【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
2025年、復活した
絶体絶命の実力差。新東京高専2年一同の運命やいかに。
街を覆っていた帳は、一発で砕かれた。
街の盟主は、その一撃でもって殺された。
――『真球』。不自然なほどに丸く整った、圧力の権化。
圧壊した戦車の式神からは、廃油と、波のように赤い液の波が漏れ出ていた。
そう。その女は。
完膚なきまでに、争うまでもなく、勝ち残っていた。
「だぁーっまたスカじゃない! ここ半月でいっちばん手応えあったのにっ!」
さっきまで、自分たちが必死に戦っていた相手さえ目に入っていない。
何やら見当を外したらしく、ソレは伸び呆けた黒髪を掻きあげ、妄言を垂れながす。
「だいたい宿儺ったら、本名で参加してんだから向こうから探してくれても――いえ、そこは! 自分で見出してこその『愛』よねっ! 大丈夫よ私、今日はダメでも日進月歩。最後に必ず愛は勝つッ!!」
騒がしいことだ。今度は勝手に気を持ち直す。
つり上がっていた女のまろ眉は逆転。
頬は火が付いたように赤く、瞳は高揚に染まっていた。
そのくせ――盲目でないと言うのだから、厄介極まる。
「その時のためにも――多少の蓄えはなくっちゃね」
――
今回においては――平安を生きた、正真正銘の本人。
そう――その場にいた全員。新東京高専の三名が、己に向けられる加虐心を受け取っていた。だからこそ、結論は明白だった。
挑まなければ、殺される!!
「――ぅ、おおおお!!」
最初に動いたのは、禍福であった。
短剣を手に飛び出し、加速して迂回、彼女を横切る。
だが、切りかかるでもなく後ろへと走り抜けて通過し。
――加速を乗せ、投擲を飛ばした。
(頼むッ、頼むから。こいつでやられてくれ――!)
――三級呪具『
彼が飛ばしたのは、授業の一環で自作した呪具。
術式や特異な能力はない、
この道中、一般市民の中には、石を呪力強化して投げる者が多くいた。
実際、有効だ。身も蓋もない話、人は頭に硬くて速いモノをぶつけられるだけで死ぬ。
拳銃を持たない大半の日本人にとって、呪術やら術式やら使い慣れないモノで襲うより、よっぽどやりやすい獲物だろう。
――安曇野禍福が振るう『
常に30本、高専制服に忍ばせたうち都合8本を握る。
持ち出し、抜刀、投擲。何度と訓練した三手順を、体は最短で実行していた。
最短かつ最速。音速突破の爆音で唸る撃鉄。
矢のように先端に重心の傾いた細長い牙は、1秒の間もなく女を串刺しにして――。
全て、命中。胸を、足首を。手は指を落とし、脳天にも風穴が空いていた!
(――当たった!? 有り得るのかそんなこと!)
眼を剥く。安曇野禍福の本領、呪術高専屈指の動体視力が困惑を叫ぶ。
たしかに、女は体制を崩して見えた。
たしかに、女は死角からの必殺に対応できていな――いや、違う。
本能が叫んだ。
あの女は、
「――、ぶね!?」
瞬時に抜いた『竜骨・改』で、轟々と身に打ち付けれる雨霰を叩き落とす。
相手の強さを信じた甲斐があった。でなければ、シン・陰流『簡易領域』による迎撃は叶わなかっただろう。
女は、こちら以上の手数と質をぶつけてきたのだ。
意趣返しとばかりに、彼女に庇われた、彼女の体にまとわりついた呪霊が。
――その口から、ガトリングが如く、
――呪具を吐き出しまくってきたのだ。
(なんとか叩き落とせた、しかし今の――
「ふぅん、いいツラしてるじゃない。――
即座、距離を取る。
一瞬にして数分にさえ思えた一撃離脱。
その成果は、より互いの差を如実にするだけだった。
――絶えずこちらは加速しているというのに、顔立ちの感想を言ってくるとは。
――オマケに、もうすでにさっきの傷が治っているだなんて。
伏黒先輩から話は聞いていた。聞いてはいたけれど――。
「バケモンが……ッ!」
「褒め言葉ありがと♡ ……って、あら?」
次は、
眼前にまで迫った呪力の
彼女の目を引いたのは――呪力が、複数あった点だ。
(出が異様に速い、妙ね。あの
スピードと手数による圧倒。
その一点で、彼女は実力不足に関わらず、優位を獲得してきたのだ。
「ま、そんなんで負ける私じゃないけどね!」
その全てを、液体金属は打ち負かした。
反自律制御によるフルオートカウンター。次々と打ち落とされる呪力光線。
ぶつかりあう波の差は如実。真正面から押し返し――婪佳久本体にまで飛沫が迫る。
悪物質の飛翔、そこから婪佳久は。
加速した禍福によって抱えられ、
「アイツの術式は!」
「構築術式! しかも呪具作り溜めしてる!」
「逃げれるか!?」
「無理! アイツ逃す気皆無っ!」
「だよな――クソったれ。なんつうマッチングしてやがる!」
走りながら、バカデカい声で二人は同じ結論に至る。
今走れているのだって、無理やり止めるまでもないに過ぎない。
禍福はスピードで、婪佳久は悪意で、その実力差を実感し歯噛みしていた。
こんな奴と、逃れようもなく戦う羽目に遭うとは。
そして、こうも思った。
――日下部学長の指示は、正しかったのだと。
「いよいしょぉっ!」
「――、へぇ」
「嘘ォ!?」
刹那、点火する青い炎のリング。
呪力の『渦』が、
その中心へ、『
それを、万能の腕は受け止めていた。
――足元、クレーターが深々と刻まれる大威力を。
――ただし、
「やるじゃない。力量は勘違いじゃなかったのね、あなたは片手間ってわけにはいかないかしら」
「くっ、今のマジ蹴りだったのに――やっぱアンタの『愛』、すごい呪いネっ!」
「――はぁ!? シツレーな純愛ですけど! もうピュアっピュアで、超プラトニックなんですけ、ど!!」
瞬時――呪力の『渦』は、
ならばこちらも、とばかりに『液体金属』の針千本が棘を折る。
だが、同時に
殴りかかる『
――ぶつかりあう。
真正面、一発一発が一級術師でも即死するパンチの応酬。
超威力をぶつけあい、余波だけで地表を砕きあう格闘戦。
鍛え抜かれたフィジカルが奏であう至上の喝采。
まごうことなく、争いは対等に成立していた。
だが、『
「――オラオラオラオラオラァ!」
「こいつ――!?」
僅かな間隙を縫い、黒いラッシュが駆け抜ける。
威力もさることながら、
(私が火傷を!? これだけの熱量になぜ気づけなかったの――そうか、冷たい呪力で
異なる呪力特性が重なると、判別は困難。
厄介だ。今後のどれも、単なる呪力パンチと見做せなくなる!
「なら、これならどう!?」
万が飛ばす、呪力の放射。『
その奥。鎮座した、『真球』を。
呪力をカーブさせ、押して――弾き飛ばす!
捲れ上がる地表、背後より迫る無限の圧力。
これにはさしもの『
「ならこっちも! 喰らえッ、呪力ピンボール返し!」
――否。こちらも呪力で。
――『真球』の軌道を逸らし、ノールックで回避した。
「って、流石に跳ね返せはしないかァ」
「……アンタ、嫌味のつもり? 『残穢』のクセに、私の必殺をいなすなんて」
――眉を寄せ、
こいつ――どうやら呪力量もコントロールも、こちらと大差がないらしい。
――――そして、笑った。
腹立たしくもあるが、やっと――これを使える相手が来た!
「いいわ、喜びなさい現代術師ども、見せてあげる――『構築術式』の、極点を!」
換装は、ものの一瞬だった。
液体金属で覆われた全身に、
数多の生態機能を流用・特化させた――肉の、鎧を。
―
――
―――
――対して。『
「これでどぉだあああ!」
――呪力特性『風』。
幾つもの無人のビルを引っこ抜いた、呪力によるハリケーン。
その巨大質量には大気が、呪力が纏われ、行き届き。
強化したうえで、投げつける。
その即席の武器、『
――投げ飛ばされた『真球』が、飲み込み。
――蟲の鎧は、悠々と
蹴りが、飛ぶ。
「――でぇあっ!」
「ぎぃあああ!?」
スーパーボールの如く飛び跳ね、落下中のビルとビルの間を『
ぐるぐると転がり、盛大に吹っ飛び――窓ガラスを突き破り、中へ。
その余波に耐え切れず、摩天楼はバラバラの瓦礫に変わる!
「今だあっ、喰らえ――呪力流星群ンッ!!」
――否、破壊されることは前提であった!
その残骸すべてが、『
ひとつひとつに籠められる、色とりどりの呪力の数々。
――悉く、知ったことかと。
――液体金属の
「ぎゃぁぁああああッ!!?!?」
「そぅら、どうした! まだまだよねェ!?」
――グサグサグサグサ!
瓦礫諸共に『
その渦中、遠慮抜きに叩き込まれる外骨格の拳。一方的なラッシュの意趣返し!!
「――当ッ! 然だぁあああ!!」
それに、負けじと残穢は肉薄し。
衝突し合う、死に戻ったバケモノ同士の競り合いは。
再び、地上に落下する。
多くの瓦礫と、怒濤の重音を轟かせて。
アスファルトを巻き上げ、天地を鳴らす――もはや、その応酬は災害そのもの。
もはやそこに、『
「――ウソっ、さっきの戦車ジジイにも通じたのに!?」
「残念。その程度の衝撃で、やられる造りじゃないのよ」
婪佳久の射撃は、しかし届かない。
あまりのスピードを前には、多少のホーミングがあろうと、先読み能力があろうと無意味極まる。たとえ当たっても、今のように構造によって衝撃は分散される!
だが――逆に今度は、彼が刺さる。
「あらっ?」
――『
――横から滑り込む、『竜骨・改』が。
確かに、その体制を揺らがせていた。
「――ちょこざいな!」
「後ろ見てる場合かよ、アァ!?」
空振りの間隙に、両の拳を叩き込む『
そのバカにならない威力、真正面に集中しようとした、刹那。
――再び、視界外からの、『竜骨・改』!
「――あ〜もうっ! ウザったいわねぇ!!」
「
撒き散らされる牽制を、ここぞとばかりに婪佳久の『
――紙一重の離脱を果たした禍福は。迂回しながらも加速を続け、次の瞬間を付け狙う。
(――ついてこれるのは、スピードだけだ。決して、俺とヤツは対等じゃない)
圧倒的強者。正面から行けば必敗。
だが、足取りは羽のように軽く。
加速した少年は、『できると思うな』と己に言い聞かせる。
断じて先手を取れているわけではない、誘い込まれて捕まればお終いなのだ。
一瞬一瞬を見極めろ。
超えるべき死線を判別せよ。
その点、心構えは万全だ――安曇野禍福は、誰相手でも一歩間違えれば即死の身分ゆえに。
(間違えるな。常に――最高の、判断を!)
条件が重なる刹那、再び踏み出す。『線』を蹴り、加速を得て、身を捻って――刺突。
(だが浅い。もっとだ、もっと最適に!)
一気に離脱し、迂回し、より加速する。
爆縛呪法の『命を賭ける縛り』によって、己の
――安曇野禍福の実力は、呪具の扱いに
――力の収束、直線的な呪力の運び、穂先にトップスピードをこめる技巧。
(来た――ここだ!)
瞬間の決意を重ねた先、踏み込む。
そこから繰り出される、渾身の一点突破は。
――鎧を、突き破って。
――万の首に、刃を突き通してみせた。
「へぇ、やるじゃない――ただ」
目が合った。深々と、ぶちぬかれた喉笛の笑いが手に伝わる。
目の前には複眼。浮かんだ余裕の色。
――それが次には、自分の吐いた、赤色で染まる。
――安曇野禍福の腹を、ノールックで――鎧の下から抜かれた、万本体の拳が、貫いていた。
「まだ青いわね。反転術式が、使えないなんて」
「……ごふッ、ぁ――、っ!?」
「「――禍福ッ!!!」」
肉を切らせて骨を断つ。反転術式ありきの致命傷の踏み倒しで、彼女は彼の胸を、一撃でぶち抜いていた。
そして、貫通した腕から――噴出する液体金属が、安曇野禍福を押し流し!
そのまま、遠く――逡巡に止まった婪佳久をも巻き込んで、駆け抜ける!
「ぶ、ぁ――がっ、あ!!?」
「へぇ。女の方は使えるの。じゃあ、折角だし――二人まとめて殺してあげる♡」
真っ白い少女を、空洞の空いた少年を塗りつぶす黒塗りの金属。
盛大に笑って、
「ダメ――っ!!!」
「あらま」
――迷わず、『
呪具の数々によって針の
液体金属の爆散に身を焼かれながら。
それでも背後、刻一刻と身を焼かれる婪佳久と禍福に対して、
「ぜぇったい、死なせるもんかぁ――ぁぁあああ痛ッ、てぇええええええ!!?」
「ええっ!? 呪霊のくせに正の呪力――それも、
――焼身自殺。そう、言う他にない蛮行だ。
『
液体金属を中和させ――二人を治癒し、首の皮一枚で助け出し、回復に導いていた!
「す、すごいのねぇ、今どきの呪霊って……」
「……お、ま――なん、で」
――紛れもない自己犠牲だ。現在進行形で、『
あとは消え入るだけの『残穢』が、死を拒んでまでここまで憑いて来た『残穢』が、何故そうまでして――。
「
「「――!!」」
「えっ。あ、あの女がママ!? ってことは、その二人、え……あらっ、あらあらあら!?」
何やら昆虫女が顔を赤らめているが、気にしていられる奴はこの場にいなかった。
虫の息の安曇野禍福は、この状況の打開のため――決意する。
「『
「――えっ、マジですか!!?」
――刹那、黒ずくめの少女を覆う
背中に展開されたのは、文字通り、百色の
制服の背面はぺらりと
それが――特級
「うおぉおおおお! ――命! 燃やすぜえええッ!!」
「へぇ――まだ、これだけの呪力を!」
両翼が広がり、大気を揺らがす。その
――翼の羽ひとつひとつ、299の
――超呪力の
(一体一体に異なる呪力特性を与え、絶命の縛りを強制して最大化させている――それだけじゃない!)
「いっ、くぞおおおお!」
嵐の奥、輝く虹色の翼。
あえて
接敵の間際、
「こいつ――揺蕩とはいえ、呪霊を生み出せるの!? いくらお子さんだからって、こんな厄ネタ動員するとか人材不足すぎない!?」
そう。この翼は『発生器官』!
「文句あるか! ワタシだって、高専術師だぁ――!!」
まさしく、呪術の縮図を背に押し出され――迫る『
万もまた、翼を広げ。両者は平然と空へあがった。
そして中空――再び幕開ける、何度目かも分からない拳の応酬。
極光の
「けどいいの!? あなたの場合、パパとママを庇いながら戦わないとよねぇ!」
――そう、呪具を飛ばすのだ。
必然、流れ弾はこれでもかと、背後の少年少女に向かっていく。
揺蕩は攻撃特化、盾には使えない。
「よくな〜い! 痛ッてえぇぇえええ!?」
必然――どうしても『
なるほど、両者は対等だが。ダメージレースにおいて、万の優位は圧倒的!
「悩む理由? ないね! ――テメェを
――否、問題なし!
――すでに、『
この『揺蕩』たちの特攻によって、『
そう――最高最適の、統合特性が割り出せる!
(――揺蕩たちの呪力特性が、統一された!?)
虹彩が。極光が。一色に転じる。
全ての揺蕩が、その拳に集まる。
――『正の呪力』を帯びた揺蕩で表面を覆い、液体金属を阻害させ!
拳に籠った――この、虫の鎧の分解に特化した呪力のブレンドを!!
「装甲ッ! ご開帳――ッ!!!!」
叩き込まれる、全力が。
その鎧をも、焼き焦がした。
――ただし。
――――一層だけ!
「……、あれま?」
「うん。頑張り賞ってとこね。ただ、まぁ――
そう、多層構造!
虫の鎧は、その程度の状況など想定済!
そして――
右腕のみ、部分換装させた――
禍福を捉えた、時速80キロを越す生物のパンチが!!
「お〜疲れサマでしたァッ!」
「あばーッ!? サヨナラぁ――――!!?」
――軽々、地平線の彼方へと。
遠く遠く、『
「ふぅ……さて。あなた達の番よ。子供があれだけ頑張ったんだから――それ以上に、血を流しなさい」
そして――今度こそ、
安曇野禍福と、婪佳久の眼前に。
―――
――
―
――『
――『
安曇野禍福と婪佳久は。
己の、弱さを噛み締めていた。
(いいなぁ。あんなに、できるんだ。……同じ術式なのに、こんなにも違うんだ)
そう――つい、半年前まで。
婪佳久は、宿った呪胎の『
だがもう、『
――それが問題だった。
術式を剥奪された術師は、呪力操作までガタガタになるという。
『
――婪佳久は、あの日に再誕した。
――呪術師として、ゼロから新たに基盤を作らねばならなかった。
四級程度の呪力しか扱えないのだって、そのためだ。
今の自分では扱えない、自分の
呪力放射が異様に速いのだって、単に踏むべき
腹で呪力を回す事さえ、『螺旋』の呪力特性がなければできない。
身体強化は、やらない以前にできない。
できることを、その場その場で繋ぎ合わせて、拙く抗うように戦う。
それが――今の、四級術師・婪佳久。
(――そっか。わたし、焦ってたんだ)
はじめて、自覚した。
――禍福を守りたくて。
――アイツに、成り代えられたくなくて。
ひたすら、最善を選ぶしかなかった。
ひたすら、己の余分を捨てるしか。
たとえ、アイツに、どう思われようとも――。
(――あいつは。あんなにも本気で、人間になろうとしていたのか)
――安曇野禍福は、『
『じゃあな――次は、呪い以外の何かを見つけろよ』
だから、心の中でずっと思っていた。
アイツは、あれから変われたのだろうか。
(あんなにも、身を切って……あんなに!)
――信じない。あくまでも、呪霊だ。
呪術師としても、婪佳久を守るためにも信じるわけにはいけない。信じられるわけがない。
でも――見せつけられた。
アイツは、本気だったのだ。
((けど――だからこそ!))
「……さて、あなた達の番よ」
――眼前。女は、悠然と佇んでいた。
かつての『
そんな、殺意の具現を前に――想った。
「なぁ、婪佳久……一緒に、ゴールしてくれないか」
「――いいよ。先行ったら、祟ってやる」
――――ここで、今。
――全力を尽くさずに、どうして死ねる!!
「……へぇ、いい顔つきになったじゃない」
双方――並び立ち、構えた。
この平安猛者を、狩る。
今こそ、己の全てを投げ打つ時。
――故に。一か、八か。
「――――領域、展開」
彼らの掌印が、象られた――。
次回は30(土)です。
体力の限界ががが……恐るべし仕事納めの業務量……。
【補足①・三級呪具『香飛』について】
柄のみが実体としてあり、呪力を通す事で刀身が出現する『投げナイフ』。
安曇野禍福が2年生の授業で自作した。
(名前の元は、将棋のコマの飛車・香車)
基本に忠実な造りで、必要最低限のシンプルイズベストな構造。
素材の調達も容易く、死滅回游中でも量産でき、もっぱら使い捨てで使われる。
これを禍福は常に30本、高専制服に忍ばせて、最短で投擲できる。
その早撃ちに対処できて初めて禍福の相手ができる。足切りラインの呪具である。
……そのため、たいてい猛者には通用しない。
速度で圧倒されるんじゃ戦いにならないんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。
ちなみに、禍福は投擲後に可能であれば、拾って再利用しています。この状況ではとにかく手数が大事ですから、さもありなん。
……これ裏話ですが、この自信作について禍福から熱弁された婪佳久は、
「服に忍ばせた仕込みナイフ、三段階の動作による最短投擲。ふむふむなるほど……禍福って実は厨二び(ry」などと言いかけ、その日の禍福はずっと凹んでいたそうな。
婪佳久「もー、ごめんってば。いいじゃんカッコよくて。男の子の生態的に自然な考えだと思うよ~。うんうん」
禍福「生態とか言うな。フォローになってねえからなそれ……」
【補足②・竜骨改について】
ちなみに、竜骨・改も禍福が自ら改造したものです。
真希さんが「もう使わないから」と後輩のために高専に預け、そこに目を付けた禍福が手にした一級権限を行使して拝借。今や立派な彼の専用呪具です。
防御力を0にする縛りで、即座に衝撃を呪力に変換させ破壊を免れる。
実質壊れない呪具と化しています。
(二部開始直後までは、コレと天逆鉾の二刀流でした。コワ〜……)
なんでこう、極振り性能にしか仕上げられないんでしょうね、この子は。
【オマケ・婪佳久の戦闘スタイルはフェルン】
攻撃手段をひとつの遠距離ビームに絞って、その数と速度で相手を圧倒する。
婪佳久のスタイルは、ほぼフリーレンのフェルンです。
そこに、相手を詰め将棋に追いやる、呪力に乗った『負の感情』を読む能力。
ダメージを受けようが、秤級の反転術式で踏み倒して、ひたすら攻撃。
それでもダメなら、術式反転で強化ビーム。
なんつうかもう、身も蓋もない強さですねこれ……。
とはいえ、これ呪術廻戦ですからね。フリーレンの世界と違って、フィジカルを疎かにした以上は、立ち行かない事も多そうです。