【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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第2部 25話『吹けば飛ぶ』

 

 ――どうでもいい。

 

 

 

 総てがもう、どうでもよい。

 

 敗北した己など死体も同然。

 どう扱われようが、どこへ連れ回されようが、何を見せられようが、知ったことではない。

 

 なにやら望んでもいない『もう一度』を掴んだが、どうでもいい。

 なにやら新たな器(ぼうず)が死にかけているが、どうでもいい。

 

 

 

 もしも、五条悟に再び相対す機会が来たなら必ず殺し返す。が――この虚しさは、たとえ勝ったとして消えるモノなのか。

 

 

 

 わからない。今さら興味すらない。

 

 このような有象無象の争いなど。

 このような輩など、どうでも――。

 

 

 

『――いまさら気付いたようだねぇ少年。君は奪われる側であり、我らこそが何もかも得る、環境に適応した勝利者なのだと!』

 

『――夜をやり過ごせない有象無象が、勝利(リソース)にありつける道理などないッ』

 

『――まぁ、物理的に食い物にするのは不衛生だがね。ファッションでカニバリズムに走るなんぞバカ舌でしょうバカ舌。こんなヤツらが勝ち残るだとは、嘆かわしい!』

 

 

 

 ――――どう、でも――。

 

 

 

――

―――

 

 

 

「――一秒やる」

 

 

 

 一歩、踏み入る。

 それだけで、その他総てが塗り変わる。

 

 理性を持つ者は、その野性を前に傅く事を道理と認める。

 弱肉強食、争いの直中に生じた――比類無き、王。

 

 否。王だったモノ。

 

 

 

(――息。息して、息を! 息息息息!!)

 

 

 

 灰原(ゆい)は、完全に戦意を喪失していた。

 レベルが違う。強い弱いじゃない。

 埋もれていた野生の絶叫。居合わせてはいけないモノを前に腰が抜け落ちる。

 

 ――あの少年は自分の同行していた相手だ。間違いない。間違いないが――あれは、明らかな別物!

 

 

 

「まさか、まさかまさかまさかまさか――!」

 

 

 

 狩野琢真は、空いた口が塞がらなかった。

 

 彼は7年前、2018年の新宿魔境決戦に参加していない。

 するまでもなく五条悟にヤツは倒された。

 故に、除外していた思考(あくむ)

 それが今、目の前にあった。

 

 

 

「すっ、す……宿儺!?」

 

 

 

 石流龍は、固まる。

 蛇に睨まれた蛙の如き顔面蒼白。

 己の二度目の今際の際、あの瞬間と全く同じ――青空が黒ずむが如き覇気に呑まれ、

 

 

 

「――跪け」

 

 

 

 ――キインっ、と。中空が裂かれた。

 その間際、三者三様、平伏していた。

 

 灰原は崩れ落ち、狩野は脊髄反射で斬撃を交わし。

 真正面から斬撃を耐えた石流は、だが踏ん張れもせずに背後へと転がった。

 

 彼らの背後、切り落とされた船の煙突の、投壊音が響き渡る。

 

 

 

 真に恐ろしいのは。これが余波でしかないという事実だ。

 

 

 

「……まったく。なんなのだ、この前髪は。いくらかきあげても、糊をつけられたように戻りおって」

 

 

 

 異様に険しい顔つきで。

 鋭利が過ぎるほどの睥睨で。

 少年は、そんな意味合いの言葉を口にする。

 

 そう、今のは『余波』――夏油(かおる)のヘンな前髪を切り落とした二次被害!

 

 ようやく邪魔が消えた、と彼は肩を落とし、ポケットに手を突っ込む。

 

 袖をなくした薄焦げた装いではあるが、彼の体には、ひとつたりとも傷跡は残っていなかった。

 

 

 

 ――そんな彼の様子を、猪野は、脳味噌をフル回転させ注視していた。

 

 

 

(なんでだ。何故! (かおる)くんに()()()()()はなかった。なんの兆候もなかったハズだ!)

 

 

 

 こんな状況は有り得ない。こうなる前に気づけないハズがなかった。

 

 ――最後の『宿儺の指』は確かに行方不明となっていた。それがなんの因果か夏油(かおる)の中にあった――そこは、百歩譲って事実として認めよう。

 

 だが、いつ。どこで。誰がなんのために?

 既に一ヶ月行動を共にしている灰原結でさえ、今初めて知ったという反応でいる。

 任意のタイミングで顕在化するような仕掛けがあったのか。

 

 やはり、天元を持ち去り五条悟から逃げ去った羂索の仕業か。或いは――!?

 

 

 

(それになにより――なんか滅茶苦茶キレてそうなんですけど!!)

 

 

 

 いったい、なにを考えている。

 なんのつもりで今出てきた、両面宿儺――!

 

 

 

(――なぜだ。なぜ、俺は今になって体を奪った?)

 

 

 

 一方。当の本人はというと。

 真顔で――ぼーっと、内心こう思っていた。

 

 自分でも分からない、と。

 

 

 

(よりにもよって、高専術師の手前とは。考えなしにも程がある。面倒になるのは目に見えている。なのに今、何故に俺は表立っている――?)

 

 

 

 この身体――夏油(かおる)の意識が途切れた間際。

 最後の肉体を奪う機会に、彼は付け入った。

 

 最後の一本である以上、この体が死ねば彼は完全に死んでいた。

 かといって、今更命が惜しくなったわけではない。

 

 ――ではなぜ、俺はこうして立っている――。

 

 

 

「まぁ、いいか」

 

 

 

 頬が歪む。無邪気に、悪辣に。

 喉から昇った悦が口角を上げる。

 

 だって――愉しい。

 

 

 

「クソガキめ、急に尊大ぶりおってからに――ここは! 私の! 豊澤圭次(ヴァンサン)の、海賊客船グランメゾン号であるぞ!!」

 

 

 

 この期に及んで、己は勝者だと思い上がった肉塊。

 バカげた質量と呪力量を誇示する、これ以上のない贅肉の塊。

 

 そう、ここは千客皆殺し(ばんらい)の豪華客船。焼け焦げ、血に濡れた絨毯の上。

 

 

 

「そうか。よいよい。この(にくかい)で出迎えようとは。殊勝なものだ――では」

 

 

 

 これを虐めつけるのは。きっと、楽しい。

 そう。己が生きる指針は、己の快不快のみ。

 

 

 

「遊んでやろう。恐悦にむせぶがいい――道化」

 

 

 

 かくして王だったモノは、指揮棒を手に取ったが如く。

 腕を振るい――破滅を、奏で出す。

 

 

 

――

―――

 

 

 

 斬撃の雨が、甲板一面に降りしきる。

 

 

 

「んぎぃぃいあぁあああ!!?」

 

 

 

 完膚なく、呵責なく。

 図体の差を無視し、質量差など関係なく。

 ザックザクに切断し、完膚なきまでに解体され、絶叫する肉の塊――だが。

 

 

 

「ふむ。素直に驚いた。これでも再生するか」

 

「痛っ痛たた――そうだッ! 何人たりとも、私を前に勝ち目などない!」

 

「戯け。その道化ぶりを云ったのだ」

 

「いだ――っ!? いっでええ!!」

 

 

 

 肉の塊は、洪水の如く少年へと雪崩れ込んでいく。

 が、片手間ながら、斬撃は苛烈さを増す。

 

 ――全方位、一瞬で網目状に飛ばされる、無数の死の線。

 即座、肉の波はブロック状に分解され。

 船にさえも亀裂が走り――巻き添えもまた、甚大化する。

 

 

 

「――死ぬ死ぬ死ぬ死――!?」

 

 

 

 パニック寸前の思考で術式全開。

 全力の歯向かいで如実になるのは実力差と絶望だけ。

 もはや100点保持者としての自負など見る影もない、鋭い風に打たれて転げ回る灰原を。

 

 狩野と、石流が庇っていた。

 

 

 

「灰原さん、離れないでください! 俺らの後ろにいないと欠損必死なんで――!」

 

「いったん逃げんぞ! 宿儺が出てきた以上この船はいつ真っ二つになるかもわからねぇ、どちみち距離をとらねーと話にならん!!」

 

「実感こもってるなぁ!」

 

「流石に二度目は勘弁だからな!!」

 

 

 

 肉と斬撃の嵐にさらわれる渦中。

 過去最大の災害に見舞われる女の手前、男二人は汗ダラダラながらも踏ん張り、斬撃を耐えていた。

 

 

 

(しかし、どーなってやがんだ。これは――どう考えても『指一本』の出力じゃない! 最低でも3本、いや5本相当!!)

 

(まだまだ薄甘! 俺はフツーに耐えれるが、狙われて詰められたら超激甘だよな。くそッこんなんなら閉鎖空間に飛び込むんじゃなかったぜ――!)

 

 

 

 完全なる予想外。緊急事態が過ぎる。

 狗巻だって果たして無事なのか。

 

 それに何より――!

 

 

 

((つーかそれなら――なんで死なねーんだよ、あの肉ダルマ!))

 

 

 

 俺たちが五体満足でいられるのは。

 たまたま宿儺から遠く、斬撃の直撃を免れている事。

 そして、文字通りの肉壁があるからだ。

 

 直撃であれば、誰一人対応しようもなく即死している。

 なぜ、あの肉塊はまだ動けている――!?

 

 

 

「いだだだだ――だがッ! どれだけ刻んだとて、この私を倒すことなどできぬわぁっ!!」

 

 

 

 斬撃の雨を押し返さんと。

 切り崩される山は、全身から夥しく血の川を流す巨体は。

 それでも前へと手を伸ばし、拳を振るう。が、

 

 

 

「どうした、肥えているのはみてくれだけか?」

 

「ぐえーっ、なんだこのガキ、表面がチェンソーみたく弾かれるではないか――!」

 

 

 

 奇跡的に触れる間際、殴ったはずのこちらのみが傷付いている。

 まるで掌の上だった。強い雨を耐え、弱わまった間際に飛び込んでもコレだ。

 肉片ひとつ、血しぶきひとつでも届けば、『肉浸掌握(ヒュドラ)』の毒牙を浴びせられるのに――!

 

 

 

「――思い違うな。膂力でも、貴様では敵わん」

 

「なぬ――!?」

 

 

 

 再びの拳。巨腕の一撃を。

 少年は、片手のみで受け止めていた。

 

 術式による攻勢防御ではない、呪力を纏っただけの素手で。

 なんなら、もう片方の手はポケットに入れたまま。

 

 

 

 ――豊澤圭次(ヴァンサン)は、驚愕する。

 毒の付け入る間がない。これほど完璧な呪力強化が有り得るのか――!?

 

 

 

「ほうれ、踊れ」

 

 

 

 ぐりん。少年は腕を上げ、手首を曲げた。

 ただそれだけで――巨体は地面を失い、身を回し――遠心力によって、その贅肉がふるい落とされる。

 

 筋力だけで立っていた、自重を支えきることさえ困難な体に、そんな挙動など想定されていない。

 

 

 

「んぎぇえあああああ!?!?」

 

「なんだ、軽快に舞えるではないか。そうれ、もうひとつ」

 

 

 

 ぐりん。少年は逆に手首を曲げる。

 回転中の逆回転。遠心力が打ち消され、摩擦力と板挟みになった巨体が爆ぜ散る。

 

 筋が、管が。引きちぎれ、挫滅した赤い石榴が周囲に振りまかれる。

 なにやら遠巻きに、高専術師たちの悲鳴も聞こえてくる。

 船を鮮血が上塗るたび、少年の悦は加速する。

 

 

 

「あんぎゃああああ!? 痛ったああああ!!!」

 

 

 

 まさしく玩具だ。飽きれば手放し、叩き捨てる、それまでの消耗品。

 百人の100点保持者の命を吸って誕生した呪力量も質量も、所詮はその程度――。

 

 

 

「――否っ! それは本体ではないわマヌケめぇ!」

 

 

 

 ――肉塊は、そう言って自ら爆散した。

 不意に掌にあった重みが失われ、少年は怪訝に眉を寄せ、視線を上へと向ける。

 

 

 

 続く言葉は――館内放送で、響き渡った。

 

 

 

「どうだぁっ! 私はこの船と同化していたのだ! この船体は死した人々の絶望を浴びせ続けて呪物と化し! 至る所に肉片(じゅつしき)を付与され、今や私の本体となっている――初めから腹の中に収まった貴様らが、私に敵う道理などないのだ――ッ!!」

 

 

 

 人間性を捨てた男は、自信満々に秘訣を語る。

 人の手に頼らずとも汽笛は鳴り。船員がいずとも船は海へ出る。

 エンジンを唸らせ、港から出港する、鉄と肉がひとつになった塊は――急速に、斜め45度に傾いた!

 

 

 

「存分に喰らえぃ、面舵いっぱぁぁああいい!」

 

 

 

 転覆間際の最大旋速(ドリフト)

 大波を作りながらの、ギリギリを攻めに攻めたヘアピンカーブの連続。

 

 呪力と筋肉で強化された船体はともかく――その内部は耐え難い。

 

 

 

「どわーっもうめちゃくちゃだぁああ!?」

 

「これは――灰原さん、カウンターは俺がやります! あなたの術式(カウンター)じゃ対応できません!」

 

 

 

 潮で撹拌される、洗濯機の中身さながらの混沌。

 ナイフにフォーク、グラスに机、なんならドアにグランドピアノにベット。悉くが引力に遊ばれ、上から前から流れ込む。

 

 いよいよ打つ手なしの灰原。

 取り回し重視で直接手にしたナタを振り、障害物を片っ端から叩き切る猪野。

 

 顔をださんと藻掻くのがやっとの天変地異は、それだけに留まらない。

 

 

 

「蛇!? 蛇よねこれ無理! 無理!! 蛇にだけは殺されるとか絶っっつ対にムリ!」

 

「前言撤回! その調子です灰原さん、でも近づかないで!」

 

 

 

 ――そう、九つもの蛇の頭!

 ――そのどれもが、足を止めたが最後、万力で抱擁する肉の塊!

 

 船にまとわり、船を支える肉の柱達が、その口腔を開き彼らに襲いかかる。

 

 前後不覚、泣き喚く灰原は術式(かみ)を最大に振りまわす。

 呪力強化された筋肉の塊に対し、式神化した長々髪による質量の鞭でもって抵抗する。

 

 が、手数は向こうが上。やぶれかぶれの抵抗など崩されるのは時間の問題――。

 

 

 

「させっか――『グラニテブラスト』ぉ!」

 

 

 

 ――石流によって、抵抗は長引いてこそいるが。根本解決にはなり得ない。

 

 

 

「くそッ、こうなりゃ船全部をぶっ放すしか――!」

 

 

 

 そんな事を口走りつつも、今は逃げ一択である。

 今下手に刺激をしては勝ち目がない。

 

 宿儺にも――この船にさえも。

 

 

 

「私の勝利の道は! いつだって初めから舗装されている! これまでとは違って、私自らの敷いたレールの上ならばなおのこと――私に敗北など、有り得ないのだ!」

 

 

 

 パワーで負けるわけがない。

 罠にハマった以上、逃れる術などあるまい。

 勝利を確信するにあまりある、圧倒というべき状況を形成し、船は高笑う。

 そんな混乱の直中にあって――!!

 

 

 

「――話にならんな」

 

 

 

 ――悉く、破砕。

 天井から堕ちたシャンデリラも、横転したシーツの毛布も、彼を飾る煌めきに様変わる。

 

 左右両極端に傾いだ空間の都合など知らぬ顔で。

 夏油(かおる)は、変わらず両手をポケットに突っ込んで佇んでいた。

 

 

 

 幼さの抜け落ちた細い目付きに容赦の色はなく。

 元の端麗さも相まって、その貌は、抜き身の刀の如し凶器そのものであった。

 

 

 

「争うまでもなく、扱える者のみを招いて舌に乗せる。その狡猾さだけは褒めてやろう。だが――所詮は家畜。矜持(うえ)が足りん」

 

 

 

 ――笑止千万。いくらあったとて蛆の山。

 ――憚ることなくそう見下げる彼を前に、蛇らは強張る。

 

 いくら揺さぶろうと。

 いかに質量を叩きつけようと。

 

 ただ悠然と『だからなんだ』と肉を刺す、睥睨。

 

 

 

「……まぁ、坊主にも良い機会か」

 

 

 

 それは、一転。

 悪意をもって、盛大に、笑みに歪んだ。

 

 

 

「――おい、大砲。憑霊の餓鬼。そして女」

 

 

 

 絶対の声音が響き渡る。天変地異なんて目じゃない、最重要の命令が、否応なく高専術師の脳に送られる。

 

 

 

「五つ数える。やれるものなら、逃げてみせろ」

 

 

 

 その手は。その両手は。

 胸の前、掌を合わすように、持ち上がっていた。

 

 

 

「――ひい」

 

 

 

 ――脱出。その一点に、狩野・灰原・石流の思考は支配された。

 

 

 

「ふう」

 

 

 

 臆病を置き去り、猛然と二人の足は前へと向かう。

 

 灰原は障害物の雪崩にぶちあたり、摩擦を受け、傷を追ってでも前進する。

 狩野は少しでも彼女の前に立ち、ふりかかる火の粉を懸命に減らしていた。

 石流は『グラニテブラスト』で突破口を開き、道を作り、先頭に出て憤然と突き進む。

 

 その足掻きを、実に愉しげに少年は、嗤って見ていた。

 

 

 

「みい」

 

 

 

 しかし、ここに来てシンプルな問題があった。船の大きさと位置だ。

 

 この船は全長318.5mだ。

 石流は侵入するにあたって壁をブチ抜いたが、その道は既に閉ざされている。

 豪勢だった内部は悉くが倒壊し、無数の障害物によって通路が悉く封鎖されているのだ。

 

 よしんば脱出できても、その先には海がある。

 宿儺の領域は、渋谷事変の記録が正しければ最大直径400mと推測される――ましてや、2秒未満で泳いで逃げるなど――。

 

 

 

「よぉ――」

 

「――『吹っ飛べ』!!

 

 

 

 ――刹那。その『呪言』が、彼らを障害物もろとも押し出し、射出した。

 ――なんなら、追加の障害物が彼らを後押していた。

 

 

 

「えっ犬!? 猫ちゃん!? なんなの急に!?」

 

「おわっこの子達は――食料にされかけてたペットたちか!」

 

「Sweet! このまま着水して港に移るぞ、髪濡れんのは嫌だが仕方ねぇ!」

 

 

 

 野生化したペット達。

 船の奥、牢屋に繋がれていた彼等は、バネの如く船外へと飛び出していった。

 

 その背を見送りつつも、宿儺は思考する。

 

 

 

(確かに今、俺は呪言師の声を聞いた。両手で耳を塞いでもいない。だが、俺だけは全く効果を受けていないうえ――探知できなかった。呪力強化した獣に紛れて、脱出したようだな)

 

 

 

 楽しみが増えた。今度は、右腕とは言わず喉を掻っ切るべきであろう。

 渋谷の時はついで程度だったが、その努力。今なら手ずから踏みにじるに値する。

 

 

 

「なんだ――なんなのだ、貴様は――っ!!」

 

 

 

 かくして幽霊船に残るは、少年と船ひとつ。

 いくつもの蛇が突貫するも切り刻まれ、一切として妨害にならぬまま。

 

 渦巻く小世界、その中央にて、

 

 

 

「いいとも。教えてやろう――弱肉強食とは、何たるかをな」

 

 

 

 結ばれる、閻魔天印の元に。

 混沌を上塗る、小宇宙が開かれた。

 




いや~ついに宿儺を出せました。次回は3/7です。



【補足①】
コックさんの服をパクって潜入してたので、今の勲くんの格好は白衣です。
と言っても、もう両袖が蒸発して全体的に薄焦げた布切れでしかありませんが。
すっくんよかったね。お料理にもってこいだゾ!

【補足②】
Q なんでオーナーくんこんな強いのに擬似術師なの?
A この術式を獲得して速攻でこの狩り方に行き着いたせいで、人体で呪力を扱う経験を積めなかったから。(初手で領域に行き着いた日車と違い、呪術的には邪道をやっている)

無限列車編みたいな感じの、負けかけた中ボスが建物とかと合体する少年漫画らしい展開が呪術にはなかったので、やってみました。
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