【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

78 / 84

ここまでの禍福編は?↓

11月1日:
・第二次・死滅回游 開始
・高専特級戦力と『天逆鉾』 完全に行方不明(ロスト)

〈禍福たちは一ヶ月、関東の民間人のシェルター誘導にあたる〉

12月1日:
・高専特級戦力が日本中で散り散りに再発生(リポップ)
・禍福たちは、『喇誑(ラテブラ)』と共に京都を目指す → 第一幕のストーリーへ。

12月11日 ← イマココ



第二幕 東海ブロック -安曇野禍福編-
第2部 29話『Shinsekai』


 

 第二次・死滅回游開始から41日目――。

 

 

 

 ――2025年12月11日。

 滞留区画(ブロック):『東海』――愛知県某所。

 

 安曇野禍福とその一行は、新東京高専学長・日下部敦也の命令に従い、関東区画(ブロック)を抜け、京都へと進んでいた――その、道中において。

 

 

 

 見える限り、真っ平らで黒焦げの荒野に出た。

 

 

 

「なんだ、これ……どうなってんだ……?」

 

 

 

死滅回游・泳者(プレイヤー) 安曇野禍福(あずみのかふく)

所持得点(ポイント) 83 消費得点(ポイント) 245

 

 

 

 その少年は、周囲へ首を巡らせ目を疑う。

 

 比喩でもなんでもなく、焼き焦がされた地面のみが広がっていた。

 なんの文明の名残も、人の足跡さえもいない。強いて言えば――巨大なタイヤ痕のみが、まるで地上絵を描くようにして広大に刻まれている。

 

 ――どれだけの生き残りがいて高専シェルターに誘導せねばならないか、次に通過する世紀末はどんな様だろうか。などと考えていたが――。

 

 

 

(まぁ。それならそれで、都合がいいか)

 

 

 

 ただ進むだけでいい。ならば、このまま京都に一直線あるのみだ。

 

 驚きはしたものの、彼の足は感慨なく動き続けていた。平静に迷いなく、優れた体幹で狂いなく、機械のように前進し続けていた。

 

 

 

死滅回游・泳者(プレイヤー) 婪佳久(らんかく)

所持得点(ポイント) 183 消費得点(ポイント) 67

 

 

 

 その隣を歩む、高専制服も肌も髪も白一色の少女――婪佳久(らんかく)もまた、目の色ひとつ変えずに周囲を分析する。

 

 

 

「……コガネ、ここで最も点を稼いだ泳者は?」

 

浪江零(なみえれい)だぜ! 滞留区画は京都大結界(コロニー)だぜ!」

 

(――とんでもない面制圧力。とっくに残穢は消えてる。簡単な推理しかできないけど――明らかに単純な質量攻撃の痕跡じゃないよな?)

 

 

 

 名前を覚えるのは損にはなるまい。京都は一番の激戦区なのだ。いずれは接敵するだろう。

 

 敵の気配がなかろうと、二人に慢心などない。

 既に今の日本には、タダで素通りできる道など残っていないことを骨身に染みて理解し切っているからだ。

 

 特に探知能力に長けた婪佳久は、あらゆる事態――呪力探知範囲外からの超高度攻撃をも考慮し、猟犬じみた硬い面持ちで、神経を尖らせていた。

 

 

 

「どれどれ? へぇ、結構点高いじゃない。名前からして、近代の人間なのかしら」

 

「えー今ドキの人なのにこんな人殺せんの? 昔の呪術師じゃないの~(よろず)サン?」

 

「そりゃ割合的にはそうかもね、数年前に死んだヤツだって過去の人間なんだから。実際しばらく現代術師と交戦してないし……冷静に考えて受肉ですらないマジの復活ってどういう事なのかしらコレ。不特定多数にそんなのできたら宿儺は苦労してないわよ……?」

 

 

 

 そのまた隣には、笑顔の仮面をつけた『呪いの呪霊』の残穢、『喇誑(ラテブラ)』と、何よりの不安の種――なぜか味方ヅラをしてついてきた平安猛者の万年ストーカー女がいるのだが、それはさておき――。

 

 

 

「――『補給物資』が落ちてる! しかも真新しい――まさか、生存者が!?」

 

「え、待っ――ああもう!」

 

「んなもんいるわけないでしょ、って聞いちゃいないわね……」

 

 

 

 それを発見するや否や、急に禍福は駆け出していた。

 (よろず)の発言なぞ聞く耳もない。

 婪佳久は慌てて反応し追いかける。その先には――、

 

 

 

 

「あれって、まさか――おーい! 綺羅羅(きらら)さん‼︎」

 

(えっ、あれが噂の? 禍福面識あったの?)

 

 

 

 言うまでもなく非常時につき、恥も外聞もなく、禍福は手を振って大声で名前を呼んだ。本当にいるらしいとわかって婪佳久も目の色を変える。

 

 地平線の彼方。彼の目は確かな人影をとらえていた。

 

 どういう原理か――まるで木の蔓を掴んで飛び移るターザンのように、コインを左右交互に前へと投げ、引力に引かれて――こちらに飛んでくる呪術師の姿を。

 

 

 

「おっカフちゃんじゃ〜んひっさしぶりー! ってうわぁハーレムパーティじゃんよモテ期なのーっ!?」

 

 

 

 ――星綺羅羅。

 言わずと知れた呪術高専の問題児にして、秤金次の相棒。

 

 停学処分を幾度と課され辛うじて卒業したものの、呪術総監部に属さずフリーの道を行き、しかしながら五条悟と太いパイプを持つ。

 安曇野禍福とは高専入学前に交流があったものの――側から見れば謎すぎる人物。それが、

 

 

 

 ――雨の如く降り落ちてくる、軽く見積もって一万体を超えるバイク呪霊に追いかけられ、全速力で逃げてきていた!

 

 

 

「まぁいっか、ちょうどいーや手伝って! ここめっちゃ上から呪霊の大群来んの! 金ちゃんは大阪区画(ブロック)に飛ばされたし、ここほとんどマーキングできるような物ないし、フツーに私5体以上相手は手に余るんだわ!」

 

「了解です。加勢します――!」

 

「ひゃわっ、え前より速っ!?」

 

 

 

 安曇野禍福は、迷いなく加速し、綺羅羅を抜き去る。

 風切りを残して疾走する彼の体は、落下中の呪霊へと飛び移って足蹴とし、跳弾する銃の玉のように――呪霊の群れを悉く、猛スピードで轢き殺していく。

 

 

 

「いやぁすごいすごい! 今なら金ちゃんともそこそこやれるんじゃない?」

 

「綺羅羅さん、禍福にはマーキングしないで! 踏み間違えたら死ぬんですアイツ!」

 

「……えっなにその縛り、なにそれ、え? 怖っ」

 

 

 

 婪佳久は綺羅羅に最低限の声をかけ、以後、呪霊殲滅に全神経を動員した。

 

 彼の疾走を阻められる者はいない。いてはならない。

 婪佳久が頭上に掲げた両手の指先から、放たれる全方位への指向性呪力放射(ホーミングレーザー)が幾重もの(サーカス)を描き――彼の挙動を先読みし、周到かつ高速にルートを補強していく。

 

 

 

「うわぁ。こりゃあ、そっちも苦労してそうだね……」

 

 

 

 数を質で蹴散らす制圧劇。

 狂いなき一糸乱れぬ連携。

 

 もはや空回りする余地さえない、打算に徹しきった正確無比の立ち回りを仰ぎ見て――綺羅羅もまた、内心で同情しつつも手当たり次第に呪霊を殴り祓う。

 

 

 

「しっかし、空から『バイクっぽい呪霊』ばっか落ちてくるって。一体ここで何があったんだろ……名古屋ってバイク乗りの楽園なんだっけ?」

 

 

 

 と、そんな時、土煙を割って珍重な顔が出てきた。

 

 

 

「コンニチワ、はじめまして! 今日はイイ天気ですネ!」

 

「うわっ呪霊の生徒いんの!? しかも残穢? なんで残存してんの?? てかキョンシーみたいな制服じゃんカワイ〜♡ 高専(ウチ)もずいぶん個性豊かになってんね!」

 

 

 

 そう。『呪いの呪霊』の残穢。拘束具(せいふく)に包まれ、「ワタシ無害ですよ」とばかりに笑顔の面を被った黒人形、喇誑(ラテブラ)である。

 

 彼女(?)もまた、呪霊を殴り潰しつつ、やや慌てた様子で綺羅羅に駆け寄って、こう言った。

 

 

 

「綺羅羅さん! ちょっと相談いーでショウか!? 今の禍福ヤバんです!」

 

「えっ、真っ白い子の方じゃなく、禍福くんが? 絶好調にしか見えなくない?」

 

「両方ヤバいんだけど、まずは禍福なんデス! なんつーか、見通し定まって覚悟キマりすぎちャったとゆーか! とりあえず何があったかってーとデスネ……」

 

 

 

 そんな会話が交わされつつ――戦闘は一方的に進んでいく。

 

 加速し、呪力出力を増しながら、少年の形をした殺意は駆け抜ける。婪佳久もまた生き急ぐように攻撃を飛ばし、ひとつでも多く彼の行動回数(てき)を減らす。

 

 なす術なく減る一方の呪霊の群れを肴に――(よろず)は見物に徹していた。

 

 

 

「うーん、いいわねぇ。相変わらずあの二人は不器用で全力で♡ ……けど今は、ちょぉっとだけ女の方が不甲斐ないかしら?」

 

 

 

 その光景に何を見たのか、またひとつそんな妄言を垂らす。泳者(プレイヤー)でありながら点を欲しがる素振りも見せない彼女であるが――実際、このパーティで一番強いのだからまた厄介だ。

 

 

 

「もはや最近はカレに話しかけようとすらしなくなったし。なにを今さら空気読みあってんのよ? うーん。これが現代でいう倦怠期ってやつなのかしら……」

 

 

 

 表情豊かに万は顔をしかめる。

 

 ――彼女の一存によって、安曇野禍福・婪佳久は、いつ殺されてもおかしくない。

 

 気まぐれで味方ヅラするようになったが、ひとたび謀反を起こされようものなら、彼女の領域を前に為す術がない。

 

 ――まぁ、だからどうするという事もない。殺される場合なんて考慮する意味がない。強いていうなら、気まぐれを起こされる前に、彼らは一刻も早く京都に向かう必要があった。

 

 

 

 二人はただただ、目の前の呪霊の雨を晴らす事のみに専念する。その終わりも最早秒読みだった。空を覆う影達は、既に数えられる程にまで減っていた。

 

 

 

 と――次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 彼ら全員が、ほんの一瞬、意識を失ったのは。

 

 

 

 

 

「――今度なんだ、ここはど――痛っで!?」

 

 

 

 

 禍福は意識を取り戻すと同時、転倒する。

 事故を防ぐため、条件反射でその体は術式を解除していた。

 

 ――つい先ほどまで空中にいたはずなのに、気づいた時には地面に落下していた。

 

 

 

「いったた、何が何だか――でもナイスだよ、喇誑(ラテブラ)ちゃん。咄嗟に掴んでくれなきゃ危なかったかも」

 

「いぇーい! とりま禍福に飛びついて正解だったカナ?」

 

「どけ! 頼むからどいてくれ周り見えねえだろ!」

 

 

 

 それも明らかに人工物の地面、明らかに場所が違う。

 

 自分に覆い被さる女(?)二名を押し除け、上体を起こして周囲に目を配る。

 

 とっくに景色は、その姿を変えていた。

 

 

 

「結界、しかもこれほどの呪力濃度。まさか――呪霊の腹の中にでも取り込まれたのか!?」

 

 

 

 そこは、そう見まがうほどの呪力に満たされた――名古屋市営地下鉄だったのだ。

 





名前イカつい女しかいねーなこのハーレムパーティ。
乙骨は次の章で登場予定なんでもうちょっとお待ちください。



【補足 禍福と婪佳久の殺した数】

2級以上の呪霊殺害or泳者の殺人を、第一幕終了後に、326回も行っています。11月から総合すると、578回は殺してます。

……いまいち伝わらないですね、こう言い換えましょう。
点だけで見れば、11月の業務一ヶ月分を、12月以降は十日足らずで行った事になります。

なまじ禍福が一級術師で生半可な過去呪術師では相手にならず、高専『最速』なので捌けてる物量ではあるものの、明らかに殺しすぎです。オーバーワーク極まれりです。

えっ、乙骨は開始3日目(12月3日)で既に300点以上ゲットしてたろって?
いいだろ、現代の異能だぜ?



あっ万は点数変動ありません。ひたすらサボって着いてきてるだけです。ここまで出る幕がなかったです。禍福がちゃんと強かったので。



【オマケ 禍福と綺羅羅はなぜ面識があるのか】

実は綺羅羅は第一部開始前に禍福と会ってるのですが、
「金ちゃんにソッコーKOされた新米呪術師」以上の印象はありません。



海外案件が多発した昨今、秤・綺羅羅も国外任務をしていた時期があったのですが、そこは金ちゃん。

「ここなら五条先生の目も届かねえ!」と懲りずに任務そっちのけで呪術師対戦配信サービスを持ち出し、むしろ海外の呪術的土壌を推進していました。

流石に呪術総監部は看過できず、かといって人員を割けず、たまたまその国で武者修行してた禍福(この頃はフリーの呪術師)は使いっ走りとして雇用します。

禍福は最初こそ客として潜入したものの、なんだかんだでバレて、秤と戦う羽目に。結果は圧倒的実力差で即効ボコされての大敗でした。

とはいえ上にタレコミが伝わっていると認識した秤は「バレちゃ仕方ねえな」と諦め、「ぶっちゃけお得意様だったがテメーに『熱』感じた事ねぇんだわ」とかいって自分の客だったその国の悪のフィクサーをついで感覚でボコして、なんだかんだ人助けして任務を果たしたのでした。

めでたしめでたし〜。
……うん。やっぱ無くても成立する裏話だわこれ。それほど掘り下げる意味ないわこれ。

あっちゃんと秤も出します。大阪編を待て。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。