【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
対面した呪霊。
ツイストした二つの金属が合体した人形。
その悪業は――許される間もなく。
距離が消え、拳は届いた。
「正直、こういうのは性に合わん」
挙動を絶たれ。
そのまま、奪われた先手が重ねられていく。
「遊びで思いついたモンならフェアにすべきだ――さしあたり、開示するが」
「この術式は『
「……!」
「見えるようになったろ、呪霊――白線から落ちたら自爆、乗ってるうちは加速と威力上昇が起こる」
少年、
その術式効果は――『疑似加速』である。
彼の足元、半径10メートル内には、
二種類の『判定』がランダムで配置される。
太さ30センチの線と、それ以外。
線に足が乗ると『疑似加速』が発生。
また身体感覚の先鋭化により、
結果的に呪力出力の上限は解放されていく。
「落ちたらマグマ。加算された速度がゼロになり、ブッ潰れて死ぬ――初めてだろう、呪霊」
「これは、『命を賭ける縛り』の開示だ」
ギュン、とより加速が増す。呪力が膨れる。
その全てに、ストレートに意志が通い――迸り。
「――という事で。正々堂々、
滂沱の如く、閃いた。
言ったからには卑怯にはあたらない、とばかりにお構いなしな打撃の雨。
疑似加速に、Gなど伴わない。
その加速に、上限はない。
何を隠そう安曇野禍福は。
――2025年(五条悟を除く)最速の呪術師である。
「文句ないだろ。俺はこれを貫く。お前は、一歩でも俺を退かせればいいんだ」
呪霊は驚愕しただろう。
なにせ、この術式には根本的な欠陥がある。
――彼の状態は、新幹線の中で走っている人間のようなモノだ。
外から見れば新幹線以上の速度が乗っている。
だが、本人の感覚としては、ただ走っているだけ――彼には、
そんな状態で加速しながら、ランダム発生する『線』を踏み外すな?
それも、失敗すれば『命を賭ける縛り』で――!?
否。禍福は、天性の
一度のミスも許されないから、死ぬ気で訓練してきたから。今も一度として足元を見ずに加速し続けている!
リスクはバネ。才能と覚悟によって、
安曇野禍福はこの無茶を可能としている――!
「……!」
「させるか」
なにかしらの掌印。だが組まれる前に崩す。
この術式を使うときは、呪力出力の上限解放に伴って呪力消費も速まる、必然的に短期決戦。
だが問題ない――自身の最大値を引き出しても無理なら、それまでの事――!
「……、な」
――条件反射で体は動いていた。
後になって、置き去られた心は理解を得る。
自分は加速の中断を決意し。
瞬時に構えていたのだ――シン・影流『簡易領域』を。
「――ギャッ、ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ――!!」
――――領域を、展開された。
金属の身をよじって軋ませ、嗤う呪霊。
その体には、呪印が浮かんでいた。
掌印なしでの術の行使。それだけでなく、
「……領域。かなり狭い。それも、必中必殺か!」
工場がうねり、球場に引き歪んだ空間内。
飛び退いた、つい先程までいた場所。
その足元の地面から――打ち上がったプレス機が、領域の天井にまでブチ当たっていた。
かろうじて、回避できたが。
「コイツも、特級かよ!」
即座。禍福は両靴のスイッチを押した。
靴裏からローラーを解放。
両足をつく縛りで展開した簡易領域を維持しつつ。
――眼前、迫る本体の突撃から飛び退いた。
なんてことだ。本体の両腕もプレス機なのだ。
領域による足元からの一発と、両腕とでの攻撃の合わせ技。食らえば必敗――!
「――ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃッ!」
否。そんな手間をかけずとも。
次の瞬間――領域内の地面全体が打ち上がった。
「必中を中和されて、これか……クソっ!」
わかってる――誘い込まれている。
このまま黙って天井に潰されるか、
唯一、上がらなかった足場――ヤツ本体が待ち受ける穴へ落下するか。
どちみちクソったれな二者択一。
(いつだって、そうだ。心を置き去りに体は動く)
――選ぶまでもなかった。
体は、吸い込まれるように。
速度の活かせない閉所、穴の中へ。
無駄と知りながらも、悪路をくだる。
刻一刻と簡易領域は剥がされている。
とれる手段はシン影流によるオートカウンターの一発限り。
術式の焼き切れた今ならば痛打は確実。
分かり切ってる。
決めさせてくれるわけがない。
(やっぱりだ。自分を見放して生きた日から――最後は、理想通りじゃなくなった)
後悔のない死が、望める身分ではない。
そう、わかっていても。
彼は、ひとつだけの道に沿って動いた。
そうする他にないと――これまでのように。
ただ、義務のように。
いや負けるんかーい!
ってのはさておいて。
ここ数話、オリキャラ廻戦ばっかで申し訳ございません。
もうすぐオリキャラ二名のみの話は終わります。
もう少々、お付き合いくださいませ。
【オマケ・『擬似加速』について、補足】
――『擬似加速』ってなにが『擬似』やねん。
――『Gが起こらない』って、何やねん。
お答えしましょう。理由はズバリ。
「これ全部『仮想の速度』だから」――以上です。
九十九由基のブラックホール、まさに少年漫画的な表現だったじゃないですか。本来、本物のブラックホールは生じた時点で太陽系終わりますからね。
そういう意味での『なんちゃって』な加速なのです。
仮想の質量ならぬ『仮想の速度の付与』。
フィクションの加速を現実にもってくるのです。
要するに……空想科学読本的なツッコミは聞きませんので、悪しからず!
(実際『現象を起こす術式効果』って点では『星の怒り』と似ている……のかも?)
――以上、親友立案の能力設定解説でした。