【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
――それは術師の最終手段であり。
本来、
「――領域展開」
一か八か、安曇野禍福の領域展開。
目の前で結ばれる、韋駄天の掌印。
対する、虫女。肉の鎧に包まれた
「――『
「「――ッ!?」」
術式の焼き切れは避けたい。ただそれだけの、打算。
だが――禍福と
((――――舐め、やがって――ッ!!!))
――領域をし返されれば、必敗。
そう、
その覚悟に対し、簡易領域なんぞで凌ごうなどと――。
「――――後悔させてやる!」
領域展開
――広がるは、一面の溶岩地帯。
刹那。禍福・婪佳久両名の脳内に
――爆縛呪法、それは加速するか死ぬかのデスゲーム。
自身の半径10メートルにランダム発生する『線』を踏めば、Gのない加速を得る。『線』以外はマグマ。踏み倒してきた反動が身を襲い、即死する。
そう、『命を賭ける縛り』によって――加速する限り、呪力出力上限が解放される!
「「――コガネッ、全得点消費!!」」
――咲き乱れる、弾幕。サーカスを描く婪佳久の『
――
ゲームスタートの、口火を切る!
「なんだ――ハデなの、できんじゃない!」
対する
落花の情のように己に纏い、呪力を叩き落とす攻勢防御をとった。
だが――。
(マジか――!)
加速しきった『螺旋』は、液体金属を蹴散らし、蟲の鎧にまで食い込んだ。
渦巻きに呑まれ、破砕する装甲。身を引かれ体制を崩すほどの力場!
――確実に、削られている。
――最大最速の貫通力、そこに相変わらずの手数があるとなればバカにならない。
ならば――!
「武器庫呪霊ちゃん! 『換装』よろしくぅ!」
瞬時、肉の鎧は組み変わる。
――ボンバルディア・ビートル(和名:ミイデラゴミムシ)。
それは爆撃甲虫。ハイドロキノンと過酸化水素という化学溶液を蓄え、摂氏100度で吐き出す天然火炎放射器。この機構は、液体金属の強化に転用された。
よって
毎秒約500パルスの高圧噴射で、弾幕を弾幕でもって迎撃した!
「なにも、加速できるのはアンタらだけじゃないのよ!」
そして、飛び立つ。弾幕の雨を潜り抜ける。
バッタの如く、たわめた足で飛び上がり。
空の『面』を叩く加速と、腰の羽を打ち鳴らしての飛行によって。
音速を容易く突破した跳び蹴りが婪佳久に迫り――!
「俺にとっても――『
蹴るはずの
何故、こちらは飛行したのに。どうやって――!
「まさしく、必死ね――『線』を、空中に置くなんて!」
踊りかかる少年が、空の『面』を蹴る瞬間を!
――命を賭けて踏む『線』を、空中に拡張し。
空中を踏む、人間にとって無理難題の『縛り』を、『空の面』によって克服する。
二重の『命を賭ける縛り』を踏み越えて得る加速。
これぞ、爆縛呪法・拡張術式――『空奏疾駆』!
「――ぅおおおおお!!」
次の瞬間には、少年の姿は搔き消える。
空を切り――関節をブチ折られ、鎧もろとも万の腕までも引き千切れる!
「痛ッ、たぁああ!?」
「婪佳久! 今だ!」
――速度と手数による翻弄。安曇野禍福と婪佳久が攻勢に回る。
斬り付けられながらも、
でなければ、婪佳久の弾幕に包囲されてしまう。
それも、術式反転で最大化した
「ああっもう! 数で推すとか品性の欠片もないマネしやがって、あの女!」
鬼ごっこをやるには相手が悪い。後追い、マッハを超えて迫る禍福の『竜骨・改』は。
迷わず、一点――『彌虚葛籠』の掌印を維持する腕を、粉砕せんと振われ!
「――捕まえた♡」
「しまっ――」
「禍福――!?」
――『竜骨・改』を握る禍福の手は、
口から吐かれた蜘蛛の巣によって。その掌印は、ガッチガチに固められていた故に!
(ぶっちゃけ、動きが読みやすいのよね。どうも小回りが利かないようだし)
そもそもだ。空の『面』は、そうそう見出せるものではない。
黒閃によるゾーン状態ならいざ知らず、連続で空中を蹴るなんて芸当、安曇野禍福にはできない。
必然、その挙動は空中戦でなく大半が二次元戦闘。
はじめから飛べる
「お返しよ――どっ、せえええい!」
そして思う存分、叩き込まれる拳のラッシュ。
「ついでに、ゼロ距離――
「――――ッ!!?!?」
あげく
(――なまじ領域の主なうえ、『命を賭ける縛り』がある。そう簡単には死なない――けど、それがいい♡)
――嬲る。刻む。思う存分の嗜虐心を、万はそのサンドバッグへと叩き込んだ。
こうあっては、少々死に憎いだけ。
科学熱傷、裂傷、打撲、
本来は即死の攻撃を、これでもかと味わう事となった、彼は――。
「――とま、れるかぁあぁああ――ッ!!!」
「嘘ぉ!?」
目を剥いた。彼は――それでも、足を止めず、『線』を蹴って。
――自らの右腕を、三級呪具『
血の噴出する右手首で、
(反転術式が、使えないのに――!?)
「わたしが――んなこと、許すと思うなッ!!」
同時。婪佳久の呪力収束放射は――呪力特性を変更し、『正の呪力』となって禍福のみを撃ち抜いた。
禍福を覆う液体金属は、『正の呪力』によって中和され!
すかさず禍福は、泣き別れていた右拳に、右手首を撃ちつけ――『正の呪力』によって接合。
婪佳久からの回復にモノを言わせ――肉体限界を無視した刺突が、幾度と、
「てめぇ、さっきから――怒られるのは俺なんだぞ!」
「なにをぉッ、生意気なぁ――!」
たまらず
身を捩り、蜘蛛の糸を引き千切ってまで。
――増築した腕は、あくまで掌印を代行させるもの。
――実のところ強度は弱く、宿儺の四本腕ほどの性能はなく――直撃されれば、『彌虚葛籠』は維持できない。
――
「「――そこ、だぁぁああッ!!!」」
すかさず、猛攻。
禍福は加速を乗せた『
間髪入れず、禍福の拳と蹴りと『竜骨・改』が突き刺さる!
「――ぶ、ガハッ!」
(吐血か――!?)
何度も頭部を殴られた
――禍福らの狙いは『彌虚葛籠』の破綻だけではない。
だから、同時に脳を――最低でも結界術を司る部位を破壊する。
それが、彼らにとって唯一の勝利条件!
(――効いている、いける!)
勝利の確信。安曇野禍福は踏みださんとして、
「――ブゥッ!!」
「違うッ! 口が、変形した――!?」
脊髄反射で実現した
まさかの手段に目を剥いた。
――最速で射出されたのは、粘膜弾だった。
最大1メートルに及ぶ
これは、そこにシロアリの粘着性樹脂を射出するノズル機構を盛り込んだ――遠距離狙撃式の、蜘蛛の巣。
音速突破で広がる『液体金属』が――婪佳久を、貫いた。
「しま――ん、ぅがッ――、う!?」
「さぁどうする、私に構っててもいいの!? アンタの彼女さん、私の液体金属でブチ犯されてっけど!?」
――婪佳久は、呪力による身体強化ができない。
その白さに、直撃するドス黒い繭。
切り開かれた肉に、液体金属は容赦なくかぶりつく。
肌を焼き焦がし、閉じられた瞼の下の網膜を煮沸し、鼓膜を砕いて頭の中へ、口から体内へ。蒸気をあげて、盛大に肉が揮発する。
彼女の呪力量は四級程度。
その全てを『正の呪力』にできるとはいえ、これを凌ぐには治癒できる部位を絞らねばならない――いずれは塗り潰される、致命傷。
「まだ、分かってねぇのか」
――否、安曇野禍福は。
――振り返りもせずに、迷わず。
その口に、刃を突き立て破壊した。
「俺は前衛だ。俺の背中は――アイツに、任せてんだよ!」
「――、コイツら、正気!?」
少年を後押すように。
婪佳久の――呪力収束放射は、絶えず撃ち込まれていた。
これには
あの女――この後に及んで、まだ攻撃を!?
「舐めんな、こちとら――13年、呪われっぱなしなんだよぉ!!」
止まったら死ぬ。そう言わんばかりだった。
両腕を、即座に彼女は捨てていた。
加速の『線』を蹴る瞬間のみ、足を再生させ。
それ以外のタイミングは、頭と首と胴にだけ『正の呪力』を集中させる――首の皮一枚の生存戦略。
その上での攻撃。展開した我流『簡易領域』を、自ら壊す『術式反転』――そのループを、ショットガンの如く連打し、何ら損なわれない威力を投じていた!
絶えず健在の脳は、むろん地獄を見る。
毛細血管の先まで、液体金属に焼かれ、舐られ、噛み砕かれる最中。
だというのに。
真白の少女は、己の色を譲らない。
安曇野禍福は、その在り方を疑わない。
――双方。狙うはただ、
――――嗚呼、なんて。
――――鮮烈な、『愛』だろうか!
「――いい! いいわぁ! あなた達!」
――
少年は前衛、少女は後衛。
この戦術こそが、彼らの戦い方なのだ。
これこそが、彼女らが命を賭けるに足りると選んだ道なのだ!
「いいわ、もっとよ! あなた達の『愛』を見せて、もっと強く、感じさせて!!」
その
もっと、もっと感じたい――!
まだまだ若く、荒削りではあるけれど――だからこそ、夢いっぱいの共同作業。
いよいよもって、万の想いも湧き上がる。
いい加減、加速にも目が慣れてきた。
よって、全力とは言わずとも、全霊をもって迎え討たんとして――!
――――違和感。
「あらっ?」
「くっ――!?」
……気のせいだろうか。
今。禍福が、自ら婪佳久のビームに当たりに行ったように見えたのは。
そうまでして振るわれた斬撃は、カスりもしない所を素通りしていた。
――いいや、これでいい。
当たらない攻撃に割くべき意識はない。
手を止めることなく、
――だが。
――この手の違和感は、ひとたび目に入ると、次々と意識してしまうわけで。
「やば――!」
「んん?」
禍福の投擲剣が、婪佳久のビームに接触し、誤爆する。
結果、ビームは
――まぁまぁ。誰しも、そういう日だってあるだろう。しゃあない、切り替えていけ。
と、ノイズは思考を隅に置き、今は少年少女の『愛』の営みに目を向け――。
――――違和感。
「んん〜???」
――禍福、今度は盛大にビームに巻き込まれていた。
螺旋に巻き込まれ、大きく揺さぶられる上体、取りこぼされる呪具。理由は先ほど同様に突っ込みすぎたせい!
――婪佳久、なんと『線』を踏み外す。
マグマに接触し、万の攻撃とは関係なく響く断末魔。
だが、たまたま禍福の結界術が劣化していたため『マグマ』は弱体化しており、一瞬で済んだのもあって、即死こそ免れる。
というかそう、今更に気づいたのだが――。
この領域はレベルが低すぎる。
まるで術式性能が収まり切っていない!
「――ガハッ!」
そして、本体性能も足りていない。
マッハを超え続けた禍福は、万の攻撃に関係なく吐血した。
なんなら加速しすぎて万に背中を見せ、そこに婪佳久のフレンドリーファイアがまたしても――!
「ざっ、けんじゃないわよ!!」
――
涙さえ、目に浮かべていた。
超高速の中、見過ごされてきたガバの数々。
そう――あまりにも役割に全力すぎた彼らが、空回りしていたのだと知って!
「なんでそうなるのよっ! いくらなんでも荒削りが過ぎるでしょ、まるで互いが見えてないじゃない! そんなもんなの、あなた達の『愛』はッ!?」
だしっだしっだしっ、と怒りのあまり踏まれる地団駄。
そんな見え見えの隙をまたも逃す二人。
さっきまで期待したとあって落胆は大きく、それが呆れに、殺意に変わる間際――!
――声を。聞いた。
「――アイツと、出逢えたんだ」
――呪力は、感情である故に。
刃を通して――痛いほどに、
「それだけで、俺の全ては――『
色濃過ぎる激情は、何の感情であるのか、判別不能であった。
涙を堪えているようにも聞こえた。
徒労の果て、掠れ切ったようでもあった。
――確かな幸せをもって、響いたようにも。
「――なのにっ、ヤツらは復活して、あろうことか日本を壊した!」
――一転、それは。
――その声は、赤く染め上がっていた!
(こいつ、まだ、これだけの動きを!?)
安曇野禍福の、動きが変わる。
そう、呪力とは感情のエネルギー。
そう、ここまでの彼の無様は、言ってしまえば
標的が定まったとあれば、そこに向かって一直線。それこそが彼の本領ゆえに。
怒りに支配された少年は、向上しきった
「そうだっ! どいつもこいつも、わたしを『呪い』扱いするわ禍福欲しがるわ! ――譲るわけ、ねーだろッ!!」
婪佳久にもまた、紅蓮は燃え移る。
――否。彼女は、初めからそうだった。
――安曇野禍福と、共に
「だいたい、こっちは――クリスマスの計画返上で、
「それは……災難ね」
思わず、
――――彼らは今、怒っていた。
――――彼らの『愛』は、まさに烈火の如く!
「これ以上ッ、奪われてたまるか! 俺と婪佳久に飽き足らず、世界を、平和を! どこまで略奪すれば気が済むんだ!!」
「絶対譲れない、あいつにだって負けられない! 呪われっぱなしでいられるもんかッ!」
――折り重なった呪縛の果て、ようやく勝ち得た彼らの青春。何人たりとも、取り上げられるべきでないモノを、すでに一ヶ月奪われた――少年少女の、怒りが。
「俺たちは、呪術御三家に――そして! 『安曇野』に、復讐する!!」
――ここに、開花する。
黒い女神の微笑みが――『黒閃』が。禍福のひと蹴りに宿り、咲き乱れた。
加速の果てに至った0.00001秒の偶然。
流入する激情、視野に明滅するスパーク。
そして――刹那。
――――
――――――
―
――
―――
「あーもうっ、もう安曇野クンなんて知らない! 長野に帰って美術館いってろ!」
「こっちのセリフだ雪女! ばーかばーかっ!」
……などと、校舎の片隅。
人知れず繰り広げられる、白い少女と黒髪少年の寸劇。
その一部始終を、校門からこっそり覗いていた
「きーッ! なにやってんの! もういいからさっさとヤりなさいよ、あの二人ッ!!」
などと。およそセーラー服に包まれた淑女がしてはならぬドスの効いた声を出し、壁に拳をめり込ませる。
しかし、無理もない。
たまたま時間が合うのか、あるいは当てつけか。
もうかれこれ毎週毎日、この待ち合わせ時間に、
「……ふっ、若気の至りだろう。多感なうちは、見守るが華だ」
「って、あらやだ。もうっ、来てたなら言ってよ!」
「いい。思えば、ああいう時期のオマエも見ていて退屈しなかった」
――そして、予定調和。
振り返れば、いつもの彼がいる。
筋骨隆々パッツパツの学ランから突き出た四本腕に――獰猛な眼。
「そういう貴方も落ちついたものね。前までは出会い頭からガッついて来たのに。またケヒヒッって笑ってくれてもいいのよ?」
「ふっ。それを俺に言えるとは――面白れー女」
「そう、今のイイ! わかって来たじゃない!」
「……もうやらん。帰るぞ」
しかし――
他には譲らんとばかりに、彼は
やはり、ケンカ別れ直後にも関わらず、互いの事で頭が一杯と見える少女少年。
あれら二人の観察日記に、一句
「うーん、こうかしら――『性春を 眺めてヤりたい いとをかし』。みんなもイケメンゲットじゃぞっ!」
「季語は?」
―――
――
―
((
突如、涎を垂らし呆けた彼女を前に。
安曇野禍福、0.1秒の自失。その間、走った思考の上澄み。
――『火傷』『限界』『婪佳久』『生存』『領域』――――『殺せる』。
「「――――!!」」
刹那、鎧に叩き込まれる殺人挙動。冴え渡り鋭化した少年の連撃。
婪佳久もまた、加速し――ゼロ距離で、呪力放射を喰らわせる。
(いい加減、『正の呪力』の誤魔化しが効かなくなってきてる……ッ、もう、一か八か!)
禍福は、ここにきて婪佳久の重傷ぶりを初めて知った――液体金属に、内外問わず食い破られた、正しく首の皮一枚というべき重篤ぶり。もはや、なぜ意識が途絶えずにいるのか不思議なほどの容態。
だが。だからこそ、より決意は加速する。
もう後はない、恐らくこれが、最後の千載一遇――!!
「「――、ぁ!?」」
――が、唐突に終わった。
ガバっ、と一息――
抗いようのない腕力。
一瞬にして不可避の抱擁。
地面を失い、『線』から離れる足。
続くは、圧壊。死――。
――いいや、違った。
「――ええ、そうよ! そうだわ! こんな終わりであっていいハズがないッ、二人は! 結ばれなきゃダメなのよッ!!」
「――、――、……はい?」
あまりに、わけがわからず。
禍福は、呆ける他になかった。
なんで、この蟲女は泣いているのだ。
それも、わざわざ複眼から、滝の如く!
無理解。恐怖。命の危機。軋む前頭葉。
ただただ目を白黒する禍福――反して。
やはり、婪佳久の飲み込みは早かった。
「――禍福、領域を解いて」
「はぁ!? お前までなんで――」
「いーからっ! なんか知らないけどコイツもう悪意ないんだって、わたしの液体金属解除してくれたし! 交渉すんの交渉っ!」
「はいキースっ! キースっ! ほらそこォ! せっかく顔近いんだから男見せんかい今なら吊り橋効果のオマケ付きよッ!!」
「うるせェ黙れッ!! テメェこそ何しに来やがった、もう何なんだよさっきから!!!」
半ば婪佳久への信頼、半ばヤケクソ。
禍福は自ら領域を解く。
彼の術式は焼き切れ――同時、
緩んだ腕から、禍福と婪佳久は飛び退く。
女は、何やらニッコニコで二人を見ていた。
――余計、意味がわからない。
「えっと、その。なんだ――仲間になりたい、って事でいいのか?」
「ええっ、その通りよ! 信じられないなら『縛り』でも何でも結びなさい! 必ずや、私は――あなたたちを『
「ふざけンのも大概にしろやテメェ、あぁッ!?」
安曇野禍福も、過去一のマジギレであった。
実力差は明白な相手だ。受け入れる以外の選択肢はない――つまり、恫喝でしかない。
「てかここまでツッコめるヒマなかったから今言うけど! 服着ろよ服をッ!! なんで年二回も
「は? 他にもいんの? 心外ね~どこのどいつよ私パクるなんて命知らず」
「自分を、棚上げしてんじゃねぇッ!!」
誰が言ったか、『弱ぇ奴は死に方も選べねェ』という。
実際、拒否権などない。弱犬の喚き散らしでしかない。だが慟哭せずにはいられない。
なぜだ、世界よ。なぜ安曇野禍福は、地雷女と巡り会う運命なのだ――ッ!!
「悪意や騙す気は……やっぱ、ないか。ないのか〜。えぇ……? まぁ、うん。なるようになるんじゃない?」
婪佳久はというと、ただただドン引いていた。
笑いは引き攣り、抱え切れない困惑が声になって漏れていた。
なにが、どうして、こうなったのか。
過程も出所不明の善意(?)を前に、考えるのすらバカらしく、投げやりになる始末。
「じゃあ、
「ええ喜んで! 仲良くしましょ~婪佳久ちゃん! けど、その前にすべきはアタックよ。ほら禍福クン、そのまま左向きなさい左ぃ!」
「――おい禍福、わかってんだろーな向いたって拝めるのは川だけだぞ(低音)」
「しれっと寄り集まって俺を死に追いやるな! つうかマジで受け入れないとなのか!? 冗談じゃないぞ、既に
断固として、少年は首を縦に振らない。むろん横も向けはしない。
まさしく八方塞がり。精神も理性も崩壊の瀬戸際。
極限の緊張状態でもってキャパオーバーを叫ぶも――。
「え、じゃあまた
「――っ――あぁぁあもうチクショぉおお!」
「――へ、わ、ちょっ向くな見んn――ゃぁああああああ!?!!?」
……と。完全に、カオスに陥った三人を。
何とか、戻ってきた『
「い、いつの間に仲良くなってるぅーッ!? ――まぁでも、ケンカしたらダチになンのも、ジャンプの王道……なのかなァ?」
やっぱ、ニンゲンってワケわかんねーなぁ……と。
―――
――
―
……後日談であるが。
かろうじて生存した街の住民たちの行動は、二極化した。
ビル街から出て、暴徒のまま振る舞うか。
或いは、その場で燃え尽きるか。
後者は――高専OB・OGと補助監督によって、特別秘匿防護シェルター『
積極的に殺人を犯した以上、拒否権なく懲罰房に収容される事となる。
彼らは抵抗しなかった。むしろ自ら身を差し出し捕まった。
――どうして、こうなってしまったのだろう。
近藤という女を含め、元住民らはうわ言のようにそう言った。
高専術師らは、その恨み言よりも重い独り言を聞かされながら、誰もが顔を伏せたという――。
今年最後の投稿です。
ここまで走りきった自分にどうか高評価を!
既にしてくれた方も、来年も変わらぬ応援のほど、よろしくお願いいたします! みなさん、良いお年を!
【来年の投稿頻度について】
え~、すいません。7月までは週1投稿にさせてください。
実のところ、本業がデスマ気味なのです。
どうも半年は落ち着きそうになく……。
第2部は100話いくかもですし、1部のように短く太くとはいきそうにありません。
ここからは長く太く!やっていきますんで!
次回は1/11から、毎週日曜にお待ちくださいませ!
【次回予告(11・日に投稿予定)】
夏油
少年が挑むのは、『補給物資』を独占するリゾート海賊船!
強大な組織を打ち砕くべく、彼は高専術師と合流し、特級呪霊を手に入る!
船内で繰り広げられるのは弱肉強食の縮図!
そして、今こそ彼等を前に君臨する――。
「――ほう? そうかそうか。この腐った
――天上天下唯我独尊!
――正真正銘の、絶対的強者ッ!!
第二幕 山陰