【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

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第2部 38話『よあけのうた』

 

 ――循環する『魂の通り道』。

 呪術において、肉体を破壊された魂は、ここを通って初めて死者となる。

 

 ここで何が見えるかは、個人差がある。

 

 空港に待つ仲間達との憩いの場かもしれない。

 或いは、魂に関する術式の残滓か――。

 

 

 

「……なーぁんだ。結局やられちゃったのか」

 

 

 

 今回は、後者だった。

 

 孵らなかった水子の魂。呪いそのものになりかけ、なり損なったそれを――ツギハギの人形が歓迎していた。

 

 

 

「んで、結局どっちなの。人か、呪いか――ああいや、君には聞くまでもなかったか。見た限り陀艮(だごん)みたく、呪霊の本能で動いてただけだもんね」

 

「まっ、しゃあないしゃあない♪ 俺みたく特例でもなきゃ先は長いよ、精々また頑張りな〜」

 

 

 

 同情半分、無関心半分。それでも同族意識の言葉を吐き、彼はヒラヒラと手を振ってくる。

 

 対して、水子の黒影は――。

 

 

 

「――あ、ごめん。もう行くから」

 

 

 

 当然のように口を開き、明後日の方を向いていた。

 

 

 

「えっ、喋れたんだ。いつの間に――いやだから、お前の魂はもう『ここ』に来た以上は……」

 

「違う。呪霊じゃなく、人として」

 

「……、はぁ?」

 

 

 

 形だけ可哀想ぶりつつも事実を伝えていたツギハギ顔は、硬直し腑抜けた声を漏らす。

 

 

 

「感謝はしてるよ。アナタがワタシの魂にも刻んでくれた記憶。カフクとランカクの幼い記憶が、人を知る土台になった」

 

 

 

 淡々と、黒影はこう答えた。

 

 

 

「だから、()()()

 

「さっきから何を言って――ソレは!」

 

 

 

 なるほど確かに、通常の呪霊であれば問われるまでもない。だがソレだけは――『喇誑(ラテブラ)』だけは例外だ。

 

 

 

「初めて、選べたんだ。誰に望まれたわけでもない、自分自身の意思で」

 

 

 

 そう。正の呪力が扱える。

 

 ――『呪いの呪霊』になりかけたからこそ、呪霊のはずのそれは、人の術まで抱えている――人としての未来の切符も、持っている。

 

 

 

「これまで呪いだったけど――ワタシこれからは人になるね! 1000年なんて待てない。だってもう、あるべき形を知ったんだもの!」

 

 

 

 黒い影は(あな)を輝かせていた。

 

 ――求められた事を、求められたままに。

 それが呪いの呪霊。

 それが新生・呪いの王、だった。

 

 けど、彼が教えてくれた。それだけじゃないことを。

 

 

 

『またな……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 だから、次がある。

 

 ――天逆鉾で呪いである事を剥ぎ取られ。

 あの最後にくれた言葉があるから――。

 

 

 

「てか一緒にしないでくれる? ワタシ呪力で作られた側じゃなく、元から呪力決める側なんだけど?」

 

「……はぁ? 死ねよオマエ」

 

 

 

 ……真人にとっては、理解できるはずもなかった。

 呪霊として絶対にあり得ない発想だった。

 

 彼は人間の負の面の集合体だ。

 だからこそ絶対に人間そのものにはなれないし、なろうとさえ思わない。

 

 だからただ口をポカンと開ける他になく、

 

 

 

「残念もう死んでまーっす! じゃっ、またね! ツギハギのキューピッドさん!」

 

「ちょっ、なんだそれ自由すぎるだろ、俺らバカみたいじゃんか! チクショー!!

 

 

 

 置き去りにされる。

 無理解の叫びを、ケラケラと笑い飛ばして水子は世界を逆走する。

 

 自分で選んだ、自分だけのため。

 他者の悪感情でしか自己を定義できなかった、これまでとは違う。

 自我に目覚めたそれは、失った足を生やし――現世へと這い上がっていく。

 

 

 

(たとえそれが二人にとって余計なお世話でも。次が選べるのなら、ワタシは――!)

 

 

 

 そう――人として、惜しまれる死が欲しいから。

 

 

 

――

―――

 

 

 

 ――安曇野禍福は『爆死』した。

 最終ラインに立っていた彼の喪失は、戦線の崩壊を意味する。

 

 だが、『喇誑(ラテブラ)』は迷わない。

 

 

 

「キララさん! ワタシ蘇生に集中する! なにがなんでも時間稼いで!」

 

「――え、できるの!? どう見たって死――」

 

「できる、やって!」

 

「おっけえ信じた!」

 

 

 

 焼死体を拾い上げながらの断言。

 それを聞き、星綺羅羅は即座に彼から目を離す。疑う猶予すらなかった。

 

 さっきまでは『喇誑(ラテブラ)』が頭数を抑えていたが、それすら今はもう見込めない。

 

 星綺羅羅は独力で――目の前の式神の大群すべてを相手しなければならないのだ!

 

 

 

(しっかし簡単に言ってくれるなぁもう!)

 

 

 

 ――超小型式神(ミツバチ)の洪水に呑まれる。

 絶対に手に負えない数。できるのは致命的な崩壊を先延ばすだけ。

 

 全身全霊で『星間飛行(ラブランデヴー)』で手捌きしつつも察する――絶対にこのままじゃ保たない、いつ崩されてもおかしくない!

 

 

 

(この際、量産型が拾いきれないのはいい。問題は紛れて行動する女王蜂(オリジナル)! あの上位個体には『星間飛行(ぼうがい)』が効かない。けど止めないと――!)

 

 

 

 天敵は健在だ。その場しのぎ程度では破滅が目に見える。

 綺羅羅は瓦解した戦線を回復させるため、打開手段を一刻も早く見つけねばならなかった。故に、

 

 

 

「こうなりゃ藁をも掴むっきゃないか! 生き残り三人組、何でもいいから術式使って!」

 

「「「もうやってます!」」」

 

 

 

 ここまで着いてきた元一般人三名へ、綺羅羅は呼びかける。

 

 言われるまでもなかった。

 彼らとて命の危機は理解していた、黙って死んでられるハズもない。

 

 

 

「うおお寄るな寄るな! 頼むから一匹くらい見落としてくれ可愛げねぇな本当!」

 

 

 

 小林弘(こばやしひろむ)平面結界(とうめいマント)を振り撒く。

 ――爆死した禍福は、『喇誑(ラテブラ)』にくるまれる形で庇われていた。その『喇誑(ラテブラ)』の表面に、呪術的観測を免れる結界を付与していた。

 

 これで『喇誑(ラテブラ)』が狙われる事はあっても、禍福が直接狙われることはない。

 

 

 

「お願いします死なないでください殺せる人いなくなっちゃいます! なんか両親思い出すなりしていー感じの流れで生き返ってください!」

 

 

 

 吉田拓郎(よしだたくろう)は、『五感を誤魔化す』術式を禍福にほどこす。

 その手の赤子は彼のおかげで、攻撃を直撃しない限りは『高い高いされている』と認識して、絶望的状況なぞ何処吹く風と笑っている。

 ――だが焼死体に対しては焼け石に水、やらないだけマシ程度の効果しか見込めまい。

 

 

 

 が、最後の一人だけは違った。

 

 

 

「あーもう馬鹿! バカ男! 全員助けてくれるんじゃなかったの!? なんで最初に死んでんのよ絶対女泣かせでしょアンタ!!」

 

 

 

 

 南紗奈(みなみさな)が、引き金を引く。

 隠し持っていた何の変哲も無い拳銃。しかし命中した瞬間。

 

 ――群れ全体が、ドミノ倒しのごとく一斉に崩れた!

 

 

 

 

「えっそんなことできたの!?」

 

「長くはムリ! 呪力全然扱えないんで1分も保たない!」

 

「上等、そのまま自衛して! 量産型は任せた!」

 

 

 

 伊達にここで生き残ってはいない。術式負荷で鼻血を起こしつつ、彼女は慣れたようにリロードしつつ次々と妨害を撃ち込んだ。

 

 

 

 ――南紗奈(みなみさな)の術式効果は、『ダメージが別の不調に置き換わる』。

 

 小規模の現実改変だ。銃撃は着弾と同時、威力に応じた規模の体調不良――かぶれ、内臓炎症、筋肉痛などに置き換わる。

 

 簡易的なプログラムでのみ行動する量産個体は、自身に発生するハズのない症状(バグ)を起こしたのだ。

 

 

 

 結果――一糸乱れぬ連帯挙動に乱れが発生。

 

 紛れていた上位個体(オリジナル)の存在が、露見する。

 

 

 

「見つけた、今度こそ通さない――術式拡張!」

 

 

 

 綺羅羅を指を指し――奥の手を持ち出す。

 それは、星間飛行(ラブランデヴー)』の攻撃転用。

 

 5つのマーキングを1対象に集中。

 相反する『弾く力』を重ね、増幅させ――物理攻撃に転用する。

 

 擬似的な、無下限呪術・術式反転『赫』の再現。

 

 

 

星間飛行(ラブランデヴー)――恋離飛翼(ジューンブライド)』!!」

 

 

 

 飛来する式神を『不可侵』もろとも、抵抗不可能の衝撃が弾き飛ばす。

 呪力のない攻撃のため、ダメージは見込めないが距離が稼げた。

 

 ――こんな強引な使い方なんて想定されていない。極めて高い術式負荷で脳を壊され、鼻血を漏らしつつ――。

 

 

 

「さぁ、ぼちぼち復活してくれてもいーんだよカフちゃん!」

 

 

 

 休む間もなく防衛戦を続行。

 汗だくだくなまま、綺羅羅は永遠にも思える一瞬を捌き続ける――。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 拘束解除された『喇誑(ラテブラ)』は、任意での身体改変が可能となる。

 

 ――人の感情が呪力を産み呪霊を産む。

 呪霊は呪力によって形作られる――転じて、『受愚戴転』による呪力特性変更は、呪霊を変身させる事すら出来る。

 

 ただし現状の『喇誑(ラテブラ)』――呪霊としての核を失った残穢では、いかなる改変結果であろうと、必ず全性能が劣化する。

 

 

 

 かくして、『喇誑(ラテブラ)』が選んだ姿は――。

 

 

 

「――カフク。全部、キミのお陰なんだよ。ワタシがここにいるのも、婪佳久(マミー)だって」

 

 

 

 黒い卵と、人形であった。

 漆黒の水球の中、四肢を落とした少年の焼死体を、人形は愛おしげに抱き上げている。

 笑顔の仮面は役目を終え、剥がれ落ちて、隠れていた慈悲深い微笑が露出し。

 

 卵の裏に広がる呪力回路(もんよう)――曼荼羅を通して、『正の呪力』が彼に注ぎ込まれいた。

 

 

 

「あなたが自分をどう思っていたとしても、キミが走ったから、今があるの」

 

 

 

 まず、彼の残った胴体を『喇誑(ラテブラ)』は蘇生する。

 

 虎杖の死刑を執行した乙骨と同じ手法だ。止まった心臓に無理やり正のエネルギー(せいめいりょく)を与える。

 肺も同様だ。体内に刺さった呪具の破片・大量出血は呪力で焼き切って踏み倒しながら治癒し、無理やりに動かす。

 

 ――本来なら絶対に生還が有り得ない――だが、それでも。

 

 

 

「嬉しかったんだ。少しの間でも一緒にいられて、クラスメイトになれて。あなたが見せてくれる世界は、いつもワタシの視野を広げてくれた。どこまでも着いて行きたかった。でも――こっちに来ちゃダメ」

 

 

 

 この二人だけは例外だ。

 

 ――『喇誑(ラテブラ)』は、彼に祓われた最期の経験から、安曇野禍福の身体構造を知り尽くしている。

 

 たとえ『正の呪力』の扱いは婪佳久に劣るとしても、安曇野禍福にだけは――『大当たり』時の秤金次を超えた治癒効率を発揮できる。

 

 

 

「一回だけ、追い返してあげる。すぐは戻って来ないでよね」

 

 

 

 胴体の蘇生が完了した。文字通り奇跡的に、彼は息を吹き返す。

 

 すかさず、『喇誑(ラテブラ)』は彼の四肢を作り直す。

 言葉を尽くし、魂を引き留めたからだろうか――かろうじて魂が肉体から消え始める寸前に間に合った。

 

 

 

 今ここに。安曇野禍福が、新生する――。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 膝枕の上、仰いだ黒い(ベール)の中は、揺籠の中のようだった。

 

 禍福は、再び目を開き――涙を溢していた。

 

 

 

「よかったァー。おはよ、カフク。起き抜けで悪いけど、まだ頑張れるヨネ?」

 

 

 

 曼荼羅を通し、自らの存在を生命力に変えて消費した『喇誑(ラテブラ)』。

 

 その心の全てを受け取って――感動し、震えた。

 

 

 

(――コイツは、こんなにも。一瞬でも未来を掴むために生きていたんだ。消えてもいいと思えるくらい――)

 

 

 

 ――『喇誑(ラテブラ)』を信用こそしていたが、『喇誑(ラテブラ)』の情念(かつぼう)は、彼の想像を超えだものだった。

 

 それほどの飢えが――自分には、なかった。

 

 

 

(――アンタもそうだったのか。この道を遺した、あなたも)

 

「……カフク?」

 

 

 

 少年は、ふと外を見やる。『道』の先、彼にはもうひとつの死念(せなか)が見えていた。

 

 ――この『道』は、領域の外へ出れたのに、何度も戻って、仲間と赤子のために『補給物資』を送り届けた男の残滓だ。

 

 ここを死場所と定め、呪力と命を燃やし尽くして走り切った――『犍陀多(カンタダ)』は。

 

 その指を、前へと向けていた。

 

 

 

「あぁ――わかった。俺も――!」

 

 

 

 導かれ。彼は迷いなく。

 

 ――再び、『命を賭ける縛り』を自身に課し――己の命を、賭け皿に乗せた。

 

 

 

「えーっちょっカフク! そこは命だいじに――!?」

 

「「「禍福さん!?」」」

 

「よぉし来たぁ! カフちゃん、上位個体(アイツ)お願い!」

 

 

 

 飛び出す。黒い揺籠の外へ。

 己を殺した女王蜂の元へ、少年は迷いなく直進する。

 

 ――物体をすり抜ける道。『犍陀多(カンタダ)の道』を、安曇野禍福は一時的に、己の術式の一部として解釈していた。

 よって爆縛呪法の加速判定(せん)を、泥中の中であろうとも認識できるようになった。

 

 彼は『(ひかり)』に足を乗せ、加速していく。

 

 

 

「『喇誑(ラテブラ)』、やっと分かった! 俺は、まだ走り切っちゃいなかったんだ!」

 

 

 

 ――もう、走り切ったと思っていた。

 

 あの時、婪佳久(アイツ)の手を引き出した瞬間に。

 だからだろうか――失った日常は、戻って来ないのだと()()()()()()()

 

 

 

「でも違った! まだ人生は続いてる、ならチャンスはある――俺は、俺たちの人生を取り戻せる!」

 

 

 

 彼の復讐の方向性は変わった。

 彼の目は、この道の向こう側を。迷宮の外に広がる――未来を、見ていた。

 

 

 

「だからもう、俺は止まらない!」

 

「この先の荒野に打ち立てるんだ。俺だけの、新しい未来を――!」

 

 

 

 本当の意味で、彼は全身全霊で駆け抜ける。

 このワンチャンスに全てを投じる。

 

 壊れた『竜骨・改』を拾い上げ、失われた刀身を呪力で形成。

 風車に挑むドン・キホーテと(なじ)るには、その姿はあまりにも真に迫っていた。

 

 瞬時、女王蜂と再び接敵する。

 この領域で最大強化された『不可侵(はり)』と刃が交わる。

 

 

 

 だが――()()()()()()()()

 

 

 

「総てを清算して、身一つで自由になってやる!」

 

 

 

 ()()()強襲(しょうげき)が突き抜けた。

 

 矛先に一点収束。すべての重さと速さと呪力を乗せた刺突が、式神の『核』を完膚なきまでに貫く。

 

 ――呪霊がそうであるように、式神にも核となる部位が存在する。その一点のみを狙って、刃が通されたのだ。

 

 

 

「――綺羅羅さん! 今度こそ俺が死守します、前進しましょう!」

 

「もちろん、けど急いで! ぶっちゃけ私あと数分しか術式維持できな――」

 

()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

 残るは量産型のみだが――もはや、そこに彼の疾走を止められる者はいなかった。

 

 

 

「す、すげぇ。分かってたつもりだったけど――あんなに速く走れるのか」

 

 

 

 生存者三名は格好の機会と察し、全力疾走しつつも、目を奪われずにはいられない。

 

 少年は流星の如く『道』を駆け回り、迫る式神達を余波だけで蹴散らして、活路を切り開く。

 

 それもこれも――『喇誑(ラテブラ)』のおかげだ。

 

 

 

「ま、まさか、え? こ、こんな事ってあるんだ……?」

 

「ぼさっとすんな『喇誑(ラテブラ)』! 領域の穴に着くまでは、お前を絶対に消させない! 俺に着いてこい!」

 

 

 

 『喇誑(ラテブラ)』による安曇野禍福の治癒には、誤算があった。

 

 彼は単に復活したのではない。新生したのだ――肥大化しきった術式効果に対応可能な『器』として。

 

 

 

 心肺が破壊され、脳死寸前だった禍福を治すため、『喇誑(ラテブラ)』は唯一健在だった部位――『爆縛呪法』の術式情報から逆算して彼の体を作り直した。

 

 これまでは向上しすぎた術式効果に振り回され、一定以上に加速すると身体がついてこなかったが、彼の能力上限(げんかい)は先ほど壊された。

 

 意図せぬ結果であるものの――安曇野禍福は最高速度(ポテンシャル)を引き出し切れる体になったのだ!

 

 

 

「でもそっかーそうだね! キミはそうでないとだよ!」

 

 

 

 彼に手を引かれ、『喇誑(ラテブラ)』もまた、重力から解き放たれる。

 

 彼が『線』を踏み外せば道連れだが、『喇誑(ラテブラ)』は笑って手をとった。

 

 

 

「キミはそれでいい! 想像の先へ行こう、アズミノカフク!」

 

「あぁ――行こう! 皆んなで!」

 

 

 

 背を押され、少年は踏破していく。

 

 彼と彼の連れ歩く災厄によって、量産型式神は悉く返り打ちにされ、留まることなく前進は加速し続けた。

 

 そうして、彼らはついに目的地へと到達する。

 

 

 

 ――『領域の穴』。この名古屋地下鉄領域に残された、唯一の弱点へ――。

 





描写を練るのが間に合わず、投稿遅れちゃいました。申し訳ない。

こんな未来志向の強い話ってアリなのかな~呪術廻戦なのに。
まぁそんなのは今更か……。



【補足】禍福はコガネから死亡判定されていない

テンポの問題で省いた情報です。

冒頭でも説明した通り、本シリーズでは『肉体が死んだ』かつ『死後の魂となった』両方の条件が満たされて初めて、死亡者と見做します。

第二次・死滅回游におけるコガネも、同じ基準で泳者の生死を判断してます。

今回の禍福は肉体が死んだものの、魂が死なずに済みました。なので死亡判定されませんでした! ノーカウントなんだ! ノーカン! ノーカン!

……ちなみに過去の復活した呪術師(万や石流)は『死後の魂』が生きた体に入ってるバグ存在です。

五条悟も同じく魂は死者判定です。『魂の通り道』に着いた以上はね。



【裏設定】『犍陀多(カンタダ)の道』 本来の効果(現状は一部しか残っていない)

①この『道』の上では、完全な透明人間になれる
(呪術的にも物理的にも例外なくあらゆる観測を免れる。なおかつ、あらゆるものを『すり抜けて』通過できる)

②この『道』の上では時間の流れが外界と異なり、術式発動者にとっては膨大な移動時間が必要とされるが、現実時間では一瞬で移動完了する。
(つまり1億年ボタンによる光速移動の実現)

③発動するにあたり、目的地を必ず設定する必要がある。この『道』は『目的地の手前』までは続いており、道を外れるとスタート地点に強制転移される。
(術式発動者が強く意識できる場所でないと設定できない)

 用途としては、絶対に情報を持ち帰る、絶対に特定の物品を届けることにのみ特化している術式。



 犍陀多(カンタダ)は③の性質を利用し、『自分の家』に続く『道』を設定。
 領域外で補給物資を拾ったら、自ら『道』を踏み外すことで初期地点(仲間の元)に帰還し、物資を譲渡。呪力が尽きるまで同作業を繰り返した。



 彼らには身の上を話すでもなく、ただそれのみに己の命を燃やし切った。

 現代人か、復活した過去の術師かも分からない。行動の理由は赤ん坊への同情かもしれないし、何かの罪滅ぼしだったのかもしれない。

 真実を知るのは、この『道』の彼方へと消えた当人と、安曇野禍福だけだ。
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