【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
グロ注意です。
【あらすじ】
仲間と完全に分断された四級術師(元特級)
正体不明の襲撃者と戦闘を開始する――。
呪力放射を乱れ撃ちしながら、
真白の少女の開かれた両手の指先。
その10本の砲塔が光線を連射し、牽制を浴びせる。
だが、彼女の敵――恐竜人間は、容赦無く追い縋る。
「――しゃぁっ!!」
(肉体変化と呪力強化――フィジカルに特化した術師か――!)
鱗に塗れた硬い皮膚で耐えての正面突破。
個の強さで物量を踏み越え。
走力の差によって距離を詰め――勢いそのまま、婪佳久に殴りかかる。
(やっぱ相性最悪だ、こっちは身体強化できないってのに――!)
ダメージは出ているが傷が浅い。
婪佳久の火力と
そんな圧倒的不利であっても、真白の少女は目の色を変えなかった。
「我流『
まず、呪力探知範囲を周囲10mに限定。
これによって超高精度・高速度での反応を実現する。
「
自身を中心に旋回、加速させ――10本の『光輪』を用意し出迎える。
――接触すれば、収束し切った0距離砲撃の10連打でカウンターできる。確実に隙が産まれる。その間隙に最大火力を叩き込む。
目算のもと訪れる、接触の瞬間――。
その『光輪』は、消された。
「は――、ぁうッ!?」
咄嗟、彼女は身を捩り、致命打を回避した。
腰を落とし身を屈め、己の首を狙う『刃』を避け、周囲の呪力をありったけ掴んで――自身を吹っ飛ばし、無理やりに距離を取る。
「――てめぇッ、なんでそれを! そいつは禍福のもんだ!!」
最短の自傷行為により生存を勝ち得た少女は、
転げまわって顔をあげ、憤怒と共に血を吐いた。
いくら相手が
身の毛もよだつような不協和音の集合体であろうとも――アレだけは、見過ごせない。
間違いない――特級呪具『
第二次・死滅回游開始時、11/1に安曇野禍福の手元から消失した呪具。
同時に『
それを何故か、この男が持っていたのだ。
「なに言ってるんですか。この呪具は『師匠』の――おおっと?」
そして次の瞬間、彼の手元からも消える。
(今のは結界術の気配! けど
「……流石に、このズルは許してくれませんか」
さほど期待してもいなかったのか、落胆は短かった。
彼は空になった両手で、爪を剥き出しにし、再び走り出し襲いかかる。
「コガネ。アイツのプレイヤーネームは?」
「『
(巻き込まれた外国人? 術式のせいでおかしくなってる? いや違う、殺意に確固たる意思がある――式神の大群が来ない辺り、結界の主が寄越した鉄砲玉ってとこか――)
底の見えない相手だが、だからこそ婪佳久は決意を深めた。
誰であろうと――あの呪具を持っていた時点で、敵であることは明白。
それに、間近で感じた婪佳久には分かる。
(――絶対に逃がせない。何が何でも狩る。そして情報を吐かせる!)
――コイツは、『悍ましい』。
絶対に生かしてはおけない。
引く理由など、微塵もなかった。
―
――
―――
「師匠ってのは誰だ!? てめぇさては
「考え事をしている場合ですか?」
「くっ……!」
二度目の接近においても、牽制は通用しない。
平時であれば、呪力を通して返答の真意を確認できたが、猶予はなかった。
(でも
「――がっ、ァアaAAAAAAA!?」
「ぐ――!?」
男の蹴りが入り、婪佳久は受け身も取れずに蹴飛ばされる。
対応できなかったのは無理もない。
蹴りの最中、彼の足は――バキボキと音を立て、人のそれでなく逆関節へと変わり。
その先端、生え揃った鉤爪が、婪佳久の左脇腹をこそぎ取ったのだ。
(――やっぱりだ、『暴走』している! 自分の意思で変化させてるなら、呪力の『負の感情』から動きを読めたハズだ。
治癒に使える呪力は限られている。
ホームから線路に転げ落とされ、金属の柱に身を打たれる鈍痛の最中でも、
最低限内臓がこぼれない程度の穴埋めをして、裂傷まみれの真白の少女は顔を上げる。
男の姿は、変貌していた。
「フゥッ、フッ……あぁ、そう言えば。開示した方が、より効果が上がるんでしたね」
その体は絶え間なく、目まぐるしく変化が起こっていた。
だが、これまでとは違う、決定的な変貌が起きたのだ。
その姿は――
二本足で佇む肉食の蜥蜴。人間大の爬虫類の原型。
図鑑に描かれた通りの
あんなになっても自我は残っているらしい――その目に、人と同じ理性が備わって見える光景は歪さを極めている。
「――私の術式効果は『進化』です。今回は、恐竜を選ばせて貰いました」
(あの腹に浮かんだ呪印、
術式開示に伴ってか――腹部の茶色い皮の上、蛍光色の幾何学模様が浮かび上がる。
星座のように描かれた、10の円と22の直線。その一番下の円1つのみに、光が灯って見えた。
その意匠について――婪佳久に考察する時間はない。
(また来る――!)
「ぐぁあ、アアアアAAAAAA――!!」
変貌を遂げた肉体は、線路へと降り立ち、体重を増しながら迫り来る。
婪佳久の
呪力強化された原始獣は身を翻し、本能に従いダメージを最初に留め、軽快に包囲網を潜り抜け――彼女の目前、その大顎を開いて襲いかかる。
(この質量差じゃ接近戦できない、ロングレンジで仕留める!)
「我流『簡易領域』展開、術式反転――『
否、対応できないなら誘導すればいい。
コースを絞られ、0距離で撃たれるここ一番の最大火力。
正の呪力と螺旋、二つの特性をかけ合わせ、『摂取』の効果を『排出』に反転させた一撃――だが。
「がぅぁああああAAAAAA――ッ!!」
「こいつ――!?」
――もう一度言おう。その身は常に変化し続けている。
大火力に焼かれた肉体は、欠陥があろうとなかろうと肉を生やす。
――トリケラトプスの角を。プテラノドンの翼を。首長龍の水ベラがついた四つ足を。片っ端から恐竜の身体部位が乱立する違法建築は質量を増し――ジリジリと呪力光線に抗い、前線を押し広げていく。
(ああもう、
図体が爆発的に膨れ上がり、無秩序な肉細工が次から次へと生え広がっていく。
二本足に四本足、あらゆる足が腰から生え、腰は二股に、三股に枝分かれ。
あらゆる部位が同時多発的に隆起しては融合し、崩壊しては再構築され、異臭と蒸気を撒き散らし続ける。
カオスを極めた悪意の混合――対して、婪佳久は。
「ああもう――仕方ねぇな」
――『呪力切れ』を狙っての消耗戦を選んだ。
出力最大を維持。周囲の呪力漏出を吸い上げ、ひたすら術式反転を発動し続ける。
どんな体になろうと、『六眼』がない以上は、
呪力を自分以外から捻出できる婪佳久ならば、呪力量の一点で勝ち残れる――ただし。
「――ぶ。ぐ、――ぅ、う……ッ!」
――それは婪佳久が、術式負荷に耐え切れた場合の話だ。
血飛沫が水位を増し、白い少女の足元を穢していくが、もはや彼女の目に入らない。
高度な術式行使による脳負荷に、歯を食いしばって耐えるだけでもやっとなのだ。
脳が沸騰したが如く汗が湧き出る。とっくに鼻血も血涙も出せない青い細身は
それでも許容以上の情報量と異物感を詰め込まれ、ひたすらに吐き気だけが増大していく。
(――術式による肉体変更は基本、一時的なものだ。でもコレは一方通行だ、
それでも婪佳久は一歩も引かなかった。
事ここに至っては相撲勝負だ。破壊力で押し合い、負けた方が引き潰れる。
この体制を維持し切る事さえできれば。いずれは勝ちの目が――!
――否。
「――くぅっ、しまりました! もう次の
(今度はなにが――!?)
時間をかけるのは、
肉体の更新は、ジュラ期を超えて白亜紀すらも超え、再び時代の節目に至り――。
「――う、そ……」
――『進化』の術式は、その真価を発揮する。
恐竜の塊は爆裂するように、
―――
――
―
――アーサーの『進化』は、天元の不死によるものとは意味合いが異なる。
生命は『弱く増えやすくなる』ことで繁栄した。
その優位性すらも再現でき――
これら全てを絶滅させる以外の勝利条件は、消えていた。
――不可能だ。
分かった時には遅かった。
もう、婪佳久は完全に詰んでいた。
(――見誤った見誤った見誤った‼︎ こんなのはもう、既存呪術の枠にすら収まらない!!!)
逃げるしかない。弾かれたように婪佳久は走り出した。
トンネルを通れば、別の駅に行けるはずだ。
体はまるで自分の状態など忘れて軽々と、一刻も早く、少しでも前進して逃れようとした。
「――ッ、いたいいだっいたいいたい!!」
その足掻きに比べるべくもなく、翼は自由で、速かった。
容易く飛来した包囲網が彼女に突き刺さる。
全方位から集られ、嘴に啄まれ、羽を散らすように砕かれた白肌が血を滲ませる。
(
変化の速度がもはや視認の限界を超えていた。
頭を手で覆おうと、髪が無惨に引きちぎられ、指が少しずつ持っていかれる。
波のような羽音の中で、反響する通路において、その苦鳴は掻き消えそうなほど小さかった。
(呪力を周囲に発して押し返すか? いや抵抗するな! 一体でも殺せば自爆特攻の有用性を知られかねない。この数で『
痛みと、こうも無様に甘んじなければならない屈辱と――今の自分は果たして走れる体なのか、それさえわからないまま婪佳久は暗闇を走り抜け、
――トンネルを出た先は、さっきと同じ駅だった。
「はぁっ、はっ……は」
半ば、分かっていた。
結界の主が、自分を逃す道理などない。
トンネルを通って発生する空間転移が、オートで組まれた機能だったなら逃げ道になっただろう。だが今の挙動は――。
(……あー。やっぱ結界の主の差金だったか。ならまぁ、そうだよな――連携して、狩るよな……)
結界の主は、全てを手動で運用している。
つまりトンネルを通るのは、迷い込んだ者にとって『作為的に』不利に働くのだ。
――敵と都合よく分断されるなんて、あり得なかった。
「……」
どさっ、と少女は頭から崩れ落ちる。
感慨などなく、ただ立てなくなったから倒れ伏した。
どこまでも勤勉な鳥たちは、その背に生き急ぐように殺到し、軽くなった身を押し倒し、転がして、覆い被さるように羽を散らす。
辛うじて胸は上下していたものの、ももはや少女には身を丸める力も残っていなかった。
元より、呪力による肉体強化ができない生身だ。
しかも『正の呪力』に使える呪力量は術師等級において四級相当という少量――もう、とっくに底をついている。
無造作に放り出された白い体は、端々から抉られ、神経を嬲られ痙攣しながら、溶けるように解かれて、赤と黄色の中身を加速度的に広げていく。
不毛と理解しながら、傷口が広がるだけと分かっていながら不満足に足掻き、声にならない苦鳴を出し続ける。そんな生きた死体が転がっていた。
「――、――?」
その死にきった神経が、残った片目が、辛うじて最後の変化を認識する。
それほどまでの異物があった。
「――――◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️――」
――もはやそれは、鳥ですらない◼️◼️◼️だった。
遥か遠い未来、恐竜という種の行き着く可能性の一端。
地球に降り注いだ宇宙線を耐え抜くため進化し、
婪佳久は直感する。きっと五体満足でも、自分にはコレが何か分からない――現生人類は、コレを理解できる
名状し難き、ひたすらに冒涜的な肉塊としか認識できないだろう――。
(あー、そっかぁ。いよいよ、か……)
地響きが迫る。理不尽な死が目前にある。
少女は目を閉じようとする。呪術師として生きる以上、いつか来るとは分かっていた必定が今なのだと悟る――そうなること自体には、何ら疑問などなかった。
しかし、蝋燭が消える間際の火というべきか。
ようやく冷静さを取り戻した、最後の意識で。
(あれ。おかしいな――なんで、嫌って思ってんだろ?)
呪術師という殻で固められた
あり得るはずのなかった、その
次回は5/24です。
もちろん冥冥様も後々登場予定です。
【補足】アーサーはいかなる『進化』をしても必ず呪力を扱えます
まず誰やねんコイツ。って疑問は一旦さておいて。
今回は大きく四つの形態がありました。
①恐竜人間フォーム
②恐竜フォーム → 恐竜全部乗せフォーム
③無数の鳥フォーム(始祖鳥からスタート)
④???フォーム
ただ、術式行使である以上、呪力なしには成立しないため、
必然的に呪術師としての性質は残ったまま『進化』していく事になります。
また、本来術式は脳で制御するものですが、
アーサーの『進化』では術式発動時(種族を選択しスタート)以外に制御できるタイミングはありません。
スタートボタンを押したら、術式はひたすらに『進化』し続けます。制御次第では進行速度を緩められるものの、一方通行には変わりありません。
鹿紫雲みたく「一回それきり」の術式です。
(今回は『恐竜』という種を選択したわけですが、
まず人体を恐竜という別存在に変える必要があり、①がそれにあたります)
【オマケ】婪佳久のビームと『グラニテブラスト』の比較
同時に撃ち合った場合、どう考えても『グラニテブラスト』が勝ちます。
まず単純威力は石流のが上です。
婪佳久は術式反転でやっと『グラニテブラスト』と撃ち合いの土俵に立てるレベルですかね(威力だけなら2018年リカ接続中の乙骨よりやや劣る程度って書くとすごい)
婪佳久のが勝ってる点をあげると、
まず出の速さ。そして何より持続力です。
威力を維持できる時間の長さであれば、婪佳久は『グラニテブラスト』以上と言えるでしょう。オーバーヒートや呪力切れがないので。
えっ、長い脳負荷に婪佳久が耐えれないじゃんって?
そもそも身体呪力強化できないんじゃフツーに推し負けて即蒸発がオチだろって? そうだね()
結論! 石流はやっぱり強い!