時五時で授業準備にあたる、なんでデスマーチとはワケが違う。

 

 まかりまちがっても、睡眠不足のせいで致命的な斬撃を見落とすなんてヘマはしない。

 

 

 

 グレートティーチャーからゴットティーチャーへと至った。その明晰な頭脳が弾き出した答え。

 

 それは――――!

 

 

 

「恵〜。いつものアレやってよ。フルフルユラユラ。こないだ調伏したでしょ?」

 

「……ええ。本当に、つい先日。いまだに節々痛いし、二度とツラ見たくないんですけど」

 

「そんなぁ、仮にもブリーダーなのに冷た過ぎでしょ。……あのツラ見たくないのは同意だけど」

 

 

 

 伏黒恵。彼もまた、五条悟の教え子。

 虎杖より一足先に、特級術師の認定を得た、少年の同期である。

 

 

 

 ――彼には、受肉した宿儺の経験が肉体に刻まれている。

 御廚子こそ付与されなかったが、宿儺による『十種影法術』の使用経験。ひいては、摩虚羅の行使経験がある。

 

 

 

 途中式も含めた答案を全部見せるなんて、正直言って教師失格の手段。だがそれでも!

 

 彼の摩虚羅なら、虎杖悠仁に手本を示すことができ――!

 

 

 

「いや、無理です」

 

「……えっ、マジ?」

 

「マジ」

 

 

 

 ――――は?

 なんで? なんで? なんで?

 

 

 

「だって、俺の『十種影法術』は宿儺の持ってたのとは別物ですよ。あの時の学習記録は残ってません」

 

 

 

 ――オイイイイイ!

 ふーざーけーるーなぁ――――!!!

 

 

 

 ――いや、まぁ。

 そういや、そーなるよなぁ!

 

 摩虚羅が破壊されたとき、『俺の十種影法術が消えた』って認識してたもんなぁ、宿儺!!

 

 そりゃ、恵とは別物の術式だよなぁ!!

 

 

 

「――――ええいっ、ままよ! 恵。とにかくマコちゃん呼んでくれ。こうなりゃ先に摩虚羅を僕が教育してやる。悠仁よか覚えがいいはずだしね!」

 

「えぇ、いいんですか。教育方針的に……」

 

「いやぁ許されるでしょ。ていうか、僕も負けてられないからね――日下部さんとの入れ替え修行後、アホほど皆レベルアップしてたんだよ!? 超嬉しかったけどフクザツというか! じゃあなんすか。僕のティーチングが日下部以下みたいじゃないですか!!」

 

「……、分かりました。あと。俺はズルした組じゃないです。一緒にしないでください」

 

 

 

 かくして。虎杖悠仁の成長RTAにテコ入れ、もといオリチャーが加わった。

 

 摩虚羅に『世界を断つ解』を覚えさせ、その上で虎杖に見せて覚えさせる!

 

 伏黒恵と五条悟という観測者がいる以上、発動条件のティーチングもより捗るだろう。

 

 これならば、少々の手間はかかっても育成は可能となる!

 

 

 

 ……などという、小手先は。

 

 そんなふうに、思っていたオマエらはお笑いだったぜ。

 という、お決まりのオチに帰結した。

 

 

 

「……できたには、できた。けど、これ……っ」

 

 

 

 伏黒は、肩で息をする。体力の消耗が激しく、それ以上に、心の摩耗は極まっていた。

 

 そう。なんとか、できた。

 摩虚羅は『世界を断つ解』を会得した。

 

 ただし――膨大な試行回数が必要だった。

 御廚子の前知識が、ゼロだったから。

 

 

 

「……じゃあ、悠仁よんでくるわ」

 

「あの。休みください。三日ほど、有給で」

 

「終わらせてから休もうよ。持ち越すの嫌でしょ、この作業」

 

「それは、……まぁ、はい」

 

 

 

 なんにでも『適応』する式神は、『五条悟への攻撃』を命令され、『無下限』のバリア突破をしようとしていたが。

 

 領域展延だのなんだの、別に斬撃以外でも手段はとれる。

 

 そこで、わざわざ『方法を斬撃に限定』するよう命令を変更したのだが、

 

 

 

『あっ斬撃だと弾かれるマコな。じゃ別手段に移るマコ。中和こそ最適解マコ』

 

 

 

 と、最適化の名の下、すぐに斬撃を放棄したのだ。

 その度に『あっまたマコちゃん脇道逸れおった! 恵いったん引っ込めて。リセットだリセット!』と消しては召喚しての工程が挟まり、

 

 サンドバック役に徹する五条悟は、必死に世界斬に至るよう誘導をした。

 

 

 

 そんな、AIが神技再現に辿り着くまでのスクリプト変更・状況整備という共同体制での試行錯誤を経て。

 

 彼らは、『世界を断つ解』に辿り着いたのだ。

 

 

 

 だが――これは、あくまでも教育素材。

 これを虎杖悠仁が会得する、それこそがゴール。

 

 

 

 よって。虎杖悠仁を、死んだ目の伏黒恵と五条悟は呼び出し、

 

 摩虚羅の手本をもとに、虎杖悠仁は五条悟へと『解』を飛ばし出した。

 

 

 

 そう。これさえ終われば。

 

 

 

 これさえ、

 

 終われ――ば――――。

 

 

 

「ごめん。もっかい! もっかいでいける気すんのよ、マジで!」

 

「……それ、何回も聞いたぞ」

 

「うん。かれこれもう、13日は聞いたかな」

 

「いや、もうアレ。掴める、掴んだ! 呪力の確信! 今ならいけっから、本当!」

 

 

 

 なにこれ。獄門疆?

 

 いや本当。次があったら時間の流れを歪める『無下限呪術』の拡張を、真剣に視野に入れるべきかもしれない。今だけは、あの空間が欲しい。

 

 そう思う程度に……期間を要した。

 

 

 

 そもそも、特級術師2名が一カ所に揃う日程自体が限られるのだ。

 

 一時間でダメだったら三日後のもう一時間。

 一日でダメだったら一週間後のもう一日。

 一週間でダメなら一ヶ月後。

 

 と、ズルズル期間は間延びを重ねて、

 貴重な彼らのプライベートが、互いを削がれていく……。

 

 

 

「……てか、悠仁センスなくない? 宿儺なんて見て一発でやってみせたんだよ??」

 

「ちょっ。いくらなんでも教師の発言じゃないでしょ、それ!?」

 

「なんでもいい。早くしろ」

 

「伏黒まで、その態度っ!?」

 

 

 

 残念でもないし当然。

 決してセンス皆無というわけではない。

 むしろ成長スピードは、東堂と出会った頃ばりに異様な急ピッチだ。

 

 

 

 だが、所詮は一般人あがり。数年そこらの経験で、『呪いの王』が摩虚羅に頼ってやっと辿り着けた地点に追い着くのは、それだけ途方に暮れるもので……。

 

 

 

 ――――虎杖悠仁、『世界を断つ解』会得。

 

 それ以後、卒業シーズン手前の一週間、

 伏黒恵は口を訊いてくれなくなった。

 

 

 

「って事あったんだけど、ひどくない!? ねぇ釘崎!」

 

「あ〜、それはアンタが悪いわ」

 

「……」

 

 

 

 かくして虎杖悠仁は、過去一番に居心地が悪い一時(いっとき)を過ごしたそうな。

 

 

 

 ……この技が、2025年に再発生した『真人』に使用されたのは、また別の話である。

 





こちらが、その真人VS虎杖回です。いちおう貼っておきます。
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