【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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第二幕 山陰ブロック -夏油勲編-
第2部 18話『夏油勲が往く! 海賊客船大潜入!!』


 

 ――天国の母さん。見てますか。

 今、俺は――!

 

 中学二年生にして、夢にまで見たバイクの旅を謳歌しています!!

 

 

 

「いやっほおおおおお!」

 

 

 

 アホほどでかい声を出し、アホみたいな爆音でエンジンを轟かせ、島根の荒野を駆け抜けるのは――バイクの呪霊!

 

 その嗎きに釣られ、そこら中からアホほど湧き出て襲ってくる呪霊の群れ! だが――!

 

 

 

「今だっ結(ゆい)姐(ねぇ)さん!」

 

 

 

 隣を並走する女の髪が、悉くを切り払い!

 

 弱体化した隙を――少年の、『呪霊操術』が取り込む!

 

 

 

「いっただっきまぁ――んがっが! うまっ! うンめぇ〜! 大漁大漁!」

 

「あれを美味いとか。マジで言ってんの。怖……」

 

 

 

死滅回游・泳者(プレイヤー)

夏油勲(かおる) 所持得点 51 消費得点 47

灰原結(ゆい) 所持得点 165

 

 

 

 

 そう、彼等は二人一組!

 この狩猟を続けつつ走ってきたので手持ちは莫大。順調そのもの!

 

 ……なのだが。

 

 

 

「さて、どうしたもんかな――強い呪霊どころか! 一体も術式持ちがゲットできてねーんだけど!」

 

「急がば回れの安全ルートだったからね。『点』も少ししか増えてないし」

 

「これじゃあダメだ! もはや水木しげるロードで道草食ってる場合じゃねぇ! もっとこう――バーンと! 激烈な! べらぼうに強いのがいないと、これじゃあ夏油傑(クソオヤジ)を倒せないじゃないか!」

 

 

 

 実際、由々しき問題だ。

 体力消費は最小限で済んでこそいるが、

 このまま京都に着いても恐らく戦力不足!

 

「経験値は! メタルスライム枠はいないのか!」と勲(かおる)はバイク呪霊から身を乗り出し、必死に辺りに視線を巡らせ!

 

 

 

「――あー! あれって!!」

 

「灰原さん、何か見つけたのか!?」

 

 

 

 声を上げたのは結(ゆい)の方だった。

 示し合わせるまでもなく、進路変更。

 

 向かう先は――海ッ!

 そう、港に停泊したクルーズ船ッ!!

 

 なぜそこに!?

 

 

 

「勲(かおる)くん、呪霊じゃないけど――スカウトできる人なら、見つけたかも」

 

 

 

 ――その言葉は。

 ――下手な呪霊よりも、喜ばしい出会いを告げていた。

 

 

 

―

――

―――

 

 

 

「あなた方を、本物の呪術師とお見受けしお聞きしたい! ――夏油傑を、知っていますか!?」

 

 

 

 ――土下座! 圧倒的土下座ッ!!

 

 それが、夏油勲(かおる)の選択であった。

 

 いつ何時、第一印象は大事である。

 その点、これはベストオブベスト!

 デスゲームの最中で示せる最大の誠意!

 

 その姿勢に対する、返答は――!

 

 

 

「――しゃけっ!」

 

 

 

 ――オニギリだった。

 ――ただただ、圧倒的オニギリの具!

 

 

 

「えっマジですか!? ちなみに、どんな人だったんです?」

 

「しゃけしゃけおかかおかか」

 

「へぇ〜そんな人だったとは! いや〜貴重な情報ありがとうございます!」

 

「しゃけ!」

 

 

 

 なんたる世紀のコラボレーション!

 なんたる珍妙な空気!!

 

 微妙に会話の噛み合わない事に定評のある夏油勲と、語彙の限られた成人男性が、リゾート船の手前で問答していた!!

 

 

 

『……坊主。なにを言っているか分かるのか』

 

(いや、分かんないけど。でも、失礼かなって)

 

 

 

 これには思わず、勲(かおる)の中の『両面宿儺の指』もツッコまざるを得ない。

 そんな彼の内心でのやりとりを知ってか知らずか。

 

 灰原結は、語彙の限られた青年――狗卷棘《いぬまきとげ》の仲間に話しかける。

 

 

 

「すいません、こんな時に。兄さんと同じ制服だったから、もしかしてと思って……」

 

「いやぁ、むしろ超助かるっスよ! この状況で敵意なくて強めの術師で、しかも、映画俳優に会えるなんて! 俺たちだけじゃ、ここのヤツらに戦力不足でしたから!」

 

 

 

 ――猪野琢真(いのたくま)。

 

 そう名乗る覆面男と、同盟締結の握手は速攻で交わされた。

 ファンとしての公私混同も入ってる気がするが、さておき。

 

 彼等――高専術師は、この船に乗り込もうとしていた、らしい。

 

 

 

「それで、ここのヤツらってのは?」

 

「『海賊』なんスよ。アイツらに、俺らの仲間がカッ攫われてて」

 

「なんだって!? オレの仲間第5号が!?」

 

「しゃけしゃけ」

 

 

 

 灰原は改めて、そのクルーズ船に向き直る。

 

 まるで、海に浮かんだビル街というべき巨像。

 青空に届かんと延びる巨大質量。

 

 それは――とてつもない、呪力量を有する呪物であった。

 

 

 

「聞いたことあるわね……停泊した場所を、人も呪霊も根こそぎ掻っ攫って、『補給物資』を独占し、高得点の泳者に招待状を送ってるっていう成金の」

 

「……ハッ! 言われてみれば! ここに近づくにつれて呪霊にありつける数が減ってた気がするぜ!」

 

「明太子」

 

 

 

 難攻不落。見るに明らかだ。

 それこそ、高専術師二人でさえ、入るのを躊躇うほどに。

 いくら招待されたからって、よくもノコノコ入り込めるヤツらがいたものだ。

 

 

 

「おおかたその通りっスよ。灰原さんって泳者(プレイヤー)としてもピカイチなんすね……」

 

「日本海をひたすら回ってた船なのでマークしてました。いちおう、招待状も貰ってましたし?」

 

「えっ、じゃあ100点(ポイント)保有者(ホルダー)!? ま、マジか……」

 

 

 

 このクルーズ船、全体に結界の施された気配がある。

 

 そして、客の泳者も相当多い――無理もない。このMSC・グランメゾンの乗客定員は4,500名。その誰もが一定数の『点』を持っているという脅威は推して知るべし。

 そしてWärtsiläエンジン67.2MWを有する、総トン数171,598GTの巨体を集団運用できる物資量・組織力。

 

 なにより、それらを束ねるボスの実力たるや未知数――!

 

 

 

 ――客船海賊団『グランメゾン』の名は、100点(ポイント)保有者(ホルダー)の誰もが知る所である。

 

 

 

「たぶん、これまで一番の被害者でてるよな――そうと決まれば! 仲間第5号を奪い返し、人助けしまくって、なにより呪霊をたらふく頂く!」

 

 

 

 深刻な事態を前に、強張る頬を叩い、ニッと勲(かおる)少年は笑った。

 

 彼の気概と同じく、彼らの戦意もまた束ねられていた。

 つい先ほど出会ったばかりであろうとも、彼等は互いが命を預け合うに足りると確信していた。

 

 その結束は強く、確かなモノ――!

 

 

 

「そうね……ところで猪野さん。その仲間って、どういう人なんです?」

 

「見りゃ一発で分かるよ、霊(・)長(・)類(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)」

 

 

 

 ――、えっ?

 

 

 

 と、思わず二度見する勲(かおる)と結(ゆい)。

 

 だが、まあいいだろう。ペットは仲間じゃないとか言ったら度量が知れる。

 

 そう、改めて強大な敵へ向かい合い――!

 

 

 

「ちなみに少年、君の名は?」

 

「夏(・)油(・)勲(かおる)です!」

 

 

 

 ――、えっ?

 

 

 

 と、これまた二度見するイノタクと狗巻。

 

 確かに、言われてみれば既視感しかないヘンな前髪。

 言った本人でさえ自分の苗字が憎いとばかりの塩顔(カオ)!

 

 コイツ、もしかしなくても厄ネタの塊では――。

 

 

 

「まぁいいか! 乗り込め――っ!!」

 

「しゃけ――!」

 

 

 

 ……気を取り直して。

 

 ――2025年12月7日。

 夏油勲(かおる)一派の新たな戦いが、ここに幕開けようとしていた――。

 




次回は来週日曜(1/18)です。

アニメ始まりましたね~。
モジュロといい、うまいこと乙骨編に逆輸入できないかな…と思いつつ追っています。
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